5つの炎の継承者   作:DYNA

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忠犬の気持ち?

~次郎サイド~

「ただいま~・・・」

「!?」

 

 いつものように、主人である冬馬を次郎が玄関まで出迎えにいった。

しかし、次郎は「おかえり」という思いを伝えることが出来なかった。

大好きな冬馬の右頬が誰かに蹴られたような痣があった・・・・。

 

「くぅん・・・」

「心配してくれてありがとな?」

 

そう言って、自分の頭を撫でてくれる冬馬。

嘘つき。右頬を蹴られた拍子に歯で口の中を切ってしまっているくせに・・・。

無理をして笑顔を浮かべなくてもいいじゃないか。と、次郎は思う。

 

「・・・・・・次郎、また明日な?」

 

 そう告げ、次郎を雨のボンゴレ匣の中に戻した。

当然、他のアニマル達も同様にボンゴレ匣の中に帰していく。

しかし、次郎は考える。自分に何か冬馬のために出来ることはないのか?と。

 

 そして、翌日の朝がやってきた。

 

「おはよう。俺、今日は学校休むわ」

 

 リビングにアニマル達を開匣した後、冬馬は右頬を擦りながら部屋に向かう。

リビングに残されたアニマル達は、各々で自由な時間を過ごし始めた。

 

「・・・・・・・・」

「ぴゅい?」

 

 しかし、一匹だけいつもと様子が違うアニマルがいた。・・・・次郎である。

皆が各々で自由な時間を過ごしているというのに、一匹だけ浮かない顔をしていた。

そんな次郎を心配してか、小次郎が次郎に声をかけたのである。

 

「わん・・・」

 

 次郎は、自分の胸の内を小次郎に話した。

冬馬のために自分に出来ることはないのか?と、考えてることを。

それに対して、小次郎は・・・・

 

「ぴゅい♪」

 

 大丈夫 大丈夫♪ 冬馬は馬鹿だから風邪なんか引かねぇって♪

と、次郎に能天気な返事を返し、机に移動してリモコンでテレビの電源をつけた。

 

「・・・・・・・・」

 

 次郎は、確かに冬馬は馬鹿だから風邪なんか引かないけど、心配なんだと思っている。

あのとき、自分が少し我慢して修行についていっていれば、冬馬は口内炎で苦しむ必要もなかったはず。そもそも何をしていたのだろうか? あの右頬の痣は我流の仕業なのだろうか?

そう疑問を抱き、次郎は我流に話しかけた。

 

「わん?」

「ガァ? ガァア!」

 

 疑われた我流は、シャドーボクシングを中断し、昨日あったことを話した。

冬馬が同じ年頃の少年剣士と戦い、極限太陽を決めて勝利して女の子を護ったこと。

しかし、我流との修行は中断と言われ、我流は晴のボンゴレ匣の中に強制送還されたこと。

だから、冬馬が誰かに蹴られたところは見ていないと伝える。

 

「にゃん」

「?」

 

 次郎の読みが外れたところに瓜が次郎に近寄ってきた。

「もう冬馬のことは気にするな」とだけ伝えると、ソファーに戻っていく。

 

「Zzz Zzz Zzz」

 

ロールにも話を聞こうと思った次郎だったが、ロールは静かに寝息を立てている。

自分が心配し過ぎているだけなのだろうか? それとも、皆が冬馬のことを考えてないだけ?

 

『さぁ♪ 人気コーナーの「犬猫の気持ち」のコーナーでぇす♪』

 

 リビングに陽気なアナウンサーの声が響く。

視線をテレビに移すと、人気コーナーである「犬猫の気持ち」が始まっていた。

 

『今回のお客様は・・・・えと・・・』

『どうしたのですか?』

『い、いえ・・・なぜ紙袋を?』

 

 今回のゲストは少々異様に見えた。

見たところ、冬馬と同じ年代の少女なのだが、頭に紙袋を装着していた。

ちゃんと目の部分に穴を開け、視界を確保している。

 

『えっと・・・』

『マジカル☆カレンです』

『はい?』

『マジカル☆カレンです』

『マ、マジ・・・?』

『マジカル☆カレンです』

『・・・・・・マジカル☆カレンさんでぇす♪』

 

 流石はプロ。痛々しい女の子の主張を受け入れたようだ。

 

『マジカル☆カレンさんの大切な家族を教えてほしいなぁ♪』

『家族?』

『うん♪』

『笑わせないで』

『へ?』

『畜生を家族と呼ぶなんて・・・・頭に蛆でもいるのかしら?』

『その言葉を裏返せば、ペットは大切な家族ということよね!?』

 

