霧に消えゆく超大戦艦   作:霧のまほろば

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みなさまお久しぶりでございます。

話の構成に少々悩み、此処まで時間がかかってしまったことお詫びいたします。




第17話 海竜と敗北

『海竜』。

 

そう異名を付けられ、かの世界の解放軍から畏れられた艦。

超兵器のなかでも最上位である究極超兵器に近い存在にある超兵器。

実力も海竜の名に相応しい破壊力を誇る兵器を幾つも搭載し、高性能の重力防御場、電磁防壁を張ることも可能であり、更に自身の持つ装甲も、【特殊鋼鉄複合装甲】という技法を用いて、装甲厚の二倍近い質量の砲弾の直撃さえ防げる程の強固な装甲を持つ。

例えば、大和型の対46㎝装甲をコレに代えてしまうと、対90㎝までを耐えられる程異常な硬さを持つ。

そんな装甲をこの海竜は、全長1000m近くある船体を、舷側や飛行甲板を60㎝で、艦橋や機関部などの重要防御装甲は80㎝で統一してしまっている。つまり、対120㎝と対160㎝の装甲を持つというわけだ。

正に海の要塞。難攻不落の要塞と言える。

 

しかし、海竜の防御ではなく、攻撃力に重きを置く。防御はあくまで付き物だ。

X線レーザーや、βレールガン、80㎝60口径2連装3基を筆頭に、小型2連装レールガン、280mm3連装AGS、超怪力光線、多弾頭ミサイルVLS、拡散プラズマ砲などを多数備える。

特筆すべきなのは、X線レーザーだろう。

核反応エネルギーという莫大なエネルギーを凝縮、光線発振装置から一気に放つことで高威力のレーザーが放たれる。このレーザーは10万度以上の超高温を有しているため、鋼鉄の装甲でさえ意味を成さない。レーザーが着弾すれば、瞬時に鋼鉄が融け、艦を貫通する。機関を溶かし、艦橋を溶かし、弾薬庫を溶かし。

このレーザーの前には如何なる装甲も意味を成さない。

 

しかし、これだけでは海竜の異名を冠するには足りない。

海竜の真髄は超兵器機関から放たれる電磁パルスによって磁界を構成し、海流を自在に操れる、敵の艦にとっては悪夢と言える能力すらもち合わせる。

 

 

 

深度500。光も届かない暗黒の世界に二隻の鋼鉄の鮫が静かに音を立てないようにゆっくりとスクリューを回しながら進んでくる。

ロザンゼルス級潜水艦の二隻。アメリカが開発した原子力潜水艦だ。

深海棲艦に対しての攻撃力は有るものの、そもそも深海棲艦自体が深海から生まれる存在であるため、深海棲艦も潜水艦と同じように深海でも行動出来るため、潜水して奇襲を掛け一気に戦況を有利に持っていける、潜水艦というアドバンテージを全く生かすことのできないまま、多くの僚艦や他級の潜水艦が沈んで行き、残ったのは僅かな数しか残らなかった。

 

アメリカとしては、この二隻も温存しておきたかったのだが、前回の大反抗作戦で艦娘の艦隊が壊滅し、早急な戦力の回復に駆られている中、マホロバとの繋がりを持つことを重視したアメリカ海軍上層部によって二隻を派遣することが決定され、サンフランシスコ海軍基地から二隻が密かに放たれた。

乗るのはアメリカ海軍の提督にこの潜水艦の艦長、その他にも数名。そして、この潜水艦を駆る乗組員数十人が乗る。

僚艦はこの艦の護衛としてついてきている。

 

「本艦の上500………、海面に1000m級の超巨大艦の反響音を感知!相手にも気づかれました!」

「1000m級ですって!?まさか………!」

 

ーー超兵器。

このロザンゼルス級潜水艦の一隻の艦長は脳裏をこの言葉が掠める。

目まぐるしく脳が回転し、該当する艦を導き出す。

(1000m級の超兵器……。日本から提供されたリストの中では、『海竜』リヴァイアサン、『氷山空母』ハボクック、『超巨大航空戦艦』ムスペルヘイム、『摩天楼』ヴォルケンクラッツアー、『蜃気楼』ルフトシュピーゲルング………。そのどれなの!?)

