霧に消えゆく超大戦艦   作:霧のまほろば

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思ったよりも指が進み、あっさりと書き終わったので投稿します。この章からコラボが始まります。
どうぞ、ご覧くださいませ


第4話 大日本帝国海軍と新たな脅威(コラボ開始)

―――――― 一方、日本帝国海軍 呉鎮守府にて。

 

鎮守府の演習場には大和、武蔵を始めとし、長門、陸奥、伊勢、日向に赤城や加賀、蒼龍、飛龍と言った艦隊主力の艦娘に、高雄、愛宕ら重巡、天龍、龍田、矢矧といった軽巡、雪風、陽炎などの駆逐艦が集まっており、砲撃や雷撃、艦載機の発着艦の訓練に励んでいた時だった。大和と武蔵、信濃が異変を感じ取ったのは。

 

大和『―――っ!!』

武蔵『―――…何だ?この感じは…』

赤城『如何したの!?三人とも!?』

 

いきなり頭を押さえてしゃがむ3人の姿が通信モニターに映し出され、それが他の艦娘の不安を誘い、慌てた赤城が声を掛ける。

信濃『あ、はい…、大丈夫ですが、何でしょうか?この懐かしい感覚は…?武蔵姉さんは分かりますか?』

武蔵『私も何やら懐かしい感覚を覚えたが…、―――まさか…?』

矢矧『何か心当たりがあるのですか?』

 

武蔵が何やら確信があるように呟く。その顔には驚愕と歓喜が混じった表情が浮かんでいた。

 

大和『恐らく…まほろば』

武蔵『やはり大和も同じ考えに至ったか』

利根『お主ら…、まほろばじゃと…?』

信濃『ええ、私たちの妹分のような存在にして世界最大最強の戦艦、まほろばが―――』

 

この日、呉鎮守府を驚愕が襲い掛かり、包み込んでしまった。

 

かつて第2次世界大戦時に大日本帝国海軍によって大和型戦艦を超える超大戦艦として設計、建造され、文字通り最強の戦艦の名に相応しい戦果を挙げ、戦争の相手だったアメリカのみならず、世界各国がその性能に驚愕し、絶句するしかなかった。魚雷を100本受けても戦闘速度を維持し戦闘可能というの鉄壁の防御力。世界最大の51㎝主砲を3連装、それも5基。さらにその主砲が放つ一発の砲弾でさえ百発百中とは行かないにも、常識を覆す距離からの精密射撃。そして並の駆逐艦を超える37ノットの速度を発揮できる強力な機関を積み、重巡並みの燃費を実現した夢のような戦艦。

名前を―――超大戦艦まほろば。

 

そして、大和たちからもたらされた一報は呉鎮守府という大日本帝国海軍の一角を担った軍港を揺るがすものだった。

 

超大戦艦まほろば―――帰還せり。

 

 

そして、その報は各地に点在する鎮守府にももたらされ、艦娘の戦意を高揚させた。それに留まらず、生き残った通信衛星を通して世界各国に伝達され、各国の海軍上層部から艦娘たちは大いに沸いた。特にアメリカの艦娘は、敵だったにも関わらず惚れこんでしまいそうになるほど雄大かつ日本の美しいデザイン性を併せ持ち、誰もが一度ともに戦いたい、共に海を行きたいと願って叶わなかった超大戦艦と共に肩を並べて戦える日が来るかもしれない、と歓喜の声を上げてまほろばの帰還を歓迎した。しかし、彼女らはマホロバに起こった出来事をまだ知らなかった。マホロバが霧の艦艇となって帰還したという事に。だが、それを知るのは遠くない未来の事。

 

 

その頃、大日本帝国の帝都―――京都(東京は度々深海棲艦の襲撃を受けている為、政治の中心を京都へ移した)にて、大日本帝国海軍総本部艦娘運営総括、通称大本営では日本各地から集められた提督、司令官が大いに悩んでいた。もちろん、マホロバの事である。

