第41話
昨日から快晴が続いている。たぶん梅雨が明けたんだと思うんだ。ちょっと遅いけどもう八月一日だし、いい加減梅雨明けしないとなーなんて思ってたから丁度よかったよ。湿度が高くて気温も高いと本当に気持ち悪いからね。まあ、これからは逆に暑さがとんでもない事になりそうだけど。
で、暑さにも負けずに中越勢はここのところ、ずーっと正面への攻勢ばかりだ。だから守る俺達も正門前に兵力を集中している。
正面への攻勢かー。絶対一番攻めにくいところだと思うんだけどなー? だって唯一ここにだけ空堀があるし、正門だから大掛かりな防御施設もあって人数も配置しやすい。人数を多く配置できるって事はそれだけ守りも堅くなる。って事は敵にしてみれば攻めにくくて仕方が無いと思うんだよ。それに櫓だって一番多いもんな。
よくもまあ、中越勢もこんな攻めにくいところを狙うもんだ。先日まで攻勢をかけていた東側の方がまだ落としやすいって言うのに。
だから中越の意図は何か別のところにあるんじゃないかと疑ってしまう。
でも今日はいつもと違う。寄せてくるのはいつもの正門前だと言うのに、なぜか空気の研ぎ澄まされ方が違う感覚。心配症なのかと思うんだけど凄く嫌な予感がする。そんな感覚なんだ。
「も、も、申し上げますっ!」
「うん。言ってください」
いつもの様に報告の兵が国府中央の指揮部屋へとくると片膝を付く。
定時報告なのになんだか凄く焦っているなー、どうしたんだろう? うーん。やっぱり嫌な予感がするなー。
「て、敵が正門に! その数およそ二千! 今のままでは対応出来ませぬ」
「二千!?」
「二千って全力じゃないか!?」
敵兵の数を聞いてガタガタとけたたましい音を立てて国府のみんなが立ち上がる。中でも酒田姉と俺が大きな声をあげた。
「待ってください。二千もの兵がこちらを向くって事は山寺三千坊や畠山城への備えを放棄したと言う事ですか!?」
続け様に酒田姉が伝令に訪ねる。
「はっ! いえ、山寺三千坊は判りませんが、畠山城の方は未だ包囲中でございます」
伝令が酒田姉の問いに明快に答える。畠山城は越後国府の支城だけあってわりとここから近い丘に建てられているんだ。で、目視でも見えるからあちらの状態とかも判る、それでまだ包囲中って答えたんだろうね。
しかし、すらすらと返答するのを聞いてるとこの伝令の人は頭が良さそうだな。こう言う時にテキパキと受け答えが出来るってじつは凄い事なんだよな。俺なら上がってしまって無理だ。
「判りました。とにかく正門に兵を大きく展開します。梶川さん、予備を全て正門へ動かしますがよろしいですね?」
「判った。経成ちゃんのいい様にしてくれ」
酒田姉が俺の目を見て話を進めていく。
だって俺には兵の配置の指図とか無理だし! それなら玄人の酒田姉にお任せするしかない。何も知らない俺が出しゃばって滅茶苦茶にしてしまったらそれこそ一大事だ。
「それと梶川さんと私が正門へ出向いて陣頭指揮をします」
「はっ! 早速伝えます! それでは御免」
報告の兵はそう言うと立ち上がって元居た正門へと戻って行った。
「おう。じゃあここは神田さんと長成ちゃんに頼みます。俺は経成ちゃんと共に正門へと急ぎます」
「うむ。ここは任せよ! 存分にやってくれ」
「はい。お任せを」
ふたりはにやりとした笑顔を俺達に送る。激励も兼ねているんだろうな。そしてそれを見てうなずく俺と酒田姉はそのまま一〇〇の予備兵を率いて正門へと急いだ。
◇
