機械仕掛けの超越者   作:巣作りBETA

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オリ主は基本的にサブカルチャーにドップリです。うわぁ。


1 動き出した歯車

 

「サーバーダウンが延期になった?」

「……ですかね? えーっとインフォ、イン……フォ?」

 

 カスカスと手が宙を切る。リーダーの方を振り向けば俺と同じように手が動いていた。

 

「コンソールが出てこない……!? システム強制アクセス、チャット、GMコール、強制終了……駄目です。反応がありません」

「……マジっすか」

 

 リーダーの顔に猛烈な違和感を覚えつつ、俺は愕然とする。駄目だ、頭が真っ白だ。え、何、どうなってんの? 何故にホワイ?

 

「どうかなさいましたか? モモンガ様? マーキナー・ハイポセンター様?」

「「……へ?」」

 

 何やらYUMIXな感じの落ち着きのある声が俺の真後ろからする。馬鹿な、今この場には俺とリーダーしか居ない筈。

 そう思って思い切り首を回すと、何故か想像以上の可動域で後ろを見る事が出来た。そこに居たのは絶世の美女。うん、そうだね。アルベドだね。

 

「ってうぉぉぉぃ!?」

「きゃっ!? な、何か問題がございましたか!?」

 

 俺が思わず叫ぶと、アルベドもそれに反応したのか慌て始める。ちょっと待って何この動きどうなってんの!?

 

「リーダーヘルプ! 異常事態だ!」

「……いや、落ち着いて下さい。アルベドさ、いやアルベドも落ち着いて……落ち着け」

「は、はい……」

「焦りは失敗の種、冷静な論理思考こそ常に必要―――」

「いやちょっと待って!? 光ってる! リーダー何かスゥーって光ってるよ!?」

 

 何か妙に落ち着いているリーダーだが、こっちはそれどころではない。何か見たことも無いエフェクトがリーダーにかかっているようにしか見えない。

 しかもコジマなニュードかゲッター螺旋力にしか見えない色合いだ。どうやって落ち着けと。

 

「え、本当ですか!? って、あ、ホント―――何ですかコレ」

「いや俺が聞きたいぐらいですけど……あ、俺も光った」

 

 光と共にスゥーっと混乱の極みにあった精神が凪の海の如き落ち着きを得る。ああ成程……そうか、そうだったのか……。

 

「ふむ、どうやら光ると精神が落ち着くみたいですね。ああ何か思考もスッキリした気分です、最高にハイってヤツですね」

「いやそれはまた違うような……まあ良いでしょう。心を静め、視野を広く。考えに囚われることなく、回転させましょうか」

「………。」

「あ、ああ、済まないアルベド……その、GMコールが利かないようだ」

「じぃえむこぉる……ですか? 申し訳ありません、モモンガ様。無知な私ではお答えする事が出来ません。お許し下さい」

 

 俺とリーダーの会話についていけなさそうなアルベドにリーダーが一応相談するも、やはり駄目だったようだ。何かこのアルベド、その内「面妖な」とか言い出しそう。

 

「……セバス! プレアデスよ!」

「「「はっ!」」」

「玉座の下まで」

「「「畏まりました」」」

 

 と、俺がアホな事を考えている間に考えを巡らせたのか、何度か薄らと光ったリーダーがセバス達を呼び寄せる。

 ……あれ? そうだ、何か変だ。何、が―――あ!?

 

「り、リーダー! 顔! 顔が!」

「ッ!? そう言うマーキナーさんも!」

「モモンガ様!? マーキナー・ハイポセンター様!? 如何為されましたか!?」

「―――ッ、い、いや。何でもない……まずいな」

 

 顔が動いている。電脳法と容量の都合上、最後までユグドラシルで実装されなかった自然な表情モーフィングがバッチリ決まっているのだ。

 それにそうだ、口の中の感触……指を舐めるとザラっとした感触と金属の味がした。それを鼻先に持ってくれば口の中の味と同系統の匂いまで感じられる。

 

『―――マーキナーさん、聞こえますか?』

「え?」

『<伝言>の魔法です。流石にアルベド達の目の前で騒ぐのはまずいと思ったので……使おうと思ったら自然と使えました』

『成程、流石リーダー。ああ、何かリーダーと紐みたいなので繋がってる感じがします』

 

 と、急にリーダーの声がする。これはアルベド達には聞こえていないのか、所在なさげにこちらを伺うだけだった。

 

