ついにこの時が来てしまった...雷電です。
あと少しで家に着く訳なんですが、俺の足取りは非常に重いものとなっておりますと。
前回は再開に喜び舞い上がっていたせいで忘れていたが、よくよく考えれば加奈さんは俺へのスキンシップが非常に激しい。
親戚とはいえど、それを度外視すればちょっと年上ぐらいの綺麗な女性である。
つまり俺が何を言いたいかってことなんだが、ただでさえ告白を長期間前提で保留にするという外道の行いをしておきながら!
その上、家に招いておいて態々別の女性と触れ合う姿を見せるのはどうなのよと。
「そう思う訳なんですよねぇ...」
「......どうしたんですかご主人様?」
「あぁ、いや、なんでもない」
嘘です、全くなんでもなくありません。
勘違いだったらクソ恥ずかしいのだが、加奈さんも加奈さんで何か昔から俺に女を近付けさせない様にしてた気がするんだよなぁ...。
段々と億劫になってきた......何も起こらなければいいんだが。
「着いてしまった...」
「......ここがご主人様のお家」
考えうる最悪の未来に絶望している俺の隣では、白が目を輝かせながら我が家を見上げていた。
「うん、まぁ入るか」
「......はいっ!」
自宅の扉を開けるのがこんなの辛くなる日が来るとは...。
俺は数秒間扉の前で立ち尽くすと、意を決してドアノブに手を掛けた......瞬間。
ガチャン!という激しい音と共に凄い勢いで扉がフルオープン。
あまりにも急な、まるでゲームのクイックタイムイベントの様な勢いで発生したそれに反応する事の出来なかった俺は、迫り来る扉を見ていることしか出来なかった。
「グハッ!!∵:(゚д゚lll)」
「おかえりらいくん!!帰って来た予感がしておねーさん張り切ってお出迎えに...って貴女は!?」
扉を思いっきり開け放ってくれやがったのは加奈さんだった様だ。
いや、まぁそれ以外だと困るんだけどさ。
「防犯考えてドアに強化装甲付けたのは間違い...だった、か.........ガクッ」
「ご主人様!貴方が倒れたら誰がPースウォーカーを止めるんですか!!ご主人様ーーー!!!」
白さんや、キャラぶれとる。
後、それ俺(雷電)やないBIGBOSSや...。
そんな下らない思考を最後に、俺の意識はあっさり途切れた。
▽▲▽▲▽▲▽
何故、悪魔がここに!!?
私は心の中でそう叫びながら、どうすればいいかを必死に考える。
幸いなにかに驚いていて、私の存在は認識出来ていない様だ。
今なら殺すのも容易かもしれないが、殺すのは論外だ。
彼女はグレモリーの眷属。
安易に手を出していい相手では無い。
それに、らいくんがグレモリーとも繋がりがあるのは調査済みだ。らいくんに迷惑をかける事は出来ない。
そしてなにより、殺せば間違いなくらいくんに堕天使だと知られてしまう。それは避けなければならない。
本当にどうすればいいか分からなくなっていると、悲鳴のような叫び声が私の思考を遮った。
「ご主人様ーーー!!!」
発生源は目の前の小柄な悪魔。
ご主人様ってなんなんだと思いながらも視線を更に下げる。
下げた視線の先には彼女の腕の中で気絶しているらいくん......って、らいくん!!?
らいくんの額は”何かで殴られたかのように”真っ赤に染まっていた。
私は自分が開けた扉の外側を見る。
何かが激突したであろうそこは、若干へこんでいた。
思わず考えた事が口に出た。
「...もしかして、私のせい?」
目の前の悪魔は無言で小さく頷いた。
▽▲▽▲▽▲▽
その後、気絶中のらいくんを家の中に運び込むと言ったら彼女はらいくんを軽々と持ち上げた。
悪魔の身体能力を隠そうともしないとは一体どういう事なのかと思ったが、彼女のその目を見た瞬間に全てを理解した。
彼女の目には、らいくん以外のものが殆ど見えていないのだ。
「......早く場所を教えて下さい。ご主人様に万が一の事があれば...」
”あなたを殺してしまうかもしれません”
私は、言われた言葉を理解するのに数秒掛かってしまった。
装っているだけとはいえ、私は今ただの一般人だ。そんな相手にこの悪魔は軽々しく殺すなどと言い放ったのである。
目の事もあり、とても正気だとは思えなかった。
「ころ、す?貴女何を言って「......もう演技は必要ありません。貴女が鴉なのはもう分かっています」...ッ!?」
いつ気付かれた!!?偽装は完璧にしてらいくんにも分からなかったのに!!!
「......安心してください、誰にも言っていません。嘘はつきたくありませんがご主人様にも言ってはいません。
大変不本意ですが、貴女がご主人様にとって大切な存在だというのは聞いています。
私はご主人様を悲しませる様な事は絶対にしません」
「...だから私も殺さないと、誰にも言わないと」
「......はい、本当は今すぐにでも貴女をバラバラにしてやりたい所ですが、貴女がご主人様の大切な存在である限り危害を加えることはありません」
正直な所、信用出来ない。
だが、らいくんを放っておくのも駄目だ。
一緒に来たということはらいくんが彼女を信用しているということを示している。
「...分かったわ。付いてきなさい」
だから私は、彼女を信じるらいくんを信じた。
それに何故かは分からないが、不思議と私には彼女が嘘をついているようには見えなかった。
私はこの決断が間違っていないと信じたい。