新光暦238年3月21日 午前9時時25分 アークスシップ1番艦フェオ
原生生物研究所
「ごさそうさま、いやぁ~食った食ったっとさぁて寝るか!」
「おい・テツちゃんもう寝るのかよたまには働いたらどうだい?」
「もう死ぬほど働いてきたからねあとは人生は老後だよ」
垣屋とシンジュク、そしてチヒロはその言葉を聴くと少し言葉を詰まらせ
それ以上何も言わなかった、
「ん?なんかこっちに車が来るな・・・」
朝食を終えた研究所の外が騒々しい、何事かと思い垣屋と研究所の住人は外を眺める、
引越し業者の小型トラックのようだ、小型のトラックの助手席から
古臭い両端をカールにした髪形の青年が飛び降りる、
「こちらです、ではお嬢様のお荷物を運び込んで下さい、よろしくお願い致します」
業者になにやら指示をしているようだ、
「なんだあいつら」
垣屋は何事だと声を上げるとその横に擦り寄っていたねねは
「わらわとスゥリンちゃんの荷物なのじゃ!」
「ちわっす!お邪魔します!お荷物はどこに運べばいいっすか?」
「ねねさんの荷物ですね?、3階の手前の部屋です」
チヒロが下まで降りて行きねねの下宿部屋の案内を始める、
「おい勝手に運び込む・・・」
垣屋は怒涛の如くの引越し屋に口を挟む余裕すら与えられずさしたる量のない荷物は
あっという間に運び込まれ
「ありがとございましたっ!」
引越し屋たちは気合の入った挨拶と共に風の様に去って行った、
「あの・お茶とお菓子・・・」
チヒロは彼らに出すはずであった茶菓子を盆に乗せたまま呆然としている
シンジュクとテツは盆から茶菓子を取り上げ頬張るといつもの所定の場所へ戻って行った、
あまりの強引な展開に垣屋は不機嫌さを隠さなかったがこれも自業自得
「ご挨拶が遅れました、こちらのご主人様ですね、私ねねお嬢様の従者
パイオニア一号と申します、本日よりこちらに住まわせて頂きお嬢様のお世話を
致します以後お見知りおきを・・・」
「・・・お・・・おう・・・チヒロやこいつの部屋も用意してやってくれや・・・」
目の前にいるパイオニア一号からの自己紹介にこちらの住人の紹介で返し、
新しい居候が増えよりにぎやかになった研究所であった、
研究所の住人たちがいつもの日常に戻ろうとすると新たな人影が
玄関に伸びてくる、
「あら、博士お客さんのようです」
チヒロが垣屋を呼び止め、それを知ってたかのようにねねとスゥリンが玄関へ
走り寄る、
浅黄色の髪に性別の良く分からない佇まい、イフェメラがたずねて来たのだ、
住人の姿を見ると礼儀正しく頭を下げて挨拶をする
「初めましてみなさん、イフェメラです」
と頭を下げ礼儀正しく丁寧に挨拶をした、
「わらわとねねちゃんのお友達なのじゃーよんだのじゃー」
「そうか・・・友達かぁ~・・・よろしくの、ささっ入った入った」
垣屋は一瞬何か含みのある顔を見せたがすぐににこやかな表情に戻り
中へ入るように促した、礼儀正しい子にはやさしいのだ、
リビングでチヒロが新たに運んできた茶菓子を食べつつそれぞれの自己紹介と
明日サンプルの採取とデータ取りの依頼の解消のためアムドゥスキアの火山洞窟へ
行くので3人に鍛錬の兼ねてついてくるようにと垣屋は言った
「またヴォルドラゴンがでてきたらどうるすのじゃー」
スゥリンは垣屋に言った、
「あのなぁスゥリンちゃんヴォル公くらい何とかできんでアークスなんかやってられんのよ?
向かって来たら叩き潰せばええじゃろが、」
テツも
「そうだよぉ、俺たちがサポートするからやってみようよ」
テツはおびえを交えたスゥリンにできうる限りやさしく言ったが内心はあきれ返っている、
「まぁ一番弱い竜族がおるエリアに行くから見学くらいの気持ちでおったらええ」
「しかし源ちんこの3人ヴォル公あいてじゃ装備がひどくないかい?
