シンジュクが雄たけびを上げると同時に研究所の面々は武器を構えヴォイド兵の小隊と対峙する
「上等だコラァァァァァァァ!」
ヴォイドの小隊長は隊員たちにハンドサインで撃てと指示を出し自らも
アサルトライフルの引き金を引いた、
敵の小隊はみなロードローラーの開いているスペースに乗り上から撃ち下ろす姿勢で
研究所の面々を射殺しようと狙いを定めた、
ヴォイド兵が乗っている重機は全部で5台残りの5台はショベルカーや極地用の
トレーラーにユニック車などで建設会社の作業員しか乗っておらず
戦闘が開始されたと見るやギヤをバックに入れ後退して行った、
「そんでええ分かってるじゃねぇか」
特に相手からも弱いと目されたお子様たちに容赦ない集中射撃が行われ
お子様三人はそれぞれがかわしたりガードして弾き返すのが精一杯で
敵の弾が容赦なく撃ちこまれ続けている
通常の弾丸ではなくヴォイド小隊が装備しているアサルトライフルは
エッジプレイサーと呼ばれる特殊な銃で弾丸ではなく刃物を飛ばすという
特殊な代物だ、コストと補給の問題でアークスでは使用されなくなった代物だが
ヴォイドでは運用できるほど潤沢な資材と補給網が整っているのだろう
ただしなぜ弾が刃物でなければならないのかは永遠の謎であった、
「ううう・・・いっぱい飛んでくるのじゃ」
ねねは最初こそカウンターで飛んでくる刃物を打ち落としていたが疲労が
重なりかろうじて防ぐのが精一杯だ飛んでくる刃物が体をかすめて
所々から軽い出血を起こし顔をゆがめて必死に耐えている、
「ギニャッ!ギニャッ!ギニャッ!」
スゥリンはミラージュエスケープと持ち前のすばしっこさで
逃げ回るのがやっとだ、
イフェメラは二段ジャンプで飛び上がり上空から奇襲をかけようとしたが右肩と左足に
撃ち出された刃を受けバランスを崩し地面に叩きつけられた、
それを横目に見ていたベテラン3人はお子様たちに手に余ると瞬時に判断して
3方に走って分かれた、
垣屋が正面シンジュクが右テツが左で左右の二人はそれぞれにライフルとランチャーで
相手のヘイトを稼ぐため散発的に銃撃を加える
ヴォイド兵のうち4人ほどが被弾し重機の上でうつぶせになりうめいているが
敵の飛ばす刃物は間断なく続いている、
垣屋は正面に仁王立ちとなりお子様たちに下がるようハンドサインを送り
自分に射撃の注意が行くように仕向け3人が後ろに下がるよう時間を稼ぐ
ねねとスゥリンは体に撃ち出されたエッジプレイサーの刃が肩と足に刺さった
イフェメラを両脇で支えて走り岩陰へと姿を消した
「ジジイ調子こいてんじゃねーぞ!ハリネズミにしてやらぁぁぁぁぁぁ!」
怒号の後に無数の刃が垣屋めがけて飛んでくる、垣屋は口元を少しゆがめてにやけた後に
双淡月の引き金を引いた、
銃を水平に構え狙いに的確に銃口を向けて弾を撃ちだすインフィニティアと呼ばれる
フォトンアーツだ、水平に軌道を描き撃ち出された弾丸はエッジプレイサーから撃ち出された
刃物を的確に捉え空中で火花を散らし刃を打ち落としていく、
「なにやってんだもっと狙え!」「このジジイぶっころしたらぁぁぁぁぁぁ!」
さらにヴォイド兵は刃物を撃ち出すが同じ結果であった
上空で弾き出された刃は砂漠の砂や集落のガラクタの中に落ち
いっこうに目標の老人に届かず敵は焦り無駄弾を撃ち続けるだけであった
「おい・クソ野郎どもちゃんと狙えよ!遊んでんのかね?」
垣屋は余裕の表情でへらへらと笑っている、そればかりかウォーターパックの
ストローを伸ばし水を口に含み始めた、
あきらかに実力の差が窺い知れ顔を真っ赤にした敵兵たちはさらに弾を撃ち続けるが
