1日空けたのが良かったのか、今日は筆が(指が?)進みだいぶ長々と書くことができました。
クルトほんとにごめん…お前のとこはまた書きなおすからな…
感想を書いて下さった方々ありがとうございます
返信は律儀に行っていこうと思っていますので、批評であれ、一言評価であれ、質問であれ、なんでも大歓迎です
さて、今回はいつでもNO.2のマリアさんのお話です…が?
「な、なんで…この私が……」
「やった…やったよ、お義姉ちゃん……これで、私も……」
6月24日22時12分のこと。シェル家の豪邸の一角と、埃まみれの地下室。二人の召喚は真逆の結果を出した。
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6月25日6時52分。
マリア・シェルはベッドから起きた後も上の空。瞳からは輝きが失われており、その下には隈、髪はボサボサで、一夜にして精気が抜けきったような様子だった。
夢だと思いたかったのに。
召喚失敗。その事実は、彼女に言いようもない屈辱と絶望を与えた。
「なぜ、なぜなの…私は…」
ブツブツと何かを呟きながら、引き摺るように足を運んで行く。自室の扉を開けると、そこにはメイドの一人であるアンナが立っていた。
「お、お嬢様…御朝食の準備が出来ております…」
怨霊にでもなったかのような様子のマリアに、怯えたような表情をしながらも、朝食の準備が出来たことを伝える。
しかし、マリアはまるで上の空のまま、呟くようにこう言った。
「ちょうしょく?それはヘレーネに伝えさせるように、と何時も言ってあるじゃない。なんで貴女が……」
「そ、それが。ヘレーネ様にお伝えしようとしたところ何処かへ行かれてしまったようでお姿が見当たらず…」
その瞬間、彼女の中で何かが切れた。
「うるさい五月蝿い煩いッ!!貴女達は言われたコトの一つもできないの?とにかくヘレーネを連れてきなさいッ!貴女になんか用はないのよ!!」
そう、ヘレーネ。ヘレーネだ。この私が失敗したのだから、どうせあの子も失敗している。二人で傷を舐め合うくらいのことはできるわ…
普段のマリアは、こんな事を微塵も考える人間ではない。
しかし、仮にもシェル家の次期当主である自分が英霊召喚ですら失敗した、という屈辱と、ヨハンが出るであろう聖杯戦争に自分は参加権すら与えられないという絶望が、彼女の心をドス黒いものに変えてしまっていた。
もはや別人と言ってもいいマリアの様子に恐怖し、呆然とその場から一歩も動けないアンナ。そんな彼女の様子を見て、マリアの怒りは頂点に達する。
「何を間抜けに突っ立っているのよ!!早くヘレーネを探してきなさい!!!」
怒鳴られてやっと我に返ったアンナは、逃げるようにして走って行った。
数分後、去ったアンナと入れ違いのようにマリアの背後からヘレーネの声がした。
「あ、お義姉ちゃん!こんなところに居たんだね」
声に反応して振り向くマリアと、それに駆け寄るヘレーネ。ヘレーネはそのままマリアに抱きついた。
「ヘレーネ…」
なぜ貴女はそんなに明るいの?貴女も失敗したのでしょう?
続けようとした言葉を、ヘレーネが遮った。マリアを絶望の底にまで叩き落とす言葉で。
「お義姉ちゃん!私"も"成功したよ!私のは多分バーサーカーだと思うんだ。姿はすっごい怖いんだけど、ずっと何かにビクビクしてるんだよ。お義姉ちゃんはなんだった?
