機械仕掛けの超越者   作:巣作りBETA

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時系列順に進むので8巻を経由します。うわぁ。


8 風呂とゴーレムとトカゲ

 

「ナザリック地下大墳墓最高支配者モモンガ様、並びにマーキナー・ハイポセンター様。御入場です」

 

 アルベドの声と共に俺とリーダーが玉座の間に入る。正直こういう堅っ苦しいのは面倒なのだが、威厳を保つためには仕方ないと言われれば従うしかない。

 正直NPC達の忠誠は尋常ではなく、それを疑うのも保つ為に演技をするのもどうかと思うのだが。もっと自然体で接した方が良いと思うんだよ俺は。

 で、コキュートスだけちょっと動いたな。流石に思う所もあるか。ボロ負けした直後なら。

 

「ナザリック階層守護者、御身の前に揃いました。何なりとご命令を」

 

 リーダーが玉座に座り、俺もいつものように手前の階段に腰掛ける。俺がここに座るとアルベドが所在なさそうにするのだが、玉座二つ置くのも変だしね。悪いが我慢して貰おう。

 で、諸々の報告を聞いてるのだが両脚羊ってデミウルゴスお前……。

 

「デミウルゴス、アベリオンシープはナザリックの大規模補給線の第一歩だ。牧場か何かを作っているようだけど、発見されたりこっちに繋がる物は無いだろうな?」

「ご安心ください、マーキナー様。万全の対策を施しております」

「なら良いけど。後は……あ、そうだ良い事思い付いた。リーダー、確かデミウルゴスに魔王作らせてたよね? あれさ、俺の顕現体でやっちゃ駄目かな?」

「おお、それは良い考えですね! うむ、ではデミウルゴス、後でマーキナーさんと相談して諸々を詰めるように」

「はっ」

 

 どうせだし牧場の防衛も出来るようなヤツにしよう。うーん、どんなのが良いかな……あ、やべ。話進んでら。

 気付いたらシャルティアがリーダーの前に跪いてた。でもさぁリーダー、流石にお咎めなしはちょっと。

 

「ねぇリーダー、それじゃシャルティアも納得しないよ。確かにワールドアイテムの可能性に気付かなかった俺達が一番悪いけどさ、せめて何かしてあげないと」

「む、それは、その……では何か良い罰はありますか?」

「え? えーっと、えーっと……ほ、保留で」

「……うむ。ではシャルティア、後に罰を決定し与えよう。下がれ」

「はい、モモンガ様。失礼いたします、マーキナー様」

 

 何だよう、そんな目で見るなよリーダー! 俺だって一般人なんだから罰とかすぐ思いついたりしないっての! あ、シズには別だけどさ!

 そしてコキュートスの番なのだが、中々に良い成長をしてくれているようだ。しかしシャルティアに罰を与える身としては、任務を失敗したコキュートスにお咎めなしは駄目だ。

 

「―――己の手でリザードマンを殲滅させよ。アインズ・ウール・ゴウンに敗北は許されない」

「反省点はデミウルゴスの手を借りたみたいだし、今度こそ1人でね。一回負けた? 最終的に勝てばよかろうなのだ!」

「……オ、御二方ニ御願イシタイ儀がゴザイマス!」

「……あぁ?」

 

 おいおいおいコキュちゃん何言ってくれてんの? 流石にそれは違うでしょうよ。ねぇ、お願いする場面じゃないでしょ? 思わず立っちゃったよ? 足踏んじゃったよ? ん?