補給が追いつかないとの警告アラームが鳴っている事に気付いている者はまだいないようだ、
「はい・おいしかったとさ」
垣屋は敵の刃をスタイリッシュロールでかわすとウオーターパックをしまいさらに挑発を続ける
魚鱗の陣にロードローラーを並べていたヴォイド兵は埒が明かないと見え
小隊長がローラーでひき殺せと命令を出し一斉にアクセルを吹かし
砂塵を吹き上げながら突進してくる、
「そろそろお遊びもこれくらいにしてやるかね、活動時間も迫ってるしのぉ」
垣屋は動じる事無く重機の操縦席まで飛び乗る足がかりできる場所を目で追い
そして姿を消した、
「へっクソジジイ死にやがったか!たわいねぇなヒャッハハハハハ」
ヴォイドの隊長は少し前進したところで垣屋の姿が見えなくなり
思い通り轢き殺せたと思って満足の表情を浮かべるが
5台もローラーが走っているにしては静かで砂埃が少ないなと感づいた、
「ん?なんでこんなに静かなんだ?」
恐る恐る後ろを振り返ってみると考えたくない光景が広がっている
陣形の後ろ2両は既に操縦者と横乗りしていた兵は地面に叩き落され
シンジュクが回り込んだ左側の重機はランチャーをうけたらしく黒煙を上げて
斜めに止まっている、
もう一台はシンジュクがすでに奪い取って残りの車両に向かって
突進の真っ最中だ、
そしてテツはすでに残った三台の重機と垣屋の後ろに回りこんでいて
左右にすばやく移動しているがあまりに早すぎてヴォイド兵は何をしているか
理解できていない、垣屋は走ってテツが何かをしたところに向かって走り
ヴォイドの重機は轢き殺すしか勝てる見込みを見出せず一縷の望みで突進する
「畜生!畜生なめやがってこっちがまだまだ有利だ轢き殺す!」
そして垣屋はテツがいたところから3mほど離れたところで左にダイブロールをして反れ
突っ込んできた右側のローラー車は突然下からの大きな爆発音を聞いたかと思うと
大きく棹立ちになってから地面に叩きつけられ
「何だよ・・・なにがあっ・・・」
操縦者と横乗りの兵士は振り落とされ言葉を発し切るまでもなく地面に叩きつけられ
昏倒した、
テツはローラーの進路上にアッパーとラップと呼ばれるレンジャー用の
携帯トラップを手持ちのあらん限りの数を仕掛けて砂で隠し
垣屋はわざとそこへ挑発して誘い込んでいたのだ、3m手前なら
もうブレーキを踏んでも手遅れで完全な頭脳プレイであった、
「ちょろいね源さん!」
「もうちょっと手加減して差し上げろ娯楽はじっくり楽しむもんだ!」
残るは二台、垣屋とテツは相手を見くびり走りながら次はどうやって潰してやろうかと
話しゲラゲラ笑いながら走っている、ヴォイド兵たちは完全に舐められた事に
頭に血が上りふたりを追いかけるのに夢中だ、
一方のお子様3人はライの体から刺さった刃物を抜き取るとイフェメラは
痛みに耐えるつもりが少しだけうめき声を上げた
傷口から出血し乾いた砂地へと吸い込まれていく、
「すぐになおすのじゃー」
スゥリンは慌てる事無くフォトンを強めに練ってレスタを発動させ
の傷を即座にふさいだが無理しないようにと押し留め
ねねと共に戦線へと復帰した、二人は大切な友達を傷つけた敵に怒りを込めて
残る二台のローラーに向かって走って行った、
「おい、何なんだよあいつらは!このままだとやられる逃げるか・・・
それとも一か八かでやつらを潰すか・・・」
ヴォイド小隊長は焦っていた、残る重機は二台で戦闘にに参加している兵士は
自分を含めて7人、相手はベテランで実力差は歴然だ
射撃がまともに通らず轢き殺そうにも余裕でもてあそばれているが