 陽気な笑顔を浮かべていたアナウンサーが必死に取り繕う。

アナウンサーの視線がスタッフに助けを求めているのは明らかだった。

 

『き、気を取り直して、マジカル☆カレンさんの家族は~♪』

『この子よ』

 

 マジカル☆カレンの足元に置いてあった籠から青い毛を生やした犬が顔を出した。

ただ・・・・・・・意識を失っているみたいだ・・・・痙攣してるから余計に恐い。

 

『お、お昼寝をしてるんだよねー♪』

『あら? この駄犬は、せっかくのテレビだというのに・・・・』

『キャイン!?』

 

 見えなかった。マジカル☆カレンが何かしたようだが、全く動きが見えなかった。

意識を覚醒した青い犬は、ここがどこなのかさえ分かってないようである。

 

『このワンちゃんのお名前は?』

『ランサーよ』

『マジカル☆カレンさんの愛犬「ランサー」君です♪』

『さっきからウザいわ。可愛い娘ぶっても、視聴者は靡かないわよ?』

『んだとォ!? ハッ!? えへ♪ マジカル☆カレンさんっておもしろーい♪』

 

 アナウンサーが恐い笑顔でマジカル☆カレンを見ている。

 

『そ、それじゃあ、ランサーくんの特技は?』

『火の輪潜りよ』

『へ?』

『火の輪潜りよ』

『あのぅ・・・・サーカスのヤツ?』

『火の輪潜りよ』

『えっちょ・・・・なんで用意してんの!?』

 

 戸惑うアナウンサーを無視し、スタジオに火の輪が準備される。

ランサーはリードを噛み千切ろうと必死に足掻いている。

 

『ランサー・・・』

『グルルルルルルル・・・』

 

 火の輪潜りをやらされようとしているランサーの眼には革命の炎が宿っていた。

お前の命令なんか聞かない。俺はお前から自由になるんだ!という革命の意志を感じた。

 

『麻婆豆腐』

『ぎゃぃいいいいいん!?』

『ランサーくーーーーん!?』

 

 アナウンサーが驚愕の声を上げる。

麻婆豆腐という言葉を聞いた直後、ランサーが火の輪潜りを見事に成功させた。

それをマジカル☆カレンが紙袋の下から悦の眼差しを向けている・・・・・ような気がする。

 

『過去に前例がない特技でしたねー・・・』

『当然よ。ランサー、お手』

『ワン・・・』

『と、見せかけて麻婆豆腐よ♪』

『ぎゃぃいいいいいん!?』

『ラ、ランサーくーーーーん!?』

 

 普通にお手をしようとしたランサー。

しかし、マジカル☆カレンが隠し持っていた麻婆豆腐を見た瞬間に気絶してしまった。

まるで糸の切れた操り人形のように動かない。

 

『ランサーは、こうやって麻婆豆腐の夢を見てるのが幸せなんです』

『嘘ですよね!? ピクピク痙攣してるから!!』

『さて、飽きたから帰るわ』

『あ、飽きた!?・・・・・・・・・えっと、最後にランサーくんとの楽しい思い出を・・・』

 

 スタッフからカンペでも出されたのか、アナウンサーが困った顔で質問する。

 

『・・・・・ランサーが私のために贈り物をしてくれたことかしら』

『贈り物ですかぁ♪ ほっこりエピソードがやっと聞けそうです♪』

『私のために・・・・・』

 

 プチン!

と、突然テレビの電源が消えてしまった。

原因は、牛丼がテレビのコンセントを足で引っ掻けていた。

 

「モォ・・・」

「わんわん」

 

 みんなに平謝りする牛丼に気にするなと伝える次郎。

続きが気になる終わり方だったが、贈り物という案はアリかもと思った。

自分も冬馬のために何か贈り物でもしようと考え、外に出る決心をした。

家の中にある物を贈っても仕方がない。外には色々な物があるはずだから・・・。

 

「わん!」

「ぴゅい♪」

 

 小次郎に自分の決意を話し、外に出る計画を立て始める。

計画は至ってシンプル。玄関のドアから外に出て贈り物を探す。ただそれだけ。

相方の小次郎も快く承諾し、さっそく外に出るために玄関へと向かった。

 

「わぅ」

 

 可愛い両前足で器用にドアノブを掴んだ次郎は、簡単にドアを開けてしまった。

他のアニマル達も自分達に気付いていないことを確認し、こっそりと小次郎と抜け出す。

こうして、次郎と小次郎の冒険が始まった。

 