もう少しマシなお古でもくれてやったらどうだい?」
シンジュクの意見をきき垣屋は3人の装備の確認と能力のスキャンを行う
「なるほどなぁ、装備もそろそろ新しいのに更新じゃな、これでは心もとない」
垣屋は席を立つとリビングから出で行った、垣屋の足音が階下へと消えていく
垣屋がいなくなったリビングでしばし取るに足らない雑談をして時を過ごす、
少し時間を経て垣屋がリビングに戻ってきた、両手に色々な装備を抱えて
テーブルの上の物をどけるように指示をして住人たちは全ての物をどけ
垣屋は両手で抱えた装備をテーブルに落とした、
「おめえたちの新しい装備じゃよ、さすがに今の装備じゃヴォル公に太刀打ちできんわさ」
垣屋はまず武器を3人に手渡す、
まずはイフェメラに手渡す、ジェットブーツでグレヴァーンと呼ばれる使い勝手の良い
モデルである、ギザギザした刃と派手な色使いが目を引く
「・・・いいんですか?」
イフェメラは嬉しそうに垣屋を見る、垣屋は笑顔でうなづくと珍しく笑顔で受け取った、
次にスゥリンにウォンドを手渡す
星型の穂先が付いた短杖で淡い青色の柄がついており穂先からほのかな令気が
漂っている、アダマンの杖と呼ばれる杖だスゥリンはすばやく手を伸ばすと
「ありがとなのじゃー」
そう言うと手に取りふんふんと振り回す
「こら・やめんか!」
垣屋はスゥリンをたしなめる、スゥリンも杖に満足したらしくプレゼントを
もらった子供のようだ、
その様子を見た垣屋はさらに満足げにねねへ渡す武器に手を伸ばした、
ねねに手渡されたのは
アルバヴァストールと呼ばれる刀でアークスで使用されるアルバカタナの改良された
高級モデルで鞘が盾の形になっており幅広の刀身と安定した重量バランスが
使用者に好評な刀である、
「うれしいのじゃぁ~旦那しゃまありがとなのじゃ!」
ねねは垣屋に抱きつき喜んだが垣屋はさらっと引き剥がす
「武器は能力の乗せかえとそこそこ調整してるからそのままでも使えるが
ちと強化が足りんから後でショップエリア行くからラボで強化しようのぉ」
垣屋は続けて
「そしてユニットじゃ」
3人にそれぞれユニットを手渡す、全て同じモデルで
フレキュオフシリーズと呼ばれるユニットのセットで炎への耐性に特化した
ユニットのセットで幾分かのステータスの補助もしてくれる
初心のアークスの強い味方として定評のある装備である、
「じゃもう一休みしたら皆でショップエリアに行こうかね」
今までの装備は下取りに出す事となり、武器の強化のためにショップエリアへと
皆で向かう事になった、
新光暦238年3月21日 午前11時時18分 アークスシップ1番艦フェオ
ショップエリア
一行はショップエリアに降り立った、皆で終わったら外食をしようと垣屋が提案したので
お子様たちは大喜びである、
食事の前に用事を済ませる事にしてさっそくアイテムラボに向う
アイテムラボではなにやら店先で客のアークスの怒鳴り声が聞こえる
どうも聞いていると武器の強化に失敗して有り金全てが無駄になったらしい
店員は中年の男性で襟首を掴まれながら客のアークスにこう言い放つ
「すんばらしく運がないな君は!」
そう言い放った途端、客のアークスは中年の男性店員を殴りつけた
その横に小柄の女性店員がおどおどしながら震えている、
アークスの男性は数発殴りつけると悪態を吐きながら去って行った、
「こわいのじゃあ~」
ねねはおびえているようだがシンジュクはいつものことだから気にしなくて良いと言い
背中を押す、
先ほど殴られた男性店員は何事もなかったようにおずおずとしたお子様3人に
不粋な笑いを浮かべ
「ふっふっふ何用かね?」
と誠意の感じられない仕草で頭を下げた、黒いもじゃついた髪に黒い口ひげ
浅黒い肌をしたこの中年男性には人としての何かが欠けているようで温かみが感じらない、
爬虫類のような何を考えてるのか分からない冷たい目でこちらを見て
制服の所々に血しぶきの付いたあとがシミになって残っている
「おい・ドウドウこいつらの武器の強化じゃ+10になるまでやってくれ」
垣屋はそう言うと3人の武器を受け取ってドゥドゥと呼ばれた店員に武器と
