「う………ん……あれ…?」
金の麻雀牌から放たれた光に包まれ、意識を失った京太郎が目覚めると何処かで見た様な部屋が目に映った。
「ここは……全国大会の…控え室…?」
そこはかつて全国大会にて清澄高校が使っていた控え室。その床の上で京太郎は倒れていたらしい。
「あれ…?俺……確か…」
さっきまで買い出しの帰り道にいたはずなのに。どうして長野から遠く離れている東京にいるのだろうか?
京太郎は混乱しつつその場から立ち上がろうとした。
──ストン
「ん?」
急に下半身の方が涼しくなる。京太郎がゆっくりと下の方へと視線を落とすと…。
「アイエエエエエエエエエ!?」
奇声をあげて飛び跳ねる京太郎。大きくなっていた自分の制服のズボンと、トランクスが足下にあったからだ。
つまり今の京ちゃんは下半身丸出しのスッポンポン状態なのだ。
慌ててトランクスとズボンを上げて履き直そうとするものの、何度もずり落ちて着る事が出来ない。
そしてサイズが大きくなっていたのはズボンだけではなかった。
「シャツも!」
そう、制服の上の方もシャツもサイズが巨大化していてぶかぶかになっている。
「一体、何が起きているんだぁ!?」
グルグルと脳の中が回っているような感覚の中、京太郎は叫びながら改めて周囲を見渡す。
と、部屋の隅っこに一枚の大きな鏡が立っていた。京太郎は自分の身に何が起きているのか確認するべく、ずり落ちるズボンを引っ張りながら急いで鏡の前へと移動した。
そこに写っていたのは。
「嘘……だろ?」
サイズの合わない学ランを来た金髪の小さい少年の姿であった。そしてその少年の姿を京太郎は知っている。何故ならば。
「小学生の時の…俺…?」
それは幼い頃の自分の姿だったからだ。
そして京太郎は理解する。学ランが大きくなったのではなく、自分の身体の方が小さくなってしまったのだと。
咲は勿論、麻雀部で一番小さい優希よりもさらに縮まってしまっており、130cmに届いているかいないか分からないほど小さくなっていたのだ。
「そういえば…声も…」
自分の口から出ている声色もいつもの福○潤なイケメンボイスではなく、女の子の様な可愛らしい声になってしまっていた。
(訳が分からないよ…)
買い出しの帰りに金の麻雀牌を拾ったら急に牌が光り輝いて、その光に包まれて気絶して、目が覚めたら全国大会の控え室にいて、さらに身体が小さくなっている。
そんな夢物語みたいな事が京太郎の身に起こってしまっているのだ。これが和だったら「そんなオカルト有り得ません!」と叫び出していたであろう。
「とにかく…この状況をなんとかしないと」
いつまでもこの大きすぎる学ランを着けている訳にはいかない。こんな下半身丸出しの姿を誰かに見られたら恥以外のなにものでもない。
何か代わりに着るものはないかと京太郎は部屋中を探し回るが、めぼしいものは全く見つからない。
となれば京太郎に残された手は一つ。
「部屋を出るしかないよなぁ…」
この控え室に今の自分に役に立つものがない以上、長居する理由はない。とはいえ、外に出れば誰かに見られる恐れもある。
「…仕方ない。人に見られない様に隠れながら、何か着れるものを探すとしよう」
ふぅっと溜め息を吐いて、ずりずりと学ランを引きずりながら扉へと向かう京太郎。正直な話、歩きにくい事この上ないが下半身を露出して会場内を移動するよりはマシだ。
小さい頃の姿になってしまったとはいえ、そんな恥知らずな真似をするのは京太郎のプライドが許せなかった。
「お邪魔しまーす……」
恐る恐る扉を開けて、隙間から外を確認する。どうやら人はいないらしく、辺りは物音一つなく静まり返っていた。
「よし、今のうちに……」
このチャンスを逃すまいと京太郎は控え室から出ると、ちょこちょこと近くの壁へと移動しはじめる。
────今、この瞬間。須賀京太郎の長く険しい大冒険が始まったのであった。
──IH会場内 長廊下──
「うーむ……どうなってんだ…」
ずりずりと学ランを引きずり、不振そうに呟く京太郎。少し前までは壁や置物等に身を潜めつつ歩いていたのだが、今や隠れる素振りを全く見せる事なく堂々と会場内を移動している。
と、いうのも控え室を出てからそこそこ歩いたのにも関わらず全く人のいる気配が感じられなかったのだ。
これほど広い施設にて人っ子一人いないというのはどう考えたって不自然だ。
「なんか……嫌な予感がするな」
額から一筋の汗が流れる。それは学ランを引きずり続けた事による疲れから出たものなのか。それとも恐れからなのか。
周囲に警戒しながらもしばらく歩いていた京太郎の足が売店の前で止まった。
「ここなら何か着れるものがあるかも…」
そう思い、売店へと入るが。
売店の中はがらんとしていて食べ物や雑貨品が全くない状態であった。店員がいる様子もない。
「マジかよ……」