正門に辿り着くと正門前は二〇〇〇の敵兵で埋め尽くされていた。その敵兵達は丸太で出来た壁に梯子を掛けたり、遠くから矢を放ったりしているのが見える。そしてそれに対して迎撃している俺達国府の兵達……。
梯子に乗っている敵を梯子のまま後ろへと倒したり、櫓から矢を射掛けたりと忙しい我が軍。その逆に相手の矢が当たって絶命する者。大怪我をする者……さながら正門は阿鼻叫喚の地獄と化していた。
でも戦いをやめる事も出来ずに敵も味方も矢による応酬は時間を追うごとに激しさを増している。
現在の兵力配置は正門前四〇〇。東側一〇〇となっている。東側はやはり罠の可能性があるから兵力を全て引いて正門に移す事はできない。この辺が遊兵を作ってしまう事になってるんだけどどうしようもないんだ。
しかもこの中越勢の数。二〇〇〇って数はやはり目で見てみるとスケールが違う。しかもその二〇〇〇は全て俺達を殺しにきているんだ。それを考えると鳥肌と共に何とも言えない気持ち悪さが込み上げて来る。
「くそっ、こいつら全部が俺達を殺しに……!」
「梶川さん! そう言う事を兵の前で言うものではありません!」
「あっ……ああ、ごめん気が動転してた」
酒田姉の指摘で俺も冷静さを取り戻したけど、この敵の数はすっごく厄介だ。周りの兵達も頑張って防いでいるんだけど段々と体力が消耗していってるのが判る。なんて言ったって正門前の四〇〇の味方のおよそ五倍、二〇〇〇の敵だもんんな。
それでもこちら側の防御の方が高いから敵よりもいくらかは分が良いんだ。
こんな大攻勢が長期に渡って維持できるわけがないって酒田姉も言っていたし、なんとか頑張って今回の攻勢も跳ね返そう。
◇
昼も過ぎたと言うのに未だに敵の攻撃は止まらない。こちらよりも敵の方が損害は大きいだろうに、中越は一体何を考えているんだ?
いつまでも攻勢を諦めない敵に対して恐怖が込み上げて来る。くそっ、すこし敵に飲まれてるな。自分でも判っているんだけど、お構い無しに恐怖心ってやつは心に浸透してくるものみたいだ。
「負傷者は近くの部屋へ運んで手当てを! それ以外は持ち場を守ってください! 今は敵も攻勢を続けていますが相手も同じ人間ですから疲れているはず。ですからじきに攻勢も止みますからもう一踏ん張り頑張りましょう!」
「はっ」
「はい! 判っております!」
「もう少しの辛抱だー」
俺の心境も判っているんだろう酒田姉は周りに向かって激励の声を上げるとそれにつられて味方の兵達から喚声が上がる。半分は俺に言っているように聞こえたんだけど……俺を励ましてくれたのかな?
しかし凄いなこの子は。俺の心を軽くすると同時に士気まで上げてしまった。あまりの手際の良さに彼女の横顔を見てると、それに気付いたのかこちらを見て軽く手を振ってくれる。俺もそれに答えて手を振り返すと酒田姉はにっこりと笑ってまた敵に視線を向かわせる。
可愛いな。うん。何かをする度にツインテがぴょこぴょこと揺れるその仕草は年相応の少女に見えた。平成の世に酒田姉がいたらどんな女子高生だったんだろう? 想像すると楽しくなってくる。たぶん学年一の秀才になったんじゃないかな。それでいて思いやりもあって友達も多そうだ。でも今現在は戦乱の世……。あーあ、こんな源平合戦の頃じゃない平成の世に酒田姉を招待したいなー。
ついでに妹も。
「梶川さん?」
「ん? 何? 経成ちゃん」
矢の標的になると悪いからなのか、背を低くしてしゃがみ歩きをしてきた酒田姉が俺の側まで来た。しゃがみ歩きっていいよな。鎧の下は裾の短い着物だからデルタ地帯のパンツがよく見える。
はじめて見る坂田姉の白い下着は絶景でした!
