よしもり ~平家のお姫様に転生したオッサン~   作:りじゅ

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久々に梶川くん視点です。
あ、オリキャラがまた増えましたよー。













23 ロリっ子の抱き心地 ●梶川くん視点

第23話

 

 

 

「それで許しちゃったのですか!?」

 

「う……うん」

 

 ここは越後国府の美盛(よしもり)ちゃんの部屋。この部屋の主は聞いてるこっちが落ち込みそうなくらいの消え入りそうな声で弱々しく返事をする。まだ昼も過ぎたくらいだと言うのにこの部屋だけは薄暗い気がするのは気のせいだろうか?

 

 質問しているのは経盛(つねもり)さんが付けてくれた五人の郎党の一人、酒田経成(さかたつねなり)ちゃん。双子姉妹の姉で頭脳派論客を自負する十八歳の女の子。

 武の方はそれほどでもないけど政略に通じていて何度も経盛さんに助言をして活躍したらしい。だから名前に『経』の一字を貰う程経盛さんの信頼は厚いんだって。

 俺はこっちの世界に来てかなりの期間が経ってから会ったんだけど、そんな凄い印象じゃなくて普通のどこにでもいる女の子にしか見えなかったから、まさか政治関係の巧者だなんて思わなかった。

 

「あちゃー」

 

 美盛ちゃんの返答を聞いてそのまま頭を抱える経成ちゃん。俺よりも年上なんだけど何かと仕草が可愛らしいし、何よりも赤毛のツインテールが幼い印象をあたえてるから『さん』付けじゃなくて毎回『ちゃん』を付けてしまう。可愛いから仕方が無いね。

 

 周りを見ると経成ちゃんだけじゃなくてこの部屋にいる面々がやはり似たような表情なのが判る。

 

 

 

 今この部屋に居るのは九人。都から国府へと派遣されてきた美盛ちゃん一行の主だった人達だ。

 

 上座には俺の主の美盛ちゃん。赤地にいくつか白の花びらを浮き出させている着物に真っ赤な内掛けを着て傍らにある脇息に肘を付いている。

 明るい服装に反して今はすっごく落ち込んでいるなー。

 普段ならいたずらが好きそうな大きな可愛らしい釣り目でにこにこしてたりニヤニヤしたりしているんだけど、怒られるのを心配しているのか目をきょろきょろさせている。明らかに挙動不審だ。

 

 そうだよなー。仕方が無いって言えばそれまでなんだけど、昨日の宴会で美盛ちゃんが前越後介(さきのえちごのすけ)紀親友(きのちかとも)さんを更迭出来ずにそのまま残しちゃったからなー。

 まあ、もっともこれは美盛ちゃん一人の失態じゃなくて俺達みんなが情報の分析や根回しが出来なかったからってのが大きい。

 だからキョドってる美盛ちゃんだけに責任を押し付けらんないんだよ。

 

 でもそれはそれ。これはこれ。キョドってる美盛ちゃんも可愛いからしばらく見ていたいな。

 

 

 

 その美盛ちゃんを手前に郎党五人が座る。

 酒田姉妹に、この中では最年長の桜川爺さん。おっちょこちょいで気分屋の赤橋さん。それに五人のまとめ役、神田先生。

 それぞれ一癖も二癖もありそうな人材だ。

 

 

 

 さらに一番外側には畠山さん親子。武将としてはこの部屋の誰よりも活躍するであろう親子なんだけど、この間加わったばかりの外様(とざま)だから遠慮をしているのか一番遠い場所に座っている。

 さすがは日本一の名将って言われるだけの事はあるみたいで自らを律する事にも長けているね。行盛(ゆきもり)ちゃんが言うだけの人柄ではある。

 

 

 

 そして美盛ちゃんの傍らには俺こと梶原勝利(かじかわかつとし)

 もしこの場が二人きりだったのなら抱っこして頭を撫でてあげてるところだ。だってあまりにも弱々しいからそれくらいはしてやりたい。

 でも、そんなことをすると美盛ちゃんはこれ幸いと攻勢に出てきそうではあるけどね……。主に肉体関係を迫る的な勢いで。

 俺としては健全な男子でさらに年端も行かない女の子(ロリ)が大好きだから願ったりかなったりなんだけど、やはり惚れ薬の効果も半分はあると思うと……。

 いや、だがいつかは答えてやらなければいけない事だしなー。

 

 あー、もー! 誰か! ヘタレな俺に小さな一歩を踏み出させてくれ! 