強化に必要なグラインダーと呼ばれる道具の束を突き出した、
「メシ食いに行くからすぐにやれ!分かったか!」
垣屋はいつになくドゥドゥに乱暴な物言いで対している
そして後ろでカタカタ震えてる少女の店員にも冷たく言い放つ
「おめーも店員だろうがさっさとやれボケナス!」
「ひっ!はっはいただいま」
垣屋がカウンターを蹴りその音で少女はビックリして飛び上がり
急いで強化用の装置にライのグレヴァーンをセットして不安を呼び起こす手付きで
強化加工を始めた、
ギリギリと武器の強化加工の音が店の後ろから聞こえてくる
「ふむ・失敗のようだね」「こりや絶望的だな強化-2だ」
「ちからぶそくですぅ~」
等となにかふざけたような嬉しそうな声が聞こえてくる
垣屋やシンジュク、テツはそれに慣れているようで殺意を込めた目を二人に向けている
30分後・・・まだ奥で同じ調子でうだうだやっている店員ふたりにシンジュクは
「早くしろ蛆虫!」
怒鳴り声を上げてカウンターを蹴飛ばす
そしてドゥドゥと店員の少女がわざとらしく武器をうやうやしく手にささげて
カウンターに戻ってきた、
「これで強化は完全だ、すばらしく運が良いな君は全部でたったの2万メセタで
出来たぞ」
と垣屋に向かって偉そうに言い放った
「2万だと!ふざけんなわれ!」
垣屋の拳がカウンター越しにストレートを描きドゥドゥの顔にめり込み
ドゥドゥは背後の壁に叩き付けられる、
垣屋は仰向けに倒れたドゥドゥに端末からでなくメセタを直接
手のひらの上に取り出してドウドウと少女の店員に投げ付けた
ドゥドゥの体にメセタ硬貨が鈍音を立ててぶつかり
頭を抱えて身を縮める少女の店員にも容赦なくメセタ硬貨が
鈍い衝突音を立ててたたき付けられ
その硬貨を投げる手に一切の容赦や呵責は感じ取られなかった、
「ボケ!ボケ!ボケェェェェェェ!」
もう何発蹴りが入った事だろう動かなくなった二人にまだまだ容赦ない制裁が加えられる
そして周辺の市民やアークスたちには同情の目ではなく嘲笑の表情すら見受けられ
かれらの人望が問うだけ無駄なほど皆無なのが理解できた、
隣のアイテム鑑定ショップのメガネをかけた女性店員すら慣れた調子で
かれらをまったく気にも留めていない、
「ケッ!行くぞ!」
垣屋は声も荒々しく吐き捨てもう一度荒っぽくカウンターを蹴飛ばすと
一行はアイテムラボを後にしてアークスカフェに向かって歩き出した
「ううう・・・旦那しゃま怖いのじゃ~」
「なのじゃー」
ねねとスゥリンはカタカタ震えている
「大丈夫だよぉ~あいつらは人間のクズだから、いずれねねちゃんたちもそうなるよ」
テツもなれっこらしく店員たちに哀れみの感情が一切示されない、珍しく外出し
ついてきているチヒロは複雑な笑顔をしているが内心あの状況が嫌でたまらないのだろう、
二人が無事か心配そうに何度も振り向いている、
アークスカフェに皆でなだれ込むが、あいにくアザナミは留守で知り合いが
いないため全員でテーブルからあふれるくらい料理を頼み盛大に飲み食いをし
明日の火山探索へ向けて英気を養った、
「さっきの人たち・・・って何かしたんですか?む
イフェメラは疑問を研究所の住人に尋ねる、まるで吐き捨てるように彼らの事を
話し始めた、
話によるとさっきのアイテムラボの店員は中年男性がドゥドゥ少女の店員がモニカといい、
10年ほど前から政府の公認を受け今までいくつものアイテムラボがあったが全て閉鎖させられ
一手に装備の強化を請け負うようになったが
わざと失敗して多額の金を巻き上げるため人々の憎しみを買っているのだと、
そしてそれらを一手に請け負うに当たってヴォイドが関わっている事と
資金調達の一環として一手に装備の強化を請負い法外な金額巻き上げているとの事で
そのような構造を作った経緯になんらかの不正が行われた事を話して聞かせたが
お子様3人にはピンときていないようで垣屋はそれを察してその話題を途中で止めて
食事に手を伸ばした、
3人はヴォルドラゴンへの恐怖感が払拭できずにいた
しかし進まなければ先がないのは確かであった、腹をくくるしかない。
