塗り替えられる記憶   作:美寿子

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教室。笑顔、誘イ。

「お、おはよーう」

 ぎこちない、かくついた笑みを浮かべながら教室に入る。別にいじめられているわけではないから、じろじろと私を睨む人はいないけど、なんだか学校が久しぶりな気がして緊張する。

「吹雪ちゃん、大丈夫?」

「あ、うん。 もーモリモリって感じ!」

「なにそれ。それより、今日も一緒に帰ろうね」

「ん、うん。そうだね」

 クラスメイトは喜色満面、といったようににこにことして私に話しかける。対する私はどもり、笑顔も汚く見るに堪えない。目の前の子が笑顔の下にどんな感情を隠しているのかを考えるだけで、跼天蹐地な心境に陥る。

 そのままクラスメイトは離れるが、私はなんだか落ち着かず、そわそわとしながら席で教科書などを取り出す。妙にべたつく手をそのままに、ぼうっと黒板を眺める。

 気がつくと、私が教室に入ったときの二倍くらいの人の量になっていた。そんなに長い時間黒板を眺めていたのか、と時計を確認すると20分ほど経過していた。たった20分で暑さは増し、頬を汗が撫でる。あつい、と呟いてみても誰も反応しない。それが面白くなく、頬杖をついてぶすっとした表情をしてみる。しかし、目の前を通りかかった男子に失笑されたのでやめることにした。

「うおーい、お前ら席につけえー」

 担任が教室に入り、着席を促す。今日も今日とて暑そうだと思い、自分の汗を拭く。同時に先生も拭い、なんとも言えない気分になった。

 授業なんてつまらないし、人間関係も面倒臭い。学校というところはつくづく嫌になる。

 

「吹雪」

 昼休み。お手洗いに行こうと思い、立ち上がった私の名前が唐突に呼ばれ、背骨を捻るようにして振り返る。

 目の前にいたのは、あまり知らない男の子。今朝私を笑ったやつだと思われる。なんだ、脅しか、と身構えたけど、様子を見るにそうではないみたい。

「あの、今日の放課後、ちょっと良いかな」

 周囲からはひゅーと声が上がる。なんだ、なんなんだこいつは。私を目立たせるのはやめて欲しい。それに、今日は別の子と帰る約束をしているというのに。

「今日は帰る約束してるから」

「すぐに終わるから」

「えー……じゃあ、それなら」

 渋々了承し、そのままトイレへと直行する。

 しかし、あの人はなんだったのだろうか。放課後じゃないといけない用事ってなんだろう。今じゃダメなのかな。

 すっきりした私は、予鈴を聞いて「やばっ」と教室に駆け戻る。5時限目の授業はなんだったか、そんなことを適当に考えながら。

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