 

この中に『移動要塞』ストレインジ・デルタの名前が無いのは、ストレインジ・デルタの全長が5000mを優に凌駕する島型の超巨大移動要塞であるため、この中には含まれない。

 

「ーーーっ!艦よりピンガー!本艦と僚艦の位置がばれました!」

「潜行限度深度まで急速潜行!」

「了解!急速潜行ー!」

 

バラストに大量の海水を飲み込んで船体を傾けて、深度650mの潜行限度深度まで船体を潜らせる。凄まじい水圧によって船体がキシキシと悲鳴を上げ、潜行限度深度に到達したことを知らせるアラートが点滅する。

 

「潜行限度深度に到達しました。此処まで潜れば大丈夫でしょう」

「念のために機関を切って、静音潜行に移行。海流に身を任せてこのままターゲットに近づくわよ」

「了解。ピンガー音も遠くなりました。おそらく見失ったことでしょう」

 

海面にある超巨大艦から放たれるピンガーも遠くなり、ホッと一息吐く。

しかし、その気の緩みが彼ら、彼女らの命取りになるとは誰も思わなかっただろう。

しかし、彼ら、彼女らの相手はーー超兵器。

常識で語ってはならない超常的現状を引き起こすことすら可能な超兵器機関を搭載する超巨大兵器。

そして、彼ら、彼女らに立ち塞がるのは超兵器の中でも最上格に君臨する超兵器の一角、『海竜』リヴァイアサン。

竜の名を冠するこの兵器は尚更のこと、常識で語ってはならぬ。

まさか、潜水艦にとって安全地帯になる潜行限度深度まで潜ったことが仇となるとはーーー。

 

 

 

[ーーーーーー]

 

リヴァイアサンが何か、甲高い機関音のような言葉にならない音を呟いたかと思えば、なだらかだった海面が急にうねり上がり、荒れ狂う。リヴァイアサンの船底から電磁パルスが放たれ、一瞬“海そのもの”が硬直する。

 

海流が。

波浪が。

魚が。

鳥が。

風が。

 

まるでありとあらゆるものの時が止まったかのようにその場に硬直する。蛇に睨まれた蛙のように恐怖と畏怖を持って硬直する。

其処にあるのは海の支配者ーーー超兵器。

 

超巨大航空戦艦、『海竜』リヴァイアサン。

 

 

次の瞬間には自在に海流そのものを操れる磁場を構築し、全てがリヴァイアサンの意のままに動き出す。

此処に半径数十kmに渡る広範囲の海がリヴァイアサンの支配下に置かれる。

 

高さ十数mの高波が荒れ狂い、反発するようにリヴァイアサンに押し寄せる。しかし、リヴァイアサンの1000mを超える巨体は至って平穏そのもの。甲板に波を被ることはあっても、船体に動きは無かった。鋭い艦首が高波を切り裂き、超兵器機関の膨大な機関出力が巨体を推し進める。

だが、海面下は正に海中の嵐。

幾つもの急流が入れ狂い、正常な海流が消え失せ、海中に巨大な渦の流れが出来上がる。そして、その大渦の矛先はーーー

 

「ーーーっ!?海中でノイズ音!船外の様子が掴めません!」

「レーダーはどうなっている!?」

「超兵器機関から発せられるノイズで機能しません!」

 

〈ゴ……ゴォン………〉

 

僅かに船体に振動が走る。

その音が響いた艦内では一同が恐怖に満ちた表情で硬直する。

 

〈ゴ………ゴォン!〉

 

グラリ、と船体が揺れ、悲鳴をあげて自身が座る座席にしがみつく。立つことも出来ないほど急激に船体が揺さぶられる。

遂に海流によって巻き起こされた海の竜巻が潜水艦に直撃し、大きく揺さぶった。

竜巻は潜水艦を掴むかのように渦の中に潜水艦二隻を包み込み、そのままーーー

 

