第46話
今は越後国府の実務の間で
あー、この格好も大概くたびれますね。やっぱり普通な体勢で居られるのが一番なのです。怪我をしてはじめて判る健康の素晴らしさ。
怪我を負うと何から何まで……、いやはやまったく大変ですわ。
大変と言えば、昨日の夕方に到着したのですけど、その後左足が折れているからひとりでお風呂にも入れないので、いつもの侍女に手伝ってもらいながら入りました。
越中国府でも大変でしたが、ところ変われど大変なのは変わりませんでしたよ。
で、今は論功行賞の真っ最中だったりします。大勢の郎党、家臣達が広間狭しと胡坐をかいて座っていますねー。最前列にはいつものみんな。神田先生を中央に赤橋、酒田姉妹、梶川くん。それに畠山さん親子が並びます。
みんなには事前にそれとなく内示をしておきましたし、不満が出ない様に細心の注意を払って展開中なのです。
ううむ、大丈夫……だよね。
「それではまずは勲功第一の赤橋妙斎」
「ははっ」
「その方の働きまことに目覚しい! よって七百石を加増して一千石とします」
「有り難き幸せ!」
「これからも平家の為により一層の励むように」
「ははっ!」
顔を真っ赤にしてゆでだこみたいになって喜んでくれる赤橋。その表情を見るとこっちも嬉しくなってくる不思議。まあ、彼が存分に越後の面目を施してくれたから他の平家のみなさんにも引け目を取らずに済みましたからね。感謝していますよ。
で、ここからが問題なんですけど。赤橋にこれだけ加増するとうちの郎党筆頭の神田先生にも同じくらい加増しないとちょっと人事的に上手くないんだよねー。でも勲功一番の赤橋と同じだけ加増するってのは、それはそれでおかしな裁定になってしまう。
だから……。
「次に神田盛家、酒田経成、酒田長成。その方らよく越後国府を守備し敵勢を防いでくれました。礼を申します」
そこで一度言葉を切り浅く頭を下げる。
それを見た三人は胡坐のままこちらへと向きを変えると『平家並びに姫様の御威光の賜物によるものと存じます』なんて言いながら深々と頭を下げた。
「うむ」
ちょっと偉そうに『うむ』なんて言ってみたけどこんなんでいいのかな。いいよね? こう言うのって慣れてないからとても気疲れするんですよー。はぁ……。
ささっ、気を取りなおして続き続きー!
「さればその方ら三人には恩賞として三百石を加増して六百石とする」
「ははっ、有り難き幸せ!」
「あ、ありがとうございます!」
「姫様ありがとうございます!」
オレの言葉に三人が嬉しそうににこにことお礼の言葉を言ってくれた。
はあ、よかった。恩賞の沙汰で荒れるって話を聞いたことがあったからやっぱりびくびくしてたんだよね。
「それと神田盛家。その方は郎党筆頭としての実績まことに見事。よって従六位上越後介の官位を与えるものとする」
「それがしに官位とは……、有り難き幸せ!」
「私は新たに越後守に任じられましたので空いた介に過ぎませんが」
「いえ、その様な事はありませぬ。それがしには過ぎたる身分にござりまする」
これで一応は筆頭郎党としての面目は保たれたんじゃないかな。
周りに意識をめぐらしてみたけど、羨ましそうにしてる人はそれなりにいたけど嫉妬心を燃やしてる風に見える人はいないみたいです。当の赤橋も『筆頭だからアリかな』なんて表情ですし。
それからも論功行賞は滞りなく進んでいった。
畠山さん親子にも三〇〇石の加増をして二三〇〇石にしましたし、国府側の総大将として頑張った梶川くんの給金も元の銭一〇〇〇貫に五〇〇貫の加増で一五〇〇貫にしました。
銭一五〇〇貫を石高で換算すると大体半分の七五〇石くらい。ですから一応はうちの旗本の中では二番手の高級取りって事になります。
更に、これからの事や梶川くんの立場を強化する為にその武功をすっごくに褒め称えました。だって、梶川くんの現在の従七位上から最低でも六位にはしてあげませんとオレとの婚儀に差し支えますから……。いや本当は貴族足りえる五位まで上げなきゃいけないんですが、そこはほら流石にすぐには無理なのです。
って事で他にも細かい家臣達や今回の最後の掃討戦で活躍してくれた城氏や山寺三千坊にもそれぞれ加増をしてお昼には論功行賞は終わりました。
まあ、オレも元々の七五〇〇石から一五〇〇〇石に増えましたし太っ腹で決めましたよ!
