5つの炎の継承者   作:DYNA

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時雨蒼燕流 vs 王の財宝

~冬馬サイド~

 さてと、どうやって次郎をイジメてくれた代償を払ってもらおうかな?

次郎と小次郎を探して三千里・・・ようやく見つけたかと思えば、次郎がピンチという展開。

しかも、バリアジャケット姿の高町が居合わせているという俺的には望んでない展開。

 

「クゥン・・・」

「謝るのは後にしろ。とりあえずコイツを倒さなきゃな・・・」

 

 次郎が勝手に家から抜け出したことは反省しているようだ。

まったく! 耳から青い炎を吹き出している秋田犬がいると思ってんのか?

超噂になってたよ! おかげで居所とか大分絞り込めたよ! 探すの正直楽だったよ!!

 そんなことを思いつつ、遣らずの雨を喰らったトカゲの怪物を注視している。

姿を消せるようだが、時雨金時が右腕に刺さってしまったことで姿を現していた。

ゆっくりと時雨金時を右腕から抜き取ると、雑な感じで地面に落としてしまう。

すると、時雨金時は竹刀の姿に戻ってしまった。

 

「冬馬君・・・だよね?」 

「やぁ♪ 高町にコスプレ趣味があるなんて知らなかったー・・・・」

「コスプレ!? と、冬馬君には色々と聞きたいことが山程あるんだけど!?」

「俺の・・・・・誕生日?」

「なんでちょっと顔を紅くしてるの!?」

 

 高町からの質問は全てボケて返す。ちなみに今決定した。

それがヴァリアークオリティならぬ・・・相原冬馬クオリティ♪

俺はリリカルマジ狩るになんて興味ねぇ。興味あるのは明日の我が身だ。

リリカルマジ狩るに介入して、他の転生者に目をつけられるだけならまだいい。

問題はブラック企業「時空管理局」だ。ボンゴレリングをロストロギア指定するんじゃね?

そしたら、とっ・・・・ても面倒だな~♪ 俺、アンチ時空管理局になるかもしれないな~・・・。

 

「ワン!」

「分かってる!!」

 

 次郎の声で俺は戦いに集中する。

ほんの少しだけ現実逃避する権利は俺には無いらしい。

トカゲ野郎が両前足の鋭爪を俺の喉に突き立てようと襲ってきた。

俺は両手に持った雨の炎で刃を形成する小刀2本で構え、次郎に目配せする。

 

「ギッ!?」

 

 トカゲ野郎の戸惑いの声が上がる。

俺がトカゲ野郎に斬りかかると思ったらしいが、実際は違う。

予想していなかった太刀筋。つまり、次郎が咥えた小刀による辻斬りがトカゲ野郎を襲う。

しかし、ギリギリのところで次郎の小太刀が空を斬る。反射神経は抜群らしい。

距離を取り、体勢を立て直そうとしているのは一目瞭然だった。

 

「コイツを喰らってみろ!!」

 

 次郎は、チョイス編での幻騎士戦の時と同じようにサポートに徹してもらうのが得策だ。

だが、REBORNの原作じゃ次郎が単体で戦う描写がない。だから、考える必要があった。

実際、次郎はどこまで自分で戦えるのか? 次郎って、そもそも強いのか?という疑問。

瓜のように嵐豹になれるというワケでもないため、簡単に片付けていい話でもなかった。

 

「時雨蒼燕流 攻式一の型〝車軸の雨〟」

 

 俺はトカゲ野郎を倒すことを自分の為すべきことだと認識している。ていうか、ブッ殺す。

俺の可愛い次郎をイジメた愚か者は神様と白い魔王(高町)が許そうとも・・・俺が赦さん。

既に5m以上は俺と距離を取ったトカゲ野郎目掛けて車軸の雨で追撃する。雨の炎を噴射する小刀の推進力が加味された強化版だ。

 

「ぎきゃ!?」

 

 小刀による俺の機動力は想定外だったに違いない。

一瞬の間で体を右に逸らしたが、雨の炎の刃がトカゲ野郎の左肩を掠めていく。

 その直後、トカゲ野郎が右腕を振り上げ、俺に右の鋭爪を突き立てようとしていた。

その場にいるメリットもないため、両手の小刀2本から雨の炎を噴射して後退する。

掠めただけでも十分に雨の炎の「鎮静」が働き、満足に動くことはできないはずだ。

 

「う、動きが鈍ってる?」

「なのは、今が絶好のチャンスだ!」

 

 あれ? あれが有名なユーノ・淫獣・スクライアか。

アイツも居たんだ。まぁ悪意があるわけじゃないから許してほしい。淫獣は撤回しないけど。

やっぱりジュエルシード絡みなんだな。じゃあ、高町にトドメを譲りましょうか?

