今回は、勢いに任せて叩きつけましたので、誤字脱字が多目かもしれません……
そんときは、ごめんなさい。
「うらぁあっ!」
上空にいたISに、一夏は見覚えがあった。細部はかなり異なるが、以前鈴音との代表戦に乱入した黒い無人ISと、モンスターハンターのディアブロス装備を融合させたような赤く、有機的な翼を持つIS。白式が提示したIS名は『睡蓮:炎角』。そして、コード:ヴァサルブロスという単語だった。だが、そんなことは今の一夏にとってどうでも良い。雪片弐型で斬りかかり、この怒りをぶつけなければどうしようもない。だが、睡蓮はそれを難なく避け、カウンターの蹴りを一夏に叩き込む。
「一夏落ち着け!コンビネーションでぇっ‼」
乱入したラウラが、AICを起動し睡蓮の動きを妨げる。だが、睡蓮は両掌にある穴から炎弾を噴出し、ラウラへと一撃加える。AICから逃れた睡蓮は、シールドピアーズを構えたシャルロットの突貫を、すんでの所でかわす。
「おぉらぁっ!」
しかし、その後ろを回り込むように突撃した一夏の拳が、睡蓮の顔面を捉える。何故雪片弐型を使わなかったのか、それはシャルロットの影に隠れるためだ。初めから二人は、彼女の攻撃が避けられる事を想定していた。そして読み通りにAICで動きを封じたラウラと、シールドピアーズを構えたシャルロットに集中していたせいで、一夏の一撃を避けることが出来なかったのだ。確かに彼の心は灼熱していたが、その頭の中はあくまで冷静であるということが、このコンビネーションで読み取れる。
突然の一撃に、睡蓮はぐらつく。
「逃がすかよっ!」
肩から伸びる角を掴み、自身に向き直らせる一夏。
そのまま再び左の拳を振り抜く。確かにISのバリアで、与えるダメージは微々たるものだが、その衝撃はそのまま睡蓮のバランスを崩させる。
彼は、片足を失っていた現の姿に、幻覚で見た鈴音を重ねて見たのだ。親しい人の、痛々しい姿に彼は恐怖し、怒りを露にした。その思いの一つ一つが、今振るっている拳に乗る。
だが、睡蓮もただやられるだけではない。体勢を直し、その一撃一打を正確に受け止める。
「一夏っ!」
ラウラが叫ぶ。と同時に、彼は睡蓮から離れ、その睡蓮をシャルロットがサブマシンガンで牽制し、動きが止まったままの敵をラウラのレールガンが撃ち抜いた。完璧なコンビネーションとも言える。三対一という圧倒的有利な状況故の完封である。
しかし、一夏達に警戒を解くという選択肢はない。ISが表示した情報に乗る『コード:ヴァサルブロス』という一文。それは暗に、睡蓮:炎角が白式:霹靂と同じく規格外移行をしたISであると語っているのだから。
そしてその予測は的を射ている。
レールガンが直撃したハズの睡蓮は、直ぐに体制を直し右手に武器を取り出した。大型の鎖の装飾の付いた朱色の斧は、どこか有機的な印象を抱かせる。睡蓮は瞬時に加速し、ラウラに一撃食らわせる。降り下ろした斧の一撃により、彼女は弾き飛ばされ、かなり低い高度でやっと体制を建て直することができる。
シャルロットと一夏も、各々の獲物を手に取り睡蓮へと迫る。一夏は雪片弐型。シャルロットはアーマーブレードという一般的なIS用実態剣である。だが、睡蓮は振り向き様にその武器を横凪ぎに震い、二人の刃を防いだ。斧ではなく剣で。
「っ⁉」
目にも止まらぬ内に、武器を持ち替えたのかとシャルロットは混乱する。だが一夏は、その武器を知っている。スラッシュアックスだ。スラアクや、剣斧とも呼ばれる複合武装。しかし、一夏はこのような形状のスラッシュアックスに見覚えはない。
鍔競り合いは、ニ対一であるにも関わらず睡蓮が押していた。生半可な出力ではないのだろう。二人は睡蓮から飛び退き距離をとる。
「シャル、あれは斧から剣に、剣から斧に変形する武器だ。斧モードは素早い攻撃、剣モードは高出力な攻撃がある。奴の間合いに気を付けてくれ!」
一夏の助言に、シャルロットは頷き答える。本音を言えば、今すぐにでも一夏にはここを離れて欲しかったが、シャルロット自身とラウラだけで、あのISを倒しきれるか、甚だ疑問でもあったため、彼女は大人しく彼の助言を受け入れた。
「……」
