機械仕掛けの超越者   作:巣作りBETA

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オリ主はモモンガ様ばりにぶっ飛んでます。うわぁ。


2 絶望直行ベルトコンベア

 

「ふむ……まあ、組み合わせとしてはこんなもんか?」

 

 廊下を歩きながらガッショガッショとパーツの展開や動作を繰り返す。そんな事をしなくても何も問題なく動くと解っているがなんとなくやってしまう。指を鳴らすようなものだ。

 

「あんまり左右のバランスが悪いと動き辛いしな……それにアイテムロストした時に神器級だったら泣けるし」

 

 問題はこの装備でどれだけ戦えるか、だ。バトルジャンキーって訳でも無いが、外の世界の探索をするなら相応の危険への備えは必要だろう。

 

「あー、後はなるべく人混みに紛れやすいようにしないとな。この世界の人間の基本の姿が解れば良いんだけど……」

 

 今の俺の姿は最終日にログインした時の姿とほぼ変わらない。パっと見では人間種との違いが判らない普通の外装だ……一応異形種だからバレたらPKされたりするけど。

 能力を追求するなら先日使ったエッグヘッドが一番良いのだが、流石にそれだとすぐ異形種だとバレてしまう。人間型パーツは入れられるデータクリスタルが少ないのが難点なのだ。

 

「アレなら<完全不可知化>でも何とか見つけられるんだけどなぁ……流石にそれ位普通に使ってるだろうし、っと。リーダー居る?」

「はい、モモンガ様はご在室です。御取次致しましょうか?」

「うん、お願い」

 

 リーダーの部屋まで来ると、まるで計ったかのようなタイミングでセバスが顔を覗かせる。まあ、セバスほどの高レベルNPCなら俺の接近ぐらいは一発で解るのだろう。

 

「お待たせ致しました、マーキナー様。こちらへどうぞ」

「ありがとう、セバス」

「いえ。御側に控え、御命令に従う事こそ執事として生み出された私の存在意義でございます。可能であればマーキナー様の御側にも控えたく思いますが……」

「流石に常時分身出来るスキルは無いだろ。ま、俺はシズが居れば大丈夫だからリーダーについてやってくれ。んで、リーダーはさっきから何やってんです?」

 

 深々と頭を下げたセバスを半ばスルーして横から作業を覗き込む。因みに無言のままついてきたシズは部屋の外で待機しているようだ。

 ……遠隔視の鏡? で、草原を映してるのか。

 

「何でわざわざこんなもん使って……リーダー、情報系対策は?」

「してなきゃ使ってないですよ。それよりようやく視点を引く方法が解ったんです。いやー、長かった」

「そりゃお疲れ様です……お? ねぇリーダー、アレ村じゃない?」

「ですね……お祭りかな?」

 

 いや、違う。この煙は炊煙じゃないし、慌ただしさは歓喜やそれに類するモノじゃない。むしろ真逆だ。

 ―――全身鎧の兵士か騎士が村人に襲い掛かっている。切られ、突かれ、大地に屍を積み上げている。

 

「チッ! ……ん?」

「……どうしたんです、リーダー。また光ってますけど」

「いや……その、嫌な物を見たなとは思ったんです。でも、それだけなんですよ」

「……ああ、成程。確かに俺もそうですね。それと知ってますか? 中世ヨーロッパの騎士の多くは平時では野盗と何も変わらなかったそうで、盗賊騎士なんて呼ばれ方もしてたみたいですよ」

 

 確かにリーダーの言う通り、俺も特に思う所は無い。強いて言うなら「面倒な事をしてるな」というぐらいか。雑学が出てくるぐらいには冷静だ。

 ふむ、でもこれは……チャンスじゃないか?

 

「ねぇリーダー。この村、助けない?」

「……危険ですよ。虐殺されている村人が私達と同等の強さという可能性もある」

「ええ、ありますね。でもこの世界の戦闘力を確かめるのはいずれしなきゃいけない事です。それなら正規兵らしい連中を相手にするのはアリじゃないですか?