今度は3人ではないのだ次こそは・・・・次こそはと心に誓うのであった。
新光暦238年3月22日 午前7時時18分 アークスシップ1番艦フェオ
原生生物研究所
朝が来た、いつもと同じに見える平凡な朝だ、しかしお子様たちには気分が重くなる
そんな朝だ、今日は垣屋たち原生生物研究所の面々に連れられて
火山地帯での調査依頼の消化に出かける日だからだ、
しかもよりによってヴォルドラゴンの棲家の近くで調査をすると言う、
「うっ!わらわは脳卒中なのじゃっ!」
「わらわはリゥマチなのじゃー」
「ほぉそうかそうか・・・ほれっ!」
脳天をはたくことで一瞬にして快癒し予定は滞りなく行われる運びとなった、
各人装備の点検に余念がない、原生生物研究所の垣屋と居候のテツとシンジュクは
いずれも射撃職のため銃の点検と自動弾丸転送システムに異常がないかの確認をしている、
この自動弾丸装填システムとは弾丸の持ち運びによる機動性の低下と
重量の苦痛を緩和する目的で何百年も前に作られたシステムで、弾倉が空になると
アークスの需品部から自動で弾倉や弾丸ポーチに弾が自動に補充されるシステムで
アークスの継続戦闘と補給の負担軽減に大いに貢献している、
原生生物研究所の面々は徹底的な弾幕を張り相手を圧倒する戦法を
得意としている、
「では皆さん行ってらっしゃいませ」
チヒロが笑顔で皆を送り出しアークスゲートへ向かって行った、
キャンプシップでライも合流し簡単な打ち合わせを終わらせアムドゥスキア
火山地帯へとキャンプシップは飛んでいく、
テレパイプが下ろされ一行はアムドゥスキア自由探索エリアへと降り立って行った、
新光暦238年3月22日 午前9時時4分 惑星アムドゥスキア火山地帯
飽きもせず溶岩や火山ガスを吐き続ける不毛の地で垣屋は背中にしょってきた
機材を下ろし火山ガスの採取やら計器をかざして周囲の大気の調査や
オパオパと呼ばれる旧世代の機械生命体を模したマグを遠くに飛ばして
周囲を撮影し大気サンプルを採取して飼い主の手助けをしている
それに留まらず土や植物、岩の間にうごめく虫やらトカゲやら様々なものを採取して
パッケージに詰めて簡易転送システムに放り込んでいく
通信の相手はチヒロらしく垣屋はお子様たちが理解できないような
専門用語を並べ立て、依頼者の学者たちと通信を取り様々な確認を取り合っている
垣屋の簡易端末から入金を知らせるアラームが断続的に鳴り続けている、
原生生物研究所の貴重な収入源のひとつである、
その間もシンジュクはレーダーを注視しだれに言われるまでもなく
周囲を警戒し散発的に飛び出てくるディッグをライフル射程ギリギリ気の距離で
打ち抜いていき遠くに死体の塊が築かれていく、
一方テツは懐に隠し持っていたお菓子をボリボリと食べ包装紙を周囲に投げ散らかしており
育ちが疑われる有様だが司令部からの緊急連絡に備えシンジュクの手が足りない時に備えて
ライフルを取り出しスコープでより遠距離を目視で確認している
レーダーだけに頼り切らない熟練のアークスの基本行動だ、
お子様3人は手持ち無沙汰である、やむなく突っ立ち武器を構えていたが
それに疲れたのかぼんやり棒立ちだ
スゥリンはもらったばかりのアダマンの杖から発する冷気を岩の間にうごめく虫たちに当てて
遊び始めたが程なくして垣屋が奥に進むと言い出したのでダメ押しで髪の毛が癌になったと訴えるが
もうひとつ頭を叩かれるだけであった、
なにせ癌はすでに1000年以上前に医学で克服されドラッグストアで売られている簡単な飲み薬で
治療できる時代になったのだから・・・
「ガキども油断するんじゃないよ!自分の身は自分で守らなきゃな」
シンジュクに注意され急ぎ姿勢を正すがほどなく再びだらだらと3人であった、
垣屋は奥へと進んでいくレーダーマップでは到着地点から奥まで1km程度で
枝道もなければ際立った特殊な地形も見受けられない
ヴォルドラゴンの巣と着地地点が直結しているような物で
まるで試合をするコロッセオを縦に伸ばしたような逃げ場なしの決闘場のような地形である
