PSO2水滸伝傍ら(かたわら)の群星   作:垣屋越前守

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悪を挫き黒き鋏を打ち砕く

 

新光暦238年4月1日 午後12時05時分 アークスシップ1番艦フェオ

原生生物研究所

 

ヴォイド特別行動隊所属スガッキーノ様小隊の悪を挫いた正義の原生生物研究所の面々は

ねねとスゥリンとイフェメラの体力に限界が来ていると見て

先に3人にキャンプシップへ戻るように指示を出した、

 

「あづいのじゃーさきにかえるのじゃー」

 

「キャンプシップでみんなでアイス食べるのじゃっ!」

 

3人はテレパイプを投げてその中へ入り先にキャンプシップへと戻って行った、

ブリギッタの指摘に従いゼルシウス鉱石を採取しにベテラン3人は今来た道を引き返した、

 

「さって探すとなるとめんどいのよなゼルシウスちゃんはよ」

 

鉱石探しは難航を極めると思われたが、遠くからみなれた耳の長い影が

短い足で走り寄ってくる、

 

「リリーパ族がきたね」

 

テツがいちはやく知らせると垣屋はなにやら思いついたようでにやりと笑っている、

 

「りっりっ!」

 

愛くるしい黒い目でリリーパ族たちは垣屋たちを歓呼をもって迎えた

垣屋は翻訳システムを利用してリリーパ族たちに話し始めた

 

「おめぇたちよ、ほら・こういう石ってどっかで見なかったか?ワシらに

くれたらおいしい物もっとあげちゃうけどのぉ~」

 

おいしいものと聞いてリリーパ族は浮き足立ち翻訳機からかれらの言葉が

訳されて耳元へ届く

 

「それはゴミりりっ、こんなゴミがほしいりり?たくさんあるからあげるりり

ついてくるりり」

 

リリーパ族にいざなわれ先ほどの集落の裏手にある窪地に到着した

 

「おっとここで通信にジャミングいれとけの」

 

垣屋が指示してシンジュクとテツは再び通信障害を装った

その端に青白く光る石が積み上げられている

 

「ゼルシウスがこんなにまとめてとは景気がいいね、任務速攻終了じゃん」

 

シンジュクも面倒にならなくて満悦した顔で鉱石を拾い始めた、

 

「ありがとよワシらにとっては貴重なんじゃよ、そうじゃおめえたち

これ見つけたらワシらのために取っておいてくれんかの?そしたらおいしい物と

交換しようじゃないか、まずはこの鉱石のお礼じゃな」

 

垣屋はただでもらうのに抵抗があったのか、端末より保存の利くドライフルーツや

ハチミツを大型車輌コンテナ一杯分ほど注文してその場に転送させリリーパ族に振舞った、

日持ちのするそれらならばリリーパたちが当分の間毎日楽しむ事が出来るだろう、

 

「りりっ!こんなにたくさんうれしいりりっ!いくらでもひろうりりっ!」

 

「頼むぜそれと近くの連中にあったら同じ事を伝えてくれの、お礼はたっぷり

するからよ」

 

「わかったりり!ありがとりりっ!」

 

ゼルシウス鉱石はそれだけの価値がありいくらでも需要がある

そして横流しルートなら言い値で売れる金のなる木である

 

「源さんほんと抜け目ないねぇ~」

 

「そらそうさおめえら食わすためにひっしなんじゃよ・ワシは」

 

今回はゼルシウスの確保先を見つけ最新型のスパイク付きロードローラーを

3台鹵獲したのだ、たかだかドライフルーツやハチミツを車輌コンテナ一杯分渡した所で

痛くもかゆくもないのである、

集落全体で諸手を挙げて喜ぶリリーパ、彼らにとって甘い物は水と同じかそれ以上の

宝物である、彼らの歓喜は制御が利かないくらいたいそうな物で

今までそんなに大量の甘い物を見たことがないリリーパ族の長老は引き付けを起こして

今にも命の灯火が消えそうである、

これで彼らとの友好関係はゆるぎないものとなったであろう、

リリーパ族が地表を手で掘ってくる程度なら過剰な環境破壊にならず

永続的な物になるだろう、

 