 

 

 

 

 

 

「まあまあ、我らが主ばかりが責任を負う事もありますまい。向こうの方が用意周到で尚且つ必死であったので御座ろうよ。要するに我ら全員で緒戦の敗北を認識して、これからを論ずるほうが良いのではないか?」

 

 白髪(しらが)をいじりながらこの中では誰よりも年長の桜川さんが場を和ませようと口火を切る。

 昨日の懺悔を聞くよりも、明日からの事を話し合おうって方向に持って行きたいようだ。

 うんうん、全面的に賛成だわ。昨日の話をずっと悔やんでいてもはじまらないからね。

 よし、俺も同調するぜ!

 

「賛成! そうだよ。これからの事を話し合おうぜ!」

 

 俺がこう言うとみんなも待ってたとばかりに同意する。

 

「いかにも!」

 

「そうですよー。姫様。そんな落ち込んでないでもっと気をしっかり持ってください!」

 

「そうじゃな。前を見るしかないな」

 

「判りました!!」

 

 異口同音する俺達。美盛ちゃんの為だからね。こうと決めたら策を練らないと。

 だって、二の矢でも政治的に負けましたじゃ、美盛ちゃんに申し訳が無い。ここは一丁……。

 

 

 

「さればこれより内輪ではありますが政儀を始め申す」

 

 俺が何かを言おうとしたら郎党筆頭の神田さんに先を越されてしまった。……まあいいけどね。この人なら安心だろうから。

 気分屋の赤橋さんに司会をまかせるよりはよっぽどいい。

 

「現在我らの固有の武力は畠山殿の軍勢が中核となっており申す。しかしながら畠山殿が前線にいる場合、いざと言う時に旗本を守備する部隊がいない事を意味するものであり、非常に危険な状態と言って差し支えない」

 

 神田さんがまずは軍事面での俺達の弱点を突く。

 畠山さんの軍も五十人くらいでとても多いとは言えないけど、後ろで守備するのが十八人じゃあ話にならないのは確かな事。

 

「うむ。その通り」 

 

「早急に軍を募らねばなりませんな」

 

 

 

「それじゃあ、まずは我らの実高から計算を入れることにします」

 

 ここからは酒田姉妹の姉の方が説明を始める。妹の方は口数が少ないからねー。姉同様に要点は付いてくるんだけど如何せんコミニケーション能力が低いのでめったに喋らない。

 

「まず越後全体の石高は約七万五千石です。しかしこの国にもそれぞれ豪族がいますから、それを足しますと実高は十万石を越えています。たぶん十二万石くらいはあるんじゃないでしょうか」

 

「ふむ。なるほど。都に届けられている石高が実際の数字ではないと」

 

「はい。でもこれは公然の秘密であって、どの国も多少の差はあれども似たような状況であります。そうですよね左兵衛大尉(さひょうえのだいじょう)殿?」

 

「うむ。武蔵にある元の我ら畠山の所領も官には少量しか届けておらなんだわ。いやこれは失言。今は分家殿が治めておる故あまりいらぬ事は言えないな」

 

 経成ちゃんの質問に左兵衛大尉(さひょうえのだいじょう)こと畠山重能(はたけやましげよし)さんが『失言失言』などと言ってごまかして笑いを誘う。

 

 この九人の中で官位を頂いているのは四人。畠山さん親子と、主の美盛ちゃん。それに俺だ。

 しかも、越後国内で官位を頂いている五人の内の四人。あちらの陣営にも一人いるけど物の数ではないね。

 

 

 

 

 

 

「判りました。まずは武力を持たないと色々と何も出来ないという事が、みなさんの話を聞いていてやっと実感できましたよ。今の私達の総兵力は七十。これでは政治的にも詰んでいるのと同じ状態です」

 

「うん」

 

 言葉を切った美盛ちゃんに肯定の意を口に出して伝える。

 

 あれから酒田の姉の方の経成ちゃんが、数字付きのデータやら何やらを持ち込んでの論戦が二時間程行われた。

 その議論で、色んな案件を可決させる為にはやはりそれなりの武力を持たなければならないって結論に達したんだ。

 まあ、当然って言えば当然だよね。

 