前に行けば確実にヴォルドラゴンとの対決は避けられない
3人はすくみ足、垣屋たちは警戒のため歩みは平素より遅いが
その勢いにお子様たちのような無様さは感じられない、
そとてレーダーマップはこのエリアの一番奥までを映し出した
全員の通信機に今度はチヒロではなく司令部のオペレーターから入電が入る
「大きな生体反応です注意して下さい」
タイムラグかあるのが当たり前の通信は今よりすこし前に発せられたのだろう
既に地響きが起こり広間の地面の岩が隆起し中から何かが起き上がってきている
「ヴォルちゃんきたね」
シンジュクはライフルからロケットランチャーに持ち替えて発射しようと
弾を装填するが垣屋とテツはそれを止めた、
「お子ちゃまたちのリベンジタイムだねぇ~」
テツはそう言うと3人にヴォルドラゴンへのリベンジを促した
すくみ足でなかなか前に進まない3人だったがライが覚悟を決め
「ねねちゃんスゥリンちゃん行こう!」
グレヴァーンを足に装着し二段にジャンプしてヴォルドラゴンを上から
攻めようと飛び上がり、ねねとスゥリンは火球の直撃を避けるために
左右に分かれたが迷いや恐怖があるため走るのが遅く
客観的に見ても明らかにヴォルドラゴンに気押しされているのは明らかだ、
そしてヴォルドラゴンに刀の帽子が届かんとする距離でヴォルドラゴンは
地面から炎を吹き上げさせ
ねねはすばやく避け、スゥリンは遠巻きから凍結のテクニックバータを
発動させようとしていた、しかしヴォルドラゴンは3人を威嚇するように
大きく口を開けて吼え声を上げるとねねとスゥリンの頭には
火球がぶつかってきた時の恐怖感が蘇り自制心の限界が来たのを自ら感じた
そして次の瞬間
「ううううううわぁぁぁぁぁぁぁ~ぁ~あ」
とねねは叫びアルバヴァストールを放り出し垣屋たちの下へ背中を向けて逃げだし、
スゥリンもこらえきれなくなり
「ギニィャァァァァァァァァァァァァァァァァ」
みっともない悲鳴を上げて後に続いて逃げ出した
「え・・・ちょっと・・・・」
イフェメラはやむなくヴォルドラゴンの注意を自分にひきつけて二人が逃げる時間を
稼ごうとしているがやはり恐怖感から動きがぎこちなくとても長時間持ちこたえられそうにない
「あっちゃあ~最悪だねこれは・・・」
シンジュクはあきれ果ててこちらに向かって走ってくるねねとスゥリンの
首根っこをすれ違い様に掴み逆方向を向かせる、
反対に向けられた視界ではヴォルドラゴンが怒り来るって口から炎を吐き散らしている、
「やっぱダメかぁ・・・もういい!ワシが手本見せるからよく見てろクソガキども!」
垣屋はそう言うとテツもライフルを構えつつ援護を申し出るが垣屋はそれもさえぎった
垣屋は続ける
「いいか!ヴォル公がダーカーに侵食されてるかチェックしろ!されてなければ交渉!
竜族はまともな状態なら誇り高いから隙ありみたいな汚い手は取らん、
もし侵食されてたらその限りではないがな、そん時は叩き潰せ」
そう言うと愛銃の双淡月と呼ばれるまるでショットガンのようなツインマシンガンを
ホルスターから抜くと
「次にやつの弱点を見極めろ!分からなければ端末のサーチを使えよ
こいつの弱点は頭と背中の角と尻尾の突起な!」
そう言いおわらぬうちにぶっ放す、まるでラッシュで拳を叩きつけるような
高速のかまえでマシンガンを乱射するエルダーリベリオンという
フォトンアーツだ、空気を切り裂きフォトンをまとった弾丸は狙い通りに
ヴォルドラゴンの頭と背中の角が粉々に砕け散り苦痛にヴォルドラゴンはのた打ち回るが
ダーカー因子で狂わされているため攻撃本能に刺激され起き上がり突進しようと身構える
「そして相手の攻撃を予習してよく見極める事を忘れんなよ!」
そう言うとフェイントをかまして地面から炎を吹き上げさせたヴォルドラゴンの攻撃を
スタイリッシュロールと呼ばれる回避爆転で避けたと同時に
顔と後ろ足に弾丸を撃ち込むとヴォルドラゴンは耐え切れずに崩れ落ちた、
「そして最後に相手が助かる見込みがあるなら助けてやれ、竜族は敵じゃないからの」
そう言うと虫の息のヴォルドラゴンに近づき折れた頭部の角に手をかざしヴォルドラゴンの体に