スラッシュアックスを振り、剣モードから斧モードへと切り替え、左肩に担ぐ。右腕が空いた。
一夏は、睡蓮が遠距離攻撃をする気なのだと気が付いた。今こそが隙だと、一夏は駆ける。炎弾を掻い潜り、奴の喉笛を断ち切る時だと。だが、睡蓮の右腕は、下に向いたまま。
「一夏!」
シャルロットが気が付いた時には遅かった。睡蓮の射線上にいたのは一夏ではない。こちらに向かい飛ぶラウラと、IS学園である。太い炎の筋が、睡蓮の右腕から飛ぶ。以前一夏が相対した無人ISも、手から極太のレーザーを発射していたが、これはその比ではない。モンスターが発するような、地を砕き、空を焦がす一撃である。
「っ⁉」
反射的に避けたラウラだが、その直線上には、校門に殺到していた報道陣と、その対処に当たっている教師がいる。
マズイと思った時にはもう遅い。人間では、ISでは間に合わない。だが、今度は間に合わせる。
紺碧が、分厚い氷の壁をドリフト気味に振った尾の一振りで出現させ、マスコミと教師を守る。炎の暴力と、氷の壁のぶつかり合い。とんでもない量の水蒸気が発生するが、この攻撃は長くは続かない。何故なら一夏とシャルロットがいるから。
「おぉっお!」
大上段からの一振り。睡蓮は左手で持つスラッシュアックスで防ぐが、彼の影から、シールドピアーズを構えたシャルロットが飛び出す。
ゴッ!
その体に、杭を叩き付ける。瞬間、シャルロットはトリガーを握り混む。
火薬の炸裂音と、光が溢れ出た。シールドピアーズとは、いわばパイルバンカーである。それはかなりの大型の物で、全近接IS武装中トップの破壊力を持つ。切れ味で言えば零落白夜に軍配が当然上がるが、単純明快な威力に関して言えば、シールドピアーズの方が優れていると言ってもよい。
「一夏!シャルロット!」
更に、ラウラがシュヴァルツア・レーゲンのプラズマ手刀を起動し睡蓮に斬り掛かる。ここまで来れば、右手の攻撃は維持できない。右手で直接ラウラの攻撃を掴むことで防ぎ、シャルロットを蹴飛ばす。そして一夏にはラウラを叩き付ける事で、距離を取り戻した。
シールドピアーズが直撃したハズなのに、まだ動けるのか。シャルロットは、自身の頬を流れる冷や汗を感じた。
「………。」
睡蓮が、右手にサッカーボール程の大きさの何かを取り出す。それは多くの棘が生え、第一印象はサボテンの様であった。
何をする気なのか、一瞬呆気にとられる面々。その隙に、睡蓮はサボテンのようなそれを握り潰す。瞬間、炎が巻き起こり睡蓮の装甲の至るところが開き、そこからバーナーのような炎が巻き起こる。翼に、薄紫色の不気味な模様が浮かび上がった。
そうか、ここからが本当の戦いなのかと、三人は察して気を引き締める。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
間に合った。ドゥレムは、自分が出現させた氷を、海に落としながら内心で呟いた。振り替えれば、言葉を失いながらも、カメラを向け続ける報道陣と、IS学園教師が一人。
「あ、貴方達は、何故私達の世界に現れたのですか?」
勇気?蛮勇?いや違う。使命感がそうさせたのだろう。キャスターの一人が、ドゥレムにマイクを向けて訊ねる。その様を、彼は目を細めて見詰める。
矮小だ。ちっぽけだ。自分達モンスターが、軽い力を込めただけで散ってしまうような、弱い命だ。それでも彼は、その命一つ一つが欠け換えの無いものだと知っている。誰が教えてくれたのだったか。千冬か?一夏達か?いや違う。現だ。
彼女は、人間が誰かといるのは、孤独の方が辛いからだと語った。ここにいるほとんどの人間は、隣に誰かがいるのは当たり前だと思っている。当然だと錯覚している。違うのだ。今話し掛けてきたキャスターも、カメラマンも、新聞記者も、教師と誰もが違うからこそ孤独ではない。欠けてしまえばその個人に代わりは居ない。役割だとか、そう言った話ではなく、彼等の個々が、命として愛しいのだ。それはドゥレムにとってもそうだ。初対面の人間が、モンスターとしての姿を見せたドゥレムに、怯えながらも話し掛けてくれた。それが彼には、嬉しい繋がりであもあったのだ。
「……ぐぅぅ。」
