「らいくん!」
その聞き慣れた声は、ここが地下という事もあってか、やたらと響いた。
「加奈......さん?なんで此処に...それにその翼ッ?!」
「っ!?これは!!....そのっ」
ここまで動揺したのはいつ振りだろうか、上手く言葉を纏める事が出来ない。
「これはこれは、カラワーナではないか。
どこへ消えたのかと思っていたが、まさか死神と知り合いとはなぁ......フハハハハッ!」
「どういう事だッ!!!」
理解出来ない...いや、理解したくも無い事態にどうすることも出来ない俺は、ドーナシークに怒鳴る事位しか出来ない。
「そんな大声を出さなくても教えてやるよ。
まぁ?その女がお前に近付いたのはなぁ......」
「やめて!!」
加奈さんが悲鳴の様な声を上げる。
「お前の神器が目的ってだけだったのさァ!!!!」
▽▲▽▲▽▲▽
最高の気分だ!
やっぱり人間を絶望に叩き込むのは楽しくて仕方ねぇ!!
「ハハハハ、グフッ...ぐひゃひゃひゃひゃ!
分かったろォ?お前は騙されてたんだよ!!」
「違うっ!違うの!らいくん...!私ッ!!!」
俺とカラワーナの丁度間に立つ死神野郎は俯いたまま動かない。
もう一押し。
「いいや、違わないだろカラワーナ?
もう演技は必要無いぜぇ!!
どうだい死神ィ!!!裏切られる気分ってのはよォ!!!!」
反応は無い。
だが、俺には分かる。奴の精神状態はとても戦闘など出来る訳もない。
後は嬲り殺しにしてお終いだ。
死神野郎を殺したとなりゃあ、俺も昇格間違い無しだ!
あの様子では大分親しくなっていたんだろうが、今回はそれが裏目に出たようだなぁ?
あぁ......信頼ってやつが崩れ去るのを見るのはいつだって気分のいいもんだなぁ!!
「.....か」
俺がこれからの事に思いを馳せていると、死神野郎がゆらりとその体を揺らしながらぼそぼそと何かを呟いた。
「あぁ?全然聞こえねぇなぁ?もっと聞こえるように言ってくれないと分かんねんだがァ?
あ、そうか!心折れちゃって声も張れないのかなぁ?ゲヒャヒャヒャヒャ!!
死神なんて大層な名で呼ばれてても所詮は唯の人間って訳だ!!!」
俺が上機嫌で話していると、奴から以前も感じた刃の様な殺気を感じ、咄嗟に身構えてしまう。
「ッ!...ハ、ハッ!そんな状態で!!まだやろうっての
か!?
俺よりも殺すべきはそのおんッ!!!!」
途中まで言いかけて、言葉を詰まらせてしまう。
言おうとした瞬間、奴から感じていた殺気が膨れ上がりその威圧感を増したのだ。
先程までのが喉元に突き付けられた刃だとすれば、今感じているそれは吹き荒れる刃の嵐。
全身を斬り付けられる錯覚を覚える様なそれを受け、言葉を詰まらせないというほうが無理だ。
「......話はそれで終わりか?」
瞳を赤く輝かせる死神は、底冷えする様なそんな声でそう言った。
▽▲▽▲▽▲▽
らいくんから今まで感じた事の無い様な濃い殺気に、思わず身を固くしてしまったけれど、すぐにそれが自分に向いていない事に気付いた。
「なら殺すが、構わないよなぁ......ドーナシーク?」
らいくんは溢れ出る殺気以外は何ら変わらない様子で、機械の様な見た目の変わった刀型の武器を構えた。
「な、何故だ!殺すならまずその女が、カラワーナが先だろう!!」
ドーナシークはその様子に焦り、私を指差して喚き散らす。
奴に同意するのは非常に癪だけど、私自身も同じ様に思った。
元を正せば、私は神器目的でらいくんに近付いたのは事実。
普通なら何も言わない私を疑うだろう。
「この後に及んで何を言い出すかと思えば.........まぁいい、冥土の土産に教えてやろう。
一度しか言わないから聞き逃すなよ?」
その言葉に、私は全力でらいくんの一挙一動を見逃さぬ様に集中する。
ーーー刹那、らいくんが一気に踏み込みドーナシークの懐に飛び込んだ。
「ッ!?」
「誰が......」
らいくんが刀を振り上げ、そして叫んだ。
「誰が貴様の言葉など信じるかァァァァアアアアアアア!!!!!!!!」
単純明快。
あまりにもあっさりした理由に、私は思わず脱力してしまう。
ドーナシークもありえないと言わんばかりの表情だったが、
斬ッ!!!
そんな音と共に振り下ろされた刃がドーナシークの左腕と左翼を鮮やかに切断し、その表情も苦痛を訴えるものへと変わり、追撃を受けない様にする為か数回のバックステップで距離を離し、翼を落とされた事への怒りを爆発させる。
「クソッ!!!俺の翼をよくもぉ!!!!絶対にぶっ殺...ガァッ!!」
しかし、そんなの知った事かとでも言うようにらいくんは一気に距離を詰めてドーナシークの顔面に強烈な蹴りを叩き込んだ。
それを受けたドーナシークはもの凄い勢いで壁に激突しその瓦礫に埋れた。
「馬鹿が。あんなに綺麗で優しくて子供っぽい性格の加奈さんが悪意を持って人を騙すわけがあるまい。
それに彼女は俺の大切な人だ。
堕天使であろうと人であろうと関係無い」
「うっ...」
らいくんの純粋な信頼がグサグサと私の心に突き刺さる。
うぅ、罪悪感で心が痛い......。
「殺すゥ!!!!!コロスゥゥゥウウウウ!!!!!!」
尋常ならざる声を上げ、瓦礫を蹴散らしながら光の槍を出し、らいくんに飛び掛る。
「醜いな」
らいくんはそう一言呟くと、刀を振り上げ。
「これ以上語る事も無いだろう。大人しく死んでおけ」
静かにそれを振り下ろした。