霧に消えゆく超大戦艦   作:霧のまほろば

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遂に超兵器との交戦開始で御座います。

マホロバの選択はかくや?といった模様です。

どうぞご覧くださいませ


14989文字まで行きましたか……


第8話 超兵器の牙

 

 

 

大反攻作戦、開始されたし。

 

世界各国で、時差があるにもかかわらず、一斉に艦隊が動き出した。アメリカからも、アイオワ旗艦にした大艦隊がハワイの奪還へ動き、イギリスも、プリンス・オブ・ウェールズを旗艦にした総戦力がアメリカと呼応して、大西洋の航路の確保へ。ドイツも、フランスと共同して、地中海の解放へ動いた。

同時に日本も、アメリカと共同すべく艦隊を送り出し、ひとまず小笠原諸島の奪還へ動いた。

そして、偵察機を飛ばし、父島の方面と硫黄島方面に敵艦隊を発見した。直ぐさま、東山は空母群に第一次攻撃隊の発艦を命じた。この艦隊には、赤城、蒼龍、飛竜、信濃、大鳳という空母群が存在する。そして、東山の方針で、信濃と、大鳳には、戦闘機は搭載せず、攻撃機、爆撃機のみで編成されていた。赤城、蒼龍、飛竜にも、戦闘機が多いが、それでも、攻撃機、爆撃機を搭載していない訳が無く、総勢200機近い大編隊が敵艦隊を求めて空へ飛び立った。

編成内容をあげると、紫電20機、烈風25機、零戦52型15機。流星改40機、天山30機。彗星33型40機、彗星12型30機の現状最高の機体をできるだけ集めた精鋭たちだった。特に烈風は最近開発されたばかりで、ようやく生産ラインに乗った、正に最新鋭機だった。

 

東山「戦況は如何か?」

赤城『現在我方が優勢!制空権も既に確保しました』

信濃『戦艦2隻小破ないし中破確実、空母3隻大破、2隻中破です!他にも重巡1隻撃沈、2隻大破!小型艦艇にも被害相当だそうです!』

大鳳『硫黄島のほうでも、空母2隻沈没、1隻大破、1隻も中破確実です。ただ、空母に集中したため、その他の艦艇には目立った損傷が出ませんでした』

 

やはり、日本のパイロットは何処か可笑しいのだろうか。

熾烈な対空砲火の中に躊躇いも無く突撃し、敵艦スレスレを飛び回り、狙いを外すこと無く爆弾を叩きつけたかとおもえば、一方では、海面から4mという、レーダーにも映らないギリギリのところを、プロペラが波を掠めるほどにまで高度を下げて、抱えている魚雷を必中距離で放つという離れ業をいとも容易く成し遂げた。だが、筆頭としては、戦闘機だろう。戦闘機は敵艦載機と交戦、制空権を確保するのが役目だったが、既に上がっていた敵艦載機との交戦を始めたかと思えば、ある一隊が交戦を離脱した。

何事かと思えば、真っ先に対空砲火が弾幕を作る中、真っ逆さまに空母の飛行甲板目掛けて急降下して、今まさに飛び立とうとしていた艦載機を飛行甲板で撃破するという常識を覆すことを成し遂げ、発艦を不可能へ追い込んだ。

それだけでは無く、交戦していた烈風はキルレンジ1対9という非常識極まりないことをやってのけた。これは、烈風1機に対し、深海側は9機上げてきたが、それでも烈風を落とすことは敵わず、逆に9機とも撃墜されるということを意味する。

 

航空戦ではこちら側が圧倒しており、敵の空母を集中して攻撃した結果、空母ヲ級は全て空母としての機能を喪失し、戦線離脱を図ろうとしていた。

 

ミズーリ『司令!敵空母が戦線離脱を始めましたが、撃沈してもいいですか!?』

東山「よし、許可する!」

ミズーリ『はい!対艦ミサイル ハープーン斉射!』<シュボボボボッッ!!>

 

大和の後方、空母の輪の真ん中に位置するミズーリの甲板のVLSのハッチが開き、計27発のハープーンが火を噴きながら飛び立っていく。

ハープーンは1隻の空母に対し3発が割り振られている。これは、迎撃を受けても、確実に1発は当てられるようにと戦術を練った結果、3発以上が確実となったのだ。

 

ミズーリを飛び立ったハープーンは、音速巡航を開始し、ミズーリが設定した座標に向けて飛行する。

ヲ級も攻撃を受ける可能性が高いということは理解していたため、身構えつつ、後退していたが、艦載機による空襲が来なかったため、肩透かしを食らった気分だった。しかし、ヲ級の首を狩る死神はすぐそこまで、轟音を轟かせながら迫っていた。

 

巡航を止めたハープーンは、海面すれすれまで降下し、標的を定めると、最終加速噴射を始め、突撃する。

ここで、漸くヲ級も敵襲に気づいて、迎撃を始めようとしていたがそれよりも速くハープーンが着弾した。

1発は既に大穴が開いている飛行甲板を通過して格納庫へ飛び込み、炸裂し周囲にあった魚雷や爆弾を誘爆させて、飛行甲板を丸ごと吹き飛ばして艦橋も爆発で倒壊する。この時の衝撃波で護衛していた駆逐艦の防弾ガラスが砕け散る。

