さあ、今日はオレの部屋から始まるよ。
親父に言って部屋の大きさは八畳にしてもらったんだ。大きすぎても落ち着かないしね。
入り口と言うと変だけど襖を明ければちゃんと日光も入ります。
それに横の障子からも直接じゃないけれど割りと良い光が入ってきて、朝から夕方まで部屋としてはとても明るい感じ。
明るいは正義だわ。暗いよりは断然良いね。夜はさすがに暗いけれど蝋燭を置いているから大丈夫……のはず。
んでもって今は夜。たぶん
蝋燭だけの明かりだからちょいと薄暗い部屋。そして鏡台の前に立つ姉妹……。
「あのー、なんで姉様が私の部屋にいるのか問いただしたいのですが?」
隣でオレの方を見てニコニコしている
「いいのいいの、私は
私とっても興味があるんです等と、
「物見遊山じゃないいですから、そんな浮ついたお着物なんて着ていけるわけないでしょう」
従兄妹とは言え本家嫡男の
まあ、いいか。この前
頂いた物を身に着けていくと相手も喜ぶだろうしね。
で、その着物合わせを侍女に任せて鏡の前でしようとしていたと、こう言う訳。
そうしたらこのざまですよ。
「はいはい。とにかくその寝巻きを脱ぎ脱ぎしましょうね」
脱ぎ脱ぎだと……。
いつもとちょっと違う口調に不安を抱いたオレは
「!!」
待て! やばい、あの目はどこかで見たことのある目だ! そうだ、生田の森の廃屋で隠れていた時のあの目だ!!
こ、これは逆らってはいけない!
そう思うや否や、しゅるしゅるーっと帯を解いて、白の寝巻きに手を掛け、急いで肩からおろした。怖いよー。
「ぬ、脱ぎました。姉様!」
白い上下の下着姿になったオレは確認を取るように
それにこんな格好じゃ心許無くて胸とお股に手をやって隠してしまう。言っておくけどこれは素だ。演技でもなんでもない。
「はーい。よく出来ましたー。でも
人差し指を口の辺りまで持ってきて、うーんと首をかしげている
あ、胸当てはブラの事、下当てはパンツの事です。
「うぐ! なんて事を言うんですか姉様は! 世間では小振りなほど感度も良いともっぱらの噂です!」
ソースはオレね。
元ロリコンのオレが言うんだ間違いない。これは真理だ! ……たぶん。
と、とりあえず、着物に袖を通すところまでは来た。いや、やっとの思いでここまで来た。
もう、今何時だよ! 明日の昼間には
そう悪態をつきながらも白地に薄い桃色がかったお着物を着る。次は帯だ。腰の部分に赤い帯を
元の平安時代は知らないけど、オレなんかは普段お着物に内掛けで過ごす事が多い。まあ、まだ昇殿できる官位を持たないから必要は無いけどそのうち唐衣なんかに袖を通す時も来るはずだ。
前世では従五位の身分のまま源平合戦に突入しちゃったから昇殿する機会はなかったけど今生ではどうなるのか今のところはまったく不透明なんだよ。でも、出来る事ならこのまま平和が続いてオレも唐衣に袖を通したいなー。
んで、話を元に戻すけど、オレはパーソナルカラーを赤にしている。要するに赤色が大好きだー! って公言してるわけです。だからみんな赤い物をよくくれるのだ。でもさ、目出度過ぎないかこれは……?
そんなわけで最後は羽織った内掛けの内側から長い黒髪を全て外に払い出して準備完了。どうだとばかりにドヤ顔をして
「まあ、なんて可愛らしいんでしょう。ほらほら
まるで自分のことのように喜んでくれるとちょっと恥ずかしいけど何ともいえない嬉しさがある。あははは、照れるなー。
照れながら部屋の鏡台に映る自分を見る。顔中真っ赤にしたオレがそこにはいた。顔立ちは幼いながらに整っており、黒髪ロングでしかも前髪パッツンだ。オレの理想の女の子はこんなところに居たのだ。って……まあ、毎日鏡見てるから判るけどさ。
しかし、さすがオレだ。とっても可愛い。元のオレだったら惚れちまうぞ。十歳児に!
……でだ。可愛いのは判った。黒髪だって自慢の一品だしこれも判ったよ。たださ、このお着物さぁ、凄く下半身部分が短いんですけど!!
オレはなんだ、JKか!? JKなのか!?
階段とか登ったり降りたりしたら、抜群のパンチラスポットじゃないか! 清水寺なんてこれで登ったら凄い事になるぞ!
「あの、姉様。このお着物とても気に入りましたけど。あの、その、裾が短すぎません?」
「なんてことを言うんです。これは
顔つきはとても厳しいんだけどさ
チラチラと、オレには知られないように何気なくお股と足を交互に見ているんでしょうけど。でもねそれって、まる判りですから!! ガン見と一緒ですから!!
「はい、まるで間違ってはいませんが、すごく恥ずかしいのですけど。特にお着物の裾が……」
「そんなのは慣れです。あまり我侭を言うと父上に言いつけますよ」
「え。そ、それは許してください姉様ー。このお着物で行きますからー」
「判ってくれればいいのです。さあ、ではもう一度脱ぎ脱ぎして終わりにしましょうか」
脱ぎ脱ぎ……。なんなのださっきからその脱ぎ脱ぎって!!
着替え終わって寝巻きに戻る。はあ、疲れたわー。
たまに
「それでは
そりゃ、喜んじゃうよね。色んな意味で。しかし
「そ、そうですね。きっとお喜びになるでしょう」
「うん。おやすみなさい」
「おやすみなさい姉様」
うーむ。疲れた……。
逆にオレはパワー切れだけれども。
あ、そうだ! 明日は
体の疲れもあるにもかかわらず、オレは全力で
でも、じつは色々とほかに考えなきゃならないことが山ほどあるんだ。そのひとつが今まで言っていた
オレが
お届けする物やお使いの内容なんて物はどうでもいい。どうせご機嫌伺いだから。
そうなのだ。
要するにうちは
普通に考えれば清盛様の嫡男の
嫡男の
しかも、第三子の
それに引き換え
まあ、そんな理由だが、今現在の後継者は
そんな事を考えていると大きな音が鳴り響き始めた。
うあ、この鐘は……、やばい
そう思うと先程まで考えていた事など全て忘れ、蝋燭を消したかと思ったらすぐに布団に潜り込んだのだった。