「艦長!深度が!」

 

航海長が悲鳴交じりに告げたのは潜水艦が現在いる深度が急速に下がり始めたのだ。

660……680……700……730……780………。

 

「機関出力、最大!バラスト解放!急速浮上!」

「り、了解!急速浮上かけます!」

 

こんな時でも冷静な艦長は危機的状況を離脱しようと指示を下すが、現状は無慈悲だった。

800……840……880……。

急速に下がっていく深度計を注視する航海士の顔が絶望に包まれる。

 

此処で思い返して欲しい。

この潜水艦が居た深度を。

650mーーー【潜行限度深度】。即ち、潜水艦が安全に潜行行動が可能である深度だ。

その数字を200mも深く潜ってしまえばーーー

 

〈ミシリ……!〉

「ーーー!?せ、船体が……!浸水発生!船殻耐久限界!」

「く、現在の深度は!?」

「深度ーーー1000m………。もう、限界です………!」

 

深海1000mに於ける水圧は凄まじい、の一言に尽きる。

人の手で握りつぶすのも一苦労のスチールの缶でさえ、深海200mでは本よりも薄く潰されてしまう。

その五倍もある1000m。数字にしておよそ10万トン以上の水圧が潜水艦を握りつぶそうとする。

 

「僚艦……コートが圧壊しました……。本艦ももう限界です………」

 

グシャリ、と鋼鉄がひしゃげるような音がソナーの耳に届き、僚艦のスクリュー音が消える。その音は乗組員にとって、絶望を告げる音だった。

コートが圧壊したのはこの艦から僅か10m下。今も尚深度は下がり続けるこの艦にとって、死神の鎌が首に添えられたようなものだった。

 

「皆……、此処までついてきてくれてありがとう」

「何を言っているんですか、艦長。水臭いですよ。私たちは艦長だからこそついてきたんですよ」

「そうだぜ。俺たちが惚れた奴とともに死ねるんなら、これ以上の幸せってのはねぇぜ」

 

せめての償いで、笑顔で皆の苦労を労わろうと最期の言葉を告げる。現在は海中であるため、総員退艦も不可能。浮上して退艦もあるが、超兵器によって起こされた大渦で浮上も叶わず、沈降していくばかり。

この艦長はこの艦に乗る全員の死を悟り、悲壮な笑みを浮かべる。部下たちから罵りや罵詈雑言も覚悟していた。

 

しかし、艦長の思いに反して帰ってきたのは信頼、忠誠心と言えるような言葉だった。

思わず目を見開いて乗組員を見つめる。すると、隣の席に座っていた副長から思いがけない言葉がかけられる。

それに同意するように優しい微笑みを浮かべて頷く乗組員。思わず涙が出そうになった。

 

航海長なんて、家族がいる。6歳になる愛娘もいる。大きくなったら、パパのような潜水艦乗りになるんだ!と愛らしい。航海長は自分のポケットの中から家族の写真を取り出して眺める。

フッ、と笑うとポケットの中に仕舞った。その笑いにはどんな感情が込められていたのか。それは航海長にしか分からない。

 

少し空気が和んだが、それでも絶望的な状況は変わらない。

 

〈メキ………メキメキ……!〉

「耐圧限度突破!船殻潰れます!」

「ちくしょう……、此処までなのかよ……!折角此処まで来れたというのに……!」

 

海竜は無慈悲に更に大渦を大きくして潜水艦を沈めて行きーーー

 

 

 

 

「………………?」

「え……?ノイズが消失……、いえ、高周波音?本艦の周囲に半径100mに円球状に発生しています!え………ソナー、回復しました!」

「何?どういう事だ?」

 

船殻が見るも無惨なほどにひしゃげ、原型を留めないくらい歪んだ潜水艦の周囲に黒い六角形の集合体で円球状のフィールドが張られている。

 