2発目は船尾に着弾し形成炸薬で薄い装甲をぶち破り、機関部を炎で舐めとり破壊し尽くし、推進力を根こそぎ奪い尽くした。これでヲ級は行動不能へと陥り、立ち往生するしかなかった。

3発目が止めとなり、舷側に大穴を穿ち大量の浸水を招き、1発目で失われた艦橋を中心に船体を二つに割って轟沈する。

空母ヲ級が沈むまで僅か8分。他の8隻も同様に沈んでいった。

こうして小笠原諸島の機動艦隊は壊滅し、制空権は完全にこちらのものとなった。

残るのは、戦艦4隻を中心にした打撃部隊のみとなった。これには、大和たち戦艦組が立ち向かう事になった。

 

艦載機は直掩機を残して全てが自身の母艦へと戻り、補給を受けている最中だった。そして、戦艦組の戦意を上げるためにも艦隊戦を行う必要があった。

 

潜水艦による奇襲を警戒してミズーリは残し、日向と伊勢も索敵のために残った。つまり、砲撃戦を行うのは、大和、武蔵、金剛、比叡となった。

敵から見て、横になるように一直線に陣形を組んでそれぞれが己の標的へ牙を突き立てんと向かいあった。

 

東山「距離は如何か⁉︎」

大和「あと800mで射程範囲に入ります!」

東山「敵との距離が3万mを切ったのと同時に砲撃戦を始めろ!戦い方はそれぞれに委託する!」

武蔵『了解だ!』

金剛『了解デース!比叡、行くネー!』

 

ジリジリと迫ってくる敵艦。いずれも砲門が此方を向いておりいつでも発砲できる状態であり、ピリピリと肌を焼くような緊張感が辺り一帯を支配していた。

 

大和「敵艦発砲!」

東山「面舵20度!」

 

敵から発砲光を認めた瞬間、東山が舵を切るように命じ、大和の巨体が緩やかにだが、右に曲がる。

飛来してきたが、大和より後方遠くに着弾し、天高く水柱を立てる。

 

大和「距離3万を切りました!」

東山「砲撃戦始め!」

<ドゴォオォンン……!!>

 

瞬間、激烈な閃光が視界を照らし、猛烈な轟音が轟き渡る。

砲撃の振動が心地よく、心を昂ぶらせる。

 

大和「初弾、近、夾叉、至近弾!」

東山「修正!次の砲撃から全力斉射に移れ!」

大和「了解!斉射始め!」

 

<ドゴォン…ズドォオン…>

 

爆煙でよく見えないが、武蔵の方からも殷殷と砲声が聞こえてくることから順調にあると判断できた。

 

金剛『バァアアニングゥ…ラァアアアブゥウウッ!!』

比叡『砲撃始めぇ!』

 

金剛と比叡は2隻で一隻の戦艦を集中して攻撃するようで、砲門の向きが同じだった。

 

大和「着弾、2!」

 

2発の砲弾が命中したようで、煙突基部に爆炎が踊り、多数の破片が宙を舞って、海へと落ちる。再び敵から閃光が光ったかと思えば、先ほどよりも木枯らしのような音が近く聞こえ、条件反射で着弾に身構えた。だが、命中ではなく夾叉だった。しかし、敵艦も照準を定めてきたようで次の砲撃からはいつ命中しても可笑しくなかった。

 

東山「ッ!」

<ザバァア…!!

大和「敵弾夾叉!司令、対ショック姿勢を!」

東山「分かってる!儂の事はよい、お前は自分の為すべき事を成せ!」

大和「はい!」

 

再び鮮烈な閃光が視界を覆う。

そして、轟音とともに、艦橋の床が震える。

砲弾を放ってから着弾までに十数秒。そして、その間に、大和と敵艦との距離は縮まってくる。

 

大和「2万m切ります!……着弾、今!」

 

敵艦の二つの砲塔に二つの紅蓮の球が生まれ、箱型の何かが弾け飛んだように、宙を舞って水柱を立ち上げて海面に消える。

 

東山「如何やら敵の主砲二つ潰した様だな。取り舵90!」

 

前部主砲を全て潰した事で、こちら側が有利になった。だからこそ、一気に叩くために、頭を押さえるべく左舷に急旋回して、3基ある主砲で叩けるようにする。

その瞬間、敵の命運は途絶えたと言っても構わないのかもしれないし、大和と向かいあった時点で、この艦は沈むと決められていたのかもしれない。

 

ともかく、2万mを切れば、大和にとってもはや掴みかかるに等しい距離であり、外す確率は格段に低い。

 

<ドゴォオォン!!>

 

結果として、大和の放った9発の砲弾のうち5発が命中し、その瞬間艦橋が派手に倒壊し、全体を真っ二つに割ってゆっくりと沈没していった。

 