此処、大本営には北から表すと[室蘭鎮守府] [大湊鎮守府] [横須賀鎮守府] [舞鶴鎮守府] [呉鎮守府] [堺鎮守府] [佐世保鎮守府]の司令官が座る席が置かれているが急な要請だったため、出撃中の司令官もおり、全員がそろう事は無かったが、それでも錚々たる顔ぶれである。本来ならば、此処には司令官だけではなく、鎮守府の中でも1位から3位までの階位を得ている提督も参加する予定だったが、今回の件は重大なことだったため、司令官と秘書艦のみに召集が掛かったのだ。

 

マホロバの帰還は大いに喜ばしいことだが、監視衛星からの画像を見るからにシンガポール付近と判断された。そのことだけでも頭を痛める案件となっていた。

現在シンガポールは深海棲艦の手に落ちており、制空権どころか制海権すら奪われてしまっていた。それに、現在日本近海では台湾から沖縄、小笠原諸島周辺が対深海棲艦最前線であり、現在も深海棲艦と艦娘の激戦が繰り広げられていることだろう。そして、台湾から小笠原諸島の先の海域は魔の海域と呼ばれ、沖縄、台湾に攻め込むために集結しつつある深海棲艦が蠢いており、生半可な装備と練度では生きて帰れない。

マホロバのところにいる時雨が元々所属していた横須賀鎮守府の司令官も此処に挑み、叩きのめされて追い返されたのだ。

 

そこで、何故大本営がマホロバの事で頭を痛めるのか?

それには理由があった。

 

東山「―――まほろばの姿が確認されたのはシンガポール付近の海域…か。ううむ、彼女を日本へ招待することは出来ないものか……」

兵零「何を言っているのです。招待?ハッ!強制連行して犬馬のように働かせればいいだけの話でしょう!あれだけの火力、他国に渡すわけにはいかんでしょう!」

 

最初に声を上げたのは“東山以光(ひがしやま これみつ)元帥”(89)。艦娘を孫娘のように大切にする穏健派の中でも穏健な老年の元帥だ。艦娘が登場した時に現在のようなシステムを提言した人物であり、提督として艦娘を率いたときから40年間沈没艦を一隻も出さなかったことでその卓越した手腕が伺える。元まほろば乗組員であり、彼女の帰還を強く待ち望んでいた。真っ先にマホロバの帰還に気付いた大和たちが所属している呉鎮守府司令官兼大日本帝国海軍元帥であり、司令官や提督の頂に君臨し、大規模海戦では常に先陣を担い、主に南方方面に出撃する。

次に声を荒げて東山中将に噛みついたのは“兵零宗光(ひょうれい むねみつ)少将”(59)。海軍きっての武闘派であり、時雨が所属していた横須賀鎮守府の司令官。しかし、彼の艦娘に対する扱いはまるで道具を扱っているかのように粗暴なものが見られるため、各地の提督からは反感を買っているが、戦果は立てて帰ってくるため、強く言えない。しかし、昔は艦娘を大切にする将来は大将を任せられると信頼されていたが、ある時を切っ掛けに現在のように変貌してしまい、現在は少将の位置に収まっている。主に小笠原諸島方面とシンガポール方面の攻略を任されている。

 

一条「口を慎んでください、兵零少将。貴方は艦娘を何だと心得ているのですか?彼女たちは心のある者たちです。貴方が思うように人類を平和に導くための“ただの”兵器では無いのです。そのことをしっかりと理解してくださいね?」

七月「まぁ、兵零さんの言いたいことも分かりますけど、今は艦娘が如何だのと話す時間ではないでしょう?一条さんも今は収めてください。双方良いですね?……彼女を迎えに行くのは難しいものの、高練度の艦娘を編成した艦隊に最高の装備を持たせて派遣、そして、あちら側にもある程度の通信設備が整っており、連絡を取り合うことも出来れば、派遣した艦隊の提督、または司令官との会談を行うことにして、ひとまずは様子を見るようにしましょう。ただ、まほろば、彼女の事で一つ問題が発生しているようで……」

 

