フォースと共にあらん事を。
「......好きですご主人様。私をもっと愛して下さい」
そう言われると同時に唇には柔らかい感触。
驚きに声も出せない俺とは違い、白は頬を朱に染めながら可愛らしい笑みを浮かべている。
「......キス、しちゃいました///」
キス...その言葉をした相手に言われた事で、俺はその事実を更に強く意識してしまった。
「......初めてだったんですよ?」
「あぁ、俺もだ...」
思考が正常に働いていないせいで、よく分からない返しをしてしまったが白的には嬉しい事だった様で、普段から表情変化の薄いと言われている白が満面の笑みを浮かべている。
「好き...好きか。勿論それは家族としてって事だけじゃない、よな?
ウル...友人には愛の違いが分からない男などと言われたが、流石にこの状況なら俺でも分かる」
「......はい、私はご主人様の事を一人の女として愛しています」
あまりに急な事態に頭がついていかないが、どうにか考えを纏めて言葉にする。
「.........俺も白の事は好きだ。愛していると言っても過言ではない。
...ただ、それが家族としてなのか、それとも一人の男としての感情なのかが分からない」
以前、ウルフに言われたお前の愛は一種類だというのは本当に的を射た言葉だろう。
前世ならいざ知らず、殺し殺されの殺意しか向けられない様な環境で十数年の日々を送ってきた俺は、気付かない内にどこかおかしくなってしまっていたのだろう。
その結果、自分の感情がどういう物なのかすら理解出来なくなってしまった。
「こんな言い方は卑怯だと思うが、白の為にも中途半端な...自分の気持ちも分からない様な状態で答えを出したく無い」
そんなのは白の気持ちを馬鹿にしているのに等しい。
俺の自己満足でしかないのかも知れないが、それでもそんな事は絶対にしたくない。
「だから、返事はまだ待って欲しい」
それを聞いた白は一瞬悲しげな表情になるが、直ぐに笑顔へと変わり真っ直ぐな瞳で俺を見据えて言った。
「......絶対に私を好きにさせてみせます」
俺はその言葉に白の覚悟を見た。
それに報いるため、俺も自身の覚悟を示す。
「俺も、絶対に自分の答えを見つけてみせる」
白の綺麗な瞳を見つめ返してそう言う。
「......待ってます。悪魔の寿命は長いから...ずっと、ずっと。
もしご主人様が答えを出す前に死んでしまったら、悪魔に転生させてでも待ちますから覚悟しておいて下さい」
「おぉう、その覚悟も必要なのか...まぁ、それも悪くは無いかもしれんが、早目に見つけられるよう努力する」
本当にやりそうな雰囲気を醸し出す白に軽い調子で言い、フェンスの近くにある段に座って自分の膝をぽんぽんと軽く叩く。
「おいで白。折角再会できたんだ、もう少し位此処にいても文句は言われないさ」
俺の行動の意味を理解した白は目を輝かせながら躊躇いなく膝に座る。
俺は満足気に座っている白の頭に手を乗せて優しく撫でる。
「...懐かしいな。膝の上には白がいて」
「......頭の上にはお姉さまが」
言葉にする度に思い返される幸せな日々。
願わくばこの時を永遠にと思った事もあった。
「長くは続かなかったがけど、それでも大切な...これ以上無い程に幸せな日々だった」
「......はい」
短い肯定の言葉。
だが、その一言には色々な思いが込められているのは言われなくても分かる。
長い、それでいて心地良い沈黙が二人を包む。
「.........白、もう黙って勝手にいなくなったりしないでくれよ?
お前達がいなくなって俺がどれだけショックを受けたことか」
「......安心して下さい。もう二度と...離れろと言われてもご主人様からは絶対に離れませんから」
白は座ったまま俺の体にもたれかかり、顔だけをこちらへ向けてそう言った。
「なら安心した。俺は案外メンタルが弱いみたいでさ、失う事に耐えられない...自分で言うのもあれだけど、お前達がいなくなった後の俺は酷いもんだったんだぞ?」
軽い調子で言うと、白は深刻そうな顔をしてそんなにですか、と聞いてきた。
話したくない部類の話ではあるが、白になら話してもいいと思い話し始める。
「あぁ、あれは自分でも相当酷いと思う...。
最初は自然に帰ったって、元の状態に戻っただけだって自分に言い聞かせながら暴れ回って。
逃げる様に、忘れる様に、孤独を紛らわせる為に討伐対象を殺して回った。
でも、斬っても斬っても忘れられなかった......それ程に白と黒が大切な存在になってた」
そう言って、昔の様に子猫をあやす様に白を撫でる。
「気付いたら野良猫を目で追うようになって...その度に感情を殺して未練を断ち切ろうとした。
そんな事を繰り返していたら、気付いた時には何も考えず、何も感じず、殺すだけの機械にでもなった様な気分だった
......ただ、その時偶然俺を見つけてくれた親戚の人ってのが俺を繋ぎ止めてくれたお陰で壊れずに済んだんだ」
「......私達のせいで...」
白はなんだか凄く小さく何かを呟いているが、この距離で聞こえないということは独り言の類いなのだろう。
ペラペラと喋った手前あれだが、気に病んでいないといいのだが...。
「そろそろ話も終わりそうな頃だろうし戻るか」
「......名残惜しいですがそうしましょう」
「はは、これからは直ぐに会える様になったんだ。
またいつでも可愛がってやるさ」
俺の癒しにも最適だしな!
心の中で沿うう叫びながら白の頭を軽く撫でてから立ち上がる様に促し、白が立った後に自分も立ち上がる。
すると白はこちらへと振り返り、俺に向かって両手をのばしながら言った。
「......ご主人様、最後にぎゅって抱きしめてほしいです」
俺が断る筈もなく小柄な白の体格に合わせて膝立ちになり、苦しくないように優しく抱きしめる。
こんな少しでも腕に力を込めてしまえば壊れてしまいそうな少女が、身に余る大きな苦労を背負ってきたと考えると、それから護ってやれなかった不甲斐ない自分に対して殺意すら湧いてくる。
だからこそ、今度こそ絶対に...
「護ってみせる」
「......はい」
「俺の家族はもう誰にも奪わせない」
俺の家族を、仲間を傷付ける奴は誰であろうと斬り殺す。
「......ご主人様」
白は俺を呼ぶと、俺の顔を見てニコッと笑い。
また、キスしてきた。
......しかも今度はディープな方で。
ちょと待って!?舌入れるのはまずいって!!
そう思い引き剥がそうとするも、何処にそんな力があるのかガッシリとホールドしてきて外れない。
コレガアクマノチカラカァ!?
「はむ...ふっ......っぷは」
ようやっと白が舌を抜き、唇が離れる。
一体何をと言おうとするも、何とも言えない妖艶な雰囲気を醸し出す白に思わず目を奪われ何も言えなくなる。
「......ずっと会えなかった分、昔以上に甘えさせてもらいますっ」
これから大変になる。
俺は、何処か他人事の様にそう思った。
とうとう訳の分からん感じになって参りました。
作者の手を離れてキャラが動く的な。
暴走じゃね?
ダークサイドの力を思い知れ!