それにはまったく気付いてない酒田姉はそのまま俺に深刻な顔で話し始めた。
「正門の矢が少なくなってきています。長成に言って補充してもらってください」
「ああ、判ったよ。誰か本殿の方へ行って矢の補充をお願いしてきてくれ」
「はっ! 承知しました」
「お願いしますね」
伝令にそう伝えると一礼して駆けていった。あんまり急いで転ばないでくれよ。
酒田姉は伝令がいなくなると正門の向こう側、敵の方に目を向ける。未だに終わらない敵の攻勢。これについてなにやら考え込んでいるようだ。
俺の横でしばらく考え込んでいた酒田姉だったけど、なんとも言えない得心のいかない顔をして話しかけてきた。
「梶川さん、この戦いとっても変に思いませんか?」
「変って言うほど俺は経験が無いから判んないなー」
「ああ、いえ、私だってそんなに経験があるわけじゃないです。二、三度海賊退治に瀬戸内の海へ行ったくらいなものです」
「へー。海賊退治かー。それも凄いね。流石は越後国府の軍師だ」
「茶化さないでください。今言った『変』って言うのは今朝から続くこの正門への攻勢のことです」
「変って言えば変だよなー。なんで敵は防御力の弱い東側を攻めないで一番防御力の高い正門前に攻めてくるんだろう?」
「そう、それです。判ってるじゃないですか梶川さん。今言った通り敵の考えが読めません。だから変だって言ってるんですよ。そもそも敵に強力な後ろ盾があって余裕があるのならば防衛拠点に対して力攻めなんてしません」
「そう言うものなのか」
「はい。だって囲んで待っていればその防衛拠点の中にある食料を食べつくして降伏するでしょう?」
それはそうだろうけど……。その戦法だと篭城戦って何ヶ月かかるんだ? 下手すると一年とか掛かりそうだ。
「うーん。それはそうかもしれないけど、気の遠くなる話だね」
「あははは。そうですね。でも敵は最初の最初から力攻めでした。だから私は中越に余裕は無いと思ったんですよ。それに反して私達は援軍のあてはたくさんあります。越後国内だけでも山寺三千坊に阿賀北の城氏。北陸の平家勢も相互で助け合う事になってますし、都の六波羅まで話が通れば何万単位の兵がこちらへと援軍に駆けつけてくれます」
「それじゃあ、もしかして!!」
「はい。もしかしたらこの大攻勢は援軍が近くまで来ている証拠じゃないかと思うのです」
ここで酒田姉もだいぶ安堵したような表情になってきた。まあ、推測だとしても援軍が近くまで来ていると思えば表情だって明るくなると言うもの。
だって俺もすっげーやる気が出てきたもんな。
「敵はそれで大攻勢を掛けてきたんだな! なるほどー!」
中越勢は平家の援軍を察知した。だからこれはまずいと思って我武者羅になって襲い掛かってきたとそう言う事な! すげーな流石は酒田姉。よくもまあ、そこまで考えを巡らせる事が出来るものだなー。
「でもやっぱり変なんですよねー。それならば別に正門前にしなくてもいいじゃないですか? 東側へと攻勢を掛ければ……」
もう一度酒田姉が何かを言いかけたところでこちらへと走ってくる人間が見えた。あれは酒田妹? どうしたんだろう長成ちゃんは?
「ね、姉様! ハアハア……矢の在庫はもう無いって昨日言ったじゃないですかー!」
酒田妹がここへ走ってきたと思ったら、ハアハア言いながら凄い事を言い放った。だから俺と酒田姉もポカーンとした顔を見合わせて短く呟くしか出来なかった。
「えっ?」
「えっ?」
「だ・か・らー、昨日『矢は残り少ないですから慎重に要所要所で使ってください』って!」
「ああ、そう言えばそんな事言ってた気が……」
「…………。えーっと……そんな事言ってましたっけ?」
酒田姉が言葉を濁しながら自分の妹におずおずと返事をする。
まるで姉妹が逆に見えるんだけど、どうしてかなー。
「言いましたよ。ちゃんとみなさんのいる前で!! 姉様はたまに人の話を聞かない時があるからー!!」
昨日の夜、物資の在庫の議題を話し合ったんだよね。そしてそこで酒田妹からそんな言葉を聞いたんだった。今の今まで忘れていたよ……。どうしよう……。
「ううぅ、そ、それは一大事……。矢が無ければ戦そのものが」
「姉様。一応在庫の矢は持ってきましたから。全部で五百本。これが我が国府の矢の全てです。それ以外は各自が持っている分だけしかありませんから!」
ご、五〇〇本かー。少ないなー。今いる正門前の兵達四〇〇人に配ったら一人一本づつ……。これは大丈夫なのか……。心配になって我が国府の軍師を見る。
そこには油汗をかいて薄ら笑いを浮かべている赤毛のツインテールがいた。
おおおおおおーい!! そんな顔をすんなよーーー!!