粗暴な物言いを咎めるように冷たい声で怒りを現したのは全ての鎮守府の中でも数少ない女性の司令官、“一条真月(いちじょう まつき)少将(27)”若くして少将の位置に着いた稀代の天才と目される女性だ。彼女の特徴は効率的な艦娘の運用、卓越した指揮だけではなく、同性として、艦娘の立場に立って物を言える貴重な存在のため、大本営としては欠かせない人物。彼女の亡き祖父がまほろばの参謀長を務めていたことがあり、マホロバには一目でもいいから会いたいと憧れの念も抱いている点がある。祖父と知り合いでもある東山を尊敬している。現在は京都の足元、大阪を護る堺鎮守府の司令官であり、帝都を護る最後の防衛線を任されている。

兵零と一条を抑えたのは大本営の参謀を務め、東山の右腕のような役割を果たす彼は“七月将宗(ななつき まさむね)大将(35)”彼がまだ14歳のころ、東山にその非凡な才能を買われ、それ以来東山に付き従うようになった。彼は未来を予知できるかの如く鬼謀を発揮し、艦娘の沈没はおろか、大破すら出したことのない世界にも例を見ない司令官だ。現在は東山から独立し、佐世保鎮守府の司令官も担っている。しかし、東山のいる呉鎮守府と一条が務める堺鎮守府とそこまで遠くないため、頻繁に連携して出撃、演習を行ったりしている。公の場では口にしないものの、一条を妹のように可愛がっている。基本的に南方方面の攻略を任されている。

 

東山「まほろばに問題だと?一体なんだ?」

七月「実は、シンガポール付近に配置していた監視衛星からの写真ですが、私たちの知る彼女の姿とは大きく変わっているのです」

一条「え?ちょっと見せてください……何ですの?この島のような戦艦は…?」

兵零「……写真を見るからに主砲塔らしきものが9基確認できるが……、曳航している駆逐艦と比較しても明らかに船体の規模が違うな……。……何故涙が出てくるんだ……?」

 

七月が手に持っている端末を操作するとモニターに件の衛星写真が映し出される。拡大に拡大を重ねたようで画質は荒かったが、船体を確認するには申し分ない精度だった。東山の言ったように曳航している駆逐艦―――時雨との大きさを比べても明らかにかつてのまほろばを大きく凌駕しているのが分かる。そして、何より目を引いたのは9基ある主砲塔に多数の副砲や高角砲からなる針鼠かと見間違えるほどに巨大な船体にびっしりと配置された砲火器群。そして、甲板の至る所に四角い蓋が多数確認できる。

そして、漆黒に染められた船体。七月でさえ初めて見たときは新手の深海棲艦か!?と焦ったが、よくよく見れば、深海棲艦独特のヘドロや、破損しているように見える船体、そして、赤く光る環境の窓ガラスが無いことに気付き、深海棲艦とは全く違うと判断で来た。そして、その折に大和がマホロバの存在を感じ取ったことでこの巨大戦艦がまほろばだと判断でき、何故か知らないが涙が出てきた。

そして、それは七月だけではなく東山、一条達、そして、それぞれの秘書艦として艦娘も付き従っていたが、マホロバの写真を見た瞬間全員が涙を零した。

 

大和「これが新しく生まれ変わったマホロバなのですね……」

東山「そうだな……。以前のまほろばも雄大な戦艦だったが、この衛星写真でもさらに、その雄大さは増しているように見えるが、以前のまほろばの面影も残っておる。儂の人生が終わるまでにもう一度まほろばの姿が拝めるとは思わなんだ……」

 

側に控えた大和と感想を言い合いながら目頭を手で覆い隠す。東山にとってそれほどまほろばの存在は大きかった。まほろばを見送ってから10年、海上自衛隊に入隊して10年近く。司令官になってから40余年。合わせて60年以上、マホロバの存在を忘れたことは無かった。長い年月、まほろばが出現しなかったため、焼きもちを焼いたこともあったが、かつての激戦を戦い抜いたまほろばにはゆっくりと眠ってほしいと半ば諦めかけていた思いが蘇ってくる。押し留めていた涙を抑えられないのは無理もないだろう。大和に支えられながらもお互いに涙を零す。