 それに、今行けば何人かは助けられます。そうすれば恩で村人の心をガッチリ掴めますし、更に情報も幾らか得られるかと」

「……よし。セバス、ナザリックの警戒レベルを最大まで上げろ。それとアルベドにギンヌンガガプ以外をフル装備で着いてくるようにと。

 それから後詰として隠密能力に長ける、もしくは透明化等の姿を隠せるシモベをこの村の周囲に配置しろ」

 

 警護は私が、いやお前はナザリックの守備と伝令だ、と二人が問答している間にまた一人の少女が切りつけられた。ちょっとリーダー、女の子がピンチだよ!?

 

「行きますよマーキナーさん! <転移門>!」

「合点!」

 

 リーダーの作った転移門に低い姿勢で滑り込む。ガチガチの魔法職であるリーダーより素早さが高い俺はリーダーより早く転移門に滑り込む。

 視界が変わった瞬間に右手に握ったレミントンN2127を目の前の騎士にぶっ放した。

 

「……おろ?」

「ふむ……防御力は高くないんでしょうか?」

「ですかね……幾らスラッグ弾とは言え」

 

 てっきり一発は確実に耐えられると思って本命の左腕を用意していたが、アッサリと胸元から上が四散してしまった。

 今回の武器は使い勝手が良く、威力もあり、まあ杖っぽく見えない事も無いという理由で持ち出した過去の武器のレプリカ品。単純な威力は弾丸との組み合わせによるが精々遺産級だ。それで一撃死?

 

「あ、もしかして首に当たってクリティカルとか」

「ああ、成程……では次は私が。<龍雷>」

 

 近くの家の脇から姿を現した騎士のリーダーが腕試しの一撃を放つ。その結果は、即死。<擬死>でも俺のスキルは誤魔化せない。間違いなく死んでいる。

 

「……弱っ」

「……弱い、ですねぇ」

 

 幾らレベル100の魔法職が使ったとは言え<龍雷>は第五位階魔法。俺だって種族的にペナルティはあるがアレなら一撃で死ぬことはまずない。

 あー、んー、何かやる気なくなってきた。

 

「……中位アンデッド作成、死の騎士」

「うわ、グロっ」

 

 俺の銃撃で頭が吹き飛んだ騎士に黒い靄が覆い被さり、更にゴボゴボと黒い液体が噴き出て騎士の体を覆う。やがて生まれたのはアンデッド系壁モンスターとして有名なデスナイトだった。

 俺コイツ嫌い。一撃で死なないんだもん。

 

「この村を襲っている騎士を殺せ」

「■■■■――――ッ!」

 

 雄叫びを上げてデスナイトが走り去っていく。おーい、どこ行くねんお前。壁じゃねーのかよ。

 

「……俺も出します?」

「いや、様子見で。それよりも……」

 

 リーダーがボロボロの姉妹の方を向く。それと同時にほぼフル装備のアルベドが転移門から現れた。おー、これ初めて見るかも俺。

 

「準備に時間がかかり、申し訳ありませんでした」

「ん、良いさ。とりあえずアルベドはリーダーについて。俺には後詰を幾つかつけてくれればいい」

「ハッ。それとそちらの下等生物は如何なさいましょう? 私が処分いたしますか?」

「……アホタレ、コレは情報源だ。恩を売りつけて友好的に交渉する必要がある」

 

 畏まりました、とアルベドが頭を下げる。それでリーダーは目の前の姉妹に自分が怖がられてるっての理解しようや。顔だよ顔。その骨!

 

「ああ、そうか……手と顔を隠さないとな。もう嫉妬マスクで良いか、面倒だし」

「じゃあ顔を見られたってのは何とかしないと駄目か。俺の手持ちで記憶操作が出来そうなのは……よし、<神の威光>!」

 

 肘を体にくっつけ、掌を上に向けた状態でやや下げて両側に広げる。そして俺から迸る後光を受けた村娘二人がトロンと蕩けるように表情を緩ませた。

 

「あぁ、神様……」

「ああ、神だとも。君達を助けに来たんだ。そして彼は最初から仮面とガントレットをしていた、良いね?」

「アッハイ」

「それから我々は魔法を使える。守りの魔法をかけるから暫くここで待っていなさい、良いね?」

「アッハイ」

 