 

「待ってくださいマーキナーさん。一応聞くだけ聞きましょう」

「いやまあ聞きますけどね。タイミングがおかしい……いや、それも今後教えないと駄目って事かな」

「ですね。それでコキュートス、お前の願いとやらを言ってみろ」

「……ハッ! リザードマン達ヲ皆殺シにスルノハ反対デス。何卒御慈悲ヲ」

 

 ふむ、これはアレかな。武人的な敵への共感ってヤツかな。んー、ちょっと危ういねぇ。俺が言えた事じゃないけど、こういう部分が最終的にピンチを招くんだよ。

 

「俺達が慈悲をかけるという事は、従属による繁栄を望ませるって事で良いのかな?」

「ハッ。今ハマダ未熟ナ者ガ多イデスガ、今後屈強ナ戦士ガ生マレタ時ニナザリックヘノ忠誠心ヲ植エ付ケ、部下トスルノガ利益ニナルカト判断シマシタ」

「確かにリザードマンの死体では人間と変わらず、彼らに固執する必要もないが……アンデッドの方が費用対効果が良いし、忠誠心は言わずもがな。リザードマンを従えた所で数を増やしやすいという程度しか利点が見当たらないな」

「ソ、レハ……」

 

 確かにリーダーが言った程度の利点しか思いつかない。どうせリザードマンの装備じゃ原始的過ぎて俺の眷属創造の材料には使えなさそうだし、俺としてはどっちでも良いんだけどな。

 

「モモンガ様、マーキナー様。横からの発言、お許しください」

「ふむ、どうしたデミウルゴス?」

 

 と、何もメリットを提示できないコキュートスに代わってデミウルゴスが口を挟んだ。これがユウジョウか。

 

「先程のコキュートスの提案ですが、それに加えて私の愚案を聞いて頂ければと思いまして」

「言ってみろ」

「はっ。今回のリザードマン達についてですが、今後ナザリックが何処かを支配し統治する際のテストケースに使えるのでは」

「……まためんどくさそうな未来図が出て来たなオイ」

 

 俺とリーダーで分担してナザリックを回すのにヒィコラ言ってる中、更に仕事が増えると言うのか。ああいや、実務はNPCに任せっきりなんだけどね。

 とは言え今後の展開次第ではあるが、どこかを手に入れるって事は無くもないのか? 個人的には御免被りたいけど。

 

「……マーキナーさん、何か意見は?」

「まあ良いんじゃないですか? リーダーにお任せします」

「丸投げしやがったコイツ……では、リザードマンの村は殲滅から占領へと変更。コキュートスへの罰はその実行という事にする。

 それから守護者達よ、命令に関して思案を巡らせる事を止めてはいけない事をよく覚えておけ。何が最もナザリックの利益に繋がるか、更に効率の良い手段があるか……常に考え続けるのだ」

「「「はっ!」」」

 

 いやだって今後どこか支配しても俺は関わらない可能性高いし。余程面白そうじゃなかったらリーダーにお任せしますですハイ。

 

「では―――軽くだが、我々の力を見せてやろうか」

 

 

「ぶはははははは! あはっ、あはははっ、あひはははははは!」

 

 リザードマンの村へ改めて宣戦布告した後、俺達はアウラが作ったログハウスへ来ていた。と言うかリーダー、わざわざ作らせずにグリーンシークレットハウスの一つでも渡せば良かったんじゃね? 駄目?

 で、今は何をしているかと言えば遠隔視の鏡でリザードマン達の様子を観察していた。正確に言えば情事の覗き見だが。生存戦略ってやつですかね。

 

 ついでに今俺が座っているのはヨツンヴァインになったシャルティアの背中だ。いや最初はリーダーが座ろうとしたのだが、それだとご褒美になるからと俺が代わったのだ。

 誤算があるとすれば俺でも充分ご褒美の範疇だったという事か。リーダーは諦めて骨製の二人掛けのソファーに座っている。

 

 それとアルベド、羨ましいからって腰をくねらせるな腰を。男性陣から離れなさい。

 

『……それよりマーキナーさん、先程の話ですが』

『んー、シャルティアの事? まあ確かに一番考えられるのは偶然だよね。ただシャルティアがフル装備にならざるを得ない相手が尻尾巻いて逃げるかってーと……ねぇ?』

『まさかそれも偶然……有り得ますかね?』

『どうですかねぇ? ただそれなら監視が来てないってのも納得できます。他に情報系魔法の反応があったのは……カルネ村の時ぐらいですか?』

 

