よしもり ~平家のお姫様に転生したオッサン~   作:りじゅ

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51 治承三年もようやく終わります

第51話

 

 

 

 三人で昼間酒と洒落込んでいたあの日からすぐ、梶川くんから聞いた銀山平を調査する準備に取りかかったんです。

 準備と言っても場所は大まかには特定出来ていたので次の日にはうちの郎党達に話を振って、まずは山師の確保から乗り出しました。

 

 山師と言うのは鉱脈を探し出す技術者を指します。ただし、山師と言う人達は目星さえ付ければどんな鉱脈も発見できると言われるスーパー技術者が大半なのですけど、中にはペテン師まがいの山師もいて、そんな奴らに引っかかっちゃうと莫大な損をしてしまう事もあります。ですので経験豊富な信用に値する山師を見極めなければなりません。

 

 ここでオレ達が幸運だったのは郎党筆頭の神田先生に山師の知り合いが居たって事だったりします。彼の連れて来た山師はいくつかの銅山と、金山をひとつ見つけた事のある人物であり、更には配下に金堀人足も十数人従えている凄腕だったのです。

 

 

 

 

 

 

 その山師は出発から十日ほどで越後国府へ戻ってきた。

 それじゃあ、早速山師を呼び寄せて話を聞いてみましょうか。

 

 ややあって国府の広間ではオレや郎党達が山師を真ん中にしてぐるりと囲んでいた。うん。山師の表情を見るととても穏やかで好感触な感じですね。たぶんわりと良い方向の話でしょうね。

 

 

 

「役目大儀」

 

「ははっ」

 

「そ、それでその場所はどうであった? 銀の鉱脈はあったのか!?」

 

 オレがまずは山師を労うとこの山師を紹介した神田先生が挨拶もそこそこに膝を一歩進めて詳細を聞き始めた。

 まあ、この山師は神田先生の紹介だもんね。ここで不首尾だったりしたら面目がつぶれちゃうから必死にもなりますよ。でもでも安心してくださいな。不首尾だとしてもそんな事で待遇を変えたりはしませんから。

 

 しかしその辺りの危惧は杞憂だったみたいで山師は興奮しながらオレや周りの郎党達へと話し始めた。

 

「はっ、越後様。それに神田様や御郎党の皆様どうかご安心下され。かの場所は地形といい、近場の川の位置といい、間違いなく鉱脈が眠っておりまする」

 

「それはまことですか!」

 

「でかした! うんうん、ようやったようやった」

 

 神田先生と声が重なりましたが、やはりありましたかー!! 梶川くんの言う事ですし間違ってなんていないとは思ってましたが、やはり事実だったんですねー。さすが我が旦那様!

 

「はっ! しかれどももはや十一月、近いうちに雪となりましょう。それゆえ今年中の探索は無理と存じます。来年の春より続きをと考えております」

 

「ふむ、判りました。とにかく確認を致しましょう。誰かこの者と供に現地へと行って見てまいれ」

 

 上座に座っていたオレは真っ赤な内掛けから申し訳程度のお手手を大き目の袖から出す。そして誰かに一緒に行って貰おうと周りの郎党達を見回した。

 小柄少女が長い袖から小さな手を少しだけ出す姿ってすっごい可愛いよね。どんなに伸ばしても手の全ては見えないんだよ。こりゃ可愛い。うん。自分可愛い。

 もうさ、わしかわいいとか名言を言ってみたくなるよ。

 

「それでは私の手の者がお引き受けいたします」

 

 いつもの侍女がそう言って隣で控えていた猫さんに目配せをする。

 

「判りました。お願いしますね」

 

 えーっとですね。じつを言いますといつもの侍女の管轄って普通の侍女の仕事だと思われてるんですけど、本当はもう少し特殊な役目もあったりするんです。

 あっ、いえ、メインのお仕事はオレの身の回りの世話で間違っては居いないんですけど、隠れたお役目は越後の諜報部隊だったりするんです。CIAとかジェー○ス・ボンドみたいなイギリスの凄腕エージェントとかそう言った仕事ね。ボンドカーはありませんけど。

 んで、その越後の諜報員きっての凄腕が猫さんなんですよー。あの時拾った猫さんだけど、その後いつもの侍女が鍛えに鍛え上げて越後で一番の諜報員に育て上げたんですって。んま、この猫さんったら身軽だ身軽だとは思っていましたけど忍者みたいになってるなんて!?

 

 でもその中でも一番のやり手は間違いなくいつもの侍女なんでしょうけどね。

 ただ、彼女は諜報部隊全体の統括の仕事や何よりオレの身の回りのお世話と言う代わりの効かない重要(・・)な仕事がありますから大きく動く事は出来ないんですよ。オレのお世話があるんだから仕方ないね。

 

 って言うか諜報部隊の名前、何か良い名前があるといいんだけどなぁ。

 

 

 

 

 

 

「姫様少しよろしいですか?」

 

 話も終わり郎党達や山師、それに梶川くんが広間から出て行った……と思ったら酒田姉だけは残っていてオレに話しかけてきた。

 

「はい。どうしましたか?」

 

「この話、取り急ぎ六波羅へも通しておいたほうが良いと考えますがいかがでしょう?」

 

「ああ、そうですね。いらぬ不審を抱かせるのも嫌ですからね。そのあたりはよろしくお願いします」

 

 そりゃそうだ。ちょっと配慮が足りてなかったなぁ。やっぱりこう言った大きな事は六波羅の清盛様にも話を通しておかないとやばいですよね。痛くも無い腹を探られるのも面倒ですし。

 

「お任せを。それでは失礼致します」

 

 流石は酒田姉。政治的な面倒くさいのは彼女に一任ですね。

 

 政略の高い人材って本当に助かりますわー。何かひとつのボタンの掛け違いで六波羅とギクシャクするのはこちらも困りますから。

 そう言えば三国志とかのゲームで知力が高い人は軍師で助言するけど政治の高い人って助言してくれないんだよね。この辺りもう少し考えてくれてもいいんじゃないかと実体験で今この瞬間に思いました。

 

 

 

 

 

 

 と、そんなわけで我が越後の国はまたいつもの厳しい冬の季節となりました。

 今年の冬なんですけど中越の領地の年貢は五公五民にしたので餓死者はいないと思います。これだけでも越後の攻防戦も無駄にはならなかったなと思えるからまだましですね。桜川の爺様も少しはうかばれる……はず。

 

 

 

 そうそう、あの時現場へと見に行った猫さんの話では噂を聞きつけた一角千金を狙う男達やら、それを狙った世界最古の職業の遊女達などが、もう小屋やら酒屋なんかを作っていたんだそうな。

 って言うか、彼ら彼女らはどうやって冬を乗り越えるつもりなんでしょう……。でもこう言った人達は商魂とか色々逞しそうだから生き残りそうではあるけどね。

 

 さあ、そう言ったわけで不老になったり生死の境を彷徨ったり、更には結婚したりと色々とあった波乱万丈の治承三年も終わりです。治承四年は平家にとってよい年になるといいですねぇ。

 

 

 







治承三年は1179年です。
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