勝てる見込みは相手を轢くしかない、しかし時間的余裕もない
後ろからはかつてテラに存在したエヂプトのスフィンクスのような頭をした
見るからにまともでなさそうな瞳孔のない白目の女キャストが
自分たちのローラーを奪って追いかけ笑いながらランチャーをぶっ放している、
それを避けるので精一杯だ、
もうこのまま逃げるしかないしかしそれも適うまい
男には負けると分かっていてもやらねばならない時があり今がその時である、
ねねとスゥリンは状況を把握し左側のローラー車を行動不能にしようと武器を抜き
操縦席に飛び上がろうとするが車高がゆう5mはありアークスの跳躍力を持ってしても
そこまで飛び上がることは出来ず2段ジャンプが可能なイフェメラの姿はなく
もう少し安静にすべきで二人には対する術がない、
横乗りの兵士のエッジプレイサーの無数の刃が二人を襲った、
テツと垣屋は二人でははやり難しいかと思いマシンガンとライフルの銃口を
向けるが岩陰から巨大な塊が飛び出してきてそれをさえぎった
「もうお前らにはうんざりだ!やれるものならやってみろよ!」
新手かと思い垣屋とテツは銃口をそちらに向けたが砂塵が
重機に巻き起こされた風に飛ばされ操縦者の姿が見えるとそれを反らした、
建設会社の作業員たちが戻ってきたのだ、口で言わずとも自分たちの良心に
従いできる事をやろうという男気のなせる業である、
ショベルカーに乗った作業員はアームを旋回させるとローラー車の
横腹に思い切り殴りつけ振動でヴォイド兵たちはバランスを取ろうと必死になり
突然予想外の裏切りに動揺を隠せなかった、
隙が出来た
作業員はショベルカーのアームを伸ばし車内マイクでねねとスゥリンに話しかける
「ショベルに乗ってくれ車上まで届けてやるよ!」
アームのショベルがふたりに差し伸ばされふたりはショベルの中に入ると
作業員はアームを伸ばせる限界まで持ち上げた、
ねねとスゥリンは互いに目配せをして伸びきったアームから
ローラー車に飛び乗り動揺しているヴォイド兵に次々と峰打ちを食らわせ
地面に蹴り落としていく、
残るは1台小隊長が乗っている車両のみで錯乱した残りの兵士は無駄に
エッジプレイサーを乱射するが後の祭り
そうこうしているうちに建設会社の作業員のほかの重機が追いつき
徒歩の作業員がヴォイドノ兵士から奪い取ったエッジプレイサーをかまえ
残りの1台をショベルカーやダンプとユニック車で取り囲んでいく、
武装解除されたヴォイド兵は作業用のトラロープで縛られダンプの
荷台に乱雑に積み込まれ漁港で捕獲された物の廃棄処分のためゴミ処理場に運ばれる
要らない魚の如く惨めに蠢きわめき散らしている、無駄な手間を省いた段取りの利いた
対処である、
残る一台は完全に戦意を喪失した最後の一台に乗っていた3人はパニックに陥り
エンストを起こしてようやく最後のローラー車が止まった
研究所の面々と今までの恨みと義侠心に目覚めた作業員が
自分たちの使っていたエッジプレイサーを向け、いくつもの銃口と武器が隙間なく
向けられている、
降伏しようそうしよう、3人は武器を捨てて手を上げた
後は許しを乞うてなんとか命をつなごう、それが彼らの最後の生きる望みだった
しかし作業員も車両もなぜか後ろだけは
隙間を作って包囲しているなぜだろう・・・不思議に思うが動転している
3人が考える限界はそこまでだった
後ろからローラー車がうなりをあげて突進してくる、奪われた一両だ
それを操るのはシンジュクですでにハイになっているようだ
か弱い老人や子供が見たらショック死するのではなかろうかという
