「早々にくたばってしまえドーナシーク」
「ウオォォォ!!!!」
一誠が雄叫びを上げながらドーナシークに突撃する。
『Boost!!』
籠手から電子音声のようなものが聞こると同時に力強いオーラを纏って跳躍、刺々しい見た目になった籠手を装備した左腕を振りかぶる。
「オラァ!!」
そして両者が接触する寸前、一誠が固く握り締めた拳を放つ。
「誰がてめぇみたいな雑魚悪魔に......クッ!!」
ドーナシークは一瞬それを受け止めようと身構えるが、一誠から放たれるプレッシャーに負けてその場から飛び退き拳を躱す。
回避された事により放たれた拳は床に叩きつけられる。
あまりの威力に床石は砕け破片が飛び散り、その下のコンクリートにも大きな罅が入る。
「な、なんだその馬鹿げた威力はッ!!!
「知るかッ!!!」
喚き散らすドーナシークを一誠が一喝して黙らせる。
「この力が何だろうと関係無い。
俺はお前を倒せれば......アーシアの仇を討てればそれでいい」
『Boost!!』
再び音声が鳴り響く。
「...守れなかったんだ。
だからさ........
仇くらいは討ってやるッ!!!!!」
『Explosion!!』
「ッ!?」
先程とは違う音声が流れ、一誠の纏う力が上級悪魔のそれと遜色ないぐらいに跳ね上がる。
「クソ!クソックソックソッ!クソッタレがぁああああ!!!!!!」
目の前で起こる異常に耐えきれなくなったのか、ドーナシークは狂気に取り憑かれたかのように光の槍を滅茶苦茶に投げまくる。
狙いも定まっていないそれを、一誠は意にも介さずに自分に当たるものだけを左腕を振るって打ち砕いていく。
「流れ弾......この場合は流れ槍か?いくら何でも飛んできすぎだろう」
一誠は自分に当たるものだけを処理している都合、それ以外のいくらかは必然的に後ろにいる俺達に飛んでくる。
当然、喰らってやる理由もないので白と加奈さんの前に立って飛来する槍を打ち落とす。
「雷電君、イッセー君のあの状態。
少し不味い気がするんだけど......どう思う?」
久しぶりの出番だな祐斗。
「ああ、見事に怒りに飲まれてるな。
ただまぁ、あいつなら多分平気だろうとは思う」
「なぜ、そう思うんだい?」
「あいつはそんな事で自分を見失う奴じゃないからな。
最悪、俺がぶっ飛ばせば問題無い」
「...分かった。僕も君の言葉を信じるよ」
「それは何よりだ。
という訳だ......さっさと倒してしまえ一誠!」
▽▲▽▲▽▲▽
「さっさと倒してしまえ一誠!」
雷電の声が聞こえる。
「ああ、そうだな......終わりにしよう」
俺がそう呟くと、ドーナシークは逃げようと翼を広げる。
「クソがッ!」
「逃がすか、バカ」
言うと同時に一気に奴へ肉薄し、飛び立とうとする奴の腹に膝蹴りを御見舞する。
「ガッ!!...う、ゴホッゴホッ」
その一撃で飛ばれるのを阻止し、悶える奴を見据えて左腕を全力で引き絞る。
「吹っ飛べ、クソ野郎」
籠手の力が一気に解放され、左の掌に集約される。
イメージするのはあの時雷電が放った掌底。
指先だけを曲げ、胸あたり目掛けて渾身の力で掌打を叩き込む。
「うおりゃああああああああああ!!!!」
放ったそれは、ほぼ正確に奴の心臓位置に突き刺さった。
ドゴンッ!!!と鈍く大きな音が鳴り、バサバサと羽根を撒き散らしながら何度も地面を跳ねながら吹き飛んでいく。
「よくやった一誠、後は任せろ」
力を使い果たし腕を振り抜いた状態で止まっていた俺の横を、雷電の声と共に風が通り過ぎた。
▽▲▽▲▽▲▽
「うおりゃああああああああああ!!!!」
一誠の放った掌底でドーナシークがボールの如く飛んでいく。
しかし、俺は奴がインパクトの瞬間に上手く翼を使って後ろに飛んだのを見逃さなかった。
よくある”後ろに飛んで衝撃を殺す”的なあれだ。
仕方が無い、このままでは逃げられそうな上に神器回収もしなければならん......後始末は俺が請け負った。
「よくやった一誠、後は任せろ」
一誠の隣を通り過ぎる瞬間にそう声を掛ける。
さて、どこを斬れば神器は出てくるんだか。
まぁいい、”見れば”分かる事だ!!!
ニンジャランで吹き飛ぶドーナシークを追い、近くまで来た瞬間に斬撃モードを発動。
「ふむ、配置は心臓。
そこから血と共にエネルギーを回して治癒能力を発動させていた訳か」
何の事かと思っただろうが、まず斬撃モードを使用する事によって自動的にオーグメントモードも発動する訳だ。
そして、今までに依頼で色々な奴と戦ってきた経験から、ゲームで左腕の情報集積部が違う色に光るのと同じ様に、神器等の特殊なエネルギーを放つモノが光って見えるというのは既に把握していた。
「......潔く死んでもらうぞ、ドーナシークッ!!!」
ブレードを抜き、その勢いのまま袈裟懸けに一閃。
斬ッ!
