IS 罰の記録   作:elf5242

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エピソード《R》3

数日後、生徒たちにとっては一学期の目玉イベントの一つ、クラス対抗戦の日にちが近づいてきていた。

 

「今年は一組優勝間違いなしだね!!」

 

「専用機持ってるのは一組と四組だけだから、楽勝だよ!」

 

そんな声がちらほらと教室内から聞こえる。レイヴンは目を閉じあいも変わらず、同じ体勢で動かずにいた。だが、耳はちゃんとその言葉を聞き取っている。

 

(レイヴン)

 

(リンクス、何用だ)

 

(この日時に対面での情報交換を要求。そちらの返答を求む)

 

もう一人の裁定者、リンクスからジェネレーションシステムを介した脳量子通信が入る。同時に画像データが送られ、レイヴンの網膜に投影される。

 

(了解、場所はこちらで指定する)

 

(了承、通信を終了)

 

レイヴンがリンクスと通信をしている間に、入り口のゴタゴタは収まったらしく、教卓には千冬が立っていた。

 

「…………」

 

レイヴンは今日も今日とて機械的に参考書を出すのであった。

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

その頃、国際会議場では議論が交わされていた。勿論議題はレイヴンの事である。二つの国がレイヴン、及びその専用機"ハルファス"は自国のものである、と主張し始めたのだ。一つは遠隔操作兵器"ビット"を開発したイギリス。もう一つは炎熱兵器を開発したスペインである。

 

「レイヴンに使われている遠隔兵器は我々イギリスのものである!よってレイヴンは我々イギリスの国民である!」

 

「異議あり!レイヴンの使用した炎熱兵器は我々の開発したものだ!」

 

イギリスの代表とスペインの代表が激しく言葉を交わし合う。そこにすぐさま木槌の音が入り、二人の議論を中止させる。

 

「静粛に、今回の議題はレイヴンについて。国籍については後ほど。今はレイヴンの卒業後の扱いについてだ」

 

「勿論!そんなもの研究所送りに決まっているではありませんか、議長」

 

発言をしたのは女性権利団体という過激派組織の代表。元は女性の権利などを理由にデモなどを行う団体だったのだが、ISの登場により粛清という名目のテロや襲撃事件、賄賂による女性の事件のもみ消しなどその行動はどんどん過激になっていった。今回の会議にも無理やり権力を使い参加しているようなものだった。

 

「ほう?」

 

「彼は素性もしれない傭兵…………それに比べてもう一人は織斑千冬様の弟、どちらを取るのは分かりきった事ではありませんか?」

 

ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべ髪をいじりながら女権団代表は議長を見る。

 

「…………却下、次に意見のあるものはいないか?」

 

「なっ!?私を無視しないで頂けますか?議長!」

 

「申し訳ない。私は根っからの現実主義者なもので。もう少し現実的な意見を出していただけると助かります。」

 

議長はそれを無視して他に意見を募る。

 

「チッ…………」

 

女権団代表はそれを見てつまらなそうに舌打ちをし、とある所に電話を掛けた。

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

『いい!?絶対にあの男を殺すのよ!分かった!?』

 

「はい、お任せ下さい代表!」

 

IS学園で連絡を受けた1人の女子生徒。彼女も重度の女尊男卑至上主義である。

 

「私がやれば…………きっとあの方も!」

 

そう言って手に持つナイフに力を入れる。そして一息に扉を開け放ち、ベッドに向けてナイフを何度も振り下ろす。

 

「このっ!このっ!このっ!」

 

暗闇の中何度も何度も振り下ろす。周りにはベッドの綿などが飛び散っており、もし人間が入っているなら凄惨な現場になっているだろう。

 

「死ねっ!あの方のために!私が認められるために死ねぇ!」

 

頭や心臓にあたる部分を何度も何度も突き刺す。数回続ければナイフは真っ赤になっていた。

 

「はぁ…………はぁ…………やった…………!」

 

女子生徒はその場でへたり込み、恍惚な笑みを浮かべる。

 

「報告しなきゃ…………!」

 

女子生徒は携帯を取り出し、女権団代表の携帯番号を表示したところで、女子生徒の光は永遠に失われた。

 

「あ、あれ…………!?」

 

何が起こったのかわからず顔に手を当てて確認する。そして女子生徒は自分の手に異変を感じた。掌の感触、皮膚と皮膚が触れ合う感触がない。あるのは生暖かい液体のような感触と生の肉を触ったような感触、そして硬い何かの感触。その三つで女子生徒は自分の手首から先が切断されていることを知った。知ってしまった。