 

 高町のジュエルシード封印の邪魔をしないよう、俺は適当な位置まで後退する。

地面に落ちている竹刀の時雨金時に雨のボンゴレ匣を翳して回収するのは忘れない。

俺には使命があるんだ。まだ小次郎が見つかっていない。小次郎の姿が確認できてない。

てっきり次郎と一緒に行動していると踏んでいたのに、小次郎のヤツは何処に行った?

とにかく高町がジュエルシードを封印している隙に小次郎を探しに行かなくてはいけない。

いつでも離脱が可能なように、次郎もこっそり雨のボンゴレ匣に戻しておく。

 

「リリカル・マジカル・・・ジュエルシード封印!」

 

 よし、レイジングハートからピンクの魔力のリボンの束がトカゲ野郎を包んでいく。

高町と淫獣は、ジュエルシードの封印で俺と次郎から視線を外してしまっている。

離脱するには申し分ない条件が揃っていたため、抜き足差し足で・・・こっそりと離れていく。

小刀で一気に離脱する手もあるんだけど、目立つからな。息を潜めて去るつもりだ。

 

『封印完了。やったね、なのは?』

『そうだね。・・・・・・・あっ!? 冬馬君がいない!?』

『あっ!? い、いつの間に!?』

 

 そんな感じで慌てる様子が目に浮かぶ。

曲がり角を曲がってしまえば、俺の姿は完全に高町達からは死角になる。

そこからは全力疾走だ。あとは適当に建物の中に隠れてしまえば此方のモノだろう。

さて、曲がり角までもう少s・・・

 

「何処へ行く? 雑種・・・」

「オワァッ!?」

 

 突然、空から立派な装飾が施された剣が落ちてきた。

そのせいで俺は尻餅をつき、そのまま後ずさる。あ、あと一歩・・・踏み出していれば・・・・

考えるのはやめよう。こんなフザけたことをやりやがったのは・・・。

 

「誰の許しを得て、我の花嫁に近付く? 次は本当に首を落とすぞ?」

「テメェは!?」

「テメェではない。我は絶対にして最強の存在。ゆえに名乗るのも億劫よな?」

「隣のクラスの金城だろ?」

「その名で呼ぶではないわ!? せっかくの気分が台無しではないか!!」

 

 電柱のてっぺんから金ピカの鎧を纏ったアホが隣のクラスの金城君。

高町を追いかけ回してた変態3人の変態の一人だ。つまり、英雄王モドキ。

正気の沙汰じゃねぇよ。いきなり宝具クラスの剣が落ちてくる展開は許容できない。

勘弁してくれ。俺は小次郎を探して三千里しなきゃいけないんだ。

 

「我が愛しきなのはよ・・・。すまぬ。我が遅れたせいで危ない目に遭わせたな?」

「いやぁ!? 冬馬君、たすけて!」

 

えぇ!? 高町が俺のところにきてしもうんたんやけどぉ!?

やべぇよ・・・これは完璧アウトコースだよ。英雄王モドキの眉毛がピクピクしてるもん・・・。

俺の背中に隠れないで? 君は白い魔王だから。英雄王なんて余裕で潰せるって!!

だから・・・・・俺を巻き込むなァ!! お願い! 300円するアイス奢ってあげるよォ!?

 

「なのは! どうして我の愛に応えず、雑種の背に隠れる!?」

「もうやめてよ! もう私のことは諦めてよ!!」

「断じて諦められぬ!! なのは、我のどこが不満だというのだ!?」

 

 英雄王モドキの真剣な眼差しが俺の後ろにいる高町に注がれる。

俺を挟んでラブロマンスは勘弁してほしいと陰鬱な瞳で訴えていいかな?

 

「毎朝・・・家のポストにラブレター入れるの・・・・・やめてほしいの・・・」

 

 ・・・・・・・Love letter? 案外ピュアなのか? なんかロマンチックだな。

 

「我の愛を綴った手紙だ。どこが悪い!?」

「怖いの! もう何もかもが!!」

 

 ぎ、逆にラブレターの文面が気になるけど・・・俺は関係ないんで帰ってもいいかね?