フォトンを注入し始めた、
ヴォルドラゴンは体の中のダーカー因子が内部崩壊するに伴う苦痛に声を上げる
垣屋は全員に手招きをしてこちらに来るように指図する、
「おめえらもフォトン注入してやれ助かるかもしれん」
テツと首根っこをシンジュクに掴まれたねねとスゥリン、そしてライは垣屋の元へ
来ると垣屋はありったけのフォトンをヴォルドラゴンの体内に注入するように指示して
良いと言うまで体内のフォトンを注ぎ込みフォトンが尽きたら大気からフォトンを
取り込んで注ぎ続けるように指示をすると
メディカルキットから長めのメスと薬剤を取り出すと太ももに食い込んだ
自分が放った弾丸をドラゴンの血を浴びながら摘出し
スゥリンに傷口にふさがるまでレスタをかけるように指示した
スゥリンはすばやくヴォルドラゴンの傷口をレスタでふさぎ青白いやさしい光を伴う
フォトンを注入し続けた、
「源さんもういいんでない?だいぶ良くなってるみたいだよ」
テツの発言に垣屋は頃合と思いフォトンの注入をやめさせ、アイテムパックからなにやら
小さい玉のようなものを取り出すとそれに向かって耳慣れない言葉で語りかけると
すぐにそれを懐にしまった、
予習に余念のないライはそれが竜族の言葉だと分かり垣屋がヴォルドラゴンを
救うためにコンタクトを取ったのだと気付いた、
まだ身動きが取れないヴォルドラゴンがダーカーに教われないように配慮したものである、
「さて帰るかね、みんな無事でよかったのお疲れさんだとさ」
そして全員に引き上げの合図を出すとキャンプシップからテレポーターが降りてきて
帰還の徒につくことにした、
キャンプシップはアークスシップへと一直線に飛んでいく、船内でねねとスゥリンは
今回の無様な戦いぶりに叱られるの覚悟をしていたのか
追い詰められたサルのように小さく縮こまって身を寄せ合って抱き合っていたが
予想に反して垣屋たちは二人を叱る事はなかった、
もっともシンジュクとテツは3人の腑抜けぶりにあきれ返っていたが、
「逃げたのはよくないがヴォルドラゴンを救うために努力したからの」
二人のやれる限りの努力評価した、
「まぁヴォル公は後回しだね出来る事からやればいい」
シンジュクも無理にヴォルドラゴンにぶつけ続けるのはこの3人には向かないと判断した、
ヴォルドラゴンを倒すのはひとまずは後回しにして後ろについて来させて
鍛錬を積み充分な実力になってから初めて自分たちで倒せばよいと考えを切り替えたか、
そして垣屋はお子様たちに言う
「いいか・アークスは殺し屋じゃないんだ無意味な戦いを避けてなんぼ、
どんな状況でも相手への敬意は忘れちゃいかん、特に竜族みたいな誇り高い種族にはの」
「まぁそれも分からない殺し屋もごまんといるけどね」
テツは付け加えるように言った、その言葉からは無益な殺しを楽しむ
まるで無抵抗な動物を殺して楽しむ狩猟者のような考えのアークスに対する
軽蔑や怒りが込められていた、
無理をするより生き残ることが大切、
垣屋はよく他人から身内に甘いと言われる所以である、それが正しいかどうかは分からないが
そういう性分なのだ、そうして何人ものアークスを前線に送り食事や暮らしの面倒を見て
見送ってきた
かくいうアザナミも駆け出しの頃、一時は垣屋の元で居候をしていた時期もあったのだ、
「という訳で報酬も入ったし今夜は焼肉にでもするかね」
垣屋の提案に皆が賛成し垣屋はどこかへ連絡をして肉の調達を支持し始めた、
「ん?ねねちゃんイフェメラちゃんなにか通信がきてるのじゃー」
手持ち無沙汰になったスゥリンは自分の端末を見てみると惑星リリーパへの地上エリアへの
探索許可書とサブクラス使用許可書が送付されている、ライとねねの端末も同様だ
戦わずして得るとでも言うのだろう、しかし3人は今回もヴォルドラゴンに
勝つことは出来なかった、壁は越えられていない、それを超えるための鍛錬の日々は
場所を変えて続いていく、そしてこれからもいくつもの壁が立ちはだかるであろうが
一人ではなく皆で超えて行けるそういう安心感が3人の心を温かくも熱くもするのであった。