第17話
「おい! お前は何者だ? 本当に
青髪のヒンヌー眼鏡っ子が
ヤバイ! オレが転生した平成人だってのがバレタのか!? これは困ったぞ。どうやってごまかしましょうか……いや、待てよ。それがバレタからどうだって言うんでしょう? バレタっていいじゃない? どうせこの時代の人に言ったって理解してもらえないんだから、言うだけバカを見るだけでしょ。
「これは
「どうなさったも何も無い! お前だろ僕をこんな源平合戦の時代に呼んだのは!」
「
ああ珍しい、僕っ子ですか。以前話した時の
「うるさい!
「
「ちょっ! 違う! この時代へ呼んだのはって事だ! わざと間違えただろ!」
「わざとじゃないですよ。あと、少々お声が大きいので他の方に迷惑です。あちらの部屋へいきませんか?」
わざとに決まってるじゃん!
「まあまあ二人ともその辺に……」
二人で口喧嘩をしている様に見えた梶川くんが止めに入る。向こうが一方的に捲くし立てているだけなんだけどね。
◇
ところ変わって別室。さっき言っていたあちらの部屋の事ね。
この部屋にはオレと
「あんまり騒がしいと困りますのでこちらへ来て頂きました。とにかく何をお疑いなのかさっぱり判らないので、順序立てて説明をお願いします」
「お前が……!」
「ああ、はいはい。判りました判りました。まずは一度深呼吸して冷静に。そうしないと会話にもなりませんよ」
「う……うん」
行盛様は十五歳。翻ってオレは今生では十一歳。十一の子供が十五の少女に説教なんてさせるなって言うんだよ。周りに人が沢山居たら体裁の悪い事この上ない。
「……判った。まずは聞いておきたい。君は誰なんだ?」
「誰なんだと言われましても、私は
何を言っているんだこいつ? みたいな目で見られていますから。
「そう言う事を聞いているんじゃなくて!」
あー、また怒り出しました。オレがおちょくったのもあるけど、沸点が低すぎるんじゃないの?
「あのさあ、もしかしたら俺らと一緒でこの人も転生して来たんじゃないの?」
ば、バカ……。梶川くんったら何を言っていやがりますか! それにちょっと間違ってますよ。オレは転生で間違いは無いけど……厳密に言うとTS転生ってやつです。梶川くんの場合は頭を打ったら平安時代に居たって……うーむ、これも転生にはなるのかな?
「ば、バカ。なんて事を言いやがりますか!」
まだ相手の正体もよく判らないと言うのに梶川くんがばらしちゃいましたよ! もう、モロバレですわ。
◇
難しい顔をしながら
一応、大体の経緯は話しました。仕方が無いですね。最初からオレの一番の家来が言葉を滑らせるんですから、駆け引きなんて何も出来ないまま今までやってきた事を話しちゃいましたよ。
「たぶん、私達三人はこの時代へと送り込まれたチート転生者なんですよ。……きっと」
「俺には今のところチート能力は一つも無いけどね」
オレがチート転生者云々の話をすると梶川くんは残念そうに呟く。そりゃあ、
まあ、オレには能力が一つ、あるにはあるけど人に言えないしなー。
「君は車に轢かれて赤ん坊スタートの転生者。そちらの君は頭を打って気がついたらそのままの体での転生者。そして僕は朝起きたらこの体に……」
行盛様からその説明を聞くと転生にも色々あるなー って感心するやら理不尽さを痛感するやらでなんとも面白い。
転生者がまるまる三人この部屋に居るのはなんだか意味があるのではと考えるんだけど、やっぱアレだよなー。一の谷の後の夢だか何だか判らない空間で、清盛爺に頼んであった相談出来る人材の一人なんだろうなー。
誰彼構わずに転生させられちゃ、この人も困るだろうに……。
でも、まあ、清盛爺の事だから悪いようにはしないとは思うんだ。平家が安泰なら程なく元の世界へと帰れるでしょう。
しかし、オレはどうなんだろう。元の世界では男のオレが普通に生活しているらしいし、わざわざ戻る必要はあるんでしょうか? まあいいや、今は元の世界へ戻る為に頑張らなきゃね。
ってことで、その為にもまずこの行盛様を味方に付けなければ。
「播磨守様。貴女は平成の頃はどんな方だったのですか?」
「僕ですか。きわめて普通ですよ。ただの大学生ですし、この時代の事はあんまりわからないし……。でも、元々歴史に興味があって戦国時代とか好きだったんだけど、最近は平安時代。源平合戦を調べ始めたんだよ。まだ小説やそこいらの上辺だけの知識しか無いんだけどね」
「なんだ、普通に喋れるんじゃないですか」
「なっ! 君が一々癪に触る事を言うからじゃないか!!」
うわ、また怒った……。いや、今のはオレが悪いんだけどね。口は災いの元ですから気をつけないと。
「ごめんなさい。怒らすつもりは無かったんですけど普通に喋っているのが珍しくてつい……。」
「ふん」
「まあまあ、
梶川くんが誰をフォローしてるんだか判らない様な言い方で行盛様に話しかける。って言うか、君は女の子がいると耐性が無いから途端に話せなくなるんじゃなかったっけ?
「判った……。勘弁してやる」
許してはもらいましたが今度は警戒しているようです。もうおちょくったりしないから! 本当だから!