「っ!?メインモニターがジャックされました!映像映ります!」

『其処の潜水艦の乗組員、無事か?』

 

モニターに映るのは、純白の女性。白く輝く白銀の髪を靡かせ、鮮やかな着物を着た絶世の美女。白銀の髪の奥に隠された瞳は閉じられており、見る事は叶わないが、それを抜いてもこの世に存在して良い美貌ではなかった。人形か何かのような可憐さを感じつつも、妖艶な女性の雰囲気も醸し出す。

 

乗組員の男性なんて、鼻の下を伸ばしてモニターに視線を釘付けにされている。

そんな男性が面白くなく、思わず手が出てしまう隣のオペレーターの女性。

空気が緩み、モニターの女性が呆れたかのような微笑みを浮かべているのを目にした艦長は思わず恥ずかしくて頬をほんのりと赤く染めた。

 

『……如何やら無事なようだな。とは言っても、船体そのものの損傷は凄まじいもの、か。そんな状態では潜行なんてできたものじゃないだろうな。ーーリーガル』

【畏まりました。クラインフィールド展開。クラインフィールド飽和率2%、システムオールグリーン。お姉さま、思う存分やっていただいて構いません】

『分かった。ーーでは、又後で会おう』

 

ぷつり、とモニターの美しい女性の姿が黒く染まり、乗組員の男共が残念そうな表情を浮かべるが女性のオペレーターに張り手を食らう。

賑やかになった船内だが、ソナーの表情は強張っていた。

 

「ソナー手、何か聞こえるの?」

「なんて言えば良いのでしょうか……。これは砲撃音、なのでしょうけれど、艦娘の戦艦の砲撃音とは比較にもならないほど大音量で衝撃も凄まじいです」

 

姦しく騒がしいのを一喝して黙らせ、船内の壁に耳を付けて聴き澄ますと確かに、深海1000m辺りに居るはずなのに、海面で撃ち合っているであろう、砲撃音を思わせる轟音と衝撃波が届き、ビリビリと船殻を震わせる。

 

「こ、この砲撃音……、明らかに46㎝を超えています!」

「………!?で、では………」

「まほろば、か!51㎝3連装五基、15門を有する大戦艦……。今は【霧】とやらの改修を受けて拡張されたと聞くが……。詳しいスペックは日本政府も掴めていないようだな」

「ええ。そして、私たちのターゲット………」

 

日本で建造された異例のアメリカ戦艦ミズーリ。

アメリカに回航され、様々な事情を聞き出した時に出た【霧の艦隊】と言う言葉。

詳しく聞けば、眉唾ものであったが、アメリカの歴史に残るアイオワ級のどれとも隔絶した性能を誇るミズーリ。もしも、大戦時にこの戦艦一隻だけでも世界の覇者となれたであろう超性能を持つ彼女がいた世界ではこれ程の性能をもつ彼女でさえ、【霧の艦隊】を撃滅することは叶わず、十数隻を沈め、自身も沈んだ。

そんな恐るべき技術を有する霧とこの世界で最大最強最高の戦艦であるまほろばの融合。

それが何を意味するのか、わからない程間抜けな乗組員では無い。

 

ゴクリと生唾を飲み込む音が嫌に響くが、誰もそれを咎めることは無い。

ここから遥か頭上で二つの猛威を振るう嵐の衝突。

それを止められるのは誰とて居ない。

 

 

 

本気にも程遠いーー小手調べといったところだろうか。

 

〈ギュィイイイィィィ!!〉

 

リヴァイアサンから4本のX線レーザーが放たれ、眩い光の線と纏う紫電が海水を蒸発させながらマホロバに向かって光の速度で襲いかかる。追撃とばかりに80㎝の砲弾が木枯らしのような甲高い音を立てて上空から降り注ぐ。

 

「ふむ。まだ小手調べ、といったところか。ならば私も遊んでやろうか。クラインフィールド展開。稼働率8%……飽和率0.35%」

 