 何か反応がおかしい気がするが、これが俺の持つスキルの一つ<神の威光Ⅰ>だ。ユグドラシル内であればモンスターやNPCへの威圧や懐柔を行えるスキルだったが、流石に色々と効果が変わっているらしい。上手くいって良かった。

 そして流石に怖がられっぱなしも嫌なのか、リーダーは少女に小鬼将軍の角笛を二つほど渡していた。うわー、そこで在庫処理しますか。要らないなら売るか捨てりゃいいのに。

 

「あ、あの……お名前は?」

「名前、名前ねぇ……まあいいか。俺はマーキナー。マーキナー・ハイポセンター」

「……モモンガだ。そこで待っているといい」

 

 少女の問いかけに言い捨てるように名を告げてリーダーとアルベド、俺と何体かのシモベに分かれて村の周囲を回る。

 リーダー、もしかして自分の名前が浮くと思ってない? まあ実際浮いてるんだろうけどさ。

 

 

「ふぅ……ま、悪くないかな」

 

 チェーンをじゃらりと鳴らして巻き取る。ティンと来た外装に適当に捕縛系のデータクリスタルを入れただけのアンカーだがコレはコレで使い道が多そうだ。

 その名も捕縛鎖「白鯨」。バランス悪い武装の時に姿勢制御するのにも使えるかな、コレ。

 

『マーキナー様、角笛が聞こえました。連中が仲間に何かしらの合図をしたものと思われます』

「だろうねー。コイツらの大体の強さも解ったし、そろそろリーダーと合流しようか」

『はっ。時にマーキナー様、こやつは如何致しましょう』

「んー、面倒だから処分しといて。あ、服とか装備は残しといてね」

 

 俺の足元でアンモニア臭を撒き散らしていた男が一気に鉄臭くなる。さてと、とりあえずその辺の屋根にでも上りますか。

 

「よっと。あ、リーダー発見」

「ああ、マーキナーさん。そちらは終わりましたか?」

「うん。しかしこいつら随分弱いけど……コレが正規兵なのかな?」

「どうですかね、強さに幅がある可能性もありますし……とりあえず一度解放してみようと思います」

 

 了解、と答えて空を飛ぶ二人の後をゆっくり追う。リーダーが騎士を逃がし、デスナイトが片づけを始める頃には散らばっていた村人が戻って来ていた。

 やがて他の村人より若干身なりの良い男性が俺に話し掛けてくる。んー、村長かな?

 

「あ、あな、貴方様方は……」

「襲われてたのが見えたから助けに来た……旅の者ですよ」

「おぉ……」

「……急な事だったとは言え、相応の謝礼は頂きたいのだが」

 

 すーっと滑るようにリーダーがやってくる。普通の顔丸出しの俺と嫉妬仮面のリーダーを見比べた村長は俺に話し掛け続けた。

 

「い、今は村もこんな状態でして……」

「ええ、それは解っています。それも含めて、どこか落ち着ける所で話をしたい」

「あ、リーダー。俺あの子達連れてくるわ」

「……ああ、あの姉妹か。ええ、任せます」

 

 スルーされたのが癪にさわったのか、リーダーがズイっと前に出る。そして俺はタイミングよくさっき助けた姉妹の事を思い出し、後の話し合いをリーダーに一任するのだった。

 当然、村長は泣きそうな顔をしていたが。

 

 

「……どう思う、リーダー?」

「……とりあえず異世界確定、ですかね」

 

 すったもんだの末に「遺跡探索中にトラップに引っ掛かり見知らぬ土地に来てしまった冒険者」というカバーストーリーをでっち上げる事で、報酬代わりにこの辺りの情報を得る事が出来た。

 その結果が王国やら帝国やら法国やらの存在である。うん、北欧神話どこ行ったよ。

 

 そして現在は見事な夕焼けを眺めながら作戦会議中である。既にモンスターの大半は帰還済みだ。アイツら村を襲おうとしやがって……後で説教だな。

 それにしても元冒険者とか居なくてよかった……「そんな罠あるかい」とか言われたら「お前が知らないだけだろ」って返すつもりだったけど。

 