東山「他の皆は如何だ?」

大和「武蔵ももう直ぐ終わりそうですね。金剛と比叡も一隻を沈めて、次の標的へと砲撃しているようです」

東山「ふむ、此処から金剛たちが戦っている場まで届くか?」

大和「およそ3万7000mですから、射程範囲内ですが命中率は下がりますよ」

東山「ふむ、それでも牽制にはなるだろう。武蔵を支援しつつ、金剛たちと合流できるように前進」

大和「はい、了解しました。武蔵、援護するわ」

武蔵『む?そちらはもう終わったのか?私の方もあと2、3発命中すれば沈むだろう』

 

武蔵のいうように、武蔵が戦っていた相手は既に、艦橋の半分を吹き飛ばされて、浸水も発生しているのか、大きく傾いていたが、なんとか浮力を残しているといった様子だった。

 

 

これに驚いて肝を冷やしたのは、サウスダコタ、ニューメキシコたち、アメリカ艦隊の艦娘だった。

途轍もなく高められた砲撃の命中率、そして、46cm砲というアメリカから見て、想像も出来ない大口径の主砲から放たれる一発。それを組み合わせたのが今の大和に武蔵の砲撃戦だ。もしも、この大和と武蔵とアイオワが衝突すれば、大和側の勝ちに収まるだろうという事は容易く想像できた。

 

サウスダコタ『ありえないわ…、大和と武蔵と正面切って戦う事にならなくて、良かったわね……』

ニューメキシコ『確かにそうデスネ。まぁ、私タチは、マホロバと戦って……イエ、あれは戦闘じゃありまセン、一方的な展開でしたカラ……』

サウスダコタ『そうね……、マホロバの戦闘力はあの時から可笑しかったものね』

 

遠い目をして、昔、マホロバに沈められた頃を思い返して懐かしむ。

彼女たちにマホロバに対する憎悪の感情は既に無く、あるのは、戦艦の頂点であるマホロバへ尊敬や憧れの感情だった。

 

 

そして、それから少しして、気づけば、小笠原諸島付近の海域から深海棲艦の姿は確認されず、海域の奪還が成し遂げられた事を表すかのように、分厚く立ち込めていた曇天に幾筋もの光が差し込んできて、辺りを明るく照らす。

 

日本艦隊、ついに小笠原諸島奪還を成し遂げたり。

この海戦では目立った損傷は少なく、至近距離で撃ち合った比叡と金剛が数発砲撃を受けたが、中破に止まったのみになった。大和と武蔵は殆ど命中弾を受けず、無傷のまま海戦に勝利していた。

小笠原諸島を奪還した東山達は次の標的であるグアムへ向かうべく、陣形を整えて南下を開始した。

 

 

 

時間は自由なり。どこにも存在すれば、敵、味方になるかすらも自由。全ては時間の気紛れで決まる。

 

〈ゴロゴロゴロロ……〉

 

その海域は、荒れ狂うかのように大きく波打ち、上下にうねる。滝のように激しいスコールが打ち付ける。時折暴風が強く吹き付け、漁船ならば、転覆は確実、駆逐艦も危うい程の大自然の猛威を振るっていた。

そんな猛威のなかを何ともせず、高くうねった波を突き破り、甲板へ大量の海水が打ち上げられるのを気にせず、最大速度で疾走する漆黒の巨大な弾丸。ーーーマホロバだ。

今、マホロバが出せる速度は、飛行せず、海面を進むのみに限るならば、400ノット。時速に変えれば、約740kmの速度だ。

当時日本最高峰の戦闘機烈風でさえ、624km程度、試作の震電も740kmで、マホロバとほぼ同じ速度だ。しかも、兵装を一切積んでいない状態で測定したものである。

何が言いたいのかというと、あくまで“水上艦”であるマホロバが航空機である烈風や、震電と同等以上の速度で動けるということだ。

どれほど可笑しいか分かるだろうか?

 

例を挙げてみよう。水泳の経験がある方ならお分かりだろうが、水の抵抗力は相当なものだ。人ならば、水着を水の抵抗が少ないものに変える、水に接する面の体毛を剃る、泳ぐときのフォームの矯正などが挙げられる。それは水上艦でも同じこと。それに、人とは比較にならないほどの膨大な質量を持つ艦船が30ノットを超えるか如何かで、様々な工夫、大出力のエンジンの開発に苦労して来たのか想像出来るだろう。大和型戦艦ならば、バルバスバウ、艦首の喫水線以外が大きく膨らんだ形状が挙げられるだろう。これは、艦首に掛かる負荷を分散して、受け流すことで、水の抵抗を低めるという考えがあった。う一説によると、このバルバスバウが無ければ、25ノットに落ちていただろうという説もあるほどだ。

 

だが、霧の技術は現存するありとあらゆる技術を遥かに凌駕するのだ。

そこに、マホロバというイレギュラーが混ざった事で、それはさらなる飛躍を見せた。

マホロバはそれまでの霧の艦艇、超戦艦クラスにすら投入されなかった最高峰の技術も惜しみなく投入されたのだ。

タナトニウムエンジンもヤマトに搭載されているタナトニウムエンジンと比べ、20%性能が上がっている。それだけではなく、宇宙での活動を視野に入れた波動縮退炉エンジンも新たに搭載されている。

そして、マホロバは巨大な船体にも関わらず、恐ろしい程小回りが利く。何故か?それは、船体の至るところに設けられた大型スラスターが推進だけではなく、舵の役目も果たしているのだ。そのため、マホロバは400ノットの圧倒的な速度の中でも駆逐艦並に小回りが利くのだ。