 

一条「これがお爺様が乗られていた戦艦まほろば……、何て美しくも猛々しい戦艦なのでしょう……。お爺様が生きておられたらきっと、泣かれたことでしょうね…」

日向「そうだな…、かつて、私もまほろばに憧れていたものだ。彼女が帰ってきてくれたことは本当に喜ばしいものだが、この姿を見ると途轍もない技術が使われているのは明らかなのだろう。人類にとって災厄になりかねないというのが気掛かりだが……、ともかく、彼女が帰ってきたことは歓迎するべきことだな」

 

目いっぱいに涙を浮かべて感動していた一条。彼女は祖父が健在だった頃、マホロバの武勇伝を幾度もなく聞かされており、圧倒的な力を持ちつつも優美な戦艦だったと言われ、どんな戦艦だったのだろうか、と想像を膨らませもしていた。そして、この日、衛星写真であり、真上からの為、どのような艦容であるのかピンと来ないものがあるが、それでも大和型を踏襲したものと思わしき船体に9基という圧倒的な主砲塔がバランスよく並んでいる様は一種の芸術作品を見ているかのようだった。一方、一条の秘書艦である日向は冷静にマホロバの帰還を喜びつつも、彼女が持つだろう技術は途方もなくこちら側とは隔絶したものがあるのだろうと察し出来た。そして、彼女の技術を欲しがって新たな争いが起きかねないと危惧する。しかし、それを一条達司令官が理解していない筈が無いと思い直し、素直にマホロバの帰還を微笑みながら迎えていた。

 

兵零「これがあの話に聞く超大戦艦まほろばか……。……彼女に賭けてみるのもありかもな………否、深海棲艦は私の手で絶やさなければならん。あいつのためにもな……!」

加賀「司令……」

 

兵零は一瞬、子供のような輝きを目に灯すがすぐに消して、憎しみを込めた声で深海棲艦の撃滅を改めて誓った。彼は婚約者を深海棲艦との戦いで失っている。艦娘が登場したばかりの頃、現在のようなシステムが構成されつつあった時、深海棲艦との戦いに婚約者が乗るイージス艦が国連軍の一隻として参加した海戦で沈んだ。増援として向かっていた彼の目の前には彼女が乗るイージス艦が炎に舐められながら海中に没していく姿だった。憔悴しきって婚約者を探せば、漂流している破片に彼女が身に着けていたネックレスが引っかかっており、血に塗れていた。そのネックレスを握りしめて絶叫した彼はその日から人が変わったかのように大破進軍上等の損害無視の苛烈な戦術をとって、一隻でも多く深海棲艦を沈めることを最優先とするようになってしまった。

傍らに立つ加賀は彼の婚約者が乗るイージス艦を救えなかったことに自責の念を感じており、唇を強く噛み締めていた。しかし、次は必ず守って見せると強い光を灯していた。

 

夕張「なんだか更にカッコよくなりましたねぇ…、それに、未知の技術が使われている可能性大ですよ!司令官!会いに行ってもいいですか!?」

七月「馬鹿ですか、貴女は。彼女が抱える可能性は私たちにとって救いとなると同時に新たな争いの火種にもなりかねないんですよ。だから、慎重になるべきなのです。だから……しばらく大人しく練度を上げておくようにね?」

 

霧の艦艇の事を知らない夕張は9基に増えた主砲塔を持ち、船体が更に拡大したマホロバを見て、多少―――否、大いに興奮しており、放っておけば、同類である明石と共にシンガポールに突撃しかねないと思わざるを得ないほどの勢いで迫ってくるが、冷たく突っ込み、逆に説く七月。確かに七月達が建てている推測は的を得ていると言えるだろう。

 