『……マーキナーさん、まずは情報収集が必要だと思います』

『ですね、それが一番かと。この状況だとナザリックの外もどうなってるか……俺が行きます?』

『駄目です。どうなってるか解らないのに……セバスに行ってもらいます』

『了解っす』

 

 俺が了解の意を示すとリーダーはセバスに指示を出す。いや、よくここまで的確に指示出せるね……伊達にギルマスやってないね。

 感心している間にセバスはナーベラルを連れて出ていく……そういや、シズもこの異常事態に巻き込まれてるんだよな。

 

『マーキナーさん、ちょっと<伝言>を試して貰って良いですか?』

『ん、ええ。誰にです?』

『とりあえず運営とギルドの皆に。私の方で一度試してみましたが、マーキナーさんも試して下さい』

『了解、じゃあコレは一度切りますね』

 

 やった事が無い筈なのに<伝言>を終了させる方法が自然と解る。ああうん、ここまで異常事態が続いてるんだ。流石に精神が慣れてきた……と、駄目だな。

 

『駄目ですね、リーダー以外反応なしです』

『そうですか。ではマーキナーさん、まずこの異常事態の原因究明と……NPCへの対処を考えましょう』

『まあ原因は謎って事で置いておくとして……対処、ですか?』

『ええ。今の所我々に従っているようですけど、その忠誠心の度合いが解りません。仮にこの体がゲームキャラと同じ性能だったとしても、階層守護者全員を一度に敵に回した場合……』

『死にますね。特にシャルティアは対リーダーメタなビルドですし、そこにアウラかマーレが入ってアウト。俺も条件次第ですがコキュートスとアルベドに組まれたら手も足も出ずにやられると思います』

 

 リーダーすげぇ。ポンポン次の行動思いついてる。対応自体はできるけど何でそんなすぐ思いつくの?

 

『すぐに戦闘になるという事もないでしょうが、NPC達の忠誠心がどれぐらいかを考えないと……』

『了解です。まあ逃げに徹するなら何とかなると思いますけど、戦闘能力の確認は必要ですね』

『では、プレアデスは九階層に上げて他の守護者への足止めに回しますね』

『ええ……あ、シズは残して下さい。個別で確認したいので』

『……大丈夫ですか?』

『まあレベル自体は低いですし……それに、シズに殺されるならそれはそれで良いかなって』

『……そうならない事を祈りますよ』

 

 ぷつりと<伝言>が切れる。リーダーが指示を飛ばすと俺の前にはシズだけがポツンと残されていた。

 

「……シズ」

「はっ」

「ちょっとおいで」

「……はっ」

 

 何だろう、この感じ……怯えてる、のか? 全くの無表情だった以前と比べるとその違いは劇的だ。いや、それこそミリ単位の違いなんだけどね。

 

「………。」

「………。」

 

 しかしちっさいな。俺も階段を下りて目の前に来たが、それでも頭のてっぺんが俺の顎より下にあるよ……まあ、あくまでこの装備ではって但し書きが付くけど。

 

「あー……シズ。実は今、割ととんでもない異常事態が発生してるんだ」

「異常事態……ですか? 申し訳ありません、私の方では何も……」

「ふむ……以前と変わりない、か。まあその……何だ。原因解明の一環として、その―――」

「……?」

 

 あーもうそこで小首を傾げるとか! 超可愛い!

 

「……うん、やめだやめ。ストレートに聞いた方が早いわ」

「はっ、何なりとお申し付け下さい」

「うん。シズ、お前……俺の事、どう思ってる?」

「―――はっ!?」

 

 おおぅ!? 顔から湯気が出た!? 物理的に! スゲェ今ボンっつった! お前は昔のジャパニメーションか!?

 

「……だ、大丈夫か?」

「お、お見苦しい所をお見せしました……」

「あー、嫌なら無理しなくて良いけど……」

「い、いえ―――マーキナー・ハイポセンター様は私をお創りになられた至高の41人のお一人です。我が身、我が心、その全てがマーキナー・ハイポセンター様の為に存在しております。

 マーキナー・ハイポセンター様のご命令であれば、何であろうと我が身に代えても全うしてご覧に入れます。同じく残られた至高の41人であらせられるモモンガ様に銃を向ける事も厭いません」

 

 程なくシズはいつもの表情に戻る。が、その水晶のような瞳は今までになく強い力を湛えていた。目は口程に物を言うとはこの事か。

 