「ですから今から五人には三百石づつ領地を与えます。そこで兵を募ってください」

 

 五人の郎党から歓声が沸く。とても嬉しそうだ。この国府方の幹部って言ってもみんな家族を養っているので精一杯の家禄だから領地を貰えるなんて判ったら嬉しさが顔に出るわなー。

 

「姫様ありがとうございます! これからの私達の活躍に期待してください!」

 

 経成ちゃんがとても嬉しそうな声で美盛ちゃんにお礼を言う。

 ちなみに修理(しゅうり)の家の家臣達は経俊(つねとし)ちゃんの事を『お嬢様』、美盛ちゃんの事を『姫様』って言うのがローカルルールになっているんだよね。特に女性の家臣が言う場合が多いかも。

 

 畠山さん親子は今回は加増無しみたいだけど二〇〇〇石も事前に貰ってるから不満顔じゃないね。

 

 

 

 でも、でもさ。まあいいんだけどさ……。俺の分は無いのね……。ちょっと悲しい。

 

 

 

 

 

 

 越後の国はめずらしい事に合議制で国を運営してるらしい。要するに多数決みたいだ。

 こんな中世日本で合議制とかあるのかよ!! って突っ込みたくなるんだけど、一応は異世界なんだからアリっちゃあアリなのかも?

 

「なるほど。合議制ですかー」

 

「はい。調べたところによりますと一千石以上を領している豪族の当主が一票。それとは別に官位を持っている者一人につき一票とこう言った制度のようです」

 

 美盛ちゃんの言葉に相槌を打った経成ちゃんが資料を見ながら嬉しそうに説明をする。三〇〇石も貰ったから気分も機嫌も上々なんだね。

 

 それにしても二十世紀の政治形態までは行かなくてもこの異世界は開明的だなー。それでも民百姓が参加するほどの民主政治ではないようで、石高と官位で票を決めて多数決にするらしい。

 

 

 

「今まで、この国で合議に参加できる資格を持った者は十一人でしたが、私達がここへ来た事により大分変わるようです」

 

 この国ってのは越後の国の事ね。日本全体の事じゃないからね。

 

「うむ、我らで一千石以上の石高を持っているのは姫様と畠山殿。さらに官位所持者は姫様と畠山殿親子。それと梶川殿の四人か。酒田殿、重複している分はどうなるのかな?」

 

「石高と官位の重複分は足して数えるようですよ。ただし、二千石が一万石でも一票は一票だと言う事です」

 

 経成ちゃんが桜川の爺様の質問に答える。なるほど。多分この二人はみんなにも判るようにわざと質疑応答をやっているんだな。

 気が利くねー。この二人は。でも姉はこんなに社交的なのに妹の長成ちゃんはいつもの様に無表情だ。

 もしかするとキャラ作りなのだろうか?

 

 

 

 ここでうちら国府方の内訳を見てみようと思う。

 

 まずうちの総大将の美盛ちゃんが六〇〇〇(五人に合計一五〇〇石を分け与えたから)石+権少納言+越後介で三票。

 はるばる武蔵から越後へと渡って来た畠山さんの親父さんが二〇〇〇石+左兵衛大尉で二票。

 娘の重忠さんが少外記(しょうげき)で一票。

 そして俺が越後掾(えちごのじょう)で一票。

 

 合わせて六票。まあ、良い数字じゃないかな。

 元々の十一人に、うちら四人を足して合議は十五人でやる事になるって事だね。

 

 本当は五人全員に一〇〇〇石づつ分けて票を増やしたいんだろうけど、最初からそれをやると勲功を上げたらもっと増やさなければいけなくなる。そんなのを何度もやってたら美盛ちゃんの七五〇〇石ではちょっと無理だよね。

 だから最初は三〇〇石にしたんだと思う。

 それに畠山さんもいるからねー。武蔵で小さいながらも豪族を長年やってきたんだから、すぐに一〇〇〇石も貰えるなんて事になったらあんまり良い気持ちにはならないだろうからね。

 

 

 

 

 

 

 部屋での会議も終わり、みんなでご飯を食べるとそのまま別室へと帰って行く。

 

 これから忙しくなるなー。

 俺はそのまま美盛ちゃんのサポートに回るからみんなで兵隊を募ってきてくれー。

 

 

 