少なくとも見立てではマホロバの持つ技術は現在から最低でも100年は先を走っている。それはまだ東山達に見せていないマホロバの交戦の写真から見ても分かることだ。そして、そのことが世界各国に知られれば、対深海棲艦に優位に立とうとマホロバの技術を解析しようと躍起になってこちらにマホロバを寄越せと言い出してくるだろう。もちろん、大本営としては渡すつもりは無かった。だが、世界は何処かの国が突出しているのを指をくわえて見逃してくれるはずがない。お互いに疑心暗鬼になり、その行きつく先は新たな世界大戦に繋がるだろう。万が一深海棲艦を撃滅できたとしても新たな戦争が始まれば本末転倒だ。だからこそ、彼女の扱いは慎重に、各国と話し合いを進め、いつになるかは分からないが、彼女側と交渉していかなくてはならない。

そもそも、漆黒の巨大戦艦が本当にマホロバであると100%断言できるとは限らないのだ。大和がマホロバの存在を感じ取ったのと同時に監視衛星で初めて見る規模の船体を持つ戦艦を捉えたため、この戦艦がマホロバである、と“判断した”が、“断言した”という訳ではない。

 

ともかく、対深海棲艦戦役が始まって以来最も大きな案件となるというのは間違いなかった。下手すれば彼女らを敵に回してしまう可能性すら有り得た。事の重大さを改めて認識し直し、手に汗握る七月だった。

 

マホロバが帰還してから既に2日経つが、大本営では未だ話し合いが続いていた。時折仮眠を取りつつもマホロバの存在をどう扱えばいいのかと大いに悩ませていた。

現在、大本営に出席している司令官は[呉鎮守府 東山以光元帥] [横須賀鎮守府 兵零宗光少将] [堺鎮守府 一条真月少将] [佐世保鎮守府 七月将宗大将]の四人がそろっていた。他にも[室蘭鎮守府 白雪悠風(しろゆき ゆうふう)中将] [大湊鎮守府 仙谷郷司(せんごく ごうし)大将] [舞鶴鎮守府 京桜満奈美(きょうおう まなみ)少将]が居るが、たまたま自身の艦隊の指揮を執るために共に出撃している為、大本営に間に合わなかったため、欠席となっている。ただ、この話し合いのデータは全てリンクされているパソコンに送られている為、それぞれが鎮守府に戻った時に見ることが出来、情報の共有が出来るようになっている為、話が通じなかったという事は無い。

 

そして、大本営の話し合いは紛糾を極めた。何故なら、七月が最後に出したマホロバの戦闘時の監視衛星からの写真だった。

その写真にはマホロバが主砲を旋回させ、深海棲艦に向けて太い赤い光線を放っている写真と、マホロバを覆い尽くすかの如く白煙を噴き出しながらミサイルが数十本放たれている写真、そして、副砲がその砲身から稲妻を迸らせている写真だった。マホロバが時雨と思しき駆逐艦を曳航している写真の先はジャミングが掛かったかのようにノイズが入って写真が撮れなかったため、除外されている。

 

一条「……この赤い光線は一体なんでしょうか……?」

七月「おそらくですが、レーザー、またはビームの類かと思います。ただ、分かることはこの一撃で戦艦を含む複数の深海棲艦が消滅しています」

 

この言葉で沈黙に包まれる司令官達。分かるのはマホロバが我らとは隔絶した火力を有しているということ。そして、最早第2次世界大戦に存在していたまほろばとは大きく異なるという事を。

かつてのまほろばとは大きく異なる船体を持つことから未知の技術が用いられているという事は理解していたが、精々砲門が大きくなっただけで、我らとはほぼ変わりないと考えていたが、その考えが根本から覆されたその瞬間だった。

 

東山「こいつぁ……、ミサイル、…か?」

大和「はい…、そう見受けられますが……」

 