そして垣屋は指定された量だけを司令部に転送すると残った大半の土嚢袋に入った

ゼルシウス鉱石をそっとアイテムパックにしまって帰路に着いた、

 

「ほい・ジャミング解除」

 

この鉱石もあとで闇ルートに横流ししてさらなる収入が見込まれるのは間違いがない、

この確保ルートは司令部にも内緒である正義に厳格な原生生物研究所ではあるが

そこまで馬鹿でお人好しではないのであった、

若い学者時代から研究費の捻出にあくどい、いや努力の正当な取引を幾度も同じような事を

繰り返してきた老学者の面目躍如といった所である、

そしてチャーターした輸送機が到着してロードローラーを積み込むと

先にキャンプシップに戻っていたお子様と合流してオラクルへと帰還して行った、

 

新光暦238年4月1日 午後18時23時分 アークスシップ1番艦フェオ

原生生物研究所

 

「さぁ・ぱーっと焼肉しようのみんなしっかり食えよ!」

 

「やったのじゃー」

 

「イフェメラちゃんどうした?」

 

憔悴したイフェメラにシンジュクが声をかける

 

「すいません・・・僕・・・今日は疲れたので帰ります・・・」

 

「そうか・・・泊まって行ってもええんじゃぞ?」

 

垣屋もそれに気付きすぐに休めるようにと気を利かすが

 

「いえ・・・大丈夫です、それじゃお先に失礼します・・・」

 

アークスシップに帰還するとイフェメラは困憊したのか垣屋たちの誘いを断り

とぼとぼとどことも知れない家路について行った、残ったメンバーは焼肉である、

 

翌日になってもアークスの司令部と上層部からはなんのお咎めや事情の説明を

求める通達は来なかった、これも予想通りである

非合法な開発とリリーパ族への迫害が白日となるといくら政治的にオラクルを

押さえつけているヴォイドであっても市民の非難は免れず

すでに手に負えるかどうか怪しいまでに成長しつつある反政府組織を

勢いづかせることになりかねない、ヴォイドとて余裕でオラクルに

君臨しているわけではない、常に綱渡り状態である事に変わりはなく、

市民や反政府組織が結託して蜂起する事を内心では恐れている

スガッキーノ様の救援要請を無視した時から事は決していたのである、

ここでも老獪な学者の計算され尽くした演算と正義の勝利が明白となった、

 

新光暦238年4月2日 午後12時05時分 アークスシップ1番艦フェオ

のんびりと余暇を過ごす垣屋たちにサガから通信が入る

 

「垣屋博士良いか?」

 

あいかわらずクールな機械である彼らしい挨拶の後にサガ垣屋にたずねた

 

「イフェメラがリリーパから帰ってきてからこちらに戻ってこないが

何か変わった事があったのか?」

 

「イフェメラちゃん家にも戻っていないのか?」

 

「いや行動ログによると家には戻ったようだがそこから通信が届かない」

 

「なら心配なかろうよ、何かあったら連絡入れるでよ」

 

「すまんな手数をかける」

 

どうやらイフェメラは家に引きこもっているようだ

もしかしたらあの救う価値のないカスたちへの同情心から引きこもっているのか?

しかしこれはあくまで表立ってはならない秘密でありイフェメラはそこを理解して

家で何も言わず過ごしているのだろう、

イフェメラの取った反応は心優しい人はもちろん常識人にとっても至極当然といえば

当然だった、目の前でいくら悪党とは言え無茶苦茶な死刑確定裁判で30人もの人間が

ローラーで轢き殺されるのを目の当たりにしたのである、さしたるショックも受けず

日常を謳歌する研究所の面々の方が異常なのでありそれこそがアークスなのである、

 

研究所で余暇を楽しむ面々を他所に垣屋はさっそくスパイク付きローラー車の

購入希望者と連絡を取り価格交渉を端末から応じている

この取引は予想以上に実入りが良さそうで垣屋の顔が自然にほころんでくる、

 