「鎧の紋章は帝国の物らしいけど……怪しいよね」

「本命が法国、対抗が国内の不穏分子に対処する王国の部隊ですかね。どこかの国に我々のようなプレイヤーが居る可能性も高いですし……失態でしたね」

「次に兵士見つけたら色々聞いてみようよ、ニューロニスト辺りに協力して貰ってさ」

「それが一番ですかね……防衛するだけなら現状でも大丈夫ですが、やはり情報がもっと欲しいですね」

 

 情報収集はモンスターじゃ無理だろうな……最低限守護者クラスじゃないと。それに今回の襲撃未遂を考えると可能な限り友好的な奴らを選ばないといけないだろう。カルマ値準拠で考えた方が良いかな?

 

「そういやモンスターはともかく、冒険者ってのは結構心躍りますね」

「ですね。可能なら情報収集の一環として潜入しますか……それと気付きましたか? 喋ってる言葉と内容、違ってましたよね?」

「言われてみれば……そこに気付くとは、流石リーダー」

「まあ、魔法がリアルである世界ならこれぐらいは普通に有り得る話かもしれませんけどね……」

 

 俺の賛辞もさらっと流す。やはり天才か……。

 

「個人的には歴史とか御伽話を調べてみたいね。原因を調べるなら時間軸を遡るのが一番だし、過去に俺達のような存在が居た記録があったなら周囲の対応も知っておきたい」

「ああ、それは確かに。この世界特有の魔法もあるかもしれませんし……ん? どうかされましたか、村長殿」

「おお、モモンガ様。実は馬に乗った戦士風の者達がこちらに近付いているそうで……」

「ふむ……マーキナーさん、構いませんか?」

「お任せします」

 

 対応すると決めたリーダーはテキパキと村長に指示を出す。個人的には身を隠して美味しい所を持って行こうかとも思ったけど、折角売った恩を台無しにするのも面白くない。

 やがて正面からやってきたのは揃いの剣を持った一団だった。さっきの騎士達に比べると装備に統一感が無い。リーダーは先頭のアゴヒゲかな?

 

「―――私はリ・エスティーゼ王国、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。近隣を荒らしているという帝国の騎士を討伐する為、王の御命令にて村々を回っている者である」

「王国戦士長……!」

 

 そりゃ誰だと村長に聞いてみると、この髭面は王国内でも指折りの戦士らしい。本物かどうかはさておき、友好的に接しておいて損は無いかな。

 同様に考えたらしいリーダーが誰何の声に答えていた。

 

「私はモモンガ、彼はマーキナー。この村が騎士に襲われていた所を見て助けに来た……冒険者です」

「冒険者……? プレートをお持ちでないようだが」

「……あー、色々と面倒な事情がありまして。ここに居るのもちょっとしたアクシデントがあったせいなんです」

「ふむ……うむ。この村を救って頂き、感謝致します」

 

 おお、少し考えただけでわざわざ馬から降りて頭下げたよこの人。俺達見るからに怪しいのに。

 で、プレートってなんぞと考えてる間にリーダーとガゼフ(仮)の間で問答が進む。いやリーダー、デスナイトと仮面は流石にちょっと苦しいと思う。

 そう思った矢先、戦士長さんの部下らしい人がこちらに駆け込んできた。うーん、厄介事の香り。

 

「戦士長! 周囲に複数の人影。村を囲むような形で接近しつつあります!」

 

 

「……弱いね」

 

 村の倉庫をアルベドに見張らせ、俺達はその入り口横でリーダーが使った<水晶の画面>を覗いてガゼフ・ストロノーフの戦いを見ていた。

 炎の上位天使に圧倒されるって事は……装備も貧弱だし甘めに見て30以上、かな? 防具カスタマイズしないで突っ込んだらこうなるだろうって見本だった。

 

「レベル的にはそうですね。それでも―――」

「うん。ここでガッツリ恩を売りつつ情報源の確保、それに気になる事もあるし……何より個人的にああいうのは嫌いじゃない、かな」

「決まりですね。アルベド、我々が向こうに行ったら彼を倉庫に叩き込んで扉を閉めろ。その後は別命あるまで待機だ」

「はっ!」

 

