膝に矢を受けてしまってな――…雷が落ちるだけのギャグ話。メタい。

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 スカイリム。

 自然豊かなタムリエルの北国。

 

 スカイリム。

 古い神話の息づく国。

 

 ああ、スカイリム。

 絶賛内乱中。

 

  

 寒空の下、とある都市の門番たちが勤めを果たしていた。

 

「なあ、この内乱、いつになったら終わるんだろうな……」

「そんなの決まってるだろう。ドラゴンボーンが修行から帰ってきたらだよ」

「いつになったら帰ってくるんだろうな……」

「さあな。なんでも郊外に家を建ててたって話だし、いまごろ、きっと暖かな暖炉の傍でポージングでもしてるのさ」

「家……? ポーズがどうしたって……? そりゃ、なんの修行なんだ?」

「さあな。俺たちには分からんドラゴンボーンの都合があるんだろうさ」

 

 HAHAHA……。

 赤い月が雲の間から顔をのぞかせている星空に二人の乾いた笑い声が響く。

 

 スカイリムの衛兵には伝統が多い。

 巡回は必ず二人組だし、なぜか防具は軽装だし、そのくせ矢の矢じりは鋼鉄製。

 夜になれば松明を持たなければならないし、普段の武器は支給された直剣だ。

 そう、ノルドの伝統武器たる斧ではないのだ。

 

 顔全体を覆う視界の悪いフルフェイスマスクも、頑丈そうに見えてまったく防御能力のない軽装も、全部伝統なんだ。

 もちろん犯罪者を見かけたらスタァァァップ!!と叫びながら、視界に写っているかぎりどこまででも追いかけていかなけらばならないのだ。伝統だから。

 

「そうさ、俺たちがこうやって真冬の吹雪の中だって、人が来るはずない真夜中にだってここに立っているのも」

 

 伝統だからか?いや、おかしいだろう。

 シロディールの衛兵は寝ている間にグレイフォックスに兵舎を荒らされたと聞いたぞ。

 つまりシロディールのやつらは少なくとも兵舎に自分のベットがあるということだ。

 

「さっきから、なにをブツブツ言っているんだ?」

「いや、そういえば、兵舎のベットに行ったことがなかったと思ってな……」

「俺たちみたいに、壁の外の勤務の衛兵には用意されていないぞ」

「なん……だと……?」

「街道の巡回の連中を見てみろよ。やつら、延々と同じ道を行ったり来たりして、寝ているのかどうかすら分からん。気が狂わないのかね。あいつらに比べればまだましだろう。俺たちには交代とか、休日とか、いちおうある……かも……」

 

 相棒の言葉はそこで小さくなって消えた。

 休みなんてあったか?という言葉は飲み込んでおいた。気づいてはいけないと頭のなかで警鐘の音が響いている。

 

「そもそも疲れるということがあったか……?」

 

 相棒がそうつぶやいたものだから、はっとして気が付いた。気が付いてしまった。

 言われてみれば、門番に就任してから、疲れや眠気というものから自由になった気がするのだ。

 

 だが、しかし。このくらいでは気にすることもないのが衛兵という仕事だ。

 

 巨人に挑みかかって上空へ打ち上げられたという話も、ドラゴンボーンが突如目の前から姿を消したと思ったら全裸になっていたという話も、ドラゴンと戦っていたら市民にラストアタックを持っていかれるという話も聞いたことがある。

 

 話した奴は同僚だった。落ちくぼんだ鬼気迫る顔をしていて、それなのに疲れ果てている様子で、しきりに窓の外を気にしていた。

 なんだか他にも真実の神がどうのとか、世界の法則がどうだとか、口から泡を飛ばしながら話していたが、正直なところ理解に苦しむややこしい話だったのでまったく記憶に残っていない。

 

 なんでも、そいつの同僚はスイートロールのことを口にした瞬間、スイートロールになってしまったのだという。だから衛兵をやめて旅に出ることにしたんだとか。

 

 最後に話をしておきたいことがあるとか言ってたような。

 まあ、ときおりそうしておかしくなる人間が出るのは日常茶飯事だ。彼らはどこかのデイドラに入れ込んで、ついでに気に入られたのだろう。あっちでも楽しくやってるさ。

 俺?俺はもちろんソブンガルデ希望だ。

 

 無言になった相棒の隣で無駄なことを考えながら暇をつぶしていると、いつの間にか正面に女がいた。

 なんともすさまじい恰好をしている。詳しくは想像にお任せする。

 その服はどこで手に入れたんだ。とにかくものすごい。

 

「あの」 

 

 だがしかし、美女である。

 美女であったので普段のつまらない冗談ではなく、スカイリムの衛兵に古くから伝わるとっておきの一言を口にすることにした。

 

 衛兵は旅人に出会ったら必ず一言声をかけなければならない。これも伝統である。

 

「俺も昔は冒険者だったのだが――」

 

 伝統なのだから、今これを口にするのも仕方がないことなのだ。

 

「膝に矢を受けてしまってな……」

 

 

 

 衛兵が無駄に格好をつけてその文句を声に出した瞬間、轟音を立てて空から一条の光が彼の頭上に降り注いだ。

 ン゛ア゛アー! という奇妙な悲鳴をあげて黒焦げになった彼は地面に転がった。

 その光景を目の当たりにしたもう一人の衛兵は呆然として立ちすくんだ。

 

 美女は衛兵たちを満足げな表情で眺めると、たおやかな両腕で重厚な門を押し広げ、町の中に入っていった。

 

 スカイリムの内乱はいつ終わるのか。

 なぜ、衛兵に雷が落ちたのか。

 知るのはドラゴンボーンただ一人である。

 

 




「衛兵が例の台詞を言った瞬間に天罰が下るようになります」という某modにひとめぼれした。
持ってるのはCS版だし、正直書くしかないと思った。
衛兵さんには悪いことしたと思ってる。

晴天の霹靂
 晴れているのに雷が鳴るように、予期しない出来事が起こるさま

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