「……そうか。聞きたい事が増えたけど、その前に」

「はっ」

「『我が身に代えても』なんて言うな。シズは……まあ、システム上は復活できるかもしれない。けど、俺はシズには傷付いて欲しくないんだ」

「それは―――」

「解ってる、俺の我儘だ。今の言葉……リーダーにも逆らえるって言ったシズの想いは伝わったよ。ありがとう」

 

 丁度良い位置にあった肩に手が乗る。そこから気が付いたら流れるようにシズを抱きしめていた。身体が光って冷静になる事もなく、シズに対する愛おしさが胸の奥から滾々と湧き出るようだった。

 

「シズ、お前はプレアデスの一員だけど、それと同時にこの身の対になる存在でもある。それを忘れるなよ」

「―――畏まりました」

 

 あーもう超可愛い。ほらリーダー見て! 俺の背中に恐る恐る回された手! コレ、コレだよ! もうこのネタだけでペロさんと三時間は話してられるね!

 それにしても警告も何も無しか。前は倒れそうになったメンバーを支えようとしただけで出たもんだけど……マジでどうなってんだ?

 

「で、話は戻るけどシズ、至高の41人ってのは……えーっと、この部屋に旗が飾ってある41人?」

「はい。現在残られているのはまとめ役であったモモンガ様、私を創造されたマーキナー・ハイポセンター様のみが残られていると記録しています」

「成程……もう少しこうしてたいけど、そうも言ってられないかって何やってんのリーダー!? いやアルベド!?」

「あ、ちょっ、助けてマーキナーさん!」

 

 NPC達がギルドメンバーをどう認識しているかを確認し、良い雰囲気のままそっと離れてリーダーを振り返ったら何故か玉座に押し倒されてる骸骨が居た。思わず精神安定しちゃったよちょっと。

 

「アルベド、ステイ! ステイ!」

「う、うー……マーキナー・ハイポセンター様のご命令とあれば……」

「ビッチはビッチでも肉食系ビッチかよ……あー、大丈夫ですか? リーダー。あと何があったんです?」

「いや、どうもフレンドリーファイアの設定が解除されてるみたいで……気が付いたら押し倒されてました」

 

 なぬ、後半はともかく前半は聞き捨てならないぞ。まあ俺は常時発動型のダメージスキル持ってないから別に良いけど……リーダー何か持ってたっけ?

 

「それと電脳法がある以上、味覚や嗅覚の再現はできない……ですよね?」

「ええ。ついでに言うとコレがユグドラシル2とかだったらログアウトできないんで営利誘拐の現行犯です」

「つまり、可能性としてそっち方向は低い……なら、有り得ないとは思いますが」

「事実は小説よりもなんとやら、ですね。異世界転移とか古典じゃあるまいし……」

 

 取り急ぎ現状の把握は終了した。これ以上は決定的な証拠を見つけなければどうしようもないだろう。それこそ胡蝶や一炊の夢って可能性もある。

 

「ふむ……なら、次は実験ですね。この体の」

「解りました。場所は……六層で?」

「それが良いでしょう。魔法は一通り使えそうですけど、確認するに越した事はありません。マーキナーさん、付き合って貰えますか?」

「了解!」

 

 

 レメゲトンのチェックをしておくと言っていたリーダーと別れ、自分の部屋に立ち寄ってから六層の円形闘技場・アンフィテアトルムまで指輪の力で一気に飛んだ。

 シズの分の指輪が無いから別行動になったのが少し痛いな……後でリーダーに予備貰っとこう。

 

「うぃーっす……ん? 根源の火精霊?」

「あ、マーキナー・ハイポセンター様!」

 

 ざくざくと先程と変わった感覚を確かめながら闘技場内に入ると、そこには杖を持ったリーダーとそれによって召喚されたであろうプライマル・ファイヤーエレメンタル。それにダークエルフの双子の姿があった。

 その片割れ、スカートをはいたマーレ・ベロ・フィオーレが曇り気味だった顔を輝かせてこちらにとてとてと駆けてくる。満面の笑みを浮かべて駆けてくる褐色ガールとか現実ならドッキリか何かとしか思えないシチュエーションである。

 あ、ゴメン間違えた。ガールじゃなくてボーイだったわ。そして後ろは注意しような。

 

「六階層へようこそ! マーキナー・ハイポセンター様! 本日はどういった御用ですか?」

「あ、ああ……ちょっくら装備の調子を試そうかなって」

「マーキナー・ハイポセンター様もですか……あ、そうだそれなら―――」

「マーレ?」

 