 

「何故だ!?『結婚届け』に名を書けば済むだけの話であろう!?」

「それはラブレターって言わねぇよ!!」

 

 思わずツッコミをしてしまった。け、結婚届けをポストに御丁寧に毎朝入れてんの!?

怖いよ! そりゃあ何もかもが怖いって白い魔王が言うのも無理ねぇよ!!

 

「雑種・・・我に対して吠えるではないか・・・」

「うるせぇよ! 小学生が結婚とか10年早いんだよ!!」

 

 て、転生者ってこんな奴等ばっかりなのか!?

すぐに結婚してくれ? 自分の嫁になってくれ? 将来は幸せな家庭に作ろう♪・・・ってか?

ふざけるのも大概にしろって話だろ。高町が疲労で苦労してる理由を改めて理解した気分だ。

 

「我となのはの恋路を邪魔立てするというのか!?」

 

 恋路か・・・。素敵な言葉のはずなのに、どうして俺の心に響かない?

不本意だが、戦るしかないみたいだな。俺の時雨蒼燕流で倒してやる!

 

「開匣!」

 

 雨のボンゴレリングに炎を灯し、俺は時雨金時と次郎を再び雨のボンゴレ匣から出す。

右手で柄を握ったあと、時雨金時を竹刀から刀へと変化させて雨の炎を纏わせたあと、次郎から小刀3本を残った左手に受け取る。

 

「と、冬馬君のソレって・・・」

「き、君も魔導師なのか!?」

 

 昨日も似た台詞を聞いたな。

だが、今は高町と淫獣の声は無視させてもらおう。

 

「やはり、他の雑種共や我と同じ・・・」

「察してる通りだ。俺も・・・」

「貴様も我と同じハーレムという野望を・・・」

 

 そこから先は言わせないぞォ・・・♪

俺は小刀の噴射を利用し、電柱のてっぺんにいる愚者との間合いを一気に詰めた。

そして、時雨蒼燕流 攻式八の型〝篠突く雨〟を全力で放つ。

 

「オラァ!!」

「くっ!? 雑種! 貴様殺す気か!?」

「チッ」

「舌打ちで肯定するなァ!?」

 

 やはり、一筋縄ではいかないようだ。

俺の篠突く雨を紙一重で躱わし、電柱のてっぺんから近くの民家の屋根の上に逃げられた。

昨日の騎士王モドキといい、なんで俺がハーレムを企ててるみたいになるんだよ!?

 

「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」

「時雨蒼燕流 守式四の型〝五風十雨〟」

 

 英雄王モドキの背後に王の財宝が顕現し、20を越える宝具が俺に飛んでくる。

時雨金時で弾くことはできるが、全てを捌ける自信がないため、五風十雨で躱わしていく。

しかし、飛んでくる宝具の数が増していく。全方位から一斉射撃されれば、躱わしきれない。

なんとかして英雄王モドキの懐に潜り込まなければならないのだが、チャンスがこない。

 

「フハハハ! どうした? さっきの威勢が感じられんぞ?」

「ハァ・・・ハァ・・・・」

 

 まだ五風十雨の高速移動を完全にモノにしていない俺にとって、長時間の五風十雨は辛い。

ルッスーリアのフットワークもそうだが、まだ完全に技術を自分のモノにはしていないんだ。

 

「もうやめてよ!」

 

 突然、高町の声が辺りに響いた。

その直後、ゲート・オブ・バビロンから発射されていた宝具の雨が止む。

俺は五風十雨の動きを止め、高町の瞳を見る。その瞳から・・・今にも涙が流れそうだった。

 

「なのは?」

 

 ユーノが心配そうに高町の顔を見上げる。高町の近くにいた次郎も同じだった。

 

「なんで・・・なんで殺し合いみたいなことになるの?」

「え・・・」

 

 俺は高町の言葉に返せる言葉を瞬時に思い浮かべることが出来なかった。

 

「なんで・・・」

「殺すなんてことはせんぞ。なのはよ」

 

 屋根の上にいた英雄王モドキが地面に降り、高町へと歩いていく。

 

「我は、誰も殺すつもりなどない。この力はそのためにあるのではないのだから・・・」

 

 空中にいた俺も地面に着地し、少し離れた場所から英雄王モドキの背中を見る。

 

