ISー天廊の番竜ー   作:晴れの日

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モンスターハンターxxのネタバレ含みます。
気を付けてね。

余談だけど、ダブルクロスと聞いて最初に頭を過ったのはTRPGのダブルクロスです。


鏖魔
第一話:不穏


ガォォォンゥゥ………

 

 空高く、撃鉄に叩かれ炸裂した、渇いた銃声が鳴り響く。まるで戦車のそれのような爆音は、ISに身を包んだセシリアが構える、100mm徹甲弾が放っていた。

 IS用対物ライフル。口径は大きく、威力もそれ相応。しかし、その余りの威力と反動により、ISでも撃てば体勢が崩れ、照準が合わなくなる。日本のとある企業が製作したらしいが、流石元大艦巨砲主義を唱えた国だ。文字通り戦車の砲弾と変わらない。ISが放つ実弾兵器としては、トップレベルと言われるのも頷ける。

 実践で使うとなれば、少し過剰火力な気もするが、セシリアからすれば、火力はあって越したことはないと考えている。しかし、この武器には大きな問題があった。

 強すぎる威力の大きな反動のせいで、再装填に時間がかかってしまうのだ。もともと狙撃銃に、それほどの連射性が無かったにしても、流石に一発ごとに大きく体がぶれてしまっては、まともな援護射撃すらできない。

 

「次を試してみましょう。」

 

 セシリアは、試験を手伝ってくれているISを纏う生徒に、100mm対物ライフルを手渡し、次のライフルを試す。これはSVDをIS用にグレードアップしたカスタム銃、通称ISSVDドラグノフ。威力は先程の化け物銃よりは劣るが、安定した性能を持ち、取り回しもしやすい。ISの実弾系ライフルにおいて、傑作と言っても過言ではない代物である。IS用にグレードアップした関係で、銃口も大きくなり威力も上昇している。すでにその威力は、生身の人間が扱う対物ライフルと変わらない。

 おそらく、これならばあのモンスターといえども、無事では済まないハズだ。

 

「弾丸は?」

 

「65,5mmIS用NATO弾を装填してます。」

 

「分かりました。」

 

 標的に向け、構える。ISSVDドラグノフは、先程の100mm対物ライフルよりもずっと軽い。普段使っているスターライトMK-IIIにより近かった。

 が、撃てば分かる振動の強さ。照準はブレ、ターゲットの真ん中を射抜くことは叶わなかった。普段、光学兵器を使っているからこその難題だった。もちろん、実弾を撃ったことが無いわけではない。だが、実戦での経験は皆無。むしろ、光学兵器に慣れてしまっているからこそ、無反動が当たり前となってしまっている彼女には、緊急の対処のさい、この小さなブレが命取りに成りかねない。

 

「銃はこれで良いにしても……後は私自身の問題ですわね。」

 

 体に叩き込む必要がある。

 彼女は、自分の新たな相棒となるISSVDドラグノフを、じっと見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

 

 

「そうですか……そちらには行ってないのですね。」

 

 日は暮れ始めていた。職員室で電話越しに千冬が話すのは、箒の両親だった。用件は、箒と束がそちらに姿を表していないか。ということだった。

 

『すまんな、私達も娘達にずっと会えずじまいでな……私が確りとあの子と接していれば、こんなことにはならなんだろうに……!』

 

 電話口の向こうで、悔しそうに語るのは、箒達の父であり千冬の剣道の師匠である、篠ノ乃 柳韻である。

 

「そんな、師匠のせいじゃ……」

 

『いや、私のせいだ。アイツを支えなければならなかった私達親が、アイツを一番に理解してやらなければならなかったのに……。』

 

 千冬は、掛ける言葉が見付からなかった。柳韻は、昔から酷く不器用な人物だった。本業は神主であるのだが、それを疎かにするほど、その生涯を剣道に費やしたような人間。剣道でしか語れず、剣道でしか生き方を示せない。これ以上ないほどの不器用な大人だった。

 今思えば、箒は父親に似たのだろうと、千冬は思い返す。あの剣道馬鹿っぷりは間違いないと、内心確信している。

 

「とりあえず、もしどっちか片方でも姿を見せたら連絡下さい。私の方も、何かあったら連絡しますので。」

 

『あぁ、分かった。それにしても、あんな小さかった子がこんなに立派になって。きっとアイツらも誇りに思っているよ。』

 