恐ろしい形相でゲラゲラ笑いながら速度を落とさず突進してくる
「うらぁぁぁぁぁぁぁぁ!車上からぁぁぁぁ飛んで・見せろやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
どうやら追突させる気らしいし止めるようお願いするにはいささか時間が足りなさそうだ
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
3人の兵士は恐怖で叫び声を上げるがもうどうする事も出来ない
激しい衝突音と吹き上げる砂塵そして強烈な衝撃が3人の兵士とローラーを襲った
衝撃で3人は前に飛ばされ5mしたの地面にうつぶせに叩きつけられた、
見事な着地をして顔に砂が埋まったヴォイドの隊長の後頭部を
垣屋は思い切り踏みつけた、
「おぶっ・ぐるじぃぐるじいってばよぉぉぉぉ」
息が出来ないかれは必死でもがく
ヴォイド特別行動隊の一個小隊は悪事の報いを受ける時がやってきたのである。
ヴォイド特別行動隊によるリリーパ集落の悪の襲撃は阻止され武装解除させられた
兵士たちは垣屋の指示で集落の外れに移動させられた
それはリリーパ族の集落にこれ以上のダメージを与えないためである、
そして以外に神経質な彼らに過剰なストレスによる疾患をもたらさない為の
配慮でもあった、
敵の隊長とその横にいた兵士は歩かされ、それより先に武装解除された
兵士たちは工事用のトラロープなどありあわせの物で後ろ手に縛られ
武器とユニットを取り外されてダンプの荷台に詰め込まれている
「縄解けこらぁ!」
「お前こんな事してただで済むと思ってんのかよ!」
「ぶっ殺すぞダボがぁ」
自分の立場をわきまえず出せだの覚えてろだのとのたまい非常に活きが良く騒がしい、
「よっしゃゴミはここで降ろしての」
垣屋がここで下ろすようにとダンプの運転手に指示を出すと運転手は
ダンプを回転させてバックで指示を受けた場所に荷台の尻を付け
二台をリフトアップさせた、
荷台が棹立ちになるとヴォイド兵たちはスライドして地面に落ちていく
二台から滑り降りる摩擦熱でヴォイド兵は悲鳴を上げるがだれも哀れむ者はいない、
隊長とその周りにいた部下たち、そして汚いヴォイド兵の山を原生生物研究所の面々と
建設会社の作業員が鹵獲した武器を突きつけて取り囲んでいる、
「整列しろコラァ!」
さっきの威勢はどこへやらシンジュクが怒鳴ると命の惜しいヴォイド兵たちは
手馴れた態で整列をした、
自分たちを襲った相手が無抵抗になって助かったと理解したのか
集落のあちこちからリリーパ族がわらわらと飛び出して近寄ってくる、
「じゃこいつらのズボンとパンツ全部脱がせちゃって」
「全部ですか?」
「そうそう全部」
そしてシンジュクとテツが手隙の作業員を呼びヴォイド兵のズボンと下着を
脱がすように指示をする、
恨み骨髄に達する作業員は面白がってズボンと下着を脱がせてちかくの岩陰に
それらを放り投げた、
「しかしなぜこんな事を?」
作業員の一人がなぜそうするのかとテツとシンジュクに尋ねる
「簡単だよフルーチンにして相手の反抗心と戦意をそぐ!それにおもしれーだろ?」
「なるほどそうですか!たしかに面白いですねいい気味です」
作業員は説明に満足すると作業を終えて後ろに下がった、
フルーチンにされ腕は拘束され周囲に銃を持った恨みに燃える作業員と研究所の面々
そして装備が解除されていて逃げ切れたとしても熱中症で死ぬか
機甲種かダーカーに襲われて死ぬのが落ちだろう
そして何よりも救援信号を戦闘で不利になってからヴォイド司令部に