 

 

閑話休題。

 

ともかく、マホロバは、リーガルを出撃し、急激に速度を増し400ノットで荒れ狂う大波を切り裂きながら猛進していた。時折大きく水位が下がって船尾が露わになると、装甲壁が展開されて中から迫り出した大型スラスターが確認出来る。菱形のような形をした大型スラスターから漏れ出たエネルギーが稲妻となって迸り、海水を蒸発させて、大量の蒸気を発生させる。

だが、それすらも置き去りにして、後方に天高く立ち上る水柱が壁のように聳えるが、気にせずマホロバはグアムを目指す。

理由は、やはり先ほどレーダーに引っかかった、超高速巡洋戦艦ヴィルベルヴィントが真っ直ぐグアム方面を目指しているからだ。それも、80ノットという従来の艦艇を優に超える速度でだ。この速度は、人類最強の戦艦であるミズーリをも超えている。

人という生き物は、想定外の事が起きると、思考を放置してしまうというという弱点がある。

東山は確かに百戦錬磨の老将で、滅多に驚かないだろうが、何処に、80ノットという速度で急襲してくるのを想定している司令官がいるだろうか。

そして、マホロバにとって、東山たちは先の大戦を共に戦った掛け替えの無い大切な仲間だと認識していた。だからこそ、失いたく無い。

そんな思いがマホロバを突き動かしていた。

 

 

 

加賀『司令、マホロバらしき艦影が動いたわ。前に知らせた不明艦を追っている様よ。………ただ、その…』

東山「如何した?お前が口ごもるとは、それほど不味い事態なのか?」

加賀『いえ、マホロバの速度なのだけれど、……推測400ノット程…だそうよ』

 

加賀が口ごもる様子を見て、良く無い事態が発生したのかと思っていたが、想像外の返答が来て、言葉を失うこと以外何もできなかった。

 

ミズーリ『えっと…、あの、加賀さん?計算間違いとかじゃ…?』

加賀『貴女が疑問に思うのも確かよ。でも、これはこちらにいる科学者や、妖精さんがありとあらゆる角度から推測しても、最低380ノット、最高450ノットと出たそうよ』

武蔵『400ノットだと…。それじゃ、まるで………航空機並では無いか…?』

 

顔を引きつらせたミズーリが聞き直すも、加賀も頭が痛いのか、こめかみに手を当てて揉みくだしながらも、そんな速度が出た推測の結果を伝えた。それに対し、武蔵が茫然としながらもなんとか繋いだ言葉はここにいる全員がそう思ったことだった。

 

大和「マホロバと、不明艦の距離、速度を計算しても、やはり、グアム到着に重なりますね、もしかすれば、戦闘に巻き込まれる可能性も否めませんね…」

 

一方、大和は唖然としたものの、直ぐさま気を取り直し、この艦隊と、マホロバ、不明艦の速度と距離を照らし合わせてみた。その結果、グアムが艦載機の航続距離に入った頃に接触する頃に、マホロバと不明艦も到着することになる。

だからこそ、戦闘に巻き込まれるかもしれないという大和の想定は至極普通のものだった。

だが、大和の艦橋の中は沈黙に包まれていた。通信モニターの向こうにいるミズーリや、武蔵たちのみならず、呉鎮守府で待機していた加賀、長門たちも顔を強張らせて沈黙していた。

 

大和「え?あれ、あの?如何して黙っているのですか?」

東山「大和…、もう忘れたのか?マホロバの火力を。あの深海棲艦の群を消滅させた異常な火力を」

大和「……あ…!」

 

大和の脳裏に浮かんだのは、マホロバが戦闘している様子をとらえた監視衛星からの写真だった。

赤い光線がマホロバの主砲から放たれたかと思えば、深海棲艦の群が消滅したのみならず、大量のミサイル。

これがあの不明艦に振るわれると思うと、哀れに思うも、否応なく巻き込まれる可能性が高いと思うと、憂鬱な気持ちにさせられた。

 

東山「思い出したか?うむ…、艦隊の針路を変更。グアムの北東方面に針路を向けろ。グアムを挟んで反対側ならば、戦闘に巻き込まれる可能性も幾ばくかは下がるだろう」

大和「了解!針路130へ変更。変更まで5秒前。4…3…2…1…今!」

 

今まで艦隊は北西からグアムに近づいていたが、戦闘に巻き込まれる可能性を下げるためにマホロバたちが向かってる南西方面から反対側になるところに移動しようという考えなのだ。

そして、艦隊旗艦である大和が各艦に号令を下すと、一糸もぶれず、綺麗に艦隊はグアムから見て東北方面に針路をとる。

 

 

マホロバも、呉鎮守府の艦隊が針路を変更して、グアムの反対側に移動したのをレーダーで捕捉しており、東山の考えが理解できたので、ふっと笑みを浮かべ、もう一つレーダーで捕捉している標的を見据える。