「すまなかったな。我が軽率だった」

「え?」

 

 さっきまで宝具をガンガン発射していた男と同一人物とは思えない。

真摯な態度で高町の前で片膝を地面に付き、頭を深く下げた。

 

「我も雑種も悪ふざけが過ぎただけなのだ。許してほしい」

「ほ、本当に?」

 

 高町が俺の顔を見る。

突然の展開で判断に困ったが、英雄王モドキに調子を合わせておこうか・・・。

 

「そうそう。ちょっと喧嘩しただけさ?」

 

 どこの世界に英雄王と喧嘩するヤツがいるんだよ・・・と、内心思う。

でも、俺も軽率だった。いくら転生者という人外な存在でも、相手は人だ。

人の人生を奪っていた結果に繋がっていた可能性が十分にあると自覚してしまう。

 

「我と其奴は、喧嘩の歯止めが効かなくなってしまったんだ。

それに・・・さっきの嫌がられようで分かった。もうしつこくラブレターを贈りはしない」

「本当!?」

 

 すげぇ・・・。一緒のクラスだけど、あんなに嬉しそうな高町の笑顔は初めて見た。

 

「だが、最後に頼みを聞いてくれないか?」

「?」

「我と手を繋いでほしい」

 

 おぉっとォ!? 高町の嬉しそうな笑顔が瞬時に凍りついたァ!!

 

「まずは小さなことから積み重ねればよかったのだ。

握手からコツコツ愛を育めば、真実の愛に辿りつけるはずだァ!!」

 

 すげぇ・・・・。うん、すげぇ・・・・。なんかもう・・・すげぇ・・・・。すげぇポジティブだな・・・。

 

「さぁ、握手してくれ! そして我と結婚を!!」

「助けてーーーーーーーー!!?」

「バ、バカ!?」

 

 涙目で高町が一瞬で俺の後ろに逃げてきた。

遅れて淫獣と次郎も俺の側にやってくる。

英雄王モドキは、片膝を地面に付けた姿勢のまま動かない。

 

「冬馬君、助けて!?」

「お、落ち着け! とりあえず俺の肩を全力で掴むな!?」

「嫌だもん! 放したら・・・冬馬君逃げるよね!?」

 

 当たり前デス! こんなに家に帰りたい気分は初めてですけど、何か?

 

「せめて、携帯の電話番号とメルアドを教えてくれ!」

「嫌だもん!!」

 

 高町の必死の形相から察するに、携帯番号とメルアドは死守してるみたいだ。

当たり前と言えば、当たり前だと納得できる。もし知られれば、過労で入院する未来が・・・。

とにかく・・・このクソッタレな状況を何とかしないと、俺は小次郎を捜すことはできない。

 

「一旦さ・・・落ち着こうぜ? お前の愛情は十分に・・・」

「雑種の戯れ言などに耳を貸すかァ!!」

「えぇ!?」

 

 英雄王モドキを宥めようとしたが、ビシッと右手の人指し指を向けられた。

 

「我を騙そうとしても無駄だ! 我には通じんぞ!!」

「い、いや・・・だから・・・話をしようぜ?」

「何度も言わすなよ 穢らわしい雑種めが。貴様の狙いはお見通しよ。

我を騙し討ちで倒し、ハーレム計画の邪魔者を消そうという魂胆であろう!?」

 

 Toloveるダークネスの読み過ぎだよ!?

 

「と、冬馬君・・・ハーレム計画って・・・」

「高町は、俺をアイツらと同類と勘違いすんな!?」

 

 もう嫌だ!! 俺がいったい何をした!?

なんで高町から疑いの視線を浴びてる状況になってしまったんだ!?

 

「我の覇道を阻む雑種はいなくなれェ!!」

「くっ!?」

 

 英雄王モドキが乱心し、宝具の剣で俺に斬りかかる。

俺は高町から無理矢理離れ、時雨金時で宝具の剣を受け止めた。

 

「血迷ったのか! 高町が近くにいたんだぞ!?」

「貴様のような汚物にいつまでも触れさせる我ではないわ!!」

「チッ!?」

 

 たった一瞬だけ鍔迫り合いをしたのだが、右斜め上から宝具の槍が飛び出してくる。

俺は小刀の推進力を頼りに躱わしたが、どんどん発射される宝具から逃げるために英雄王モドキから距離を置く形になってしまう。当然、それがマズイことになることは十分に承知している。だが、そうせざるを得なかった。止まれば・・・嫌な結末を迎えてしまうことになる。