 

「あぎゃあああああああああああ!?!?!?」

 

感覚を取り戻した瞬間、目に激痛が走る。手首から先を失った腕で顔を覆う。そして腕に語る冷ややかなプラスチックの感覚。時折あたる鉄の感触。女子生徒の両目には二本のナイフが突き刺さっている。

 

「が、ああ…………」

 

ひたひたとよろめきながら部屋の外で出ようと地面を這い進む。

 

「た、助けて…………誰…………があ!?」

 

口を開けた瞬間、舌を貫通して下顎に舌が縫い付けられるようにナイフが突き刺さる。

 

「おぇえ"え"え"え"え"え"え"!?」

 

まともに喋れなくなった女子生徒。それでもほふく前進の様に這いつくばって進んでいく。ここで豆知識。人間の膝の裏は光を感じると言う。今夜は満月。光ならある。丁度ミニスカートに制服を改造していた女子生徒は光を感じた方向に這って進もうとする。

 

「あぁ…………あぁ…………あっ!」

 

そして方向転換をし終わると同時に、足裏に激痛が走る。

 

「〜〜〜〜〜!?!?」

 

口の中にナイフが刺さっている為、声にならない声を上げる。ナイフは足の裏から刺さって足の甲を貫通し、床に深く突き刺さっている。しかもご丁寧に刃は足の指の方を向いており進めば足が両断される。

女子生徒はこれで身動きも取れなくなった。

 

「あ…………あ…………」

 

そして女子生徒はがくりと力つきるように倒れ、数度痙攣した後、二度と動かなくなった。

 

「…………」

 

そして部屋の奥の暗がりからレイヴンが姿を現わす。

 

「ジェネレーションシステムアクセス、"ニューロコア"インストール。」

 

レイヴンが手を開くとそこにはボーリング玉ほどの大きさの黒い玉が浮かんでいる。

 

「続けて機体データ"レギナ"をニューロコアへインストール。」

 

そう呟くとレイヴンの前に電子膜が現れる。レイヴンは手のひらに浮かぶ黒い玉を電子膜に投げると黒い玉は電子膜を吸収、白いバーコードのようなものに包まれ、それが割れると現れたのは黒と紫の機体、ジェネレーションシステムの秘匿機体のうちの一機"レギナ"。女性的なフォルムが特徴で肩甲骨あたりにビームキャノン兼用のバインダーを装備している。

レギナは女子生徒の遺体を抱えるとそのまま空へと飛び去る。そしてレイヴンは何食わぬいつもの顔で部屋の戻る。そして女子生徒の遺体の行方は誰も知らない。

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

『レイヴン、報告を聞きましょう。』

 

『深夜二時頃に襲撃を受け、反撃。目標を排除後ニューロコアを使用し遺体を処理、ニューロコアは大気圏へ移動させた後核爆発で消滅するように設定、システム管理の監視衛星でもそれを確認。次に学園側の表には未だに動きはない、以上。』

 

『了解しました。では次の定時報告をまっています。遅れないよう時間厳守でお願いします。』

 

『了解』

 

レイヴンは円卓の中央から電子データとなって消える。

 

『いやぁ!あいっかわらず抑揚のない見事な棒読みだよねぇ!まあ、それも聞いてて面白いけどさ、キャロりんですらもうちょっと抑揚あるよ?』

 

円卓に足を乗せ、下品に話すスーツを着崩した男、主任と呼ばれるジェネレーションシステムに意識をデータ化されて取り込まれた一人が、大声で話す。

 

『まあ、つまらん彼奴らなどどうでも良いが奴らは早く決定しないのか?私は早く奴らバンディットが逃げ惑う姿を見たいんだ。』

 

もう一人の顔にくっきりと残る奇妙な形の火傷が特徴の男、ハンサムジャックがつまらなそうな表情でレイヴンの電子レポートを見る。

 

『煩いぞ、主任、ジャック。果報ぐらいは寝て待てば良かろう。寝付けないなら今すぐ寝かしつけてやろうか?』

 

WRSはあいも変わらず、主任とジャックを目で脅していた。二人はそれでもどこ吹く風だが。

 

『……………』

 

そんな混沌としている円卓を、リンクスは体育座りで眺めていた。

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