 数時間後。ピン!とくる贈り物は見つからず、放課後の時間帯になってしまっていた。

今頃、自分達がいないことに気付いて、冬馬が自分達のことを探しているかもしれない。

次郎の頭に乗っている小次郎は、能天気な雰囲気で外の様子を楽しんでいる。

このままじゃ帰れない気持ちが次郎の顔を俯かせる。

 

「あ! 犬がいる!」

「耳から何か噴き出してない?」

「頭に燕乗せてるー♪」

「?」

 

 次郎が顔を上げると、3人の女の子が自分達のことを見ていた。

あっという間に近付いてきて、3人の女の子達に触られまくる。

 

「どこからきたのー?」

「あれ? この燕さん・・・」

「? どうしたの、なのは?」

「どこかで見たような・・・気がするの」

 

 その言葉を聞いた小次郎は動揺する。マズイと思ったからだ。

冬馬がボンゴレ匣の力のことを隠してきたことは知っている。

ここは一旦、女の子達から逃げた方がいいと判断し、次郎を置いて空を飛ぶ。

当然、残された次郎にとっては堪ったものではない。

 

「わぉん!?」

「ぴゅーい!」

 

 逃げていく小次郎に吠えてしまう次郎。

相方に裏切られた気分になり、次郎は凹んでしまう。

しかし、女の子達から差し出された物が沈んだ気持ちを回復させる。

 

「クッキーあるけど、食べるかな?」

「チョコとか入ってないし、大丈夫でしょ」

「はい、少し分けてあげるね?」

「スンスン・・・」

 

 困った顔をしていた次郎の眼前に女の子達が作ったひとつのクッキーが差し出される。

警戒した次郎だったが、いい匂いがするクッキーの魅力と自身の好奇心には勝てなかった。

 

「食べたぁ♪」

「お腹が空いてたみたいね♪」

「冬馬君のお見舞いの品だけど、もう少し分けてあげるね?」

 

 なのはと呼ばれた女の子から3枚クッキーを与えられた次郎。

食事をしなくていいアニマル匣兵器だが、味覚くらいはある。

甘い砂糖が入ってるクッキーは、犬である次郎にとっては好物だ。

あっという間に完食し、クッキーをくれた3人にすり寄る。

 

「あぁこんなに甘えてくるなんて・・・ウチで飼いたいわ♪」

「そうだねー♪ アリサちゃん家なら大丈夫だね?」

「ねぇ、飼い主さんいるのー?」

 

 ここで正気に戻る次郎。しまったと思った。

美味しいクッキーに誘惑され、当初の目的を忘れてしまっていたからだ。

慌てて帰ろうとしたのだが、アリサと呼ばれた女の子に抱きつかれる。

 

「逃がさないわ♪ この感触・・・犬はやっぱり最高♪」

「くぅん・・・」

 

 またまた困る次郎。

美味しいクッキーをくれた女の子に吠えるのはどうかと思うからだ。

でも、もう帰らないと冬馬が心配するはずだ。もう夕方になってしまう。

なんとかアリサのことを振りほどいて、走って帰ろうと考えたときだった。

 

「!? ウゥゥゥッ!!」

「ど、どうしたの!?」

「アリサちゃんに尻尾を踏まれたの!?」

「なのは、どういう意味なのよ!?」

 

 違う。アリサは何もしていない。

何か嫌な気配が此方に向かってくるのを次郎は察知してしまった。

数は1。嫌な気配がどんどん此方に近付いてきている。

 

「ワンワン!!」

「き、急にどうしたのよ!?」

「ワン!!」

 

 次郎は言葉が通じないのを承知しているため、凄い剣幕で吠え立てるしか出来ない。

そうでもしないと、女の子達を逃がしてあげることができないからだ。

 

「ゥウウウウウ・・・・」

「い、いこ! なんか凄く怒ってるみたい」

「うん・・・」

 

 次郎の鬼気迫る剣幕に押され、女の子達は逃げていく。

それでいい。危険な目に遭わせるなんて絶対に出来ないから・・・。

 

「シュルルル・・・」

「ゥウウウウウ!」

 

 次郎は現れたソイツと対峙する。

ジュエルシードに取り憑かれたトカゲの怪物と。

次郎はジュエルシードのことなど知らないが、敵であるという認識は出来ていた。

小刀3本を装備していない次郎が勝てる相手ではない。しかし、逃げることは出来ない。

自分が退けば、あの女の子3人を襲いにいくかもしれないからだ。

 