送り続けているがなんの反応もない、通信が切られているのだ
もはや逃げることはままならず見捨てられた彼らは従容と裁きを受けるしかないのである、
包囲と整列が完了したことに垣屋たちは満足げな表情を見せシンジュクがうばった
ローラーに飛び乗ると整列したヴォイド兵の手前に停止させた、
「ではこれから野戦裁判を開始するのぉ」
垣屋は厳かに裁判の開始を宣言するがアークスの司令部から通信が入る
「垣屋少将相当官、勝手な事は慎め!、それは政府司法の仕事・・・」
ヒルダは垣屋の越権行為を止めようと勧告を行っている、無論ヒルダの言う事こそが
正論であるが垣屋は何かを確信して耳を貸すつもりはなさそうだ、
「傍聴人は静粛にぃ~!」
垣屋はそう言うとローラー車の運転席にあった工具ツールからハンマーを取り出し
車体を2度叩いた、
「やめろ!垣屋!」
ヒルダはあきらめず勧告を続ける、オペレーターとしての勤めが長いヒルダは
過去に何かの前例がありそれを知っているからこそ必死に止めようと
しているのだろう、
「はいはい静粛にのヒルダちゃん」
垣屋の指示で全員が通信機の音声のボリュームをミュートにしヒルダの勧告は
熱砂に水滴の如くかき消されたのである、
「罪状の認否ぃ~被告人ヴォイド戦闘隊と建設会社エヴァンエマール社作業員は
リリーパ族保護区に於いてリリーパ族居住区の破壊活動を行い」
「まだ壊してねぇよ!ざけんなボケェ!」
ヴォイド兵の一人が怒鳴ると垣屋はローラー車の上から吼えたヴォイド兵のすれすれに
マシンガンの弾を放ち
「被告人は静粛に! 無断で保護区での開発を行おうとした罪を認めるか!」
「ひぃっ!認めます認めますからやめてっ!」
ヴォイド兵は無駄と悟って全員で大声で認めます!と罪状を認めた
「エヴァンエマール社社員の諸君、キミ等も仕方ないとは言え協力したのは事実である」
垣屋はそう言うと作業員たちは自分たちの過去にした行為や事実に無言でうつむいた
彼らが善良な人物たちであることは明白で家族のために脅されて仕方なく
従っていたのは垣屋たちも察することが出来た垣屋はそれを汲んで
「エヴァンエマール社の作業員は有罪!」
そう口走るとねねとスゥリンが叫ぶ
「わらわを助けてくれたのじゃ!旦那しゃま許してあげて欲しいのじゃ!」
「そうなのじゃーかわいそうなのじゃーお願いなのじゃー」
二人は戦いに手助けしてくれた作業員を救おうと垣屋に頼み込む、
作業員の責任者は二人にあきらめたように肩を落とし言った
「ありがとうお嬢ちゃん、確かに言うとおりだ俺たちは罪を償わなきゃならない
覚悟は出来てるよ・・・」
ねねとスゥリンはそれを聞くと涙目になって垣屋に助けて欲しいとお願いする
垣屋は表情を変えず
「陪審員は静粛に!エヴァンエマール社作業員は有罪!判決!罰金の物納として
ローラー車3台の没収とする!」
そういうとねねとスゥリンにむかってにこりと微笑んだ、大岡裁きのつもりである
「だんなしゃまありがとうなのじゃ!」
「よかったのじゃーやったのじゃー」
「おねえちゃんたちほんとにありがとうな!」
ねねとスゥリンは作業員たちと手を取り喜び合った
作業員たちは覚悟を決めていたが助かった事を知り感謝の言葉を述べる
「あんたらの社長にはワシからもちゃ~んと話しつけとくから気ぃつけて帰っての」
そう言うと垣屋は端末を操作して作業員たちの目の前にキンキンに冷えた
ビールやジュースの入ったクーラーボックスを転送した、
「ごくろうさん一杯やってくれや」
「ありがたい!いただきます!」
作業員たちはのどを潤し感謝すると
