Fate/Children【改稿中】   作:.副会長.

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お久しぶりです 副会長です

なんでしょう、書くのが疲れてきました。終わりまで話の流れは考えられているのですが、それを形にするのが大変です




〜聖杯戦争〜 7月01日11時10分

"無"は声の主を探した。

 

自分の名前はおろか自らが何なのかも分からなかったが、その声は己へのものだと確信していた。はっきりと此方への意思を持った問いかけだったからだ。

 

言うならば、人混みの中で名前を呼ばれたのと同じ感覚。相手が誰なのかも、何処にいるのかも判らないが振り返る。そんな動作。

 

しかし。"無"が探し求める相手も、未だ"無"の状態だった。人間が己の顔を見ることが出来ないように、"無"もまた、自身と同一の"無"を見つけ出すことはできない。

 

声をかけられた"無"には、自らの姿を映す鏡が必要だった。

 

 

----------

 

 

「……変わった宝具だな」

 

アサシンのマスター、ナータン・ビルンダウムは自身の魔術工房の中で双眼鏡を下ろして呟いた。セイバーとランサーの戦闘が終わって直ぐのことである。

 

気取られぬように使い魔ではなく双眼鏡を用いていたのだが、それは彼の予想以上に役に立っていた。使い魔からの映像では、あの奇怪な剣を間近で観察する事は出来なかっただろう。

 

片手で扱うには少し大きい、青く輝く両刃の剣。

 

「青銅剣か…古代中国の、いや、あの鎧姿から考えるに日本の英霊か…参ったな。あんな島国の知識なんて無いぞ」

次のターゲットをヨハンに決めてから数日、彼はこの工房からラインスドルフ家を監視し続けている。

 

なぜ、他マスターの直接殺害を得意戦法とするアサシンのマスターが、敵サーヴァントの正体を探っているのか。

 

彼は完璧を計画する。たとえ自身の英霊が優秀だとしても、所詮はアサシン。マスターの暗殺に失敗し、サーヴァントとの戦闘になっては勝ち目はないと言っていいだろう。

 

だからこそ、僅かでも行動時のリスクを減らすために、彼は敵の全てを調べるのだ。

 

暗殺成功率を上げるためにマスターのクセや生活リズムを観察し、隙を見つけ出そうと、英霊のステータスや宝具を暴く。

 

そのために延々と思考を巡らしていた彼が、気怠げに後ろを振り返った。

 

「アサシン」

 

「承知」

 

短い呼びかけでアサシンが霊体化を解く。直後に工房の壁を突き破ってきたのは一本の矢。

 

それに向けて勢いよく踏み込み、英霊は手持ちの短剣を振った。

 

瞬。たった一度の軌跡で、20もの破片に分解された"かつて矢だったもの"が工房内に散らばる。

 

別段、彼がナイフ使いの達人というわけではない。短剣は確かに一度しか矢に当たっていないし、当ててもいない。

 

そう、一撃。彼の持つ短剣は、たとえそれがかすり傷であれ、一度の斬りつけで二十の追撃をする"宝具"なのだ。

 

アサシンが矢を撃退しているその間に、ナータンは革手袋をはめていた。刻まれているのは硬化のルーン。

 

「アーチャー…俺の知らないマスターの襲撃ってわけかな」

 

彼は革手袋のつけ心地を確かめるように、手首を振ってからアサシンに指示を出した。

 

「予定変更だ。先にアーチャーのマスターを殺す。マスターの名前もどんなサーヴァントかも知らんが、言ってある通りに動いてくれればそれでいい」

 

「わかった」

 

呟くように返事をした後、アサシンは勢いよく工房を飛び出した。身に纏ったトーガをはためかせ、森を駆ける。

 

と、そこに。

 

3本。木々の隙間を縫うように真横から放たれた矢を、身を屈めて避けながら急停止。射線から推測される位置へ再び走り出した。

 

 

一方、ナータンはガサガサと音を立てながら茂みをかき分け、ゆっくりと歩んでいる。。

 

彼が考えていることは3つ。敵の位置、敵の行動、敵の真名。

 

歩きながらその頭脳を回し、周囲を伺う。 ナータン・ビルンバウムの真骨頂、高速にして分割された、思考能力。

 

「…ふむ」

 

解は出た。少々腑に落ちないものではあるが、あとは敵を屠るのみだ。アサシンとは真逆の方向から、回り込むように歩を進めて行く。

 

歩きながら首を回し、拳を強く握りしめた。ギュ、と革手袋が締まる音がする。

 

その音を合図として、ナータンは地を蹴った。獲物を追う狼の如く、木々の隙間を縫っていく。

 

茂みを抜けた先、狙い通りの位置に敵はいた。ナータンとは逆の位置から迫っていたアサシンの攻撃を避けようと身を引いている。こちらには一切気づいていない。

 

「ふッ!」

 

疾風と見紛うその勢いをのせ、彼は拳を撃ち出した。直前で、不幸にもこちらに目を向けてしまった射手は、それを顔面で受ける。

 

ゴシャリ、と骨が砕ける音がした。一発、二発、三発、単調に、ひたすら左右の腕を振るっていく。追い討ちのように、今度は後頭部にアサシンの短刀が刺された。直後、敵の全身から血が噴き出す。

 

敵が完全に沈黙したのを確認すると、ナータンが殴打を止め、アサシンは短刀を引き抜いた。ボロ雑巾のように地面に落ちたソレは、もはや人の形ですらない。

 

「……こうも呆気なく倒せるとは、拍子抜けだな」

 

革手袋に付着した血が気になるのか、手を擦っているマスターに向け、アサシンが呟いた。

 

「気づいていなかったのか。それは"正規のサーヴァント"じゃない」

 

「なに?」

 

血痕を落とす事を諦め、手袋を捨てたナータンの言葉に眉をひそめる。サーヴァントではない、ではなく"正規の"サーヴァントではないというのはどういうことか。

 

「敵の中にそういう能力を持ったやつがいる。こういうのを使い魔として動かせる奴がな。まぁお前は気にしなくていい。俺たちの予定に変更は無いからな」

 

「…………」

 

アサシンは一瞬、不満そうな顔を見せたあと黙って霊体化する。ナータンはそれを見届けて、踵を返し自身の工房へ戻るのであった。

 




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