お義姉ちゃんのコトだから、きっとすっごく強い英霊だったんだろうなぁ…ライダーとかかな?ひょっとして、セイバーとか?」
マリアの状態など気づく様子も無く喋り続けるヘレーネの言葉は、もはやマリアに届いてはいない。
ヘレーネを突き飛ばし、今にも泣き出しそうな顔で叫ぶ。
「何で…なんで貴女だけなのよ!私が失敗してこんな辛い思いをしているというのに、どうして貴女はそんなにも呑気に笑っていられるの!?」
「ーーーえ?」
泣いているような、怒っているような。様々な感情が入り混じった声で怒鳴るマリアの様子を見て、ヘレーネの顔が引き攣った。
「え?じゃないわよ。魔術の腕だって私より劣るはずの貴女がなぜ英霊召喚に成功したの?横取り?そうよ、私の召喚するべき英霊を横取りしたのね!」
「な、何を言ってーー」
「貴女の召喚した英霊は貴女のモノでは無いってことよ。さあ、早くその令呪を寄越しなさい!」
凄まじい表情でヘレーネを引き倒し、令呪の刻まれた彼女の右腕を掴む。
「い、いやっ。離して!」
「五月蝿いわよ!さっさと私に令呪をーーー」
腕を引くマリアと、必死に抵抗するヘレーネ。何もかもが自分の思い通りにならないことで半狂乱となったマリアは、遂に禁句を言ってしまう。
自らが嫌う、他のシェル家の人間がヘレーネに向けていう侮辱の言葉と同じものを。
「貴女のような分家の人間が、シェル家次期当主である私に逆らおうなんて調子に乗ってるんじゃあないわよッ!」
ーー言うが早いか、マリアの身体が下から突き出してきた五本の枯れ木に引き裂かれた。
飛び散る鮮血、肉片、内臓。ヘレーネは、それを呆然とした様子で全身に浴びる事となった。
枯れ木は、まるで意思を持っているかのようにユラユラと揺れている。
否、枯れ木ではない。それは手だった。肉は削げ、所々から骨のような機械のパーツのようなものが覗く、指が恐ろしく長くて巨大な、凡そ生物の手とは言い難い歪な手。
その手が自ら空けた穴の淵を掴むと、穴から"何か"が現れた。痛みきったざんばら髪と、その下の三つの黒い穴。辛うじて"顔"だと認識できる巨大な物体が、ヘレーネをジッと見つめている。
「バー…サー…………カー?」
"それ"を見て、ヘレーネがポツリと声を漏らす。"それ"は答えない。風の通るような音を口から出すのみだ。
しかし、ヘレーネは"それ"から何かの返答があったかのように言う。
「あはっ。
ーーそっかぁ。"お義姉ちゃんの偽物"を退治してくれたんだね…お義姉ちゃんがあんなこと言うわけないもの。
でも。あはは。このまま…全員殺しちゃおっか?」
ゆらゆらと立ち上がりながら、乾いた笑い声を立てるヘレーネ。
バーサーカーも、穴から這い上がる。
枯れ木のような細い四肢と、3mはあろうかという巨大でやせ細った身体。その姿はもはや"怪物"そのもの。
ヘレーネは見上げて、バーサーカーは見下ろして、二人は向き合う。
「ーーー殺して」
囁くような声。バーサーカーにはそれで十分だった。
「アアァアアアアアアァァッッッツ!!!!!」
悲痛な叫び声を上げ、両手を振り回し、シェル家の屋敷中を駆け回る。
それだけで。たったそれだけで、屋敷は血に染まる。壁が裂け、窓は割れ、人が死んだ。
ヘレーネは、バーサーカーが駆け巡って血と肉の海となった屋敷の廊下を、誰かの悲鳴をBGMにスキップしながら通っていく。
まるでそこが花畑か何かのように、笑顔で。
たった数分で、あっという間に地獄絵図と化したシェル家の屋敷。その中心となっていた玄関口で、バーサーカーが最後に残った使用人を細切れにしたところで後ろからヘレーネが声をかけた。
「お疲れ様、バーサーカー。疲れたでしょ?まだ聖杯戦争が始まるまで6日もあるから、それまでゆっくり休んでね」
その言葉を理解したのかどうか、 バーサーカーは屋敷のどこかへ走り去った。
「……もっとも、一人逃しちゃったみたいだけど」
少しだけ開いた玄関の扉。そこからは、何度も躓きながら必死で逃げる一人のメイドの姿。
「アンナさんかなぁ。あの人だったらいいや。お義姉ちゃんの次に、ううん、一番って言っていいくらい私に良くしてくれた人だもん」
狂った笑顔で狂った台詞を言いながら扉に近づいて、そっと閉めた。
外界とは完全に遮断され、バーサーカーは何処かへ去り、静寂が訪れた玄関口。
ヘレーネもまた、歌を歌い、スキップをしながら屋敷の奥へ消える。
6月25日08時03分。この地の歴史ある名家が数分で消え去り、狂った大罪人と共に一人の狂った少女が誕生した。
読んでくださってどうもありがとうございました
いやー、マリアさん死んでしまいましたね。なんと義妹のヘレーネがバーサーカーのマスターという。
突然ですが。無理やりだろ!と言われても仕方がないレベルで、いわゆる主人公(まだ最初の話にしか出てきてない)以外は全員、本家Fateシリーズの、同じクラスのマスター何れかと共通点があります
それについてはまた、次の話で
さあ、いよいよ次は待ちに待った主人公の話です 頼んだぞ、天才くん