次にスクリーンに映し出されたのはマホロバの船体の至る所から幾条ものの白い白煙を吐き出す細長い物体が発射されているところだった。東山は元々海上自衛隊だったため、イージス艦に乗船していたことがあったため、それが何なのか判断することが出来た。しかし、何処か確証が掴めなさそうだったのは東山の知るミサイルとは大きく変化していたからだ。東山が知る限り、現在残っているミサイルは全て巡航ミサイルのみであり、しかも陸地のパトリオットから発射されるタイプのものであり、弾道ミサイルのように大型のミサイルしか残っていなかった。艦船に載せるタイプのミサイルはそのミサイルを生産する工場が深海棲艦の夜襲によって完膚なきまで破壊されつくされたため、生産不可能に陥っている。弾道ミサイルは山間の工場で生産していたため、無事だったのだ。

そのため、現在保有している生き残りのイージス艦や護衛艦にはミサイルが搭載されておらず、精々対空護衛艦としてしか役に立たなくなってしまっていた。

 

それに対し、マホロバが発射したミサイルは如何にも未来的な形状をしており、推進器も明らかにジェットエンジンではない、青い光を放っていた。他の写真も見てみると、ミサイルが複雑な軌道を描きながらもミサイル同士が衝突することが全くない、芸術的な軌道で深海棲艦へと迫っていく様子が映っていた。明らかにこちらのミサイルとは一線を画す性能を持っているのが分かった。

 

東山「ううむ……、最低でもイージス艦と同等の技術を持ち合わせている可能性が高い、という訳か……。ははは…いやはや、参ったなぁ…、再会のつもりがとんでもないものが来そうでおっかないのぅ…」

大和「東山司令…」

東山「ああ、大丈夫だ、心配かけるな…、大和」

 

思わず天を仰ぎ見て乾いた笑いしか出なかった東山。傍らに立つ大和は心配そうに東山を見つめるが、朗らかに笑って、手を振って、大丈夫だと伝える。

 

七月「とりあえず、現在のところでは情報が少ないので本格的に動けないのですが、案としては、高練度―――最低でも改、または改二の艦娘のみで12隻以上の艦隊を組んでシンガポールに向かわせて、こちらの司令官のどなたか同乗し、マホロバに接触、話を聞いて、交渉を進めるべきだと思われます」

兵零「それについて異議はない。だが、世界各国に対する説明は如何するんだ?近いうちにアメリカはイギリスとの航路を確保するために反攻作戦を始める。ドイツも地中海を開放するためにフランス艦隊と共同して作戦を進めるだろう?それに、マホロバの存在は既に世界中に知られ渡っている。誤魔化しや、隠し事は出来ないが…?」

七月「ええ、そこで、各国に対する交渉は私が担います。各国には彼女はかつての姿とは大きく変わっている為、厄介なことになりかねないため、現状の確認のために信用できる司令官を交渉に向かわせる、と言えば、アメリカも反論は出来ないでしょう。状況もリアルタイムでの中継にすればいい、または監視衛星の信号を傍受してもらうようにすれば問題ないかと思われます」

兵零「ふむ、では、交渉にはいったい誰を向かわせようと思っている?」

七月「呉鎮守府の方に向かっていただこうかと思います。理由としては、現在各地の艦娘の中でも練度が高いのは呉鎮守府です。それに、元帥が自ら向かっていただければ、あちら側との交渉もスムーズにいくかと思われます。特に、第2次世界大戦にあのまほろばに乗船していたことのある元帥ならば、齟齬も無く話しできるかと。そして、交渉するのがトップならば、伝達もすれ違いなどが少ない為、トラブルになる可能性を限りなく下げられますので。他の鎮守府の提督も連れていくことも考えましたが、呉鎮守府の戦力が空いた穴を埋めるためにも各地の司令官は残留という結果になりますが……」

東山「ふむ、妥当なところだな。だが、今動くのはまだ早い。七月、お前は各国との交渉を任せる。私は監視衛星を用いて情報を集めつつ、艦娘たちの練度を少しでも上げるべく訓練をしようと思う。一条、兵零も万が一に備えて開発、訓練に力を入れよ。これは今回出席しなかった司令官達も同様に伝えよ。特に、室蘭、大湊の双方は戦艦ミズーリを旗艦にしたアメリカ艦隊の受け入れの航路を確保に努めるように伝えろ。良いな」