「おほん。で、ではこの矢はとにかくこちらで使わせてもらいます。ただ、無駄遣いできないので慎重に使わなくてはいけません。いいですね!」
「あー、うん。判った……」
お前が言うなって突っ込みは入れた方がいいんだろうか?
◇
夕方になった。とりあえず、俺と酒田姉妹は本殿のいつもの部屋にいて戦況に目を通していた。
今も絶えず敵の攻勢は続いている。しかもこちらはだいぶ押されていた。俺達の側の矢の使用頻度が少なくなっているからだ。
矢が無ければ敵に応戦出来ない。応戦出来ないって事は敵の攻勢はかなり強くなる。
今までは敵も慎重に攻勢を仕掛けていたんだけど、矢の応酬が無いと判ればその行動も大胆になってくるんだ。
これはやばいかもしれない。
「申し上げます!」
「おう、言ってくれ」
「正門櫓の矢が……矢が尽きましてございます」
「そうか……判った。ご苦労様」
伝令が悔しそうな表情で下がって行く。櫓の矢が尽きたかー。まあ、遅かれ早かれ矢は尽きていたと思う。それが今日か明日かくらいの違いだったんだ。だからそんなに思い詰めた顔はするなよ経成ちゃん。……だとしてもこれはそろそろ進退を決めないといけなくなってきたかな。
俺はどうした事か急に
「か、梶川さん……」
翻ってこちらは酒田姉。俺とは逆にとても怖がっている様子。そりゃあ判る。美盛ちゃんに聞いたもんな。女武将が戦場で捕らえられたらどんな目に遭わされるか。美盛ちゃん本人から聞いたあの話は凄くエロくて正直なところ興奮してしまった。
ごめんな美盛ちゃん、俺じつはちょっとそのシチュエーションを聞いた時、心臓がバクバクいってさ、その夜はそれをおかずにしちゃったんだ。
でもだからと言って酒田姉妹がそんな目に遭ってほしいなんて思わない。むしろ逆にそんな事をするやつらをブッ飛ばしたいくらいだ。みんな俺の仲間だから。この部屋にいる酒田姉妹だって神田先生だってみんな好きだからね。
「安心してくれよ経成ちゃん。俺の力の及ぶ限りは絶対にみんなを死なせはしない!」
「あ、ありがとうございます……でも私のせいで矢が無くなってしまいました……。ごめんなさい……」
「別に経成ちゃんのせいじゃないよ。元々無くなるはずだったんだ。だからそんなに思い詰めないでくれよ」
「ごめんなさいごめんなさい……」
たぶんこの子はもう打つ手は無いと思ってるんだろうね。そりゃあ、俺も打つ手は無いんだけど心に何か引っかかるものがあってそれを待ってる感じかな。だから絶望もしてないし、どっしりとしていられる。でも、それが何なのかが判らない。
しばらく部屋の中が沈黙していると伝令の兵が息も絶え絶えになって駆け込んできた。
「も、も、申し上げます!!」
「そんなに慌ててどうした?」
神田先生が手を組んだまま受ける。
「こ、国府の外にっ! こ、国府の外に砂煙が上がり敵兵がその大風に吹き飛ばされていっておりますー!」
「なんだと? そんなバカな事が!?」
流石の神田先生もあまりのことに声を荒げる。そんな荒唐無稽な話ありえないからね。でも俺は何か確信めいたものを感じとっていたんだ。さっきの心の引っかかりはこれじゃないのか?
「ほ、本当でございます! この目で確かめた故に!」
「判った。まずは案内してくれ」
俺は伝令の兵にそう言うとみんなを連れてそれが見える場所へと急いだ。
◇
はたしてそこには敵兵を吹き飛ばしながら段々とこちらへと近づいてくる砂煙が見えたのだった。
近くの兵に聞いたところ、その砂煙は正門を攻撃している中越勢に向かって、西の方角から現れてみるみるうちに敵兵を吹き飛ばし始めたのだと言う。文字通り今現在も吹き飛ばしているのを見ればそれは間違いではないのが判る。
一体この砂煙は何なんだ?
