一夏side
『静かな奴』
彼奴に、レイヴンに対する最初の俺の印象はそれだった。自己紹介の時にミドルネーム、まあ、苗字みたいなのが無いって言ってたから、深い理由があるんだろうな。休み時間も昼休み以外は、ずっと机に座って目を閉じたまま。他の人と話す事もせず、そして授業が始まれば参考書を開いて、当てられれば完璧に答え、出された小テストは何時も満点だった。ちなみに昼休みは屋上で空を見上げている。レイヴンで渡り鳥って意味らしいからそれに関係でもしてるんだと思う。
「…………」
いや、初めは俺も近づこうとしたんだぜ?だけど…………なんとなく分かるだろ?人が放ってる近付くなオーラって奴がさ。彼奴は俺があった中でも一番濃い近付くなオーラを放ってた。
「…………うーん…………」
クラス代表決定戦でも、俺もセシリアもあっという間にやられた。たくさんのビームサーベルで縫い付けられるってどんな攻撃方法だよ。ちなみにセシリアは青い炎で焼かれたらしい。
「よお!レイヴン!」
だけど、何時までもビクビクしてても友情は築けない。俺は意を決して廊下でレイヴンに声を掛ける。
「…………」
レイヴンは俺を方を数秒見た後、再び教室へ歩き出す。
「貴様!一夏が話しているのだぞ!挨拶くらい返したらどうだ!?」
一緒についてきた箒がレイヴンを咎める。が、レイヴンは何処吹く風で廊下を歩いていく。
「貴様ぁ!」
「箒!やめ…………!」
箒が竹刀でレイヴンに殴りかかる。それを止めようとするが遅かった。初日にセシリアが殺されかけたのをどうやら箒は忘れているらしい。箒が振り下ろした竹刀はレイヴンに直撃…………。
「…………」
せずに、レイヴンは半身になり此方を見ると、軸をずらして箒の竹刀を回避、からぶって一番下まできた箒の竹刀を左足で踏み折り、両手の袖口からナイフを出して箒の喉笛と心臓を突きにかかる、が。
「レイヴン、朝から流血沙汰にするつもりか?やるなら学園の外でやれ。」
千冬姉の出席簿がレイヴンと箒の間に入った事により、ナイフが出席簿に防がれ、箒は流血沙汰を免れた。箒は腰を抜かして座り込んでいる。
「レイヴン、今ここで所持している危険物を全て出せ」
千冬姉がそう言うと、レイヴンはそれに従った。だが俺たちが驚いたのはその持っている凶器の数だった。まず両の袖口に10本ずつ。両腕にベルトで固定してあるのが5本ずつ、さらにわき腹に防弾防刃素材で出来ているであろうインナーのホルスターに左右に4本ずつ、両太腿のベルトに6本ずつ、スラックスの両裾に4本ずつ足首に三本ずつ、計64本のナイフを持ちながら一切音も立てずにレイヴンは今まで歩いていたのだ。
「…………」
廊下の全員があっけにとられていた。かくいう俺もその一人だが。
「…………」
レイヴンは全てのナイフを出し終えると、今度は腰の後ろに手を回す。黒いその物体は俺も見たことのある代物だった。
「拳銃…………」
そう、拳銃。だが、圧倒的に違うのはその長さだった。通常の拳銃の倍近い長さ、おおよその全長が40センチはあろうかという長さだった。
「全て部屋に置いて来い。そして持ち出すことを禁止する」
レイヴンは全てのナイフと拳銃を身体のあちこちにしまうと、元来た道を戻っていく。この時からみんなの見る目が恐怖に変わったのは言うまでもなかった。
「…………」
だが、俺はそうは思えなかった。過剰なまで生身での武装。
「…………人が好きじゃねえのかなぁ…………」
だったらこの学校にいる間に少しでも人が好きになれるように、俺はレイヴンと関わることにした。が、俺たちはこの時気づかなかったんだ。俺たちが彼奴に、判断材料にされていることなんて。俺たちが彼奴に評価されている、なんてこの時はまだ俺も、箒も、セシリアも、のちに転向してくる三人も、学園のみんなも、そして千冬姉やあの人でさえ知らなかったんだ。