差し出されたマイクに、そっと鼻先を触れる。ありがとうという意思を込めて、優しく触れた。今はきっと、これで十分なのだと信じて。
「グウオッオォオッ!」
天に向かい吼えるドゥレム。そのまま翼を広げ飛び立つ。そうだ、愛しい隣人を傷付けられ、黙っていられる訳がない。今正に新たに隣人を傷付けようとする敵を、見過ごせる訳がない。狩るのだ。モンスターとして、敵の一切合切を狩る。
優しかった瞳はなりを潜め、モンスターとして、そして憤怒の色に染まり上がったドゥレムが空を昇る。
「……あれが、モンスター…?」
ドゥレムが触れたマイクを片手に、キャスターは小さくなっていくドゥレムを、ただ見詰めていた。
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サボテンを砕いた後の睡蓮は、正に猛攻だった。斧モードと剣モードを切り替えながら縦横無尽に駆け回り、圧倒的な機動力で三人を圧迫する。これが規格外移行の力なのかと、ラウラは改めて実感する。バルファルク戦で一夏が見せた、白式:霹靂も凄まじかったが、睡蓮:炎角も相当である。そして、この二機のとある共通点にも気が付いた。白式:霹靂は、右手に装備された発電機関を稼働させることで、爆発的な機動力と電気を操る能力を手に入れる。そして睡蓮:炎角も、サボテンのようなものを消費し、自身の発炎機能を活性化。同じようにモンスターに匹敵する機動力と攻撃力を獲得しているようだ。これは、霹靂ならばライゼクス。炎角ならばヴァサルブロスというモンスターの能力を模倣しているためだろう。そして、この能力を使用している間、ISはモンスターと同じ土俵に立てるようになる。だがどうやって規格外移行するのか、これが分からない。ドゥレムは、白式の中にライゼクスが居ると語っていた。ならば睡蓮の中にもヴァサルブロスがいるのか?
「ラウラっ!」
「ちぃっ!」
迫る剣モードの一撃をAICで止めようと意識を集中させるが、モンスターの機動力足す、ISの物理法則を無視した動きは目で追うことも難しい。
「ぐあっ!」
結果として、剣モードの一太刀を直撃することになった。だが、もう一撃と振りかぶる睡蓮を、一夏が妨げる。やらせないと吼え、雪片弐型で斬りかかったのだ。しかし、睡蓮は持ち前の機動力で回避。炎を纏ってから、一夏達は睡蓮に一度も攻撃を当てられずにいる。
「くそ!」
今度は斧モードによる斬撃が、一夏とラウラを掠める。
シャルロットが二人の援護のためにアサルトライフルで、睡蓮を牽制する。だがこれも、睡蓮は難なく避けて見せた。しかし、シャルロットには不思議に思えた。ここまでの性能差があるならば、既に誰か一人落とされても不思議ではないハズだと。自分達の技術が優れているからなどと慢心はあり得ない。睡蓮は、間違いなく手を抜いている。あの状態になってから、三人を落とせるチャンスは幾らでもあったハズだ。何を待っているのか?
「……やるしかない!」
一夏も、同じ考えだったのだろうか。呟くと同時に緑雷が溢れる。
「一夏!駄目だ!」
だが、ラウラが直ぐに彼の肩を掴み、霹靂の発動を止めさせる。一夏も、白式が纏うことになる緑雷が他のISを傷つけうると知っているから、誰かが触れている状態では迂闊に移行はできない。
「離せラウラ!そうじゃないとアイツはまた!」
誰かを傷付ける。
そう言おうとラウラに視線を外した瞬間、睡蓮が弾け飛んだ。海上を跳ね、高い水柱を上げて叩き付けられたのだ。
誰がそれをした?ドゥレムだ。彼の尾による一撃が、睡蓮へと直撃したのだ。
「ドゥレム!」
シャルロットが声をあげる。一瞬、三人に視線を動かしたように思えた。だが、ドゥレムは一気に三人から離れて睡蓮へと向かう。
最初こそ、三人は援護に向かおうとした。だが、そこから先は絶望であった。三人が、思わず怒りを忘れ、友に対して恐怖を抱くほどの。
まず、海面から復帰した睡蓮を、その右前足で海中に再び叩き付ける。直後、ドゥレムを中心にした海面二百㎡が凍り付き、巨大な氷山と化した。