「あはははは」
「あー、そりゃあ、こうなりますねー」
「よーし、皆の者。これより撃って出る。準備を致せ」
俺にはまったく判らないんだけど、みんなにはこの正体が判る様だ。
酒田姉は腹を抱えて笑いだし、妹の方は得心した様な物言いで、神田先生は国府館から撃って出ると言う。その言葉がもう勝った様なそんな言い方だった。
本当に何なんだ? 俺は目を凝らしてその砂煙を凝視する。するとその砂煙の中心には青紫色の少女が見えた気がした。
青紫色の少女? なんだ、どう言う事なんだ?
そんな事を思いながら更に必死に目を凝らした。するとその砂煙の中心から大きな声が聞こえてきた。それは明るく澄んだ少女の声だった。
「やあやあ! 遠からん者は音に聞け! 近くば寄って目にもみよ! 今をときめく
薙刀で敵を吹き飛ばしながらここまで聞こえるくらいの
あー、もう敵は大混乱だなー。盛俊さんの名前は中越にも伝わってるんだろう。
だから敵兵が我先にと逃げ始めた。盛俊さんは大物過ぎるからなー。手に負えなくなったんだろうね……って、その盛俊さんの近くで暴れてるのは……赤橋さんじゃないか!?
「か、神田さん! あの盛俊さんの近くで暴れてるのって赤橋さんですよね?」
「ん? んー、おお、そうだな。あれは赤橋だわ。赤橋め、どこをほっつき歩いてたかと思えば越中にちゃんと辿り着いていたんだの! わっはっはっは」
豪快に笑う神田先生。あまりにも楽しいらしく、その後もずっと笑い続けた。
「くくくく。あー、笑ったわー。どれ、梶川殿。わしもちょっと行って暴れてくるぞ」
「はい。御武運を!」
神田先生が門を開いて撃って出ると同時に畠山城からも討手が出てきた。たぶん畠山さん親子も機会を見てたんだろうね。畠山城の周りを囲んでいた敵を撃破し始める。流石は日本一の武将! 城の周りの兵をことごとく平らげた畠山軍はそのまま中越勢本体へと突っ込んだ。これで中越勢は三方向からの挟み撃ちになる。
挟み撃ちと長陣でくたびれた敵はあっと言う間に打ち砕かれ、中越勢は軍としての機能を完全に失っていた。そして戦線を維持する事も出来なくなって崩壊したのだった。
「はあぁ、助かったー」
「姉様ーっ!」
それを一部始終見ていた俺と酒田姉妹。中でも酒田姉妹の安堵は大きく、二人で抱き合ってさめざめと泣き始める。
国府が破られてたら男共の慰み者になっていたかもしれないんだ。心の安堵は人一倍なんだろうな。
俺もそこまでではないにしても非常にくたびれたよ。だから寄りかかってた壁を背にそのまま腰を下ろすと溜息が一つ洩れた。
夕方の茜色をした空を見ながら思う。この篭城戦は俺にとって一生残る大きな何かになるんだろうなー。
あとは……美盛ちゃんの無事な姿が見られれば言う事ないんだ……。早く赤橋さんや越中の人に聞いてみなければ。
◇
翌日からはじまった中越勢掃討戦は滞りなく進んで、紀殿をはじめとする主だった在郷領主は全て捕縛された。その中にはなんと皇族まで入っていたんだとか。名前は忘れちゃったけど『なんとか王』って人みたい。
掃討戦では本戦には間に合わなかった阿賀北の城氏や山寺三千坊の人数も加わってたから中越の拠点はすぐにも降伏したんだ。さすがに最初から無理なのがわかったんだと思う。おつかれさま。
これで二公八民なんて言う馬鹿げた税率からようやく中越の民衆も解放されるな。
赤橋さんから聞いたところによると美盛ちゃんも越中国府で一応は無事みたいだし、いやーよかったよかった。
中越の戦略とかまるっきり判らず仕舞いの一人称の戦争でしたが、いかがでしたか?
戦争くらいは一人称は止めようかと思ったんですけど、最後まで突っ走ってみましたww