 千冬は、胸の奥に痛みを覚えた。柳韻の言う『アイツら』に、後ろめたさを感じたからだ。

 挨拶を終え、電話を切った千冬は、座席にもたれ掛かる。頭の中では、柳韻の言葉が繰り返し響いていた。

 

「誇りになんて……思っていないさ。」

 

 まだ、本当のことを告げられずにいるのだからと、千冬は内心呟く。

 呆れの溜め息は、自分に向けて。夕日の差し込む職員室で、彼女は一人黄昏る。天井を眺め、自責からくる無力感に打ちひしがれているのだ。

 

「お疲れさまです。」

 

 が、そんな彼女に声を掛ける人物。千冬が視線を向ければ、二つのコップを持った真揶がそこにいた。

 

「緑茶ですが、良いですか?」

 

「あぁ、助かる。」

 

 真揶から受け取ったコップには、白い湯気を立てた緑茶が注がれていた。確か、京都に旅行にいったとかで、お土産として大量に買ってきた教師が、職員室の給湯室にいくらかその茶葉を置いていた。おそらく、その緑茶なのだろう。薫りも味も普段のよりも上品な気がした。

 

「おいしい…やっぱり、松本先生の買ってきたお茶ですね。普段のとこんなに違うんですね。」

 

 松本先生とは、件の京都に旅行に行った教師である。趣味はお茶で、古今東西、あらゆるお茶に精通している。

 

「うむ、そうだな。普段は缶コーヒーばかりだが、たまにこういう一休みできるようなのも良いな。」

 

 千冬は、暖かいコップを両手で包み呟いた。

 彼女は、自分でお茶を淹れたり、コーヒーを炊いたり、ご飯を作ることをしない、いわゆる私生活がズボラなタイプの女性なのだ。

 

「それで、篠ノ乃さん達の足取りは掴めそうですか?」

 

「いや……やはり駄目だな。手当たり次第連絡してはいるが、束が関わっているせいでまるで消息が掴めない。アイツのことだから、まさか自分の妹に危害を加えることはしないとは思うが……。」

 

 溜息と共に漏れる言葉は、焦りを内包していた。

 千冬と束の付き合いは長い。親友と言える間柄でもある。だからこそ、何をしでかすか分からない危険性を、千冬は十分に理解していた。

 

「しかし、余り深く干渉もできん。IS学園教師である私達は、生徒を守るために様々な特権、効力を行使できるが……退学生となるとなぁ……自由が効かん。」

 

 IS学園は、その特性から国連管理下として、全ての国家から干渉管理されず、同時に所属する生徒もあらゆる国家から守られる、ある種の治外法圏であるのだ(管理費用の大部分及び敷地が日本にあるため、形式上は国連監視下による日本国管理となっている)。世界最大規模のIS保有数に、様々な国家の専用機が集まるのだから、ある意味当然の処置である。そこまでの権利を与えなければ、その武力を向けられかねないからだ。だが、代償もあった。生徒及び、IS学園敷地内でいえばかなりの権力を持つ学園関係者だがそれが退学生や、他国家領内ではその効力は、一般の一教師と変わらない。

 当然だと、頭では分かっているが、千冬は歯痒さを隠せずにいる。この拘束がなければ如何に楽か。それでも、束と共にいる箒を見付けられるかは分からないが、今よりは全力で動けるハズだ。

 

「織斑先生。これを……」

 

 不意に、千冬と真揶に近付く一人の教師。彼女は額に小粒の汗を浮かべ、千冬にiPadを渡す。

 怪訝な表情を見せるが、受け取った千冬はiPadに表示された写真を見る。真揶も、覗き込むようにそれを見る。

 空間に亀裂が入っていた。まるで、この学園の上空にある空の亀裂と同じような謎の亀裂。iPadに映る写真はそれである。

 

「これがどうした?」

 

「それは、別の場所に出現しました。」

 

「「⁉」」

 

 再びその写真に眼を向ける。違いは一見ない。空間に亀裂があり、その向こうに自然の景色がある。だが、改めて言われて気がつく。高度がかなり低い。

 IS学園上空の亀裂は、約1300m上空に対し、これは400m。かなり低いことになる。

 

「これは、どこの写真だ。」

 

「エジプト陸軍駐屯地上空です。……次の写真を見て頂けますか?」

 