じりじりと距離が迫ってくるも、まだまだ遠い標的、超高速巡洋戦艦ヴィルベルヴィント。マホロバの射程範囲内にヴィルベルヴィントを捉えるまであと8時間ほどだった。しかし、その頃には既に、大和が推測した通り、グアムに到着している。そして、ヴィルベルヴィントが何を標的にして動いているのか全く分からなかった。

強大な力を持つ敵が目的を何にしているのか分からないまま動いているのはこの上なく不気味なものだった。

 

再びレーダーを見た途端、マホロバの血相が変わり、強制的に呉鎮守府の大和へ通信を繋ぐ。

 

 

大和「!? 司令!通信が入っています!」

東山「何!? 誰だ?」

マホロバ『こ……ら…マ…ロバ。応…され…し。そち…に、巨…な潜水…の影…ある。注意…れ…たし』

 

酷くノイズが入った映像が流れ、切れ切れに言葉が語られるが内容が良く分からなかった。それに起こった異変はそれだけじゃなかった。

 

大和「なっ!? そ、そんな!?」

東山「如何した!?」

大和「電探やソナーにも異常発生!他艦との通信も繋がりません!」

東山「慌てるな!発光信号で連絡を取り合え!もしかしたらミズーリなら無事な可能性が高い!」

大和「はい!【我 大和。ミズーリに問う。索敵機能は無事なりや?】」

ミズーリ「【こちらミズーリ。此方も全滅。敵襲の可能性高。注意されたし】」

 

それぞれに搭載されているサーチライトを用いて発光信号である程度の現状を把握する。

結果としてやはり、全ての電探やソナーも全滅。ただ、一つ無事だったのは聴音系のソナーだという事が判明した。だが、それを積んでいるのは駆逐艦のみだったため、状況は芳しくない。戦艦にもかつては搭載されていたが、現在では音波探針のソナーに積み替えられており、聴音系のものは下ろされていたのだった。

 

東山「ううむ…、さっきの通信に“潜水”という単語が辛うじて聞き取れたが、潜水艦による敵襲の可能性が高そうか?」

大和「先ほどの通信、恐らくマホロバです。戦術的には可笑しいと思いますが、現状、周囲に敵性の艦影らしき影は認められないと偵察機の報告がありますので、潜水艦の可能性が高いと思います」

東山「やはり、マホロバか……。如何やら彼女は我ら側のようで一安心だ。―――む!?」

マホロバ『こち…、マホロバ。応答せ…。こちら、マ……バ。聞こえる…?そちら…艦隊後方に潜水艦ら…き影…認め…!襲撃の動きは無さそうだが、いつ動いて…おかし…ない。警戒を…大限に…げろ』

 

いきなり通信モニターにさっきよりもノイズが幾分和らいだようで時折だったが、マホロバらしき姿を認めることが出来る。

 

大和「こちら大和!聞こえる!?マホロバ!」

マホロバ『大和か!? 丁度いい。早速本件に入ろう。気付いているだろうが、お前たちの電探やソナーに異常が発生しているだろう?』

大和「ええ、ただ、聴音系のソナーは無事だったようだけど……」

マホロバ『それはそうだ。このノイズはデジタル系の機器に影響を与える特殊な電磁波を放つ機関によるものだ。ただ、この電磁波には波があるのが分かっているから、私の方でその波に合わせて周波数を変動させているから、ノイズにも影響されずに今こうして通信できている訳だ』

 

この電磁波は超兵器に搭載されており、超兵器が超兵器たる矜持を持たせている“超兵器機関”と呼ばれるものから発生する電磁パルス波によって、電子機器に悪影響を与えている。現在はマホロバが周波数を変動させて電磁波の波と合うように調整していることで問題なく通信できているが、やはり、応急凌ぎのようなもので、調整できるのは現在通信している大和しかできないという。全艦がノイズに対応できるようになるにはそれなりの設備を整えないとならないだろう。

 

東山「―――久しぶりだな、マホロバ」

マホロバ『東山…か?随分と老けたものだな。私に乗っていた時はなりたての下士官だったお前が今や、元帥になっているものだから時の流れを殊更感じてしまうものだ』

東山「ははは、そうだな、あの頃が随分と懐かしく感じるものだ。…それで、先ほどの潜水艦とはどういうことだ?」

マホロバ『ふむ……、潜水艦だけではなく、そちらに急行している超高速の戦艦が居るのは気付いているだろう?それらを纏めて表す言葉を超兵器。正式名称は超常兵器級と呼称されるモノの略称だ。その名の通り、従来の軍事的、物理的な考え方を根本から覆した性能を誇る兵器だ。ああ、私たちのような霧と似たようなものだが、霧とは全く違う進化を遂げた存在だ』

東山「超兵器……。そんなものが実際するとは……。信じがたいものだが、監視衛星で捉えた超高速で進む艦影を見るからに信じざるを得ないだろう」

マホロバ『こちらにあるリストと照合した結果、そちらに向かっているのは超高速巡洋戦艦ヴィルベルヴィント、超巨大潜水艦ドレッドノートの2隻で間違いないだろう』

大和「その2隻のスペックは分かりますか?」

マホロバ『ああ。“ヴィルベルヴィント”は全長254m。全幅41m。最高速度は80ノット。兵装としては28cm75口径3連装4基を主兵装に、48cm5連装酸素魚雷発射管4基、48cm5連装誘導酸素魚雷発射管2基。その他に超怪力線照射装置4基、対空パルスレーザー4基のほか多数の対空砲火器、多目的ミサイルVLS150基。“ドレッドノート”の方は全長290m全幅54m。水上航行時42ノット。46cm55口径2連装2基、61cm6連装酸素魚雷発射管2基、58cm誘導酸素魚雷発射管2基、多弾頭ミサイルVLS20基、30mmバルカン砲6基……こんなものだな』