 よく似たもう一人のダークエルフ―――姉のアウラにガッシリと後頭部を掴まれるマーレ。うん、この状況俺よく知ってる。ピンクの肉棒と鳥男の組み合わせでも、よく似た姉弟の組み合わせでも。

 

「お、お姉ちゃん……」

「申し訳ありません、マーキナー・ハイポセンター様。これからこの愚弟と一緒に火精霊と戦おうかと思っていましたので……」

「あ、そうなのか? うーん、俺の装備の確認に丁度いいと思ったんだけどそういう事なら……」

「い、いえ! マーキナー・ハイポセンター様がお使いになられるのでしたら私は構いません!」

 

 俺の言葉を聞いてほっとした様子のマーレはさておき、リーダーに視線を向けると軽く頷きを返された。ふむ、コレはやっちゃっていいって事かな。

 

「じゃあ遠慮なく使わせてもらうよ。リーダー、良いよね?」

「ええ、構いませんよ。それにしても随分と重装備ですね……そうそう、魔法の使用感は変わってませんよ」

「まあ、お蔵出しって面もありますけどね。了解です」

 

 こちらにゆっくりと向かってくる根源の火精霊に対して軽く身構える。先程より格段に性能の上がった探知能力が火精霊のどこにエネルギーが集まっているかを事細かに教えてくれていた。

 そこから放たれる火球。魔法としての<火球>ではなくただの火の球のようだが、生身でこんなもん受けたらまあ死ぬよね。

 

「けど、大した事ぁ無い」

 

 俺は巨大な左腕で火球を防ぐ。うん、防御力も問題ないな。それならこっちの番だ。

 

「そぉらっ!」

 

 右手に持った巨大なライフル―――ライトニングマグナムを火精霊に放つ。火精霊の体に大穴を開けたのは銃弾ではなく<三重魔法最強化・龍電>にも匹敵する雷の一撃。今しがた排莢された薬莢に封じられていた魔弾の中身だ。

 更に続けてもう一発、今度は弾倉を使わずに放つ。魔力消費モードも問題なく動く事を確認すると、火精霊が距離を詰めてきた。でも遅いな。

 

「滑走四脚、展開! ゴー!」

 

 別に口に出す必要はないが、気分のままに両足を前後に分割して高速でバックする。今の知覚能力なら正面を向いたままでも問題なくバックが可能だ。

 四足になった俺が今地面に接しているのはタイヤ。人体にそぐわない筈のモノを、まるで生まれてから持っていたような自然さで操って火精霊と鬼ごっこを楽しむ。

 

「サブアーム……あ、そうそう。16号だったな。使用っと……流石にこのレベルには効かないか」

 

 腰の辺りから生えた一対の小さな腕を火精霊に向けるも、抵抗されたらしく火精霊に変わりはない。ならまだ試して無いモノもあるけどもういいか。

 ライトニングマグナムを持った右腕に装着されているヴィブロクローを展開。突っ込んできた火精霊をガッチリホールドした。悪いが非実体対策ぐらいは当然突っ込んであるんだな、これが。

 

「これで終わりだ! プレディクテッド・インパクト! バイバイ!」

 

 火精霊を右手のクローで保持したまま左肘のシリンダーを作動させ、パンチと共にそれを叩き込む。魔力か空気かは知らないが火精霊に叩き込まれた一撃は致命的だったらしく、やがて跡形もなくなって消えてしまった。

 

「―――よし、と。フライキャノンの動作確認は……まあ、次の機会だな」

「す、すごかったです! マーキナー・ハイポセンター様!」

「はは、そうか? それにしても悪かったな。見てる間、ヒマだったろ?」

「いえいえ! 雄姿を見る事ができて光栄です!」

 

 うーん、シズは俺が作ったNPCだから良いとして……アウラとマーレも随分忠誠心が高いな。可能なら主要なNPCの意識調査とかもしときたいけど……。

 と、何やら糸のようなものが繋がる。それを辿った先にはリーダーが居た。<伝言>か。

 

『マーキナーさん、良いですか?』

『ん、リーダー? どうしました?』

『少し考えを纏めてました。それとアイテムボックスは問題なく使えそうです』

『ああ、それは装備出す時に確認しました。それで考えって?』

 

