「いや~にぎやかだな」
「そだね~」
サイタマとフランは呑気に話しながら歩いていた。
ここは地下都市、旧都。危険な妖怪(主に鬼)が集まっている場所である。幻想郷の中でも1,2位に入るくらいの危険度を誇る。
そこを平然と、しかも呑気に歩けているのはサイタマとフランの肝が座っているのか、はたまた何も考えていないのか…、理由はわかりゃしないが、まあ、二人が呑気に歩いていたということは伝えておこう。
二人は通り過ぎた。とある酒屋を通り過ぎた。
しかし、その酒屋には鬼の中でも強力な力を持つ、かつて『四天王』と言われるほどの実力を持つ鬼の中の鬼、『星熊勇儀』がいたのだ。
彼女は強者を自然と引き寄せる。
「ん?」
「星熊の姐さん、どうしたんですか?」
「いや、少し用事さ」
勇儀はそう言って出ていく。
「おい、アンタ」
「?」
そしてサイタマも強者を自然と引き寄せる。
彼はいったん振り向いた後すぐに後ろを見た。
「あんただよ、そこの人間」
「もしかして俺?」
「あんた以外に誰がいるんだい?」
「・・・それもそうか」
サイタマは勇儀にきちんと正面を向ける。
「あんたの名前は?」
「俺の名はサイタマ。趣味でプロヒーローをやっているものだ」
「いいねぇ、その趣味。あたしの名は星熊勇儀。ここに住んでる鬼さ」
「ところで、俺になんか用か?」
「ああ、あんたに用がある」
めんどくさくなければいいな、とサイタマは思った。
「あたしと力比べしないかい?」
「へ?」
「もう一回言うわ。あたしと殴り合ってみないかい?」
「なんで俺と?」
「なんか強そうだし」
「俺が?」
「ああ」
サイタマは驚いた。自分をすぐに見抜いてきたからだ。
さすがのサイタマも少し警戒する。
「・・・いやだといったら?」
「だったら」
勇儀は一歩踏み込むとサイタマの腹に殴りつけた。
「わざわざ喧嘩を売る」
サイタマは吹っ飛ぶ。
「おじさ~ん?!!」
ドガァン
派手な音を立てて少し高い建造物に直撃した。
「きゅうになぐるなんておねえさんひどいよ!」
フランは勇儀をポカポカ殴る。
「嬢ちゃん、安心しなって」
勇儀はカラカラと笑いながら言った。
「あいつはあれで死なねぇよ」
~☆~
「お兄さん、誰?」
「俺?サイタマだ。趣味でプロヒーローをやっているものだ」
サイタマは吹っ飛ばされた先で呑気に会話をしていた。
相手は黒い羽根を背中からはやしていた。
「なんで壁壊してきたの?」
「壊したんじゃない。吹っ飛ばされたんだ。勇儀ってやつに」
「ええ?!勇儀さんに?!!」
「ああ、さすがに効いたぜ」
サイタマは少しうれしそうに笑いながら立ち上がった。
「俺も腰入れるか」
サイタマはそう言うとすぐに勇儀の場所へ一直線に跳んだ。
彼女は呆然とその光景を見ていた。
~☆~
「ほら、見ろ」
「ふぇ?」
勇儀の指さした先には猛スピードで戻ってきているサイタマがいた。
ドォン
彼は二人の目の前に着陸する。
「すげぇな、お前。さすがの俺でも効いたぜ」
「だろ?すごいだろ?あたし」
二人は愉快そうに言う。
「もっと広いところでやろうぜ」
「ああ、あたしもそれを言おうと思ってたところだったのさ」
「フランもついてく~」
愉快そうに歩く二人にフランはトコトコとついて行った。
「おい、あの人間。見たか?」
「ああ、間違いない。星熊の姐貴に殴られてぴんぴんとしていたぜ」
「本当に人間か?」
「人間で間違いなさそうだぜ」
「これは、面白いものが見れそうな予感がするぜ」
「俺もそう思う。仲間呼んでくるわ」
「俺も」
これが鬼どもの酒のつまみになることは三人は知る由もなかった。
「ねぇ、爆発音聞こえませんでしたか?!!」
「聞こえた!聞こえたよ!」
「もしかして星熊さんとサイタマさんが何かしでかしたんじゃ?!!」
「そうかもしんない!」
「急ぎましょう!」
「ええ!」
そんなことも知らずに全力で走る二人もいた。
続く