よしもり ~平家のお姫様に転生したオッサン~   作:りじゅ

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26 病気

第26話

 

 

 

 おはようございます……。

 いつもの自分の部屋の子供用の布団で目が覚めました。

 びっしりと寝汗をかいていて、とても体が気持ち悪いです。美盛(よしもり)です。

 

 ここのところ毎日なのですけど今日も朝からオッサンだった頃の夢を見ましたよ。

 昔からこの夢を見る時ってだいたいは体に変調をきたしている事が多いんです。だからなのでしょう。今日も体調は最悪です。

 梶川くんとのデートから帰宅してすぐにぶっ倒れ、三日間意識不明だったオレですが今も全然治っておりません。

 

 減退する食欲と、起き上がれないほどに気持ちの悪いこの体。それに熱でくらくらする頭と……、今が倒れてから何日目なのかすら判らないです。十日までは数えていたのですけど……。

 

 

 

 それでもこの(やまい)を治そうと意識が戻ってから毎朝、おかゆと少々の菜は無理にでも口にしています。ここで何も食べないと本気で死亡フラグとか立ちそうなので……。

 いや、本当にこの時代の風邪は甘く見てはいけないんです。医療技術も発達してませんし、民間療法や祈祷を本気で信じているんですから。

 

「お゙あ゙ようございま゙す」

 

 とにかく起きたのですから風邪で喉がガラガラな声ですけど朝の挨拶をします。オレのために看病してくれている梶川くんには朝の挨拶くらいはしませんとね。

 でも、よく見ると彼も看病づかれでオレの布団に突っ伏しているんですけど……。

 

 体は鉄のように重くなって動かせないので首だけをかすかに動かします。

 くたびれて突っ伏して寝ている梶川くんには悪いのですが、起きて頂きませんと……。オレも起きたばかりなので溜まったおしっこを出しに行かないとまずいのです。

 漏らしてしまったらちょっと人として終わりそうなので。

 

「がじがわ゙さーん。起ぎでくれ゙ま゙せんがー?」

 

 必死になってわりと大きめな声を出すとようやくもぞもぞと梶川くんが動き始めた。

 はあ、助かった……。

 

「う、うーん。ああ、おはよう美盛ちゃん」

 

「お゙あ゙ようございま゙す。ごほごほっ」

 

 さっきのは寝ていて判らなかった様なのでもう一度朝の挨拶をする。でも、じつは声を出すのが凄く辛いので出来れば一度で終わらせたかったなー。

 

「ああ、そんなに咳をして……。大丈夫? 体調はどう?」

 

「心配しでぐれであ゙りがと。体調は昨日とがわ゙り゙ま゙せん。とでも゙具合は悪い゙です」

 

 ガラガラ声で今朝の体調を教える。

 オレの可愛らしい声よ! どこへ行ってしまったんだ。

 

「ぞれ゙どすみ゙ま゙せんげど侍女を呼んで来で貰えま゙せんが?」

 

「わ、判った。おしっこだな」

 

「……はい゙」

 

 デリカシーが無いのは前から知ってたけど……まあ惚れた弱みで何も言いませんけどね……。でも、もう少し女心は勉強したほうがいいぞ少年。

 

 

 

 

 

 

 おしっことか汗をかいた寝巻きの着替えとか色々な事を侍女にやってもらい、今は布団の中で上体だけを起こしておかゆを啜っています。

 本当は全然食欲は無いんですけど、食べないとオレの体が病気に負けてしまうといけないからね。

 

 もぐもぐ。うーむ、味が全然わからん。

 

 

 

 そうそうオレが寝込んでいる間に都の親父から書状が届きました。

 

 内容はオレが送ったモノと一緒で『これまでの越後での働きに対して朝廷より官位を授ける』って中身。これを城殿に持って行って国府方の与力豪族に出来れば、こちら側の勢力もパワーアップします。

 それで、本当は雪が降る前にオレ自身が阿賀北まで行きたかったんですけど、運が悪い事にぶっ倒れてしまったので先日代役として酒田姉妹と桜川の爺さんを向かわせました。

 多分早ければもう何日もしないうちに戻ってくると思います。ただ雪道ですからねー。ちょっとは時間が掛かるかもしれません。

 

 

 

 朝餉のおかゆも食べ終わって横になっていると侍女と入れ替わりに梶川くんが入ってきた。そして布団の前に座るとオレの手を両手でやさしく握る。

 

「ごめんな美盛ちゃん。俺が全然判ってあげられなくて。市中巡察の間ずっと体調が悪かったんだろ?」

 

「えーっとですねー。この前も同じような事を言って謝ったじゃないですか。私の答えは前と同じです。私が自分で判断して症状を隠してたんですから梶川さんが気に病む事はないんですよ」

 

 おかゆを食べたからなのか、喉のガラガラが消えている。まあ、薬も飲んだのですから一時的に治ったんでしょう。

 本当は一時的になんて言わずにコロっと治って欲しいんですけどね。

 それと、気にしてるのは判るんだけどさ、何度も懺悔の言葉を聞くとちょいと疲れます。

 

「いや、だってさ十日も寝込んでいるんだから俺も気にするよ! 美盛ちゃんが言ってくれたから、みんなは俺を主犯の様な目でみることは無くなったけど、やっぱり責任を感じてしまうんだよ」

 

 ああ、そうでしたね。

 みなさんがあまりにも梶川くんを攻めるので、オレが廊下まで這っていって『梶川さんは悪くないの! 私が無理を言って一緒に居たかっただけなの! だから梶川さんを攻めないでー!』なーんて泣きながら言ったからねー。

 あれはもう二度と出来ないと思うわー。特に恥ずかしさの観点から。

 

「でも死ぬわけじゃないんですから。治ったらまた一緒に色んなことをしましょう!」

 

「そうは言うけどこの時代の病気って怖いんだろ? ただの風邪で死ぬ事もあるって聞いたぜ。だから心配で心配で……」

 

 おーい。患者を不安がらせてどうするんだよ! 死にたくないのはオレも一緒だよ。

 でも……。

 

「そうですね。万が一って事もあります。だから私があちらへ旅立ってしまったら越後の事は頼みますね。梶川くんが頼りですから」

 

「待てって、そう言うフラグを立てるんじゃない!」

 

 これは真剣に言ってるんだけどなー。オレの後はやっぱり梶川くんに任せたいもんね。そう思うと布団をめくって上体だけ起こします。

 

 いや、待てよ。オレの子供に任せればいいんじゃないか?

 

 うん、そうだ。まだ初潮は来てないけど、来てしまえば子供を産めるようになるぞ。

 急にそんな事を思ってしまった。だってオレの後を継がせられる後継者が欲しいからね。

 でもこれってやっぱり生存本能から来てるのかもしれないね。死を身近に感じると子供を欲しいと思う。そんな感覚。

 

 それに、出来る事なら梶川くんと子供を作りたいな。でも結婚する前に子供を作っちゃったら親父に怒られるよなー。

 前世では初潮が来たのは十二歳の春だったから、練習するなら今しかないか……。

 

 

 だから……。

 

「梶川さん。治ったら、近い将来を見据えて子供を作る練習をしませんか?」

 

 こんな爆弾発言もすんなり言う事が出来たのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

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