 

「その焦燥に満ちた表情はよいぞ! 我との圧倒的な力の差を思い知ったか!!」

 

 くそ・・・あの総集奥義さえ使えれば、この状況を打開できるのに・・・。

形態変化(カンビオ・フォルマ)が出来れば・・・小次郎が居てくれたなら・・・。

と、俺は無いものねだりをしていた。このゲート・オブ・バビロンを凌ぐアイディアはある。

しかし、それを可能とする力が今近くにいない。殺られるのは時間の問題だ。

 

「雑種・・・頑張りはそれまでか?」

「くそが・・・」

 

 ゲート・オブ・バビロンが俺を中心に全方位から宝具の先端を露出させている。

左右、前後、頭上から宝具の剣や槍などが俺を狙っていた。

 

「何の力を貰ったかは知らんが、所詮は我の敵ではなかったな」

 

 コイツもREBORNを知らないのか・・・。

なんで他の転生者に俺と趣味の合う転生者がいないんだ・・・。

 

「冬馬君!?」

「もう決着は見えてる! もうやめるんだ!!」

 

 ユーノが英雄王モドキに攻撃をやめろと忠告する。

しかし、英雄王モドキはユーノを射殺すかのような嫌な視線を向けた。

 

「淫獣は黙っておれ」

「い、淫獣!?」

「安心せよ。殺しはせん・・・。だが、二度となのはに近づかぬようにするだけよ」

 

 ニタァ・・・と嫌な笑顔を見せる英雄王モドキ。

殺しはしない? なるほど。生かさず殺さず・・・俺を痛ぶるつもりか。

 

「では・・・」

 

 英雄王モドキが右手でを指を鳴らそうとした瞬間、突然豪雨が降り始めた。

心当たりがある豪雨の正体を確かめるため、俺は迷わずに空を見上げる。

突然の豪雨で英雄王モドキと高町達が動揺する中、俺は時雨金時を天に翳した。

 

「小次郎! 形態変化(カンビオ・フォルマ)」

 

 ゲート・オブ・バビロンで出現している宝具達の隙間から雨の炎の閃光が伸びてくる。

それが時雨金時に被弾し、時雨金時はその姿を変え、鍔に翼を広げた長刀へと変化した。

 

「刀の姿が変わってる?」

「いったい何をしたんだ・・・」

 

 高町とユーノが長刀へと注目する一方で、英雄王モドキが面白くなさそうな表情をしている。

 

「雑種・・・その剣はなんだ?」

「悪いな。やっと本気で戦える」

「ほぅ・・・」

 

 俺の言葉が勘に障ったようだ。

英雄王モドキが指を鳴らそうとしている。

 

「貴様の本気を採点してやろう。この宝具の雨の中で再起不能になるがよい」

「時雨蒼燕流 総集奥義・・・」

 

 ゲート・オブ・バビロンの力にビビるな。

小次郎が俺のピンチに来てくれた思いに絶対に応えたい。

だから、自分なりに積み上げてきた成果を全力で魅せるだけだ!!

 

「さよならだ」

 

 パチン♪と鳴らされた指。そして一斉に宝具が俺に発射されようとした。

だが、雨の炎が爆発的に弾けて周囲の宝具達を飲み込み、周囲を青く照らす。

 

「〝時雨之化〟」

 

 時雨蒼燕流 総集奥義 時雨之花

俺は小太刀の力で高速移動をしながら宝具達に雨の炎を纏った長刀を当てていく。

雨の炎を流し込まれた宝具達は、限りなく停止に近付き、停まっているように錯覚させる。

まぁ雨の炎のドーム状の光の中で何をしているのかなんて分からないだろうがな。

 

「え!? 停まったの?」

「彼の姿が見えない!」

「おのれェ! 雑種、何処に消えた!?」

 

 英雄王モドキが消えた俺を探すため、右手に宝具の剣を握り締めて警戒している。

 

「時雨蒼燕流 特式十の型・・・」

「なっ!? いつの間に頭上に・・・」

 

 俺は形態変化を解除し、小次郎を特攻させながら英雄王モドキを狙っていた。

全ての力をこの一太刀に捧げると誓い、小次郎の跡に続いて特攻を仕掛ける。

 

「甘いわ! 天の鎖(エルキドゥ)」

 

 英雄王モドキが対神兵装である天の鎖をゲート・オブ・バビロンから発射した。

あの天の鎖に捕まってしまえば、ゲームオーバーだ。まぁ当たればの話だけど・・・な!