「では私たちはこれで・・・色々とすいませんでした、失礼します」
と丁寧に頭を下げるとそれぞれ乗ってきた車両にそれぞれ分乗し
ベース基地へと車輌を走らせ戻って行った、
そのそばで作業員たちがマナー悪く捨てて行った缶をリリーパ族が拾いわずかに
残った中身を口に流し込むと背中に背負ったかごに投げ込むと
自分たちを殺そうとしたヴォイド兵に厳しい視線を向けた、
「おい!おれたちもさっさと帰らせろ!おれたちヴォイドにこんな事して
ただで済むと思ってんのかぁ!」
「済むと・おもっとるよ」
まだ減らず口を叩く被告人に再び垣屋のマシンガンから弾が放たれ被告人への静粛が求められた、
「さて・てめえらの判決だが・・・みんなどうすればいいかねぇ~?」
垣屋は研究所の面々に尋ねた
シンジュクは当然死刑と答えテツも同調だ、ねねとスゥリンも死刑とは言わないが
さすがに作業員たちのようにかばう気はさらさらなさそうだ、
しかし傷が癒え元通りに立ち上がったイフェメラは垣屋に異議を唱える
「博士・・・かわいそうです助けてあげて下さい」
彼は自分を傷つけた相手でも改心してくれると信じ唯一助命嘆願をした
無神経なフルーチンヴォイド兵は喝采を送り同情を誘い味方を増やそうと必死である、
「なんだって?砂嵐がうるさくてよく聞こえんのだがのぉ~
じゃ結審するから死刑と思う人は手を挙げてくれ~ぃ」
垣屋が陪審員たる仲間たちに判決を促すとシンジュクとテツは手を上げ
ねねとスゥリンはリリーパ族の一匹を捕まえてバンザイをさせる
イフェメラは彼らを助けたいと思い手を上げず助命を続けたが
やおらシンジュクが近づきやさしく微笑むとイフェメラは助命に手を貸してくれるの
だろうと安堵の表情を見せた、その震える手をやさしくとると勢い良く真上に差し上げた
残るイフェメラが死刑に同調することで満場一致で死刑が確定した
その旨をヴォイド兵たちに裁判長垣屋は宣告する、
「ヴォイド戦闘部隊の兵士諸君はオラクル法に則り有罪で死刑!
言い残す事とか言い訳はあるかあるかねぇ?」
垣屋とシンジュクとテツは笑顔だなんの躊躇も感じられない最初からそのつもりだったのだ
「そんなぁ!俺たちは上からの命令で仕方なくやっただけだし、
そう!ふるさとの歌みたいにちょっとウサギちゃんと追いかけっこしてただけですぜ旦那」
命がかかっている分必死に作り笑いを浮かべるヴォイド小隊の面々
ただてさえ卑しく野卑な顔立ちが輝きを見せる瞬間である、
「ふるさとか・・・2000年以上歌い継がれるいい歌だよな・・・歌って見せなよ
もしかしたら裁判長の気が変わるかもしれないよ」
シンジュクがいたずらっぽく笑って見せる
命が助かるかもしれない絶好の機会をかれらは見逃さなかった
「おい!てめえら歌うぞ!裁判長様の心を打つようにな!」
全員暑さを忘れていた、それどころではない命がかかっているのだから
びしっと姿勢を正し、せいのと小隊長が合図を合唱が始まった
♪うさぎ(リリーパ族)おいひしかの山やま♪
♪小鮒釣こぶなつりしかの川ぁ~・・・♪
「フル」ーチンのヴォイド兵たちが歌う野趣あふれる「ふる」さとに皆感慨深げだ
フルふるである、
♪ゆめは今いまも巡めぐりて・・・♪
「おいシンジュクちゃんよぉ~どう思うこいつらの歌」
垣屋はシンジュクに尋ねた
「全然ダメふるさとへの愛を感じられない!やっぱ死刑だね」
テツにもたずねる
「テツっちやんどうかね、・・・そっか死刑か」
誘導するような問いかけにテツもすでに決めていたらしく
「だぁ~ねぇ~、いいかげんあの馬鹿面みてるのも飽きてきたよ」