 言うが早いがリーダーは<水晶の画面>を解除し、俺の肩に手を乗せて魔法を発動させる。その次の瞬間には俺達はついさっきまで覗いていた戦場へと降り立っていた。

 唖然とする特殊部隊の皆さん。天使は……ちょっと表情解んないな。

 

「ハァイ。グドゥイブニン?」

「「「………。」」」

 

 あれ、挨拶したのに無視ですかそうですか。そして特殊部隊さん達とリーダーの問答が始まる。ふむ、やっぱりか。

 

「リーダー、やっぱり俺達以外にもこの世界に来てる連中は居るんじゃないかな? リーダーの言う通りならいきなりある程度洗練された文化がポンと出てきたって感じがする」

「ふむ……誰かが魔法を教えたのかな。でも何故わざわざ第三位階を?」

「さぁ。魔法詠唱者としての適性とかあるんじゃない? それが低い連中で固められてるとか」

 

 まあそんな訳が無いのは解ってる。国外で非合法活動をするような連中が弱い訳が無い。

 ただし、王国戦士長を倒せる部隊を持っている国だ。どんな隠し玉があるか解ったもんじゃないね。

 

「あ、因みに彼らの国だけキリスト教が伝わってるって可能性もゼロじゃないよリーダー」

「……それで我々が知るアークフレイム・エンジェルと似た存在が出てくる確率は?」

「ほぼゼロだね。そもそもユグドラシルの天使は天上位階論において分類されたのが基本になってる。それにおいて火を使うのは基本熾天使だから『火を使う大天使』ってのはちょっとおかしいんだよ。あ、でもウリエルは大天使扱いになったりするか……」

「ふざけた真似を……! 貴様等の目的は何だ! ストロノーフをどこへやった!」

 

 あ、何か顔に傷がある人が怒った。そういや治癒系の魔法って傷跡どうなるんだろう。あの人みたいに残っちゃうのかな。

 

「村の中ですよ。目的? 目的……情報収集が一番適切かな」

「だと思うよ。あとは恩を売るってのも大事だよね」

「ああ、確かに……ふむ、もうこの場で聞く事も無いか。では―――」

 

 何を、と特殊部隊の……隊長なのかなこの人? まあいいや。とにかく何をしたいのかを聞きたかったらしい顔に傷のある人が目を見開く。

 何だ、今頃身の危険に気が付いたのか? アークフレイム・エンジェルが突っ込んでくるが……遅いよ。

 

「「死ぬがよい」」

 

 リーダーは<浮遊大機雷>をバラ撒いてアークフレイム・エンジェルの半分以上をかき消す。あ、そういや今俺達って味方の攻撃当たるようになってるんだっけ……んじゃコイツで良いかな。

 俺はアイテムボックスから螺子を幾つか掴み、それを周囲に投げつける。

 

「下位眷属創造―――断頭台の権機天」

「な……」

「ば、馬鹿な!? 一人で二十体以上の天使を召喚しただと!?」

「おい! それより仮面の方もまずい! 天使が半分以上消されたぞ!」

 

 俺のスキルの一つにより、マシーナリー・プリンシパリティ・ギロチンが現れる。アークフレイム・エンジェルよりも一回り以上大きく、両手が捕獲道具、胴体部分がギロチンになっているのが特徴だ。そしてその数24体。

 特殊部隊を取り囲むように召喚したせいか盛大に驚かれる。うん、やっぱり頭数揃えるって大事だよね。でもちょっと訂正が必要かな。

 

「こいつらは君達の呼んだ天使……エンジェルとは違うよ? 機天の住人。マシーナリー・エンジェルだ」

「う、うわぁっ!?」

「くっ、何だこの力は! 離せ!」

「はっはっは、君達の力じゃ抜け出せないよ。あー、一体二人でもまだちょっと足りないか」

 

 流石に数が多いせいか何人か取りこぼしが出てるな。上位天使? 俺の眷属が同数程度の格下に負けるかよ。一緒に居た監視の権天使も含めて断頭済みだ。

 お、何か隊長さんが取り出しました? え、あれって魔法封じの水晶? 色は通常位階用みたいだけど……?