 風呂から上がってほかほかの体で国府館の廊下を歩く。湯冷めしないうちに部屋へ帰ろう。秋の夜は冬ほどではないけど寒いからね。柱に掛かっている蝋燭の火を頼りに歩いていると俺の部屋の前に小さな人影が見える。

 もしかすると……。

 

 ああ、やっぱり美盛ちゃんだ。

 部屋の横の壁に背中をくっつけて立ち尽くしてる。表情は暗くて見えないけど俯き加減に下を向いて、所在無さげに片足を動かしてるのだけは判る。

 

「美盛ちゃん? どうしたの? こんなところにいると寒いよ。中に入る?」

 

「うん。入る」

 

 さっきまではそうでもない様に見えたけど、今は凄く落ち込んでいるみたい。何かあったのかなー?

 

 部屋に入って蝋燭に火を点ける。そして座るように促してから話しをする体勢に持っていく。話しにくそうだからこちらから振ってみよう。

 

「どうしたの? 何か嫌な事でもあった?」

 

「違うのです。嫌とかじゃないんです。ただ、着いて来てくれたみなさんには加増したのに、梶川さんには何もしてあげなかったからそれが……」

 

 なるほど。俺には何もあげなかったからそれが罪悪感になってるって事かー。

 

「そんなの気にしなくてもいいのに」

 

「いやいや、気にしますって! だってこれはただの私の我侭なんですから」

 

「そうなの?」

 

「はい。……だって、領地を与えると一時でも赴任しなきゃならないじゃないですか! そうすると梶川さんがどこかへ行ってしまいそうで嫌なんですよ!」

 

 あー、うーん。そう言う事かー。それでわざと領地を与えなかったと。

 でも、それだと俺だけ何も貰えずに面白くないから怒っているだろうっと、こう思ったわけかー。

 

 まあ、そりゃあ、一瞬は面白くないとは思った事は否定しないけど些細な事だよなー。

 

「判ったよ。でもここで俺が気にしてないって言ってもやっぱり美盛ちゃんは気にするだろ?」

 

「う、うん。多分気にする」

 

「じゃあさ、お金で……いやこの時代は違うか。あー、そうそう、銭で給料をくれよ。そうすれば俺も面目が立つし美盛ちゃんも気に病む事もないだろ?」

 

「あー、それはいい方法! それにしますよ! 明日には官位と石高に見合った額を計算して明細にして出しますから、それで行きましょう!」

 

 さっきまでの暗い表情とは打って変わって生き生きとした顔になった美盛ちゃん。やっぱりこの子は笑っている方が断然似合ってる。

 

 それにさっきの、俺に領地を与えたらどこかへ行ってしまうって下りの話。ああ言われると男としては必要とされているのが判るから何だかすげー守ってやりたくなる。しかも相手は凄く可愛いロリっ子だ。これは抱きしめて感触を味わいたくなるのが男の性ってもんだよな。

 

 そう思った瞬間、俺は美盛ちゃんを抱きしめていた。

 俺が抱きしめると、当然向こうも手をそのまま俺の背中に絡めてくる。

 うん。少女のいい匂いがする。それにすっごいやわっかい。体全体がやわっかい! 

 

 今迄も美盛ちゃんを何度も抱きしめた事はあるけどやっぱ女子の体はいいなー。

 ロリ体型は正義! ロリ体型は神! ビバ、ロリ体型!

 

 このまま押し倒す?

 もしかするとまだ不安な顔をしていたら次の段階に進まなけりゃならないかも。男としては願ったり適ったりなんだけど。

 恐る恐る美盛ちゃんの表情を伺う。

 

 うわー、この子やっぱり悪魔っ子だわー。不安な顔どころかニヤニヤしてやがる! 多分、このまま俺が押し倒すのを狙っていやがるな。

 

 そして俺と目が合うと、ハッとしてしおらしい少女の顔に……。

 可愛いし、ロリだし、黒髪ロングで、すっげー俺の好みのストライクなんだけどその悪魔な表情はやめろよなー!

 

 

 

 当然の様に美盛ちゃんにはそれ以上の事はせずに、夜は自家発電をして寝ました。

 部屋からの帰り際の美盛ちゃんの残念そうな表情……。すっごく悪い事をした気分だわ。

 

 ネタですか? ネタは、何か男として悔しいんだけど今の抱き心地を思い出しながら……。

 

 

 

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