 俺達がやっていたように味方の状況把握にも情報系魔法は使える。つまりあの時リーダーの攻性防壁が発動してたのは連中の味方、つまり法国の連中である可能性もある訳だ。

 その情報収集部署が壊滅的なダメージを受けててんやわんや……とはちょっと考え辛いか。でも一般的な魔法使いが第三位階に到達できれば凄い、って世界なら国家単位でもそんなもんなのかな。

 うん、やっぱ情報足りねぇ。

 

『やはりどこかの情報網に便乗できれば良いんですけどね。どうにも情報が足りなくて……』

『だよね。どうする? いっそ周辺各国の主要都市にエ・ランテルばりの監視体制でも敷く?』

『バレた時が怖いのでそれは保留で……いや、いっそそれも魔王のせいにしてしまいましょうか?』

『お、流石リーダー冴えてる。良いね、人造魔王の悪行はガンガン積もう』

 

 この人造魔王計画は冒険者チーム「アインズ・ウール・ゴウン」の冒険譚の締めくくりとして登場させる予定の魔王についての計画だ。

 悪行の限りを尽くし、恐怖と混乱を撒き散らした魔王は因縁浅からぬマキナとモモンの活躍により倒れる―――というのが今描いている決着の図だ。

 

『それも確実に私達に繋がらないよう、準備が整ってからですけどね……とりあえずその方向で準備させておきますか』

『了解。ここでマッチポンプだって言われたらどうしようもないしね。今日は部下の頑張りを見守りますか』

 

 それじゃあ頑張って来いよ、コキュートス。

 

 

 あれからちょいと経った頃、俺はリーダーの執務室に来ていた。割と普段から入り浸ってはグダグダしているが、今日はちょっとだけ事情が違う。

 

「さて、ルプスレギナ。お前さん、何か言う事はないかい? 仕事に関して」

「仕事……カルネ村に関しての事でしょうか?」

「うん。いやね、今日エ・ランテルで話を聞いたんだけど……何、東の巨人に西の魔蛇がどうしたって? お前さん知ってた?」

「は、はい。その件に関しては知っています」

 

 居心地悪そうにこちらを見るルプスレギナ。身体の前で重ねられた手によっておっぱいがギュっとなってるがそこはまあどうでもええねん。ユリの方がデカいし。

 

「……そうか。何だルプス、お前あの村の仕事嫌か? 不満か? それなら他の奴に代えても良いんだぞ?」

「い、いえ! そんな事はありません! あの村での仕事は楽しいです! 不満など何も!」

「じゃあ何で報告しなかったよ」

「それは、その……大した情報ではないと思い……」

 

 ドゴンと鈍い音が響く。何かと思えばリーダーが机に拳を叩き付けている音だった。うわーびっくりした。

 

「……ルプスレギナ。お前には状況が大きく動きかねない際は報告しろと言ってあった筈だな?」

「そ、それは……」

「あー、まあリーダー落ち着いて。俺もちょっとネチネチ言い過ぎたな。なあルプー、さっき言った2匹のモンスターだが、ハムスケと同程度の強さらしいな?」

 

 静かに怒っているのか、スゥーっとなったリーダーを見て俺も頭を切り替える。どうやら認識の齟齬があったようだ。それならこれは命令を下した俺達の責任だろう。

 

「そのようです……」

「確かにハムスケ程度であればお前なら問題なく撲殺できるだろうよ。けどな、あの村はハムスケ1匹が暴れただけで全滅するような連中だぞ? それで状況が大きく動いてるって思わなかったか?」

「あ―――」

「それだな。今後命令に付け加えるとするならお前の基準で考えるな、だ。あの村は今後のナザリックの補給拠点の一つになる可能性があり、何より俺達がゴーレムまで貸したんだ。それが壊滅するのは非常に腹立たしい」

 

 俺達について辿られる危険性が無い訳では無いが、それ以上に補給拠点を増やすのは必要な事だ。最悪の場合は囮にだってなる。

 リーダーとしては技術を囲ってしまいたいようだが、それではナザリック全体が発展する余地が無い。個々の強さが上がらないにしても、物資を増やす事は戦力増強に直結するからだ。

 