 

「ふ、ふふふ……コレを使う羽目になるとはな! ふざけた連中だが最高位天使の力で葬ってくれる! お前達! 時間を稼げ!」

「最高位天使……熾天使か? まずいな。マーキナーさん、万が一の時は頼めますか? 私だと相性が悪い」

「任せて下さい。ってか魔法ガンガン飛んできてますけど大丈夫ですか? ウザくないです?」

「まあ無効化ありますんで。さて、何が出てくるか……」

 

 何が出てくるかと俺達は興味津々で砕けたクリスタルへ視線を向け―――あぁ?

 

「見よ! 最高位天使の尊き姿を! これぞ威光の主天使である!」

「……え、と。ちょっと待って? それが切り札? 最高位天使?」

「ああそうだとも! 怯えるのも無理はない、これこそ最高位天使の姿だからな! 認めよう、お前達はこの力を使う価値のある存在であると!」

「……ゴメン。それは流石にキレるわ」

 

 好奇心から徐々に上がっていたボルテージが一気に下がったのを自覚する。スゥーってなる必要も無かった。むしろ今度マイナス方向でなりそうだわ。

 

「……無知で矮小な君に教えてあげるとね、天使ってのには位階があるんだ。天使や上位天使、権天使とかね」

「フン、今さら何を言っている! そんなものは当然知っているわ!」

「そうだね、知ってるみたいだ。でも……主天使程度で最高とは、ちょっと言わせたくないかな」

「……何?」

 

 呆れて戦う気も失せたらしいリーダーに軽く謝って隊長さんに講義を続ける。コレちょっとアイデンティティに関わる事だからね。時間裂く必要あるよ、コレは。

 

「権天使の上は能天使、更に上が力天使。で、その上に主天使が来る訳だけど……まさか、その上が無いって思わなかったの?」

「な、何を馬鹿な! この威光の主天使は200年前に大陸中を荒らした魔神を単騎で滅ぼした最強の天使だぞ! それ以上の存在など居る訳―――」

「……成程。やっぱり横から誰かに教えられた知識って訳だ。しかもそれは不完全。あ、その魔神についても色々調べた方が良いね。

 それで話を戻すけど……良いかい? 主天使の上には座天使、智天使、熾天使と呼ばれる三つの位階が存在するんだ」

 

 ふぅ、と一息ついて心を落ち着かせる。こちらとしては間違った知識を持ってくれるのは有り難くはあるが、それと同時に非常に腹立たしい。

 

「折角だから一つずつ見せてあげたい所だけど……生憎こっちも創造数には限界があってね、全て見せるのは無理だ」

「ふ、フン! 確かに一人で20体以上の天使を召喚するのは大したタレントだが―――」

『喚くな、芥』

 

 あーもう駄目。キレた。天使? 名前聞いてなかったのか? 適当言うなよZAZEL風情が。こちとら神様やってんだ、舐められんのが一番駄目なんだよ。

 ……神様はただのキャラ設定だった気もするけど、まあ良いか。今は目の前の事だ。

 

『弱き者には慈悲を与え、強き者には敬意を払うのが我の在り方だが―――我が権能を眼前にして唾を吐くのであれば、その限りではない』

 

 神の威光を言葉と共に全力で解放し、特殊部隊の周囲に中位眷属創造によって穿孔の主機天10体を同時に浮かべる。

 形はドリルのついた円筒と言えば良いのか、それの底面に申し訳程度に金属製の羽が生えている。隊長さんの虚勢もスコーンと抜け落ちたようだ。

 

『位階的には貴様のソレと今出した連中は同等であるが……さて、どちらが上だろうな?』

「ぁ、うぁ……」

『―――まだ終わりではないぞ』

 

 スキル発動。上位眷属創造―――銃腕の熾機天。

 片腕がガトリングガンになっている機械天使が隊長さんの隣に降り立つ。それも2体。それまでの奴らと比べると非常にヒロイックなデザインをしており、正に「格が違う」存在であるのが一目で解る。

 

『これが天使格の最上位、熾天使だ。まあ、正確には熾機天だがな―――己の無知を理解できたか?』

「な、んだ……」

『ん?』

「お前は……一体、何だ!?」

 