「見つけた! なのは、結界を張るよ!!」

「お願い! ユーノ君!!」

 

 次郎がトカゲの怪物と睨み合いをしていた最中だった。

聞き覚えのない声と聞き覚えのある声がしたと思えば、世界が隔離された空間になる。

そして、空から白いバリアジャケットを身に纏った高町なのはが舞い降りてきた。

 

「犬さん、大丈夫!?」

「?」

「ごめんねぇ・・・私達を逃がすために無茶を・・・」

 

 なのはには途中から分かっていた。

次郎が何のために自分達に吠えてきたのかを。

 

「今度は私が犬さんを護るから!」

 

 そう宣言し、なのはがレイジングハートを握りしめる。

此方の様子を窺うトカゲの怪物は、なのはのことをジッと見つめていた。

 

「なのは! 何をしてくるか分からないよ!」

「分かってるよ! だから、速攻!!」

 

 相手よりに先手を打つ。それがなのはの出した結論だった。

ディバインスフィアと呼ばれる発射台を4つ生成し、ディバイン・シューターを発射していく。

弾速は比較的に遅いが連射に向いている射撃魔法。ディバイン・シューターは、まっすぐにトカゲの怪物に向かっていき、一発目が当たると、土煙がトカゲの怪物を中心に巻き上がり、残りのディバイン・シューターもトカゲの怪物へと当たった。

 

「やった♪」

「流石だよ、なのは!」

 

 これで終わったと、なのはとユーノは思った。

しかし、次郎は違った。喜んでいるなのはに牙を剥き出して襲いかかったのである。

 

「え・・・?」

「ぎぃ!?」

「ゥウウウウウ!!」

 

 厳密には、なのはに襲いかかったんじゃない。

なのはを背後から襲おうとしていたトカゲの怪物の右腕に噛みついたのだ。

 

「バカな!? ・・・・・・アレは脱皮したヤツの抜け殻か!!」

 

 突然なのはの背後に現れたトカゲの怪物に驚愕するユーノ。

しかし、冷静になり、トカゲの怪物がいたはずの場所を確認する。

土煙が晴れると、トカゲの怪物の脱皮した物と思われる抜け殻が残されていた。

 

「ッ!!」

「ワンワン!!」

 

 トカゲの怪物は、右腕に噛みついた次郎を引き剥がすと、風景に溶け込んでいく。

トカゲの怪物がなのはに気付かれずに背後を取れた理由は、透明化できる能力のおかげだ。

あっという間に風景に紛れたトカゲの怪物を見失ったなのはとユーノは慌てる。

 

「透明になれるの!?」

「マズイ! なのは、一旦体勢を・・・」

「キャン!?」

「犬さん!?」

 

 ユーノが撤退を提案しようとしたときだった。

次郎が殴り飛ばされて宙を舞っていたのだ。匂いでトカゲの位置を把握できていた次郎は、再びなのはを襲おうとしたトカゲの怪物の攻撃からなのはを庇ったのだ。

 

「犬さん! しっかりして!!」

「ゥウウ・・・」

 

 地面に倒れても、トカゲの怪物へと弱々しく唸る次郎。

しかし、それを嘲笑うかのように姿を消したまま、なのはの背後へと移動する。

今度こそはと謂わんばかりに、右腕を振り上げて、なのはを倒そうとした。

 

「時雨蒼燕流 攻式 3の型〝遣らずの雨〟」

 

 その声は次郎にはハッキリと届いていた。

そして、雨の炎を纏った時雨金時がトカゲの怪物の振り上げていた右腕を貫通する。

次郎には時雨金時を蹴飛ばした男の正体をこの場にいる誰よりも知っている。

一方、なのはとユーノは突然飛んできた刀に驚愕することしかできなかった。

 

「受け取れ! 次郎ーーーー!!」

「ワン!」

「この声って・・・」

 

 雨の炎の塊がなのはの眼前を通り抜けると、次郎に着弾する。

青い雨の炎の光に包まれた次郎が背負っているのは、小刀3本を納めているホルダー。

なのはとユーノが戸惑うのを無視し、次郎は小刀3本のうちの1本をくわえる。

そして、走って合流してきた少年に小刀2本を手渡した。

 

「助っ人とーじょー!」

「と、冬馬くん!?」

 

 小刀2本から雨の炎で形成された刃を出現させる相原冬馬。

なのはが戸惑う声を無視し、次郎に視線を移す。よく耐えてくれたと思いを込めて・・・。

冬馬は、大事な家族である次郎を傷つけたトカゲに怒りと殺意を覚えていたのだった。

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