神器を斬らぬよう振るわれた刃は、高周波という特性を遺憾無く発揮し、僅かな抵抗も無く奴の体を斬り裂き臓物をブチ撒けさせる。
奴の目が驚きに見開かれているのが視界に入る。
「残念だったな......アーシア・アルジェントの神器、返してもらおう」
奪ッ!
一瞬で刃に付着した血糊を払い納刀。
斬った体の断面から手刀を突き入れ、奴の心臓を掴む。
「ハァッ!!!」
そして一気に引きずり出し、見せ付けるかのように”それ”を握り潰す。
ブシュッと鮮血が飛び散り、地面と俺の体を汚す。
握った手を開くと、そこには血の海に浸されたにも関わらず、一切の汚れも無く光る神器のみがあった。
▽▲▽▲▽▲▽
「ははっ......ライデンの奴、いいとこ持っていきやがって」
しかし口ではそう言ったものの、最後の一撃に全身全霊を込めたせいか体は全くもって動いてくれない。
返り血塗れのライデンは、アーシアの神器をその手に持ったままこっちに向かって歩いてきていた。
それを見て、改めて終わったんだという思いが沸き上がってくる。
「やったんだ......ドーナシークを倒した、アーシアの仇を討てたんだ」
しかし、俺の心にはもう一つ感情が渦巻いていた。
「なのに、何でだろうな.........虚しくて、情けなくて、最悪の気分だ」
やっぱり体良く仇討ちなんて言った所で、結局は唯の復讐でしか無かったという事なんだろうか。
漫画やアニメなんかでも『復讐なんて虚しいだけ』だなんて言うが、今の状態が正にそれだろう。
ドーナシークを殺したところでアーシアは生き返らない。
当然、そんな事は分かっていた。
結局、俺は守れなかった悔しさや怒りを、奴にぶつけて発散したかっただけなのかもしれない。
「クソッ......」
座り込んで項垂れる俺にライデンが声を掛けてきた。
「一誠、自分がした事を悔やんでいるのか?」
「......分からない。
ただ、こんな事してもアーシアは生き返らないって理解してて、自分の復讐心を満たす為にやったって事に気付いたら.........どうしようも無く虚しくなって、でもそれに多少なりと満足してる自分が嫌になった」
「だろうな」
「っ!」
心の奥底で少なからず否定や慰めを期待していた俺は、ライデンのその一言に少なからずショックを受ける。
「所詮、復讐なんてものは自己満足だ。
やられたからやり返す。だが、それを成したとしても失ったものは戻らない。
それで満たされるのは結局の所自分だけだ。
仇討ちなんてものは、誰かの死を復讐の理由にしているだけだ」
頭をハンマーで殴られたみたいって、こういうことを言うんだろうな。
自分でも分かってはいたけど、改めて言葉にして言われるとショックで心が折れそうだ。
...,..そして、今日はとことん漫画のセリフや表現に縁がある日だな。
「だがまぁ、別にそれでも構わないんじゃないか?」
「え?」
俺はライデンの言葉に、一瞬頭がついていかなかった。
さっきまで復讐をさも悪い事の様に言っていたのに、今度はそれを認めるような事を言い始めたらそりゃ驚きもするさ。
「一誠、とりあえずその『何言ってんだお前』みたいな表情はやめろ」
「アッ,ハイ」
怒られた。
「そりゃ、一般的に考えれば復讐は悪だろうさ。
そもそも人を殺すこと自体が悪だからな。
だが、親しい者を殺されて黙っていられる奴がいるか?
違うという奴がいれば、そいつは本当に親しい相手ではないって事だ。
確かに復讐が正しい行いかと言われれば違うだろうさ。
殺されたから殺す、何も生み出さない非生産的な行為だからな。
だけどさ、殺した者が憎いって感情は存在して当然の感情だろう?
そりゃ自制は必要だろうが、それを抑圧していい事なんざありゃしない。
いざとなったら善悪なんぞ関係無いさ。
これはあくまで例えだが、俺は白や加奈さんが傷付けられるような事でもあればそいつを生かしておかないだろうさ。
それが世界を敵に回す事だとしてもな」
ライデンがそういった瞬間、思わずゾッとした。
剥き出しの刃を鼻先に突き付けられたかのような恐怖。
「あぁ、すまん。想像したら殺気が漏れた。
俺もまだまだ未熟だな。
なにはともあれ、お前の復讐は100%悪ではないって事だ。
それに、アーシア・アルジェントの事もまだ諦めるには早いぞ一誠」
「それってどういう?」
「それは、そろそろ私の出番って事でいいのかしら?」
「部長...?」
全然違う内容の中に、自然な流れで原作のセリフをぶち込むの好きです。
あと、クソ天使をクソ野郎に変えたのは、一誠の彼女化した天野夕麻&加奈さんが堕天使だから。
やっと一巻終わりそうだね。