と短く答えバイザーの中の目を強く光らせてライフルに弾を装填している
「じゃ執行するかねぇ」
♪忘わすれ難がたきふぅ~るぅ~さぁ・・・・♪
最後の「と」を発すると同時に垣屋はロードローラのアクセルペダルを
踏み潰すがのような勢いでガツンと音を立て思い切り踏み込んだ
当然の如くローラー車は前進する与えられた指示を時として残酷なまでに忠実に
行使するそれが作業機械たるかれらの矜持と言えるだろう、
最前列のヴォイド兵が棘の付いたローラーに巻き込まれ
「とわにっ!」「ぷげぇぇぇぇぇぇ」
言葉にならぬ言葉を発してローラーの渦に消えていく血しぶきと袋が破裂するような音
彼らのつまらない一生が幕を閉じた瞬間である、
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁたずけでたすけてぇぇぇぇ」
「お願いですなんでもしますから!」
「じゃあ死んで見せろよクズ!」
2列目からの兵士はその状況に恐怖して背中を向けて走り出す、むだと分かっていても
走って逃げるしかない、
シンジュクの怒鳴り声を背に両手を後ろ手に縛られフルーチンで
石英質がきらめく鳴き砂の砂漠を駆ける後ろからは自分たちがかつて多くのリリーパ族や
オラクルの民を共に迫害してきたかつての相棒がうなりをあげて追いかけてくる、
彼らとローラーに友情など最初からなかったのだ、
運転席に裁判長、左右のプレートにはテツとシンジュクが乗りローラーの稼動範囲から
左右に外れたヴォイド兵を狙い撃ちにしている
左右に展開して逃げることも叶わない彼らの絶叫と鳴き声がこだまする
お子様3人とリリーパ族たちはその様を遠くから眺めるだけだ
眺めると言うより呆然としていると言っていいだろう
いままで漫画や映画の世界でしか見られなかった風景が今目の前で
信実の迫力をもって迫ってきているのだ、
そしてかれらの精神世界に妖精さんが舞い降りて皆を夢の世界にいざなう
極度のショックが幻想の世界をかもし出しているのだ、現実逃避である、
ローラー車がうなりを上げ一人また一人とヴォイド兵が踏み潰されていく
たくさんの汚い尻を目で追いながらローラー車は疾走する
普段の手入れが行き届いているからそこの技で
「ねすにぃぃぃぃぃぃぃ!」「もぉっもくぁぁぁぁぁぁ!」
かれらの断末魔が遠くまでこだまして意識がはっきりしているイフェメラは耳をふさぎ
体を震わせている
「ごめんなさい・・・助けてあげられなくてごめんなさい・・・」
このまま続けば気を失うかもしれない、しかし始まった処刑は留まるところを知らなかった
イフェメラへの試練まさに試練であった、
地獄の疾走はまだ続くシンジュクは運転している垣屋に
「なぁ源さん」
「はい・シンジュク君」
「一機だけやらせてよ一機でいいからさぁ~」
どうやら自分が運転したいようだ
「一機しかないけどねぇ~」
鉄は突っ込みを入れながらも楽しそうだ
「ほいよ・しっかり轢いて差しあげろあいつら求めてやがるからよ」
新宿と垣屋は持ち場を変わり疾走を続ける
地獄の疾走がいつまで続いただろうかついにヴォイド兵は最後の一人になり
風化岩まで追い詰められローラー車はその最後の一人のギリギリ寸前で停車した、
「ひぃっひぎぃぃぃぃぃ」
恐怖で惨めな悲鳴を上げ下腹部からリリーパでは貴重な水分を無駄に放水し続ける
彼こそ最初に威勢が良かった小隊長ガッキーノ様であった、
3人は銃を構え垣屋はスガッキーノ様に怒鳴り声を上げる
「帰ったらてめぇの偉い連中に伝えろ!アークスとオラクル政府はおまえらの勝手は絶対許さん!