 

通信モニターでやれやれと溜息を吐くマホロバ。確かに、従来の兵器を遥かに超える性能を誇るものばかりだ。思わず眩暈がしそうになり、こめかみに手を当てて思索するがこれと言った策が見当たらないことで頭痛が更に加速する。

 

東山「……ちょっと待て、まさかとは思うが、超兵器はこの2隻だけではあるまいな?」

マホロバ『ああ。この2隻は超兵器の中でも下も底辺辺りに位置する超兵器だ。最上位になると大陸を丸ごと消し飛ばせる兵器を積んだ超兵器がゴロゴロしている。極めつけは地球に氷河期を及ぼしたとさえ言われるほどの超常事態を引き起こしたとされる究極超兵器も存在する』

 

マホロバが言ったのは“摩天楼”、“大いなる冬”、“海竜”など、上位にある超兵器の事を指す。

荷が重すぎる事態にぶち当たり、思わず、目を瞑って溜息を吐きたくなるほどに東山は追い詰められていた。いっそのこと現実逃避してしまいたいとさえ思ってしまうほどに。だが、事態はそんな甘えを許してくれなかった。

 

マホロバ『―――なに?そうか…、分かった。……東山、悪い知らせだ。ハワイ奪還に動いたアメリカ太平洋艦隊が壊滅したそうだ』

東山『―――なっ…、何だと!? そんなまさか…、いや、此れも超兵器なのか…?』

 

ハワイ奪還に動いた総勢78隻という大艦隊が壊滅。

リーガルがレーダーで戦況をリアルタイムで観測していたため、確かなことだ。アメリカの大艦隊の前に現れたのはシンガポールより急襲してきた“超高速巡洋戦艦シュトゥルムヴィント”、ハワイより南から飛来してきた“超巨大爆撃機アルケオプテリクス”、“超巨大爆撃機ジュラーヴリク”だった。さらに、その遥か後方には“超巨大強襲揚陸艦デュアルクレイター”、“超巨大要塞艦ストレインジデルタ”、“超巨大氷山戦闘空母ハボクック”がその圧巻の艦容を海洋へ浮かべており、視界という視界全てを覆い隠していた。

 

正に超兵器の艦隊。超兵器単体でさえ厄介な戦闘能力を併せ持つというのに、そんな超兵器が艦隊を組んで動くなど、最悪以外の何物でもなかった。

アメリカ太平洋艦隊は急襲してきた“シュトゥルムヴィント”、“アルケオプテリクス”、“ジュラーヴリク”にまともな抵抗も出来ずに、大損害という言葉すら生温いほど絶望的な惨敗を出して撤退し、後に残ったのは赤く染まった海に浮かぶ無数の破片と漂う重油に火がついて燃え盛る炎に照らされて、不気味に浮かぶ超兵器のみだった。

戦艦7隻、軽空母を含めて13隻の空母、重巡9隻、軽巡11隻駆逐艦13隻を失い、かつて総勢78隻を誇った艦隊は生き残りが僅か25隻のみが辛うじて超兵器の追撃から逃れてサンフランシスコへ辿り着いた。だが、辿り着いた生き残りも深く損傷しており、しばらくはドックに居なければならなかった。さらに、逃れた艦娘も、何かに怯えるようになり、海を見ただけで取り乱すほど重大な精神障害を来たしてしまい、自害、解体を望む艦娘が続出し、事実上ハワイ奪還に動いたアメリカ太平洋艦隊は全滅。辛うじて、呉鎮守府に向かい、大和たちと行動を共にしていたサウスダコタ、ニューメキシコら、そして、サンフランシスコに残してきた最低限度の戦力のみとなった。

 

更に言うならば、アメリカ太平洋艦隊が壊滅したことによって、この作戦は事実上失敗。このままグアムへ向かうのは限りなく危険なことだった。太平洋一帯の海域は超兵器の出現によって、艦娘と深海棲艦で釣り合っていた均衡が脆くも崩れ、いつ、超兵器の襲撃を受けてもおかしくない。だから、今すぐにでも引き返さなくてはならなかった。

苦渋の表情を浮かべる東山たち。それも仕方がないだろう。人類はこの大反攻作戦のために6年ものの年月を費やして準備を進めてきた。それには途方もない努力、血の涙と結晶があり、何としても、この作戦は成功させなくてはならなかったのだ。だが、それをこの場で放棄するしかなかった。このまま、この海域に留まれば、超兵器の襲撃を受けて、壊滅するのが目に見えていたからだ。

 