全体を覆うのではなく、悠々と60ノットの速さで進むマホロバに命中する箇所にのみ六角形の集合体が現れ、X線レーザーをあらぬ方向へ弾く。遅れて降り注ぐ80㎝砲弾もスラスターを使い、船体を僅かに逸らす事で命中弾は出ず、夾叉弾に終わる。

尚も降り注ぐ80㎝砲弾を弾いたり、船体を逸らすことで一発も命中弾を出すことも許さず、鋼鉄の板を叩くような甲高い音が虚しく鳴り響く中、不敵に笑うマホロバの顔に紋様が浮かび上がり、黄金色に光り輝く。

 

「そら、お返しだ。受け取れ」

 

前部にある5基の主砲が旋回し、反航状態ですれ違う前のリヴァイアサンに陽電子ビームをたたき込もうと充填を始め、砲塔の外壁がソーラーパネルのように展開し、砲門の先に赤い稲妻を纏う球体が生まれ、砲門下の莫大な海水が蒸発する。

リヴァイアサンもこの陽電子ビームは如何に高威力なのかを瞬時に理解し、波浪を操る能力を以って自身がいる海面を大きく下がらせ、壁を作るかのように高波を作り、リヴァイアサンの巨体がマホロバの視界から落ちるように隠れる。

 

〈バシュウウウゥゥゥ!!!〉

 

そこを海水を掻き消しながら15本の陽電子ビームが扇型に突き抜けていき、6本がリヴァイアサンの電磁防壁を掠めて水平線の彼方へと飛んでいく。バチバチと激しい音を立てて掠った部位の電磁防壁が青白く明滅し、起動した事を示し、陽電子ビームによって削れた海面からリヴァイアサンの艦橋が覗く。そんな隙間もうねる波に呑まれ、再びリヴァイアサンを隠す。

 

マホロバの陽電子ビームを放った砲門が高波に打たれて幾筋ものの蒸気をあげて辺りが白く染まり、マホロバの船体が一時的に隠される。しかし、次の瞬間には黄金の紋様を浮かべ一気に90ノットに増速し突き進むマホロバの艦首が高波を切り裂き、艦橋が蒸気を掻き消す。

 

「波間に隠れたか。ーーむ、多数の熱源反応、20……いや、200。距離にして2000。方位270から45。多弾頭ミサイル、それに、荷電粒子砲か」

 

陽電子ビームがリヴァイアサンを掠めた時にリヴァイアサンからも反撃が行われていた。しかし、波間に隠れて、直進するX線レーザーや超怪力照射装置も射線が通らず、80㎝砲も僅かに波で揺れると言っても、艦船にとっては僅かな揺れでさえ命中率には計り知れない程の影響を与える。そのため、80㎝砲は沈黙せざるをえなかった。

だから、黙っているのかと言われれば否である。リヴァイアサンはこういった状況も想定している。故に重力の影響を受けて歪曲する光線を放つ荷電粒子砲と誘導性を持つ多弾頭ミサイルを陽電子ビームが通過し、電磁防壁が起動している隙に放った。

 

電磁防壁が起動していると、周囲に強烈な電磁波を流して電子機器を一時的に麻痺させる。そして、リヴァイアサンが持つ電磁防壁はレベルβ。光化学兵器の威力の90%を受け流す、ほぼ無効化する性能を持ち、それが周囲に与える影響は莫大なものだ。

故にマホロバでさえ、僅かに発見が遅れた。

 

 

しかし、それが如何したというのだ。

嘗てのまほろばは300機の艦載機の編隊を僅か一時間で撃滅した事すらある、当時の戦艦の域を超えている怪物。今のイージス艦程の……否。イージス艦でもお話にならない程の殲滅能力を持つ艦。それがまほろばだ。

 

「隙を突いたつもりなのだろうが、まだまだ甘いな。対空レーザー起動、ーー薙ぎ払え」

 

一瞬の沈黙。

ーー刹那、光の壁が迫り来る神の槍を圧殺する。

 