 彼女の言葉に促され、iPadの画面をスワイプさせる。

 真揶は、その写真を最初理解できなかった。だが、少しずつ、その写真に映るものを理解しやがて、駆け出す。彼女はトイレに駆け込んだのだ。顔を青くさせて。

 千冬も、気分が悪くなった。それほどの惨状が、写真に写されていたのだ。

 

「亀裂の発生は、およそ30分前。出現したモンスターは、それと同時に現れたものと思われます。目標は、エジプト陸軍駐屯地を壊滅させた後、周辺の市町村を襲い。周囲一体を縄張りとしたもようです。」

 

「エジプト政府と国連はなんと?」

 

「一般公表は本日7時を予定。今晩、偵察隊による救助者捜索。明朝縄張り周辺にエジプト陸軍一個師団及び、エジプト空軍による焼夷作戦による殲滅戦を行う予定とのことです。」

 

 千冬は少し考えた後、再び口を開いて彼女に問いかける。

 

「それでどうにかなると思うか?」

 

「爆発物、大砲等はモンスターにも効果がある可能性は、以前の会議の際に上りました。しかし、実戦での使用も実験もできていないため、不確定としかいえません。むしろ、破壊された駐屯地のISがそんなやられ方をしている時点で、そのモンスターは並ではないのでしょう。私は、この作戦に期待は持てない気がします。それに………」

 

「それに?」

 

 彼女は、口を紡ぐ。言って良いのか迷っているのだろう。やがて、周囲を見渡し、千冬に耳打ちするように顔を近づけ話始める。

 

「対応が、速すぎる気がするんです。」

 

「確かにそうだが……モンスターの戦闘力を鑑みれば、妥当ではないか?縄張りを広げようと他の地域まで襲う可能性がある。」

 

「そうです。ですが、こういう時は、人命を優先しろと、救護者をもっと探せと世論が騒ぐんです。ましてや、観光地が縄張り内にあるのですから、他の国家からの弾圧も激しくなるでしょう。今のエジプト政府では、それは避けたいハズ。しかし、エジプト政府も国連も攻撃を急いでいます。」

 

 今のエジプト政府は、女尊男非の風潮の煽りから、今までの政治体制から一変。イスラム国との内櫟のために、多くの家族を失った女性達の反発によりその政治体制が崩れ、エジプト共和主義は崩れ民主主義が台頭する国家となっていた。そのため、女尊男非がより濃いい国家となっていた。しかし、急激な体制崩壊と入れ換えにともない、国家としての能力は弱まってしまっていたことは、言うまでもない。

 

「もしかして……」

 

「おそらく、捕獲する気でしょう。そして研究するのが目的かと。」

 

 ISをものともしない生命体。その秘密を探り、新たな力を手にする。

 

「エジプト政府が無理にそれを進めるのは、国連からの援助を得るためか。」

 

「それほど、あの国の国力にはガタが来はじめているんです。もともとイスラム国のせいで疲労していたのに、石油の価値の暴落。更に革命のせいで国力の浪費が連続して起こっていましたからね。仕方ないかもしれませんが……。」

 

 千冬も、彼女も懸念は同じだった。この有角のモンスターに、その作戦で足りるのか。捕獲するにしても、無事成功するのか。

 再び写真に眼をやる。燃え盛り、黒煙を空高くあげる基地だった場所。至るところに人だったものの破片。無惨に破壊されたIS。中央に立ち、その鋭い眼光を撮影者に向ける、蒼黒い巨竜。まるで、魔王のようなその風貌。撮影者は、どういった思いでシャッターを切ったのか。死を覚悟し、決死の思いで、己の生きた証を、この基地にいた者達の生きた証を残すために、この一枚を撮ったのだろう。

 千冬は、それを思うと、胸が痛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

魔王は、夜に吠える。

砂漠特有の寒い夜、

暗い地に空高く輝く月に向け、

鏖魔と呼ばれた魔王は、

その咆哮を轟かせる。

魔王の鏖殺の旅は、

今狼煙を挙げたばかり。




ダブルクロスのキャラは春日恭二を作ることを強いられています。
鏖魔ディアブロスの防具も、一式揃えなきゃならないですねハイ。

ていうか、この鏖魔ディアブロスとかいう名前。
中二レベルがMAX過ぎて最高に好きですわ。
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