 

「なにぃ!?」

「どういうこと!?」

「鎖が彼をすり抜けた!?」

 

 時雨蒼燕流 攻式九の型〝うつし雨〟 

山本武がスクアーロとの戦いで時雨蒼燕流専用の刀である時雨金時に認められた九つ目の型。

小次郎の作った雨の炎の波に映した俺が囮になり、本物の俺から天の鎖を引き付けてくれた。

騙し討ちになる形になったけど、ハーレム計画になんて興味はないから安心してくれ。

 

「!? 顕現せよ! 乖離(エ・・・)」

 

 自分の背後に迫っていた俺を倒すため、乖離剣(エア)を抜こうとしている。

だが、もう決着は着く。もう俺と小次郎は眼前に迫っているんだから・・・。

 

「燕特攻(スコントロ・ディ・ローンディネ)」

「ガッ・・・・・・」

 

 本命である燕特攻を成功させ、英雄王モドキをブロック塀に突っ込ませる。

殺すつもりなど毛頭ないため、峰打ちでやったのだが、手加減は一切していない。

アレで死ぬタマじゃないだろうが、気絶はしたはずだ。

 

「さてと・・・」

 

 起き上がってこないのを確認した俺は、高町に向き直る。

もう訳が分からないという顔をしている高町は、俺のことを見つめていた。

 

「冬馬君・・・」

「・・・・・・・・・ごめんな?」

「え?」

 

 俺はボンゴレリングや匣のことを説明する気は一切ない。

そもそも原作介入とかする気なんてないし、今回の戦いも望んでた訳じゃない。

だから、小次郎に雨の炎を降りかけてもらい、高町とユーノを一時的に動けなくした、

 

「なにこれ・・・?」

「こ、これは・・・体が動かない・・・」

 

 力なく地面に両膝をつける高町、地面にうつ伏せで倒れるユーノ。

しばらくはダルくて動けないだろうが、ちゃんと回復するから安心してくれ。

次郎が心配そうに高町のことを見つめた後、俺にすり寄ってくる。

 

「じゃあな。もう会えないかもな」

「ま、待って!?」

 

 そう意味深な台詞を高町に伝え、俺は時雨金時を雨のボンゴレ匣に戻し、小刀3本を次郎に手渡した。次郎と小次郎に手招きし、「帰るよ」と無言で伝えた。

 

「・・・・・サヨナラ」

 

 俺は、高町の前から姿を消すために踵を返して歩く。

背中に高町が俺を呼ぶ声が聞こえるけど、俺は心を鬼にして無視した。

 

 とにかく決めたんだ。

俺は原作が終了する5月中旬から下旬まで海鳴市には戻らない。

1ヶ月半は姿を眩ますつもりだから、担任のゴリラが黙ってないだろうな。

物凄く面倒くさいけど、引っ越すつもりだ。まぁ大変だろうけど、頑張るしかない。

新天地を探すという意味を込めて、旅でもしようと思う。

 

 まだ結界が張られているけど、俺は歩きながら街を見る。

サヨナラ海鳴市。並盛町じゃなくて残念だったよ。

サヨナラ原作。変態3人にブチ壊されると思うけど、挫けないで?

サヨナラ高町なのは。俺は、君のことは嫌いじゃなかったよ・・・。

 

「待ってって・・・言ってるでしょーーーー!!」

「ん?」 

 

 高町の叫びに俺は振り返ってしまった。

そして後悔した。ピンクの光がもう俺の眼前まで迫っていたんだから・・・。

高町が震える手でレイジングハートを俺に翳しているのが見えた。

流石は魔法少女リリカルなのはのヒロイン。火事場のクソ力は伊達じゃない。

雨の炎の鎮静に抗って、魔力を振り絞ったディバインバスターを撃ったか・・・。

 

 迫り来るピンクの光に対して、俺は敬礼していた。

どうしてだが、自分にも説明できない。この敬礼は無意識にやってしまった。

次郎と小次郎は、ピンクの光から全力で逃げている。それでいい。それでいいんだ。

死ぬのは・・・・・俺一人でいいんだから・・・・。

 

「ッ!!?」

 

 そして・・・俺はピンクの光の中で〝儚く散った〟

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