東山「………大和。無念だが、作戦中止。此れより我が艦隊は……日本近海まで全速力で撤退する。…その旨を発光信号で全艦に通達!」

大和「……了解です。【我 大和。全艦に告ぐ。作戦中止。此れより全艦は反転し、27ノットの速力で日本近海まで撤退する。繰り返す―――】」

 

無念の涙を零しつつも発光信号で全艦に告げる。やはりと言うべきか、艦娘に動揺が走ったのが雰囲気で分かる。各々この現状で異変を感じ取ったのだろう。だが、長年練ってきた作戦をこの段階で中止にするとは信じられなかったのだ。すぐさま赤城から発光信号で疑問が投げかけられた。

 

赤城『【こちら赤城。作戦中止の理由を告げられたし。如何なる理由で作戦中止を言い渡せりや?】』

大和「【我 大和。米太平洋艦隊壊滅の急報有り。単艦隊でグアムおよびハワイ奪還の望み絶無。よって撤退。詳細は通信可能な海域まで離脱で来た時に告げる】」

 

理不尽だろうが、現状ではこの海域をいかに早く離脱できるかどうかでこの艦隊の命運が掛かっている。だから、悔しくても、今は撤退するしかなかった。大和の言葉で疑問の発光信号も収まり、悔しくて唇を噛む一同の姿が容易に想像できた。

 

大和「【我 大和。全艦10秒後に前頭艦を始めに反転し、此の海域の離脱を図る】」

 

不意の作戦中止に動揺していても、厳しい訓練を積んだ艦娘たちだ。艦隊機動を誤ることも無く一糸、乱れることも無く綺麗に反転してグアムから遠ざかっていく。

 

マホロバ『今回は仕方がないと諦めるしかない。だが、生きて帰ればまたグアムへ出撃できるんだ。死ねば、その路はそこで途絶えるんだ。…今は情けなくて悔しいだろうが、生きて帰ることを第一に考えろ!』

 

やはり、第2次世界大戦から現代まで最前線で戦い続けた超大戦艦はいう事が違う。積み重ねてきた経験が段違いに膨大だ。

そして、何より、マホロバの一喝は下士官時代から良く聞いていた上官のものと似ていた。だからこそ、東山はグアムに対する未練を断ち切って、艦隊に所属する全ての艦娘が生きて帰れることを第一に考えるようになった。

 

 

―――東山の覚悟を嘲笑うかのように海魔はその牙をむき出しにする―――

 

 

マホロバ『不味いな…東山!対潜警戒を最大限に上げているか!? “ドレッドノート”が動いたぞ!』

東山「このノイズで聴音系以外死んでいる!」

マホロバ『この動き―――…!武蔵が狙いだ!』

 

〈ドゴォオオォ…!!!〉

 

―――遂に海魔はその鋭利な牙を突き立てた―――

―――後は腸を引きずり出し血肉を啜るのみ―――

 

大和「武蔵ぃー!」

 

武蔵の左舷側に天高く立ち昇る水柱が数本上がり、武蔵の姿が崩れ落ちた水柱に包まれて一時的に見えなくなる。

 

〈ドドォオオン…!!!〉

 

東山「日向!伊勢!」

 

次は武蔵の近くにいた日向と伊勢に水柱が上がる。東山の脳裏に最悪の事態が浮かぶ。武蔵と伊勢と日向の喪失だ。マホロバの話通りだとすれば、ドレッドノートが搭載する兵器は従来のものとは一画を描いている。今回の攻撃も魚雷攻撃だろうが、超兵器による攻撃だ。常識内に収まる筈が無い。

 

水柱によって立ち込めた水飛沫が晴れると、左側に大きく傾斜した武蔵、日向、伊勢の姿があった。如何やら沈没は免れたようだが、大破まで追い込まれているのは確実。

 

武蔵『【武蔵だ。済まない、魚雷攻撃を受け、現状では8ノットしか出ない】』

日向『【こちら日向。艦首側に大量の浸水で前進が出来なくなってしまった。後退で11ノットだ】』

伊勢『【こちら伊勢。左側のスクリューと舵が吹っ飛んじゃったみたいでうまく動けないよ。出せても13ノット辺り)』

 

魚雷を受けた3隻から挙げられた報告は最悪こそ免れたが、それでも非常に悪い事だった。特に一番痛かったのは武蔵が現状で出せる速度が8ノットだという事だ。後方から迫ってきている“ヴィルベルヴィント”から少しでも早く離れないとならないというときに8ノットしか出せないという事はかなり不味い事だった。

 

武蔵『【武蔵だ。私の事は構わず先に行ってくれ。大破していてもそう簡単には沈んでやらん。多少は足止めできる】』

大和『【司令からよ。此処にいる全員は私の大切な部下だ。一隻たりとて欠けることなく生きて帰ることを信念にしている。だからこそ、お前を一人残して帰還することなど出来ようが無い。もう少し耐えれば、マホロバが到着するはずだ。何としてでも耐えろ!】』

武蔵『【済まない。……世話を掛ける】』

 

悔しげに顔を歪ませる武蔵。だが、その表情には安らぎもあった。今まで信頼してきた司令がこんな絶望的な状況になっても仲間を斬り捨てるという考えは最初から存在しないという事に安心を覚えてしまったのだ。だからこそ、謝罪と感謝の意味を込めた言葉だった。