 ああ、まあ仕方がないな。ここまで見せたなら教えてやろう。リーダー、もう少しだけ我慢して下さいな。

 

『神、だよ』

「バカな……六大神のいずれとも違うぞ……」

『また聞くべき事が増えたな……正確に言おうか。我は神。機械神マーキナー!』

「きかい、しん……?」

『如何にも。人の手によって生まれし文化文明、その守り手にして全てを覆す存在。それが我。それが機械神!』

 

 弱者に慈悲を、強者に敬意を。全ての絶望を覆す圧倒的存在。

 歯車と発条の肉を持ち、留め具と螺子の骨を持つ。身体に油を流し、鋼の心を持つ人造神。

 ―――デウス・エクス・マキナである。

 

「神……貴方が、神だと言うのか……」

『如何にも。ヒトによって創られたヒトのための神である。そう名乗るに不足しない程度の力は見せたつもりだが?』

「な、ならばどうか御慈悲を! 知らなかったのです、私は、私は何も! 貴方様の事も!」

『ふむ―――駄目だ』

「何故ですか!? 人のための神ではないのですか!? その御言葉は偽りだと言うのですか! 神である貴方が!」

 

 何だ、中々信仰心のある奴じゃないか。神の威光を使っているとは言え、即座に跪いて手を合わせるとは随分敬虔な態度を見せてくれる。が、

 

『お前は他の神を信仰しているのだろう? ならば我が庇護下にある存在ではなく、助ける意味も価値も無い。そして、』

 

 ……お前さん、何か勘違いしてないか?

 

『―――神とは本来不条理なモノだからな。気紛れに人を助け、苦しめる。我も神である以上、それは変わらんのさ』

 

 

「中々有意義な情報が手に入りましたね」

「ええ、そうですが……やはり最初に隊長を使ったのは間違いでしたね。まさかあんな仕掛けがあるとは……」

 

 あの後ナザリックに戻り、手始めに知りたい事を特殊部隊の面々に聞いた俺達は現在レメゲトンの前で駄弁っていた。

 過去のプレイヤーらしき存在、それらの残したアイテム……もしかしたら生き残りも居るだろう。それらに気付かれる事なく情報を集めないと。

 

「あれもある意味情報系魔法なんですかね」

「特定状況下で発動する魔法なんでしょうね。この世界特有の……はぁ」

「そう落ち込まないで下さいよ。ああ、あと攻性防壁も発動してましたね。俺も眷属創造使い切ってなかったら何体か送り込めたんですけど……」

「まあ、嫌がらせ程度の魔法ですけどね。ナザリック自体の守りも厚くしないと……」

 

 どうも隊長さんをあんな簡単な質問で使い潰してしまったのが余程堪えているらしい。スゥーっとなるギリギリのラインで落ち込んでいるようだ。器用だこと。

 確かに上に立つ人間なら色々と知ってるだろうけど、過ぎた事は忘れようぜ。ポジティブにいこうや。

 

「……それはそうとマーキナーさん、一つ相談が」

「はいな?」

「色々と話を聞いて思ったのですが、流石にモモンガという名前はどうかなと思ったんですよ。あまりにも異質と言うか……」

「成程。んじゃ名前変えるんですか?」

 

 んー、とリーダーは長い顎に手を当てて考える。そういやこの顔って肉が付いたら物凄いシャクレ顔になりそうだよね。顎なっげぇもん。

 

「アインズ・ウール・ゴウンとか名乗ったらカッコいいよなぁとか思ったんですけど……流石に駄目ですよね」

「駄目ですね。リーダー1人なら良いでしょうけど、あくまでアインズ・ウール・ゴウンはギルド全体の名前ですから」

「ですよねぇ……まあ、当分はモモンガのままで良いか」

 

 ふぅ、とリーダーは溜息をつく。俺もだけどさリーダー、呼吸必要ないよね? ってか肺が無いよね?

 

「……それじゃ、そろそろ行きますか」

「……ええ」

 

 この先の部屋に待つ部下達の手前、あまり砕けた姿は見せられない……まあ、俺はともかくリーダーはね。

 ―――ここから先は、支配者の時間だ。

 

 

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