「よぉし、レイ? どー? 出来た?」
「えぇ、とりあえず八割くらい」
予定枚数より二枚ほどすくない。
ラストスペルという超必殺技的なスペルカードと、あと普通のやつ一枚だ。
どうやらフランドールは作り終わったらしく、十枚のカードを机の上に並べていた。
「じゃあできたら試し射ちしよ! 生放送配信で!」
「やめましょう。生放送はやめましょう。流れ弾でパソコンが壊れます」
「……うーん、それもそっか」
ちなみに、テカテカ動画では生放送配信をするためにコミュニティと呼ばれる複数人からなる集団が一単位必要なのだが、フランドール主催の【ぎゅっとしてドッカーン】は上位に位置する人気コミュニティだ。
顔出しはしてないが、首まででも分かりやすく上品な雰囲気漂う可愛い声の女の子が自分達と同じオタク文化に染まり切っているのが人気の秘訣……なのだろうか。部屋も紅魔館の主の妹として相応しい豪華さだし。
オフ会参加はしたことないが。
この引きこもり吸血鬼お嬢様が外に出るとも思えないし、そしたらボクが出ることになるんだろうなぁ……。
焦がれる程度の能力なんて器用貧乏な能力を持って生まれた自分が恨めしい。
「レーイ! いきなりぼんやりしないでよねぇ……」
「あ、すいません」
まぁ、そもそもテカテカ動画は幻想郷の外にあるコンテンツなんだから、オフ会どころのお話じゃないのだが。
「妹様。そろそろ異変の開始時刻となります」
「げー」
よしじゃあ試し撃ちしてみよう! といきり立ったフランドールの肩を抑える少女がいた。
ここ、紅魔館でも唯一の正真正銘人間である十六夜咲夜だ。
館のメイド長でもあり、フランドールの姉であるスカーレット家当主レミリア・スカーレットの専属メイドも兼任している。
時を操るメイド長な彼女は時間にうるさい。
今回も反抗しようものなら時を止められて部屋に強制送還がオチだろう。
そして咲夜は今、ボク見ている。
その意図は十分に通じているが、これパワハラで訴えたら勝てないだろうか。
「えぇと、フランドール様? ボク——フランドール様のコレクションてお着替えしたいなぁって……」
「——ッ! え! なに! なになに! なに着る? よっしゃ今日は生着替え放送行くしかないっ! 機材用意してくる!」
そのまま風の如く速度でフランドールは消えていく。
苦笑いで同情の視線を送る小悪魔が労うように肩を軽く叩いてきた。
咲夜はいなくなっていた。
——いつかギャフンと言わせてやる……!
ボクは心に復讐を誓い、そしていつの間にか戻っていたフランドールに引っ張られてドナドナされていくのであった。
——放送は、盛況だった。
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焦がれる程度の能力とは、有り体にいってしまえば真似をするだけの能力だ。
しかもオリジナルの劣化版。
生放送を終えたボク達はレミリアと博麗の巫女が戦うという知らせをさっき貰ったので、スキマを真似してこっそりと戦闘を見ていた。
声援もバレるのも禁止だ。
なんせ、博麗の巫女を始めとする異変解決側にはフランドールやボクのことを伏せてあるから。
こんなつまらない事であの八雲に揚げ足を取られたくない。
「お姉様、勝てるかしら」
「正直、難しいかと」
「だよねぇ」
本来のガチ戦闘ならば圧倒的有利だが、今回は人間側のホーム、人間有利に合わせたルール下においての戦闘だ。
レミリアが弱いとか巫女が強いとかではなく、単に相性の問題。
そういう意味では上手くルールは機能していると言えた。
妖怪討伐のスペシャリストたる博麗の巫女でさえ大怪我必至な妖怪退治が、ここまで無傷で戦っているのがその証左だ。
「あーあ、こっからスターボウブレイクで支援出来たらなぁ」
「勘弁してください」
「あは、じゃあコレ着てね」
ひら、と出されたのはお揃いの紅い衣装。
変なコスでないだけマシだと思うのは価値観が歪み始めてるからか。考えないようにしよう。
生着替え放送で着せられたままだった堕天使バニーを脱いで着替え、フランドールの隣に戻る。
「うーん、いっそ私の羽を刺して双子コーデしちゃうか」
「痛いのはやめてください」
「半吸血鬼なんだから取り込んでしまえばいいのよ」
「レミリア様にもがれそうです」
一度で二度痛いのは勘弁願いたい。
半吸血鬼の分際で生意気とか言いながらぶちぶちやられそうだ。
不服そうに頬を膨らませたフランドールだったが、諦めたらしく観戦に戻っていく。
「……また後で生着替え放送しようかしら」
聞かなかったことにしよう。
ボクの精神を安定させたいから。
先に言っておきます。
フランちゃんは変態です。