睡蓮も、氷を砕きながらドゥレムの前に現れると、再びサボテンを二つ連続で砕く。全身から発せられる炎は、睡蓮の足元の氷を溶かしていくが、それよりも早くドゥレムの一撃が彼を襲う。黒い色を纏った突進。素早いその一撃を、何とか回避した睡蓮だが、そのまま氷上のドリフトを見せたドゥレムが、間髪いれずに飛び掛かる。左前足の掌底により、氷に叩き付けられた睡蓮は、バウンドし空中に放り出される。が、体制を直し、両手で一つの炎の塊を、ドゥレムに向かって放つ。それはナパーム弾のように氷上の上で燃え上がり、氷山を瞬く間に溶かす。だが、ドゥレムが黒い色を纏った咆哮を挙げると、炎は消え去り、氷がより広がり、隆起して睡蓮へと襲いかかる。そして、その場で回転したドゥレムが、尾に合わせて氷の柱を出現させる。何をしようとしているのかと、睡蓮が判断する前に、ドゥレムがその氷を砕き睡蓮に向けて氷の礫として弾き飛ばした。点ではなく面による攻撃を、剣モードに変えたスラッシュアックスで受けきる。そのまま剣の刃に光を纏わせ、ドゥレムに斬り掛かる。だがドゥレムは、その一撃を自身の牙で受け止め、そのまま足元の氷に叩き付ける。
「グガァッァアアオッ!」
吼えたドゥレムが、そのまま足元に向けて、白と黒の混ざった絶対零度の奔流を叩き込む。氷を砕き、空気を凍てつかせ、触れる全てを消し飛ばす無慈悲な一撃。最後に残ったのは、完全に破壊されたISの、氷像とそれを彩る氷のステージ。そして哀しげな眼をした紺碧の竜だけだった。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「なんだよアイツ!」
暗い部屋で一人、叫び怒り狂う女。篠ノ之 束である。自分の座っていた椅子を蹴飛ばし、先程まで見ていた画面に怒りをぶつける。
「なんだってんのよ!もう少しでいっくんのISが見れたってのに!」
髪をガシガシと掻きむしるその様は、彼女の美しい容姿と反比例し、ある種の恐ろしさを抱かせる。
「あははは、ヴァサルブロスじゃやっぱり敵にならないかぁ。そうでないとね。」
もう一人いる。まるで南米の民族衣装のような服を着こなした、赤い瞳に黒い髪を持つ歳の頃14、5の少女。ラ・ロである。
「何、そのふざけた格好?」
「これ?似合うでしょう?折角こんな姿になれたんだし、色々遊んでみないとね。」
ラ・ロは、心底楽しそうに笑う。だが束は、眉間にシワを寄せたままだ。
「っち。……それより、いっくんの白式を…。」
「いいじゃんそんなの。所詮はライゼクスでしょ?私達の敵じゃない。それに、そろそろディスフィロアも動く頃合いだし、私達も遊んでいいんじょ?」
「……本当にディスフィロアが動くの?」
「アフリカのテオ・テスカトル。中国のラオシャンロン。ロシアのディスフィロア。この三体で言えば、ディスフィロアが別格。彼が本気を出せば、この世界の人類なんて一日あれば、絶滅させることができる。じゃぁなんで今まで動かなかったのか?その理由が、束には分かる?」
「知らないよ。畜生の考えなんて。」
「ふふ、言うと思った。答えは簡単よ。動く必要が無かったから。彼はバルファルクと同じ。ただのディスフィロアじゃない。変異種よ。それもとびっきりの。私とドゥレムディラ。そして彼がこの地球に現れた。そろそろ戦いたくてウズウズし始めてるハズ。あぁ心が踊るわ。人に試練を与えていたって言うお母様も、こんな気持ちだったのかしら?それなら私も、もっと早くやっていれば良かったわ。」
ラ・ロは笑う。その笑みは、嗜虐心に彩られた邪悪な笑み。彼女の愛らしい顔立ちからは、想像することさえ出来なかった笑顔だった。
「まぁなんでも良いよ。それに、お前の言うことが本当なら、もういっくんに構う暇なんてないし……せいぜい、そのライゼクスも有効活用してやる。」
自身の親指の爪を噛む束を、ラ・ロは楽しそうに眺める。
そうだ。楽しいのだ。こんなに愉快なことはない。人間達の努力、絆、愛。なんと甘美で美しい響きだろう。彼女は、それを全て慈しみ尊ぶ。愛するが故に、その先が見たいのだ。それが全てが救われるハッピーエンドでも、何もかもが無意味に終わるバッドエンドだとしても。
崩壊への歯車は、今こそ回り出す。
そろそろ、ディスフィロアも書けるかな?