 それもそうでしたね、と若干恥ずかしそうな声色のリーダーの元にゆっくり戻る。アウラとマーレは二人で話したいと考えてくれたのか、俺達とは距離を取って立っていた。

 

『ええ……まずNPC。反応を見る限り、人間と同じような意識を持っていると考えて良いと思います。

 次にこの世界自体……は、ユグドラシルの魔法や感覚が混ざっているのが謎ですね。まあ、情報不足ですが異世界と仮定するのが良いと思います。

 そしてこれからの身の振り方、これが一番重要です。とりあえずナザリック内は偉そうにしてれば大丈夫だと思いますが……まず情報収集が肝要かと』

『全面的に同意ですね。あ、でもシズ達に対してあんまり偉そうにするのってできなさそうです。肩肘張ってると疲れちゃって』

『至高の41人らしく威厳を持って行動しない場合どうなるのか……そこが解らないのが怖いですね。まあ、お互いフォローしていきましょう。

 それで、その……異世界だとして、マーキナーさんは戻るべきだと思いますか? 新刊、出るんでしょう?』

『ええまあ、出ますけど……俺達こんな体ですよ? それで今更戻れますか? それに俺達のパターンは現状『ゲームキャラのまま異世界へ』って感じです。そういう話は大抵戻れないってオチがつくんですよ』

 

 俺はリーダーの骨の顔に視線を移し、胴体の胸パーツを解放して真の姿―――コアとしてのカロリックストーンを曝け出した。

 リーダーはアンデッド。そして俺に至ってはご覧の通りの機械の体だ。手足に頭、それどころか胴体パーツまで交換出来た時には乾いた笑いが出たぐらいである。

 現に俺の胴体は先程より一回り以上大きく、頭もヘルメットか卵のようなつるりとした球体だ。表情もクソも無いが、リーダーやアウラ達には何となく伝わってるんだろう。

 

『そうなんですか……まあ、全て小説のようになるとは限りませんし、ナザリックの外が地獄のような環境って可能性もあります。その場合は帰還を優先として良いですか?』

『了解です。個人的には未知の世界を冒険したいって気持ちはありますけど……』

『あー、そうですね。危険が低いのであればそうしましょう……ちょっとワクワクしてきました』

『あ、リーダーもですか? 俺もです』

 

 フフフ……と二人して笑っていると目の前に扉のような闇が現れる。エフェクトからすると<転移門>か。

 

「おや、わたしが一番でありんすか?」

 

 現れたのは絶世の美女……否、美少女。白い姿に黒系統の服がよく映え、ポツリと点を穿つような眼の赤みが際立っている。

 即座にアウラに茶々を入れられて優雅さは掻き消えるが、その姿もまた年齢相応で可愛らしい。シャルティア・ブラッドフォールン。一層から三層までの階層守護者だ。

 何やらアウラとのじゃれ合いで超アンデッドとか神アンデッドとか言ってるが、超アンデッド人神なら居る可能性はちょっとだけあったりなかったりしそうだ。

 

「サワガシイナ。二人トモ、御方々ノ前デ遊ビスギダ」

「お、コキュートスも来たか。まあシャルティア、アウラ。二人もほどほどにな」

「「はっ! 申し訳ありません!」」

 

 続いて現れたのは直立する水色の虫、と言えば良いのか。第五階層の階層守護者、コキュートスだった。設定された武人らしい立ち振る舞いだと一目で解る。

 あと二人共、別に怒ってないからな。それとリーダー、「もうコイツ一人で良いんじゃないかな」って視線を向けるのはやめて下さい。

 

「皆さん、お待たせして申し訳ありませんね」

「何、丁度集まった所だよデミウルゴス。これで皆、集まったな」

「―――モモンガ様、まだ二名ほど来ていないようですが?」

 

 次にアルベドと共に現れたのはどうも胡散臭いオーラを漂わせるやり手のビジネスマンのような男。第七階層守護者、デミウルゴス。

 まあ胡散臭いのは人間らしい部分の外見だけであり、コイツは設定上ナザリック中でもトップの忠誠心を持っている男だ。アルベドと協力して内務や防衛を担当しているって設定だった筈。どっちがどっちだっけ?