アークスとオラクル政府はてめぇらヴォイドに宣戦を布告する!」
と言い放った、スガッキーノ様は自分だけが助かったことに安堵し後ろ手に縛られた
フルーチンスタイルで遠くのベース基地めがけて何度もまろびつつ走り去って行った、
そのシルエットは通称「チ●コロボ」とあだ名されているシグノガンにも
似てるなと思わせる物があった、
すでに昼近く日も上がったリリーパは時として気温が70℃を超える
彼が生きて帰れる保障などどこにもなく皆知る由もなかった、
垣屋は司令部との通信機の音声ボリュームを戻す
「悪いねヒルダさんちょっと砂嵐が酷くってさぁ通信ができなかったよ」
シンジュクが鬼女さながらの顔で大笑いしヒルダはようやく通信の音量が戻った事に気付いた
「・・・・何て事をしてくれたんだ馬鹿者め・・・・後でどうなっても
知ら・・・ぶふっぶっはっは・・・」
めずらしくヒルダの口から笑い声が漏れ聞こえ司令部の他のオペレーターも
一部始終を見ていたらしく笑い声が止まらないようだ、
政治的な面から常にヴォイドに押さえつけられ不満や憎しみがたまっていたのだ
「心配するなよぉ~非合法な事が世に知られればヴォイドとて思うままに出来ん
泣き寝入りするのを見越しての事よぉ、じゃ・帰還するからの」
垣屋はシンジュクとテツに残り2台のローラーの操縦を任せ
チヒロに通信を入れた
「どうされましたか博士?」
「チヒロや悪いがロードローラーが手に入ったからの小型でいいから輸送機を
チャーターしてこっちによこしてくれの」
「はい了解しました博士、だいぶお暑いようですね無事に戻ってきてくださいね」
手短に通信を終わらせお子様3人をそれぞれの車輌に乗せるとリリーパたちに近づき
「怖かったよのぉすまんかったのぉ、お詫びじゃよみんなで食べての」
そう言うと端末から大量のフルーツを注文しその場に転送させて
それを山になるまでリリーパ族の前に積み上げ手渡した
「りぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
砂漠で瑞々しい果物は滅多に手に入らず甘い物に目がないリリーパ族たちには
最高の贈り物である、リリーパ族は垣屋に抱きついて喜び
他のリリーパ族もフルーツの山めがけて走り寄って来る、
ローラー車で去っていく垣屋たちをリリーパ族たちは手を振って見送った、
帰途に着く垣屋たちは正義が示せた事への喜びと3台もの最新型のローラー車を
手に入れ満悦である、1台を研究所の備品としてあとの2台を売り飛ばして儲けようと言う
算段のようだ
そこに司令部から通信が入る、ブリギッタからだ
「垣屋少将相当官殿さきほどはありがとうございました」
「なぁにあいつらが気に食わんかっただけよ、家族の事も心配しなくてええよ」
ブリギッタを安心させるために垣屋は言った
「垣屋少将相当官殿・・・・」
ブリギッタはなにか遠慮気味に言いにくそうに話している
「ああ・あれは便宜的なモンだから少将相当官はもう言わなくてええんよ、で・何かねぇ」
垣屋はまだ心配そうならさらに安心させようと心を砕くがブリギッタは言葉を続けた
「・・・ゼルシウスを回収してから帰還してください・・・」