 

温厚な表情から一転、歴戦の猛者の顔つきになった老兵は若き司令官に指示を下し、大和にも訓練を重視するように伝える。

そして、各地の司令官は各々の持ち場に戻り、成すべきことを成すために動き出した。

 

溜息を吐き、自身の席に座りなおし、引き出しの中から一枚のファイルを取り出し、開いて執務机の上に置き、目を通す。

その報告書はアメリカからであり、戦艦ミズーリについてだった。

 

―――報告

貴国で建造された戦艦ミズーリと思われる艦娘は我々の記録にも存在しない艦であり、そもそも、戦艦ミズーリの個体はこちらでも確認されており、ミズーリと思われる個体との対話で彼女が辿った大まかな経歴を記す。

当初、アメリカでアイオワ級3番艦ミズーリとして建造。

しかし、第2次世界大戦後、霧の艦隊と呼称される超科学力を持った艦艇群が出現。世界の海という海を封鎖。その時、ミズーリは未だ日本の横須賀に停泊していたため、母国に戻れず、日本に留まったままの状態だったが、日本が自国の防衛力が皆無だったことに危機感を覚え、アメリカにミズーリの購入を打診。

アメリカも許可を出し、日本でミズーリの大改装が行われ、近代化の先を行く現代化改装を受け、現在の姿になる。そして、人類の戦力をかき集めた決戦で大戦艦級2隻、重巡級3隻、軽巡級5隻という人類側から見れば奇跡といってもいいほどの大戦果を挙げたが、その代償に国連軍は全滅。

自身も霧の超戦艦級の攻撃を受け、2013年7月13日に轟沈し、意識はそこで途絶える。

再び目を覚ますと、日本の呉鎮守府の造船所(ドック)だった。それから現在に至る、とのこと。

この経歴を鑑みるにこの個体は日本で生まれたと判断し、貴国に返還することに決定された。この戦艦ミズーリを旗艦とした艦隊を日本へ送り、アメリカ本土からのハワイ奪還作戦へ共同作戦として参加されたし。

 

 

と書かれていたが、本音を言うと、面倒事は日本へ押し付けてしまえという思惑が見え見えだった。報告書を捲ると、その下にもう一枚の紙が覗く。その書類には今回日本で建造された戦艦ミズーリの性能を数字で表したものだった。この数字は艦娘のスペックを大まかにだが、表したものであり、各地の司令官や提督はこれを見て艦隊の編成や作戦を練ったりする。

そして、そのミズーリのスペックは現在の大和を遥かに凌駕するものであり、目を疑うべきな数字だった。

 

火力 3000

対空 5000

対潜 300

耐久 4000

運 60

索敵 300

射程 超長

速度 高

 

東山「なあ、大和、この艦娘、どう思う?建造された場に居たのだろう?」

大和「はい?…ああ、ミズーリですか。んん…、私見になりますが、嘘はついていないように思えます。それに彼女の船体に搭載されていた主砲やCIWS、VLSといった現代兵器を配置されていたので、強大な敵と戦ったのは明らかだと思われます。おそらくですが、ミズーリは別世界から来た艦娘と判断できるかと」

東山「そうか、ありがとう。……霧の艦隊、か…。まさかと思うが、マホロバも霧の艦隊に何らかの形で関わっていた可能性も考慮せねばならないようだな……。全く勘弁してほしいものだよ……」

 

東山の予感は正に的中してしまっていることをまだ知らなかった。だが、幸い、ミズーリとマホロバが居た世界の霧の艦隊は全くの別物であった。だからといってもマホロバは霧の艦艇であるという事に変わりは無い為、両者を引き合わせることに対しては慎重にならざるを得なかった。

 

そして、その行先は不幸か、幸いか。天気が急変し、激しい雷雨を伴う暴風雨として窓ガラスを叩き、雷光が東山の顔を照らし、影を作る。大日本帝国海軍が再編されて以来の重大な案件だった。正しく、世界の行く先を決める綱渡りの如く慎重に動かねばならないと再び認識しなおした。

