目が覚めたら、日も当たらない地下でデカい蛇と同居していた件。ナザリックはどこへ消えた、このデカい蛇はなんだ。――そう混乱するアッバルに、そのデカい蛇はこう言った。
「お嬢さん、どこからここに入ったのだね?」
ちなみにここはホグワーツの地下の一室で自分はバジリスクだ、とアッバルへ親切に教えたデカい蛇。この蛇の言葉を信じるならば、ナザリックの霊圧が消えたのではなく自分が消えたということか、とアッバルは愕然とする。衝撃に戦くアッバルを哀れに思ったのだろう、デカい蛇もといバジリスク氏は彼女を追い出すでもなく色々と教えてくれた。ホグワーツやら魔法やらなんやら。
ホグワーツとやらをどこかで聞いた覚えがある。確か脳みそが腐るまで学べと歌う、学校だ。スリザリン? グリフィンドール? 記憶が刺激されてきた気がする。なにかそれに関するものを読んだ覚えがある。
しかし思い出せない。
残念ながらアッバルの記憶力は悪い。興味のあることを見つけると直ぐさまそれに関することを覚えるが、また次に新しい興味の対象を見つけると、ロケット鉛筆のごとく古いものから外へ押し出される。昔は好きで読んだものだとしても、もう彼女は覚えていない。
とりあえずこのホグワーツが寄宿制の学校で魔法使いを育成する場所であることは理解し、蛇の残念な脳味噌にそれを刻み込んだ……その時だ。
『いでよ……スリザリンの継承者の証よ!』
若いくせに何様のつもりか、とても偉そうで威圧的な声が届いた。
「仕事か……お嬢さんはここで待っていなさい。後で主人に紹介してあげよう」
「有難う、カッコイイおじさん!」
「私は雌だ」
「有難う鱗のきれいなお姉さん!」
ウン十メートルの巨体を誇るバジリスクは動く歩道の上にでも立っているかのようにスルスルと滑らかに動き、口を開いた出入り口からその身を外へ運び出した。アッバルもそれを追い出入り口の端、筍のように突き出た石に手をかけ外を見下ろす。外には十代半ばくらいの女の子が横たわり、二十かそこらの青年が十代半ばの少年をいびっている。蛇のお姉さんは青年に従わなければならないらしく少年を襲っていた。
アッバルは出入り口から飛んで降り、横たわる少女の元へ走る。そしてジャンプし目的の
だが、もっふもっふ揉み揉みと、気を失った少女に対して極悪極まりない所業に精を出している間に、親切なバジリスクが切り殺された。流石に恩蛇の突然の訃報、いや、連絡ではないから訃報ではない。目の前で起きた殺蛇事件に叫び声をあげるアッバル。
「お、おねーさーん!」
お兄ちゃん、どうして蛍、死んでしまったん?
しかしアッバルの叫びなど青年も少年も気にしやしない。アッバルの採用は見送りか? とりあえず勝った方についていけばご飯に困ることはないはずだ。偉そうな青年の方が資金力がありそうだが、ガリヒョロ少年もこれでいて金持ちだったするやもしれない。ガリヒョロなのも体質がゆえかもしれないのだから。どちらに着くべきか迷う……。
ただの蛇なら動物を飼える家庭環境であることが前提だが、アッバルはただの蛇ではないので問題ない。勝つべきは金持ち、貧乏人に用はない。アッバルは祈った。金持ちが勝ちますように!
観戦している間に偉そうな青年の優勢がどんでん返しに崩され、丸眼鏡のガリヒョロ少年が勝利を手にした。そしてアッバルが乳を揉みしだいた少女の元へ駆け寄る。
「ジニー! と、蜥蜴……?」
「蛇です」
「人語をしゃべった!?」
「そうです。世界的にも珍しい、きっと世界に一匹しかいない人語をしゃべる蛇ちゃんです。飼いたいと思いませんか」
「え? いや、いらないよ」
「ところでお兄さん、私の大事な(就職先を紹介してくれる)お姉さんをよくも殺してくれたね、原因はあのトムだかトーマスだかって人だけど」
「……ついてくる?」
「もちろん!」
【アッバルは飼い主を手に入れた! 手放す気はないので、飼い主が死なないように手を貸してやるつもりはないではない!】