それに対して天子はスリルを感じれば感じるほど楽しみを感じ、煽ってきます。
僕が持っている天子のイメージは『冗舌な天人』です。デップーみたいなものです。
「で、鈴仙」
サイタマは軽く準備運動をしている鈴仙に声をかける。
「何ですか?」
横目で見ながら鈴仙は応える。
「本当に良かったのか?」
「何言ってるんです?いいに決まってるでしょう。ここで奴の息の根を止めて師匠に献上してやるんです!」
「お前さ、薄々気づいていたけど結構発言がえげつないよな」
「そうですか?」
「自覚ないのかよ」
サイタマは冷や汗をかきながら頭をポリポリとかいた。
「準備できたかしら?」
対して天子は背伸びをしながら質問した。
「ああ、準備万端だ!どっからでもかかってこい!あらゆる手を使って貴様を絶ッ対にブッ殺してやるからな!」
月の兵士だったころの口調が戻りつつある鈴仙であった。
「・・・(もともとの鈴仙って口悪かったのかな・・・)」
サイタマはそう思った。
「戦いの準備はできたか?神へのお祈りは済ませたか?部屋の隅ででガタガタと震える準備は?殺したり、殺される覚悟はあるか?」
「ええ、一つ除いて全部できてるわ」
「・・・?」
「部屋の隅でガタガタと震える準備はしていないわねっ!」
次の瞬間、天子が剣を振り回して鈴仙に攻撃する。
鈴仙はそれをぎりぎりでよけると天子の脇腹にこぶしを叩き込む。
天子はすぐさまバックステップした。どうやらすぐにバックすることによって威力を和らげたようである。
「中々、ね。感心感心」
イテテ・・・とつぶやきながら天子は言う。
「これよ。このスリルよ。こうでなくちゃ面白くないわ。もっと来い、この間抜けウサギめ」
そう言いながら彼女は中指を立てた。
「ぶち殺すぞ、元
鈴仙はこめかみに血管を浮かせて言った。
・・・なぜここまで鈴仙が切れているか。
理由は簡単である。
天子の煽り方が天才レベルで腹立つからである。
腹立つからである。
まあ、にやけ顔をしながら小馬鹿にした感じでこんなことを言われたら誰だって少なくともイラッと来るだろう。
しかし、鈴仙は最悪だった。
彼女は煽りや挑発にめっぽう弱いのである。
そんなこともあって今鈴仙は天子に対しての冷静な判断力を失いつつあったのである。
このことについてはサイタマも感じ取っていた。
(・・・あいつ、挑発にかなり乗ってるけど大丈夫なのか?今の状態で戦ったら間違いなくコテンパンにされるぞ)
そんなことを思われているのにも気づかずに鈴仙は構える。
完全に目が殺す目である。
「・・・(ゾクッ)フフフフ、最ッ高♪」
天子は満足そうにつぶやく。
次の瞬間、鈴仙が動いた。
完全にこぶしが顔面に当たりそうになっていた。
しかし、天子のほうが一枚も二枚も三枚も上手だった。
彼女は鈴仙の渾身の一撃をさらりとよけると足をすくったのである。
足元の注意が行き届いていなかった鈴仙は派手に空中に浮いた。
しまった。そう思った時には遅かった。彼女は天子に剣を突き付けられていた。
ここまでやられてしまうと冷静さが自分の中に急に戻ってきた。まるで風呂で火照った体に急に雪をぶち込むような感じだ。
「・・・」
鈴仙はしばらくボーッとしていた。
もはや何を考えていいの可動体を動かしたらいいのか理解するのがかなり遅れている感じだった。
そして動いたときにこうつぶやいた。
「・・・負けたなぁ」
妙にしみじみと言っていたことをここに追記しておく。
続く