その路は厳しいと告げるかのように増々激しさを増す雷鳴が空気を震わせる―――

 

 

 

 

―――その頃、北極海域では深海棲艦の一群が壊滅状態に追い込まれていた。その海域から命辛々逃れた戦艦水鬼は南方棲姫の支配する海域を目指していた。

 

水鬼「ハァ…ハァ…、一体何ダト言ウンダ…、“アレ”ハ…!」

 

彼女の脳裏には異形ともいえる戦艦だった、否、戦艦と呼べるかどうかも怪しい形状の船だった。双胴戦艦のような形状だが、甲板と呼べるものが一切なく、艦上構造物と一体化した形状の船体が二つ繋がったような異形の戦艦だった。そして何より異形だったのは船体の至る所に目のような部分が点在し、艦娘や深海棲艦に共通するユニットの姿が一切認められず、まるで船体そのものが自我を持っているかのように動いていた。

最初、あれと遭遇したときは妙な船だと思ったが、撃沈命令を下し、指示通り砲撃する部下を見て終わったなと思った。だが、それは全くの思い違いだった。命中したはずの“それ”には一切の傷など無く、反撃にと放たれた何十条ものの光線を受けたかと思えば、瞬く間に部下たちが沈んでいく。本能で逃げろと叫び、船足を反転し、その場所から逃げ出した。逃げている最中に幾度か振り向くと、“それ”から漆黒の雷球が何個も放たれているのが見えた。その雷球はゆっくりとだが、誘導機能でも付いているのか、逃げ惑う部下たちをどこまでも追いかけてくる。しかも、自身たちよりも早い速度で追ってくるのだから逃げられない。周囲にいた部下たちはその雷球を受け、爆散して消え去った。現実離れした光景だったが、ボイラーが悲鳴を上げるのも構わず、一心にその海域から離脱する。気付いた時は既に北極海域を抜け、太平洋へと入ろうとしているところだった。

あれは夢だったのか。…否、この船体の傷があれが現実だったと告げている。兎に角、一刻も早く、仲間たちに北極海域には新たな脅威が現れたと伝えなくては、と一心に南方棲姫が拠点にしているハワイを目指してひたすら進む。

 

 

戦艦水鬼は知らないことだが、この世界とは異なる別の世界、マホロバが転移した世界とも違う世界の兵器の頂点に君臨した“それ”は―――『究極超兵器フィンブルヴィンテル』。

かつて、その世界で古代人が遺した遺産であり、北極に存在した大陸を跡形もなく消し去り、世界に“大いなる冬”をもたらした最悪の超兵器。その兵器がこの世界に現れた。

 

此処に、マホロバが霧の艦艇となったことで狂った世界軸の第一歩が日本で建造された戦艦ミズーリ。第2歩が究極超兵器の出現。増々狂っていくこの世界。だが、幸いなことに究極超兵器は再び眠りに就こうと沈降を始め、北極の流氷が流れる海の底にその姿を隠す。

 

だが、この暗雲が立ち込めるが、眠りに就いた究極超兵器が再び目覚めるのも遠くない日であると伝えている。

再び目覚めたときはこの世界は破滅に向かって転がり落ちていくだろう。かつての第2次世界大戦よりも混沌を極めるのは間違いない事だろう。

 

その中、マホロバは如何にするのだろうか――――――

 




この章はマホロバが現れたことによる大本営の会議の様子をメインにしています。
時雨の司令官である兵零司令官は婚約者を失ったことで憎しみに落ちました。しかし、根本では優しいというのは変わりありません。本文で描写はありませんでしたが、帰投したのちに時雨と神通の供養塔を建てて毎日早朝に墓参りに行って、今までに沈めてしまった艦娘の冥福を祈っています。ですが、マホロバが時雨を曳航している写真を見て、ひそかに喜んでいます。

最期に超兵器の匂いが入りました。まだ当分本格的には動きませんが、雲行きが怪しくなってきましたね。
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