左舷のみで17基もある高角砲の砲門から眩い閃光が34条放たれ、更に左舷を向いている機関砲全基から夥しい砲弾が放たれ、壁となって多弾頭ミサイル、荷電粒子砲を圧し潰した。空中で次々と爆発を起こし、破片と青白い粒子を散らして落ちていく。

 

「………?なんだ、あの青い粒子は……?む、リヴァイアサンが離脱していく?」

 

青い粒子に気を取られていた僅かな隙にリヴァイアサンが海流を操り、自身の船体を押すようにしてマホロバから離れて行く。

 

「………追うべからず、か?」

 

リヴァイアサンも既に交戦の意思は無いと言うかのように全ての主兵装から動きが消えていた。ミサイルや魚雷などの奇襲に即応できるように対空砲や機関砲にはまだ火は入っているようだったが、それではマホロバにはダメージが入らない。

何が目的なのだろうかと思い、速度を落として、辺りを警戒する。妙な、嫌な予感がしてならない。そんな胸騒ぎに答えるように警戒のレベルを上げていく。

余りにも不気味過ぎだ。超兵器の基本思考は見敵必殺。それは先の大反抗戦で起きた超兵器の急襲、そして、日本海軍を襲った二隻の超兵器の行動から見ても判断できる。

だというのに、今も離れ行くリヴァイアサンはその見敵必殺の概念から外れているように思えーーー?

 

「なに?システムエラー!?ウィルスか!予測パターン解析、電子防壁構成。………チッ、対処が間に合わん!全システム緊急停止!ナノマテリアル解体後に自己判断プログラムに入る。ーー済まん。リーガル、後で私を回収してくれ」

『お姉さま!?』

 

パキリ、とマホロバの白魚のような肌に六角形の亀裂が入るとそこからパラパラと剥がれていき、それと合わせて船体も崩壊していき、銀の砂となって青い海中に星を散りばめては消えていく。

 

(………此れが敗北、か……。苦しいものだな。嘗ての大戦では私個人の負けは無かった。国として、組織としての敗北だったが。………中々どうして、やってくれる。だが、私がこの程度で終わると思うなよ……!)

 

薄っすらと瞼を開き、見るものの背筋が凍えるほど、凄惨な光を宿した瞳でリヴァイアサンが去っていった方を見遣り、残った演算素子でまだ銀砂となる前の最後の砲塔を動かし、辛うじて原型を留めている波動エンジンとバイパスを通す。しかし、演算能力が重巡並みにまで落ち込んでしまっている今では有り余る波動エネルギーを制御しきれない。

 

(……60%……限界……か……。だが……此れだけ……有れば、充分……)

 

パラパラと朽ちていく砲塔の先で鈍い光を放つ砲門から青白いエネルギーが溢れ出し、強烈な閃光とともに螺旋軌道を描きながらリヴァイアサンが去って行った方向に海水を跳ね飛ばしながら直進していく。

それを見送ったマホロバは反動で更に崩壊を激しくしていき、限界を悟ったマホロバの体も銀砂となり、一つの小さな山を作り、その山に菱形の物体に幾重にも輪が廻っている不思議な物……マホロバのコア、Ωコアが落ちてキラリと赤い光を放つ。

赤いラインが消えたかと思えば、それを引き金に、辛うじて残っていた艦橋も崩落していき、マホロバのコアごと海中深くに没していく。意識が遠くなっていく中、時雨たちの悲痛な叫び声すら聞こえなくなっていく。

 

(……此れが……沈む、か。……暗い……寒い………そして……寂しい。大和たちも……同じ気持ち……だったのだろうか………)

 

コトリ、と金属質な音を立てて、コア一つが暗淵の底にたどり着く。

一筋の光すら届かない。

 




海竜のスペック、鋼鉄よりも上にあるように感じられるのでしょうが、鋼鉄はコンピューターで無人制御だったと思いますので、超兵器たる所以を発揮できないまま沈んだと判断しました。
故に、この話では超兵器の能力を発揮したらこうなったのでは?と想像を膨らませて書きました。


マホロバ沈む。
原因は次話に書きます。
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