???
奴が、Lが来たのは今からほんの一ヶ月と少し前の事だ。
「今日からこの子が私達の部隊に配属になるわ。《L》?自己紹介なさい。」
「…………《L》…………LYNX、リンクスだから《L》…………よろしく…………」
金髪に紫苑色の目つきのそいつは、最初は誰もが侮っていた。"新人だから"、"ガキだから"。そして次の言葉で、私達は完全にブチ切れる結果になったのだ。
「…………信じられないなら…………今この場で全員一斉に襲ってきても…………いい…………」
全員の目つきが鋭くなる。そして。
「…………どうせ…………貴方達全員、敵じゃない」
そこから先はどうなったかは覚えては居ない。ただ一つ言えたのは、気が付いた時には部隊のリーダー、スコール以外の全員が地面に叩き伏せられており、首のすぐ横にナイフが突き刺さっていた。
「言った…………貴方達、全員敵じゃない…………」
明らかにあり得なかった。確かに貧弱な諜報部員や引きこもり気味の電子部員ならまだ叩き伏せられてもおかしくないとは思う。だが、実働部隊までが全員叩き伏せられていた。
「…………」
叩き伏せた張本人は、つまらなそうに机の上に座ると、私たち全員を見下ろし、こう言い放った。
「…………まだ…………やる…………?」
この瞬間に、部隊内での強さの順位が変わった。だが、何人かは納得していないらしく、外に出たタイミングを見計らいISを纏って《L》を襲撃したやつもいた、が。
「…………」
そのISを纏った奴ですら生身で、それも正面から叩き潰された。放たれる銃弾は全てあさっての方向に飛び、ウィングスラスターは素手、それも片手で引きちぎられ、装甲は砕かれ、フレームは蹴り砕かれた。
「ば、馬鹿な…………こんなガキに…………こんな入ったばかりのクソガキにぃ…………!」
シールドエネルギーが切れ、動かすことも出来なくなったISはただの重りにしかならず、しかも、外から骨を折り砕いているせいか手足もろくに動かせず、目で《L》を睨みつけるだけだった。
「…………」
「がふっ!?」
《L》は容赦無くそいつの側頭部を踏み付ける。そしてゆっくりと万力のように力を込め始める。
「…………」
「がっ…………待って…………ぐれ!も、…………もうじないがら!たの…………!」
「やだ」
《L》がそう一言言った瞬間、ベキンッという音と共に肉の潰れる音が聞こえる。
「…………」
《L》はISを纏ったままのそいつを壁に十字に貼り付けにする。
「…………見せしめ…………こうなりたいなら…………まだやる?」
この日を境に今度こそ《L》にちょっかいを出すものはいなくなった。
そして今。
「クソッ!当たれこのガキ!」
「相手はテロリストだ!ガキだからって容赦するな!」
私達はとある所のISを強奪しに来ている。基本的に実行は私、《L》は囮兼時間稼ぎ、の筈なのだが。
「…………」
あいつ一人で戦場は事足りていた。片手で30センチ程の白い拳銃を取り回し、的確に肺、心臓、眉間などを的確に一発で撃ち抜いていく。更には、接近してナイフで喉笛を斬り裂き、手に力を込めて変形させ心臓を抜き取り、胸骨ごと踏み砕き、頭を叩き潰し、首をねじ切り、時たま両方の四肢をそのままほぼ時間差なく斬り落としたり、一時間もすればあたりは死屍累々といった有様になっていた。
「…………」
終わればあいつは手頃な高さのところに座り、いつも上を見上げている。それがいつもの彼奴のスタイルだ。
「終わったぞ」
「…………分かった」
基本現場では私の下に《L》がつく方針になっている。と言っても事前のブリーフィングで役割が決められているため、そんな物はただの飾りなのだが。
「…………」
「…………?何?」
「何でもない…………」
だが、この時。あの日が来るまで気づかなかったのだ。私、私達が裏の人間代表として、《L》に評価されていたことなど。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
『ジェネレーションシステムへ定時報告』
『了解、報告を受け取ります。』
『現時点での全員の方針はほぼ女尊男卑とみて間違いありません。数日後、レイヴンとの合議にてヴァーディクトデイの日程を再度議論、のちに結論を報告予定。』
『了解、引き続き見定を』
『了解、続けて現時点でのファントムタスクの戦力の大多数を完全把握。ジェネレーションシステムに送信します。』
『了解、データインストール…………フェーズシフト実行…………完了。』
『定時報告は以上…………』
『了解』バツンッ
「ッ…………!…………疲れる…………ふぅ…………」
リンクスはそのまま身体を小さく猫のように丸めて眠った。