「ねぇ、雛」
「何?にとり?」
「お山のてっぺんうるさくない?」
「確かにそうね。でも、お祭りとかの話は聞いてないし…」
「またあの神社が余計なことしなければいいんだけど・・・」
「それは私も思うわ」
~☆~
今、私、鈴仙は異様な光景を目の前にしてしまいました、ハイ。
異様です。異様すぎます。常識どこ行った状態です。
そもそも、サイタマさん以前に、幻想郷にさまよいこんでしまった外来人は数知れません。その中には特殊な外来人もいました。それでも守矢の人たちと真剣勝負した数は結構少ないと思います。したとしても途中で仲介が入って中断されることがしばしばだと思います。しかし、今回は仲介なぞありませんでした。ただ真剣に勝負していたのです、お互いが。
2(武神&祟り神)対1(サイタマさん)で。
皆さんはもうお気づきだと思います。そうです。
サイタマさんが圧倒しているのです。
圧倒しているといってもわざわざ殴りにかかりません。飛んできた攻撃を拳ではじく、これだけです。たったこれだけです。
しかし、それが異常なのです。あの二人は腐っても神様です。その二人がぜぇぜぇ言っているのに対してサイタマさんは涼しい顔で立っているのです。まるで何事もなかったかのように。
しかもサイタマさんは途中でこう言いました。
「もしかしてお前ら、手加減してない?」
そのあとはもう攻撃がヒートアップしていましたね。
祟り神がわっかでサイタマさんを拘束したり(すぐ破壊されましたけど)、武神が集中砲火を繰り出したり(すべて拳で叩き落とされましたけど)とそれはまあすごかったですよ。
全て無駄な感じで終わりましたがね。
そして武神が苦し紛れに吐くようにして叫んだのです。
「貴様!いったい何者だ!どこで、どうやってそこまでの力を手に入れた!!」
それに対してサイタマさんは鼻をほじりながら平然と言いました。
「俺?趣味でプロヒーローをやっているものだ。あとこの力?筋トレ」
正直なめプな返答だと思います。ですが、私が訊いた時、それ以外思い当たるところがないと言っていました。間違いないのかもしれません。
というより、あとで冷静になって考えてみたのですがサイタマさんは(本人曰く)3年前はただの平凡な就職先を探している髪ふっさふさな青年だったそうです。そのような人が毎日あの内容を完遂するのはかなりの無茶です。無茶もいいところです。どこかで休憩を取らないと必ず体を壊します。というよりサイタマさんが行った筋トレはある程度の『間』が必要なのです。しかし、サイタマさんはそれをしませんでした。もし普通の一般人がやったならば過労で倒れてしまうでしょう、数か月くらいで。ここから察するにサイタマさんは元々素質があったのではないかと私は推測しています。
「趣味だと?」
あ、そこに食いつくんですね。
「趣味でそこまで強くなれるというのか?!!もっと信念とかそういうものとかないのか?!!」
「ない」
率直すぎます、サイタマさん。
「「・・・」」
二人の神はへなへなと座り込んでしまいました。まるで燃え尽きたかのように。
「・・・でも、楽しかったぜ」
サイタマさんは二人をフォローするように言います。でも、私にはわかりました。
私には波長を読み取る能力があるのです。それで見た彼の波長は『残念』でした。恐らく自身が思っていたほど二人が強くなくてがっかりしてしまったのだと思います。それでもフォローするのは彼の優しさの表れなのかもしれません。
「貴様、なかなか強いな」
「そうか?」
「ああ、全然手ごたえがなかった。そんなお前にいいことを教えてやろう」
「?」
「今日の夜、満月なんだ。その時に紅魔館へ行ってみるといい。たぶん、面白いものが待っているはずだ」
「まじで?」
「ああ」
「サンキュー」
・・・ゑ?サイタマさん冗談ですよね?もしかして行くとか言わないですよね?なんで満月の夜に行かないといけないんですか?え?『赤い服の人が言ってたから』?ちょっと待ってください。まじで勘弁してください。後生ですから頼みます、やめてください。え?行くことはもう決定事項済み?え??・・・えぇ?
その時、またしてもカラス天狗が飛んできた。
「そこの外来人さん、お届け物で~す」
「?」
サイタマさんは封筒を手渡されました。
「ではでは~」
ブン屋が飛び去った後、サイタマさんは封筒を開けました。
そしてじっと見つめてこういいました。
「これはもう行くしかなくなったな、鈴仙」
「え?」
あとで聞いてみたところ手紙にはこう書かれていたそうです。
『拝啓 髪の薄い外来人様へ
紅魔館であなたのご来館を楽しみにしております。
紅魔館一同』
・・・完全に挑発にかかってますね、ありがとうございました。
続く
「神奈子様~、諏訪子様~」
「ん?」
「なに~?」
「何故全力を出し切れなかったのですか?」
「ああ、それか」
「それはねー」
「?」
「「あの人間、殺気が凄まじ過ぎる」」
「え?!二人でもひるむぐらいの?!!」
「ああ。攻撃を仕掛けてそれを相殺するときに常に殺気が漏れ出していたのだが、それが尋常じゃなかった。シャレにならんくらいだった」
「もし私が神様じゃなかったら今頃逃げ出してただろうね~」
「まじですか・・・」
「だが、あいつは本物だ」
「うん、そうだね。本物だよ」
「?」
「奴の体には」
「「神が宿っている(よ)」」
「神…」
「といっても私たちとはまた別の存在だけどね」
「だな」
そういった二人の顔はすがすがしそうだった。