「あ、そ、そうです! こ、これ! ンフィーレアが開発した新たな治癒のポーションです!」

「……先に出せって言える空気でも無かったな。まあ、これであの村の拠点としての価値は高まったね」

 

 慌ててルプスレギナがポーションを取り出したのを見て、怒りが再燃しそうになるがぐっと堪える。能力の詳細についてはまた追々調べる必要があるな。

 

「可能ならナザリックに監禁して研究だけをさせたい所だが、信頼関係を構築して自発的にやらせた方が効果は高まるとデミウルゴスも言っていた……故にあの村、特にンフィーレアとその周囲の者達は我々の庇護下に置くのだ。後は何かあるか?」

「か、畏まりました。では一つ。村をモンスターに襲わせ、そこでモモンガ様達が助ければより恩義を深く感じると思うのですが……」

「うむ、悪くない手だ。しかし我々の主戦力がモンスターである以上、彼らのモンスターへの悪感情はなるべく避けたい。人間等、我々が多く傘下に置かない種族ならまた別だがな。

 今後はンフィーレアやその周囲の人間を確実に守るように。多少は遊んでも良いがポーション研究に支障の出ない範囲にしておけよ」

「はっ!」

 

 一通り言う事も終わったのでルプスレギナを解放する。一応後で抜き打ちチェックは必要だな。仕事自体はちゃんとやってくれる筈だが……。

 

「そうだマーキナーさん、このポーションの製作祝いとして彼らには何か褒賞を出そうと思うのですが……何が良いでしょうか? やはり食事とかですかね?」

「ん? ああ、それで良いと思いますよ。あんまり高いもん渡しても持て余しそうですし……あの角笛が金貨数千とかの世界ですし、下手に何か渡すよりは良いかと」

「解りました……っと、会場はどこにしましょうか? 個人的には一度ナザリックの廊下の1つも見せてやろうかと思うんですが」

「異議なし。九階層ぐらいなら適当に見せてやっても良いでしょ」

 

 と言うかアイツらだと他の層だと死にかねない。精々六層ぐらいか?

 

「それじゃあマーキナーさん、私は巨人と魔蛇とやらを見てきます。あ、それと今日の9時ぐらいに守護者の男性陣とスパに行くつもりですけど、どうします?」

「お、良いですね。んじゃ適当にカルネ村の様子見てから行きますわ」

「解りました」

 

 などと言い、ぼちぼち別れて数時間後。俺はスパリゾートナザリックへと足を向けていた。チェレンコフ湯等のおかしな湯もあるが、最早現実では味わえない最高級銭湯だ。

 すると反対側から見慣れた人影が3つ。有角有翼、ゴスロリドレス、幼女エルフ。確認するまでも無くアルベド、シャルティア、アウラの3人だ。

 

「あら、マーキナー様。マーキナー様もこちらをご利用ですか?」

「ああ、リーダーと男の階層守護者皆でね……あれ? ヴィクティムって男だっけ? 女だっけ?」

「「「………。」」」

 

 皆気まずそうに視線を逸らす。男性陣にはリーダーから話が行ってるだろうけど……もしかしてアイツ、ナチュラルにハブられたのか?

 

『あー、ちょっと良いかヴィクティム』

『はい、お呼びでしょうかマーキナー様?』

『今動いても大丈夫か? これから俺とリーダー、それに守護者皆で風呂に入ろうと思ったんだけど。九層のスパリゾートな』

『はい、大丈夫です。それではご一緒させて頂きますね』

 

 ホニャホニャとした声を最後にそっと<伝言>を切る。うん、やっぱりアイツナチュラルにハブられてたわ。

 風呂程度で動かすってのもどうかとは思うが、どうせ侵入者なんざそうそう来ないし早期警戒網もキチンと動いている。たまには休める時間も欲しいだろう。

 

「……後で謝りんしょう」

「うん……」

「そう言えばあの子、本当にどちらに入るのかしら……」

「まあアイツに決めさせようぜ。それとアルベド、にじり寄るな。股間を押し付けるな」

 

 これは失礼致しました、とアルベドが下がる。どうせナニもないからどうしようもないぞ。俺とドッキングするには専用端子が必要になるからな。

 