少し空腹気味だった京太郎は服を手に入れるついでに、何か食べ物を…と思っていたのだが期待を裏切られてガックリと肩を落とした。
「…ん?あれは」
頭をあげた視線の先の棚にあるものを見た京太郎は、急いで棚の前へと移動する。そこにあったものとは。
「あったあった!」
思わず大きな声をあげる。サイズを見るに子供用の服が綺麗に折り畳まれた状態で置いてあったのだ。
これでやっと動きにくい状態から解放される。そう喜びながら京太郎は棚へと手を伸ばす。
しかし────。
「いや、待てよ……」
京太郎の中で生まれたある疑念が彼の動きを静止させる。何故、食べ物や雑貨品はないのに服だけがポツンと綺麗に折り畳まれた状態で棚に置いてあるのか?しかもご丁寧に子供用のサイズという何とも都合の良いおまけ付きだ。
まるで、京太郎が着るのを待っていたかの様である。
「けど…」
ようやく探していた着れる服が目の前にあるのだ。不自然な事とはいえ油断したら下半身丸出しになってしまう、ぶかぶかの学ランを着続けるというのもアレである。
それにこの会場に来てから不自然な事は幾つもある。この程度でビビる訳にはいかない。
京太郎は棚の上の服を掴み、人に見られない様に用心して物影の方で着替え始めた。
ノースリーブのパーカー、太ももが見える短パン、下着、ブーツ。どれも京太郎にぴったりサイズが合っていて動きやすい。
……ついでに変な仮面も一緒に入っていたがなんか気持ち悪いので放置する事にした。
「よし…!」
着替え終えた京太郎はくるくると腕を回したかと思うと、天に向かって腕を突き上げ。
「フェイタライザー、シャカ!」
と、なんか腹が立つドヤ顔で高らかに叫んだ。
シーン・・・・
「…なに馬鹿な事してんだ俺は」
急に恥ずかしくなった京太郎は自嘲しながら畳んだ学ランを棚の上に置き、服と共に置いてあったウエストバッグを手に持った。
「これはどうしようかな…」
ちょっと考える様にウエストバッグを眺めていたが。
「……まあ、これから何が起きるか分からないし念のため持ってくかな」
うんうんと頷いて京太郎はウエストバッグを腰に装着する。一応、バッグの中を確認してみたが何も入っていなかった。
「さてと、これからどうするか…」
目的であった着れる服は見つかったものの、まだまだ分からない事は沢山ある。長野に帰る方法も探さなければならない。
しかし、何よりも今の京太郎にとって必要な事は…。
「腹減ったなぁ…」
何か食べ物が欲しい。喉もカラカラでだいぶ参っている。今はまだ大丈夫だが、このままでは空腹のあまり倒れてしまいそうだ。
「ここにはもう何もないし…別の場所を探してみるか。はぁ…それにしても腹減った…」
グーグー鳴りっぱなしのお腹をおさえながら愚痴をこぼし続ける京太郎。
───だからこそ、すぐ後ろに近付いてきていた黒く大きな人影に気が付く事ができなかった。
その黒い影はぬうっと、両腕を伸ばすと。
「うわっと!?」
京太郎の身体を強く抱きしめ、持ち上げた。
「えっ、な、なにっ!?」
背中にむにゅんと当たる柔らかい感触。自分の身体に回っている細い手。いきなりの不意討ちに京太郎は呆然とする。
だが、それで終わりなはずはなかった。
「ぼっちじゃないよー…」
「ひうっ!?」
耳元にかけられる間延びした可愛らしい女の子の声。そしてまた。
「京太郎君はもうぼっちじゃないよー…」
自分の名前と共に語りかけてくる間延びした声。ドクンドクンと激しく鼓動している京太郎の心臓。頭が、恐怖で染まっていく。
得体の知れないものに今、自分は捕まっている。
その正体を確かめるため、必死に恐怖を抑えてゆっくりと後ろを振り向いた。
そこにあったものは───。
「つーかまえたよー…」
白いリボンのついた帽子をかぶり、赤い瞳で京太郎をじっと見詰めながら満足そうに笑っている少女の顔だった。
ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ
不気味な女の笑い声。それが京太郎の頭の中で響き渡る。その少女が口に出している訳でもないのに。その笑い声が京太郎の頭の中を埋め尽くしていく。
ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ
「う……うわああああああああああああ!」
恐怖に満ちた叫び声が、京太郎の口から放たれる。
「ああ…そんな所におったんやな、京太郎。ふふふ、今からそっちに向かうから。膝枕でもなんでも……たっぷりと可愛がったる…待っててや…」
その行為が、赤い瞳の少女と同じく京太郎を求める獣を誘き寄せてしまう事となるとも知らずに。
ステータス
須賀京太郎
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状態 ショタ化
護衛兵 なし
装備品なし
所持品
なし