「許して頂きました。ありがとうございます。でも、最後に一つだけ。
「あっ、えーっとですね……言い難いんだけど、僕はさ。実は……実は……元は男なんだよ! 男子大学生だったんだ。今は自分の体って言っても元は違う女の人の体で……。」
「ホント! 元男性なのですか? やった! 私と同じだ! 同士を見つけちゃったよ!」
世界で二人しかいないと思われる同士を見て、感激のあまり思わず行盛様に抱きついてしまっていた。オレも感受性が高いなー。
「え、君もそうなんですか!?」
「うん。元男ですよー。安月給で働いてたオッサンです。でも、こっちへきて随分経ちますからほとんど女性が身に付いていますけどね……」
「いいなあ。僕はまだこの体になって十日くらいだから女性の体がまったく判らないんだ。それに僕、凄くこの体に興味があるんだけど……これって変だよね? うう、どうしよう」
先程までとはうって変わってしおらしい態度をとる青髪のメガネっ子。オレほど小柄ではないけど世間一般で言えば小柄で通るその小さな体は恥ずかしそうに下を向き、上目遣いだけでオレに訴えかけている。
これは可愛い。メガネっ子も割りと良さそうではありますね。
あー、あの小さなお口に入れる事が出来たらさぞ……でも、仕方が無いのです。もうオレにはアレは無いのですからねー。
それにオレにはちゃんと梶川くんがいますから。でもその場合入れられるのはオレの方か……。まあ、それもありです! って言うか未だにこっちに手を出してこない梶川くんはもしかすると不能なんでしょうか。今でも定期的にアピールしているというのに。
うう、怖いから考えるのをやめよう。
「うーん。播磨守様しっかりして! 元男ですもの! 女性の体に興味があるのは当然ですよ。しかもこんなに可愛らしいメガネっ子になっちゃったらいじったり触ったりしたくなりますよ! うん!」
行盛様の目の前に座りなおすと彼女の両手をオレの手で握る。そしてそのまま前のめりになって迫る。
オレは力強く頷いて握っていた手に少しだけ力を込めた。異性になっちゃったけどこれはもう仕方ない事なんです。そのうち慣れますって!
「えっ! じゃあお風呂でいじったり、寝る前に布団で色々しちゃったけどこれって普通なんだね!」
「え、あ、うん、普通です……よ?」
オレもよくやってます。ハイ。
「えーっと上級者からアドバイスを言わせてもらえるなら、無意識に声を出しすぎると周りにまで聞こえますから、夜寝る前にするのなら布団の端を噛んで我慢するといいですよ」
「やっぱり聞こえるものなのですか?」
「うん。油断してると大きな声出しちゃいますから、してる時は頑張って声を我慢してくださいね」
その我慢してる声が耳に入るとまた凄く燃えるんですけどね!
「あのー、二人とも俺がここに居るのを忘れていないか?」
あっ……。忘れてた。
「わ、私が梶川さんの事を忘れるわけがないでしょう」
◇
「それじゃあ、平家が滅亡せずに安泰だったら現代へ戻れるんですね」
清盛爺の言った事をオレはそのまま
「そう言う事です。だから安心してくださいね播磨守様」
「よかったー。僕はこの先どうなるかと思ってたんですよ。この行盛って人物はたしか壇ノ浦で入水自決するはずですから、いやーよかったよかった」
行盛様も喜んでくれています。今生ではなんとも上手く行かせたいものです。
「ただ、その官職名で呼ばれると格好良いんだけどさ。やっぱりくすぐったいからこの三人で居る時は名前で呼んでくれないかな?」
「名前って前世の名前をですか?」
「いや、それはさすがに他人に聞かれるとリスクが高すぎるから、普通に行盛と呼んでくれないかな」
「判りました。播……行盛様がそれでいいのなら。では私の事も美盛とお呼びくださいな。梶川さんもそれでいいですよね?」
「おう。それでいいよ。よろしくな行盛様」
オレと梶川くんから様付けで呼ばれると行盛様はちょっと不満顔をしたけど、こればっかりは仕方が無い。慣れてもらう他ないね。
◇
「あのさ、一つ聞いてもいい? 私はこの春、越後に赴任する事になりそうなんだけど何かアドバイスはありませんか?」
「うーん。そこまでの知識は無いけど……。あっ、
「わ、判りました。教えていただきありがとうございます……」
そう言えば前世は越後から越中、加賀ってルートで侵攻してきたんだったね。って言うかよく考えたら最前線じゃないか!?
これは何とかしないといけないね。三国志で言うところの
うあー、こんな事なら前世で目ぼしい人材をチェックしておくんだったー!
「あのさ、もう一ついいかな?」
「僕に判る範囲ならいいですけど」
「私って最前線に行くんですよね」
「越後だったらそうなりますね」
「だったら、負けない為にすっごく強い武将に心当たりは無いですか?」
我ながら呆れた質問だなー。でも仕方が無いじゃないですか。こっちは命がかかっているんだから。
「そんな簡単に人材が見つかれば……あっ、そうですねー、越後やそのあたりで有名な人は
「ふむふむ。
「スカウトですか……。当たって砕けるんならいいんじゃないですか」
「どうして?」
「だって向こうは下野の足利荘に根を張っている豪族ですよ。どうやってそこの本家筋をスカウトするんですか。」
うーむ。まあ、そう言われればそうなんだけどね。だって強い武将は必要なんだもん仕方ないじゃない!
ですから、今は無理かもしれないけどそのうちに何とかしたいですね。
えっと、足利さんね。名前は覚えましたよー!
そう言えばと梶川くんの方を見ると話はチンプンカンプンなんだろうけど真剣には聞いているのが判る。ごめんね取り残しちゃって。
まあ、前世とは変わっていますから、何も起きずに木曽さんも大人しくしているかもしれませんし……。
もう
こんな感じでとにかく三人は一蓮托生って事でそれぞれ帰路に着いたのでした。
ああ、一つ何かいい事があると、大変な事も一つ増える。何事も全ては上手くは行かないですね。