「シャルティア……だと少し不安だな。アウラ、アルベドの監視頼むぞ」

「はいっ!」

「ああっ、そんなご無体なっ!」

「何やってんですかマーキナーさん……と、お前達も来てたのか」

 

 「私戦力外!?」とへこんでいるシャルティアを皆でスルーしていると、丁度用事も終わったのかリーダーもこちらにやって来た。後ろにはコキュートスも居る。

 

「これはモモンガ様。そう言えばモモンガ様もマーキナー様もこちらに来ている御姿は見掛けませんでしたが、普段は部屋のお風呂をお使いに?」

「ああ、そうだな。骨の体だと中々細かい所までは洗い辛くてな……」

「俺は普段からシズに任せっきりだからなー。一応一回使ったらパーツごとに摩耗確認とか洗浄はしてるけど」

 

 機械系キャラクターは疲労が無効化される代わりに自身の体を構成するパーツにアイテムと同様に耐久力が設定されている。

 当然よく使うパーツは耐久力が減らないようにしてあるのだが、こっちの世界ではそれがどういう風に働いてるか解らないので念入りにチェックをしているという訳だ。

 これは俺自身に大きく関わる事なので、俺の部屋の一角では機械系モンスターがずーっとスクワットし続けているという随分シュールな絵面が出来上がっている。まあ一種の耐久度試験だな。

 

「機械系はなるべく水に濡れないように、と伺っておりますがマーキナー様はやはり大丈夫なのですか?」

「モノによるな。耐水性の高いパーツなら問題ないし、神器級のやつは属性防御やらが必然的に高いからそこでカバーしてある。コアだけならもっと大丈夫だ」

 

 つまりアレだ、生活防水。

 

「おや、皆様お揃いのようですね。お待たせして申し訳ありません」

「あ、マーキナー様。ヴィクティムさんは僕達と男湯に入るみたいです」

 

 どうせだしデミウルゴス達も待つかと本格的な話し込みの体勢に入った所で丁度来たようだ。マーレがヴィクティムをぬいぐるみのように抱えている。

 

「お呼び頂き光栄です」

「……済まん、ヴィクティム。お前を呼ぶのを忘れていた」

「いえ、お気になさらず。これでもナザリックの防衛の一角を担っている身、自分ではそこを離れるなど考えもしませんから。

 ですが、私がこのような場に呼ばれたという事はマーキナー様に守護者の皆やシモベ達による警戒や防衛を信頼して頂けているという証拠にもなります。

 私の務めを妨げないようにというモモンガ様の御気持ちも、皆の頑張りを信頼して頂いているマーキナー様の御気持ちも共に嬉しいのです」

「ヴィクティム……! そうか、解った! では今は共に湯に浸かろうではないか!」

「はい!」

 

 え、ええ子や……! ヴィクティムめっちゃええ子や……! ほら、デミウルゴスなんか感極まって号泣してるし!

 あとリーダー、本当に素で忘れてただけでしょ? ねぇ、そうなんでしょ? ヴィクティム小脇に抱えて逃げようとしてるけど、忘れてたんでしょ?

 

「まあとりあえず入るか……と、それから風呂場で暴れたりすんなよ?」

「「「はい」」」

 

 逃げ出したリーダーの後を追って男守護者3人と脱衣所に入る。ヴィクティムとコキュートスは普段から全裸だからこういう時は早いな。まあ俺も一発なんだけどさ。

 

「ふぅー」

「「「えっ!?」」」

「ん、ああ知らなかったか? マーキナーさんの本体はカロリックストーンだけだぞ」

 

 ガションとパーツを脱いで脱衣所の隅に置けばそれで完了だ。骨だけで動いてるリーダーもリーダーだが、ふよふよと空中に浮かんでる俺も俺で中々謎だ。

 因みにこんな状態でも五感は正常に働いており、浮いているから足は要らず、多少雑だが魔法で物を動かす事も出来る。

 