今回の論功行賞で約四〇〇〇石ほどを郎党家臣や諸豪族達に与えましたがまだまだ一一〇〇〇石くらいはオレの直轄領だからね。お米たくさんですよ! ウヒヒ。
それに今回、阿賀北の国人とか寺社勢力の山寺三千坊や越後一ノ宮の弥彦神社にもオレの領地から加増したので彼らは独立勢力ではなくオレの支配下って事になりました。
だから今のところははっきりしない中越の領地約一〇〇〇〇石を除いた約五〇〇〇〇石(四九五〇〇石)はオレの実質的な領地みたいなものと言う事に!
やったねオレ!
◇
「薬を都で飲んだからもうこれ以上歳は取らなくなったんですよ。梶川さんがお爺さんになっても私はこのままです。どうです? 歳を取らないロリな女の子が生涯傍らにいるって言うのは?」
夜。一緒の布団で久しぶりのプロレスごっこをした後の賢者タイムで、都での不老になった経緯を話して聞かせました。不老なだけで寿命になれば死んじゃうんだけどね。
「じゃ、じゃあ、このまま成長してもしかしたらの巨乳にはならないって事か! よかったよかった」
腕枕をしている手じゃない方の手でオレの小さなおっぱいの先っちょをいじりながら梶川くんが答える。あんたもチッパイ好きですねー。
で、背中と脇腹の矢傷なのですけど、一応は梶川くんに見られてはしまいましたが別段変わったそぶりは無かったです。たぶん見て見ぬ振りをしてくれたんだと思います。
「あはっ、梶川さんに喜んでもらえるとすっごく嬉しい」
「俺も笑顔の美盛ちゃんが好きだよ」
「うん。ありがと」
梶川くんに喜んでもらえると凄く嬉しい。女芯丹を飲んで不老になった甲斐があったってもんです。
「あ、そうそう、越中で療養していた頃に父上にも色々な許可を貰おうと書状を出しておきましたから、今みたいに口や手だけじゃなくて本番ももうじきですよ!」
一応は仁義を通す為、親父には結婚許可を願い出ていたりします。
ダメと言われても強行するくらいの意志でもって書状を書きましたからね。
あとは今回の越後側の総大将として働いてくれた梶川くんの官位昇進も頼んでおきました。従七位上ですから最低でも三つ上げて従六位下まで行かないとオレとの釣り合いが取れないから、け、け、結婚する事が難しいのです。
「え! 本当に!」
「はい。本当ですよ。でもそうなると絶対に私と結婚しなきゃいけなくなりますけど梶川さん的にはどうですか? 嫌じゃないですか?」
こう言う質問は嫌らしいんだけど、せずにはいられない。そんなオレの女心を梶川くんは判ってくれるかな?
まあ、そこまでの心境を判ってくれとまでは言わないけど肯定くらいはして欲しいなー。
「嫌なわけあるか! 望むところだよ! 美盛ちゃんは俺んだから。誰にも渡さないから」
うわあ、そこまで言われるとなんだか恥ずかしい……。でも、でも本当に嬉しい。天にも昇れそうな勢いで顔が真っ赤になってきました。そんな一言でオレの体温を上げる事が出来るなんて梶川くんは魔法使いみたいだね。
「あ、ありがとう。嬉しいです。私、梶川さんの事好きですよ。大好きですよ」
っと、こんな感じでまた布団がもそもそと動き始めたのでしたー。おおっと、これはもしかしたらの第二ラウンド開始なのかー!?