 

暁『【こちら暁!潜水艦らしき影浮上中!】』

蒼龍『【蒼龍です!偵察機の報告で“ヴィルベルヴィント”と思わしき艦影、我が艦隊と接触するまであと20分!】』

マホロバ『到着まで30分―――いや、5分だな』

 

それはどういう意味かと聞きたかったが、その前に通信が切れてしまった。30分と5分の違いは大きい。だが、その差を事も無いように言い切ったマホロバに疑問を覚えたが、此処でふと思い出したのはマホロバは霧の技術を得ているという事を。

再び我らの常識を覆す方法で此処にやってくることだろう。どんな方法で来るのかと不安げながらも期待が入り混じった表情を浮かべていた。

 

 

 

マホロバ「到着まで30分―――いや、5分だな」

 

何故か、マホロバは400ノットから一気に0まで速度を落として完全に停船する。何事かと思えば、マホロバの周囲に異変が起こった。

 

〈ズ…ズゴゴゴゴ……!!〉

 

―――海が割れた。

遥か水平線上にまで届くのではないかと思えるほど遠くまで一直線に割れた。そして、マホロバはその割れて現れた空洞に浮かんでおり、その漆黒の船体にはまぶしく光り輝く黄金色の文様が浮かんでいた。

 

マホロバ「―――タナトニウムエンジン稼働率80%―――。90……100……110%!超重力波展開」

 

〈キィイィイイ……〉

 

マホロバの目の前の空間に一直線に5重に重なった金色の粒子で造られた輪が展開される。そのリングはそれぞれ時計回りと逆時計回りに高速で回転を始め、膨大なエネルギーを蓄え始める。そして、辺り一帯の重力が変動し、5つの輪へ向けて海水が巻き上がり、リングの周りを廻り始める。

 

マホロバ「メンタルモデル解除…。〔波動縮退炉エンジン20%にまで稼働開始、スラスター、ブースター全機展開。強制波動装甲展開〕」

 

カシュンと軽快な音を立てて船体各部へ設けられているスラスターの装甲壁が最大限にまで展開され、スラスターが船体からはみ出すように展開された。それだけではなく、船底一帯にあるブースターの装甲壁がスライドしてその姿が露になる。すぐさま、青白く噴出する炎が見え、スラスターにも光が灯る。そして、艦首側に強制波動装甲――クラインフィールドが騎乗槍のように円錐状に展開される。

そうなったらマホロバの準備は完了だ。

 

マホロバ「〔超重力加速砲用意完了。―――発進!〕」

 

〈ヴォオォオオッ!!!〉

 

スラスターが、ブースターが吼え、マホロバの船体をリングの中心へ押し出す。すると、リングから発生する超重力の鎖に引っ張られ、リングの中へ連れていかれる。

 

〈ゴゥォオオンッ!!!〉

 

リングへマホロバの艦首が入ったかと思えば、一瞬でその姿が掻き消える。―――否。消えたかのように錯覚するほどの加速で飛び去ったのだ。

 

マホロバがやったのは、原理としては超電磁砲と同じこと。超電磁を超重力へ置き換え、弾丸を自身へ置き換えただけの事。だが、このとき使用されたエネルギーは超電磁砲とは比較にならないほど膨大なものだった。極端なたとえをするが、超電磁砲を警察が使うようなハンドガンとする。それに対し、マホロバが行った超加速は巨大隕石――アルマゲドン並のエネルギーとなる。実際はそれよりもはるかに差があるエネルギーではあるのだが。

下手すれば、同じ霧の艦艇、超戦艦クラスでも、制御を誤れば、重力子の崩壊を起こし、地球の3分の1が原子崩壊を起こして消滅するほど危険な代物だった。だが、マホロバの持つ演算素子は超戦艦と比べるのも馬鹿々々しくなってしまうほど差があるのだ。だからこそ、マホロバはそれほどの代物でさえ、意図も容易く制御しきった。

本来ならば、超遠距離を攻撃するときに使われる方法であり、超戦艦でさえ使わない方法だが、マホロバはそれを関係ないとさえ使うことが出来るのだ。

 

―――これが先ほどマホロバが到着するまでにかかる時間を言い直した理由。何故5分だったのかは今の方法を使うための準備にかかる時間がその辺りだったからだ。

 

かくも、マホロバはジェット戦闘機でさえ容易く超える速度3700ノット(6882km/h)という驚異的な速度で弾丸となって飛んでいく。

 

―――手の届く範囲で仲間を2度と失わないと決めた覚悟、それを実行するために飛ぶ―――

 




アメリカ太平洋艦隊はほぼ壊滅しました。

此処で捕捉ですが、今回出た『超巨大氷山戦闘空母ハボクック』は鋼鉄に出る”超巨大氷山空母ハボクック”ではありません。
架空戦記の一つ「氷山空母を撃沈せよ!」に登場するトンでも兵器です。全長1700m、全幅400m基準排水量859万9500トン、搭載機数1000機以上を誇る巨大な要塞とも言える氷山空母です。兵装については本編で紹介していきます。

……このハボクックでさえリーガルには遠く及ばないというのですから、やり過ぎちゃったと思い始めています…(笑)
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