 なんて考えている間にリーダーと階層守護者達の間で話が進んでいた。はえーなオイ。

 

「各階層守護者、御身の前に平伏し奉る……ご命令を、至高なる御身よ。我らの忠義全てを御身に捧げます」

『……どうしましょう』

『え、ここで振ります!? あー、とりあえず……面を上げよ、とか?』

『成程! じゃあ何かあったらフォローをお願いします!』

『お、押忍』

 

 急に緊張してきたので返事がおかしくなってしまう。あ、またスゥーってなった。よし、落ち着いた。

 しかし流石はリーダー、急に忠誠を誓われても慌てることなく進んでいるようだ。原因不明の事態に巻き込まれている事、そこから各階層には異変が無い事が解る。

 

「ああ、リーダー。第四層は俺も後で見に行くよ、ガルガンチュアの様子も見たいし」

「ええ、任せました―――と、丁度セバスが戻って来たな」

 

 スタスタとセバスが現れる。あとシズがその後ろからついてきていた。あ、そういや通路の奥で待機させてそのままだったっけ。いっけね。

 で、何? 辺り一面草原で人工物は無し? 棲息してるのも小動物? ゴメンリーダーあと任せた。

 

「―――では次。アウラ、マーレ。ナザリック大地下墳墓の隠蔽は可能か? 幻術だけでは心許ないし、維持費用はなるべく抑えたいからな」

「お、恐らく魔法的な手段では難しいです。草原ですと周囲に木を生やすのも不自然ですし……」

「土を被せて隠すってのは? 地表部分を丸ごとドーム状に覆ってその上に軽く土と草を被せる、とか」

 

 流石にナザリックに土石流をぶち込む訳にもいかないし、この方法ならドームをひっくり返せばすぐに元通りになる筈だ。

 リーダーもそれに乗ったのかセバスに周囲の確認をし、アウラとマーレにはダミーも含めて作れと命じていた。ふむ、それなら俺も少し手を貸すか。

 

「最後に各階層守護者に聞こう。お前達にとっての我々はどういった存在だ? まずシャルティア」

「モモンガ様は死と美の結晶。マーキナー・ハイポセンター様は技術と文化の神でございます」

 

 と、何やらリーダーが唐突に意識調査始めやがった。そしてシャルティアの答えが妙だ。

 

「……コキュートス」

「御二方共、至上ノ強サヲ持ッタ御方カト。ソノ御力、正シク神ニ等シク」

「……アウラ」

「慈悲深く、我々程度にもお気を配られる優しき方々です」

「……マーレ」

「す、凄く優しくて強い方々だと思います」

「……デミウルゴス」

「その御心の内に幾重ものお考えを巡らされる、我々にとっての神のような存在です」

「……セバス」

「至高の方々であり、我らの前に残って頂けた慈悲深き方々です」

「……最後に、アルベド」

「私共の最高の主人であり、お二人ともこの上なく魅力的な殿方でございます」

 

 なーんかチラホラと「神」って単語が入るな。これはアレか、俺の種族のせいか。リーダーそういうの持ってない筈だし……。

 

「―――各員の考えは充分に理解した。今後とも忠義に励め……マーキナーさん、何かありますか?」

「んー、特には……ああ、そうだ。とりあえずシズはプレアデスとしての仕事に戻ってくれ。で、それとこれはナザリック全域に通達」

 

 リーダーに話を振られ、思い付いた事から順に言っておく。多分コレ言っとかないとずーっと言われそうだしな。

 

「以後、俺を呼ぶ時はマーキナーで構わない。イチイチフルネームで呼ばれるのもダルいしな。解ったか?」

「「「はっ! マーキナー様!」」」

「……ま、いいか。行きましょう、リーダー」

 

 俺達は頷き合うと指輪を操作してレメゲトンへと戻る。あ、そうだ予備貰わないと。

 

「何か……凄い高評価だったんですけど」

「あー、まあシャルティアは解りますよ。アイツ確かネクロフィリアなんで、死体のリーダーはドストライクなんだと思います。

 他の連中は……自分を作ったギルメンはともかく、俺達までビックリするぐらい敬意を持ってますね。絶対上位者って見てるんでしょうか」

 

 シズの反応を見る限りは薄々そうじゃないかな、と思っていたがまさかのドンピシャである。

 

「でしょうね……何か、無い筈の胃が悲鳴を上げてる気がします」

「恐らくそれは幻覚でしょう……で、リーダー。今後シズをメインに連れ歩くと思うから移動用に指輪一個欲しいんだけど……駄目かな?」

「ああ、良いですよ。ただ、万が一を考えて外に出る場合は預けるようにして下さい。マーキナーさんの分も」

「了解っす」

 

 

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