 勿論この状態ではHPと防御力はカロリックストーン自体の耐久力だけしか無いし、コキュートスのように外皮鎧でも無いのでステータスも最低限しかない。

 機械系キャラクターでコアが存在している場合はステータスの大半を体のパーツに依存してるので、シズはコアを使わないタイプにしているぐらいだ。

 

「カロリックストーン……確かワールドアイテムでしたね。ガルガンチュアにも使われていた筈ですが」

「ああ、アレはギルドで取ったやつだな。コレは俺がコツコツ集めたアイテムを引き換えにゲットしたやつだ。流石に俺程度の発言力じゃギルドのワールドアイテムは持てないさ」

「幾ら入手が簡単とは言え、よくそこまでアイテム溜められましたよね……」

「伊達に生産職メインで取ってないっすよ」

 

 ふよふよと浮かんだまま浴室へと向かう。まずは体を洗うべきなのだが、生憎と魔法で洗うと雑になるのだ。

 そして今はマーレがリーダーを洗い、デミウルゴスがコキュートスを洗っている。それなら残った奴に頼むべきだろうな。

 

「悪いがコキュートス、背中……と言うか体丸ごと洗ってくれるか? お湯をかけてスポンジで磨いてくれればそれで良い。あと折角だしリーダーはヴィクティムを洗ってやってあげて」

「ああ、それが良いですね。ヴィクティム、こっちに来い。綺麗にしてやろう」

「身に余る光栄、恐縮です。お願い致します」

「デハマーキナー様、コチラモ。力加減ニハ注意シマスガ、不具合ガアルヨウナラスグニ仰ッテクダサイ」

 

 俺のコアであるカロリックストーンは多少角ばった球体だ。なのでどんなに丁寧に洗ってもあっという間に終わる。

 ざばっとお湯をかけて貰った俺は真っ先に浴槽に浮かび始めた。ほどなくデミウルゴスも体を洗ってやってくる。うーん、ナイスバルク。

 

「おや、少し熱め……ああ、マーキナー様ですか?」

「ん、悪い。少し熱量漏れてたか」

「いえ、私は熱めが好きですのでこれはこれで……」

「でもコキュートスは嫌だろ。少し冷ますぞ」

 

 ついうっかりカロリックストーンの熱量が漏れていたようだ。俺は魔法を使い、周囲の湯の温度を少しだけ下げる。

 

「ム……」

「あー、やっぱまだ熱かったか。悪い、少し離れた方が良いな」

「イエ、ソレデシタラ私ガ離レレバ良イ事。私ノ方デ調整シマス」

 

 身体を洗い終えて湯船に入ったコキュートスが何度か左右に動き、丁度いい場所を見つけたのか停止する。その頃にはマーレとヴィクティムも湯に浸かっており、リーダーが来たのはそれから暫くしてからだった。

 

「また時間掛かったねリーダー。やっぱ隙間多いと大変?」

「ですねぇ……普段は専用のスライムを使ってるぐらいですよ」

「スライム風呂デスカ……」

「アインズ様の御尊体をお清めできる仕事……羨ましいですねぇ」

「はい……」

「確かに羨ましいですが、我々は我々の為すべき事を致しましょう。それに、その理論で言うとマーキナー様の御世話を一手に担っているシズ様に嫉妬が集まってしまいます」

 

 ねぇリーダー、ヴィクティムが超良い子なんだけど。下手するとデミウルゴスより気配りできる子っぽいんだけど。凄いよこの子。言葉自体はホニャホニャしてるけど。

 で、何か女湯が騒がしいんだけど……ん? 風呂、騒がしい、ギミック……あっ!

 

 ―――マナー知らずに風呂に入る資格は無い! これは誅殺である!

 

「……何でしょう、今の声は」

「……リーダー、一回出ますか。その後もう一度入り直しましょう」

「……そうですね、そうしましょう。因みに今の声はるし★ふぁーさんだ。あの人には随分と迷惑をかけられたものだ」

「特に俺なんかあの人のストッパーがメインの仕事だった時期もあるしね……あー、何か思い出したら腹立って来た。カロリックブラスターでもぶっ放してやろうか」

「風呂場が壊れるんでやめて下さい」

 

 はい。

 

 

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