そして昼食の時間に垣屋はねねとスゥリンに

 

「明日リリーパ砂漠地帯でのお前らの総仕上げにグワナーダと戦ってもらうのぉ

どうもイフェメラちゃんとは連絡が取れんから二人でがんばってみぃ」

 

そういうと食事を口に運びかみ締める

 

「こんな事で引き篭ってるようじゃまだまだ甘いね、これから先どうなる事やら」

 

シンジュクはそうつぶやくと食べ終わった皿をチヒロが片付けやすいように

重ねて隅に押しやると食後にもかかわらずナッツのさらに手を伸ばし

いつものようにカリカリと食んでいる、

 

「んじゃお前らに今日は宿題だしとくからのしっかりやれよ死なないために」

 

垣屋はねねとスゥリンにグワナーダがどのようなエネミーでどう対処すべきか

資料映像を端末に転送してこれをしっかり見て置くようにと言い渡した、

 

「はかせーヴォルドラゴンより怖いのはいやなのじゃー」

 

スゥリンは不安にかられて垣屋にたずねるが横にいたテツが代わりに答えた

 

「大丈夫だよグワナ-ダは大した事無いからね、なんでヴォルドラゴンより

討伐順位があとなのか不思議なくらいだよ、」

 

そしてシンジュクが付け足して言う

 

「ちゃんと予習しなよ殺されそうになっても私らは知らないからね」

 

話して聞かせたがねねとスゥリンは二人だけでは心細いのか不安な様子を

見せたがヴォルドラゴンとは比べ物にならないくらい楽だと聞くと

急に調子付いてやっつけてやると豪語する、お調子者であった、

 

 

新光暦238年4月2日 午前9時07時分 惑星リリーパ地表砂漠地帯南部

 

予定通りイフェメラを除く研究所の面々は惑星リリーパのグワナーダが

生息している地域へ降り立ち、グワナーダ発生報告のあるポイントへ歩き始めた

 

道すがらなぜかスゥリンの機嫌がよい、朝に起こされると不機嫌なはずだか

今日はスキップまで踏むほどの喜びようだ

 

「なにがあんなに嬉しいんだいあの馬鹿猫」

 

シンジュクは怪訝な表情を浮かべる

 

垣屋たちベテラン3人は首をかしげているなぜかと本人に尋ねようとするが

先へ先へとちょろちょろと進んで行き足が止まる様子もない

 

少し前を歩くねねが3人の雑談を聞くとその疑問に答えた

 

「スゥリンちゃんグワナーダがカッコいいといってたのじゃ!だから捕まえて

ペットにするって言ってたのじゃ!」

 

「なるほど渋いのがお好みだなぁ」

 

シンジュクは疑問が氷解しスゥリンの意外性を感じ3人は思うがグワナーダーは

オラクルの敵であるダーカーそれも大型のたちの悪い敵である当然ペットになど

出来ないし心が通い合う事もなく持ち帰る許可など下りるはずもない、

 

スウリンはスキップを続けいとしいグワナーダへの距離の縮まりを感じていた

相変わらず柱状の風化岩と干からびた植物と砂また砂の大地である

気温も徐々に上がり体力の過度の消耗をさけられる時間帯は限られてきている、

 

シンジュクとテツは遠くを見通しふとライフルをかまえスゥリンの目の前3mほどに

フォトンをまとわせた弾丸を連射するフォトンアーツであるワンポイントを

左右から放ちながら

 

「スゥリンちゃん止まれ!」

 

「うにゃ?」

 

と叫ぶ、スゥリンは少し驚いて足を止めると弾丸がめり込んだ砂地が隆起し

砂が地に流れ落ちると真ん中に赤い核がむき出しになった黒い触手が

うねりながら飛び出し受けた弾から赤い瘴気を吐き出すと塵になって崩れ去った、

 

スゥリンは後ろを振り返る、シンジュクが言わんとしている事を察し

 

「グワナーダビット(触手)だよこいつで絡め取って顎のはさみで真っ二つ

それがヤツのやり方だから注意しなよ」

 

そういうと口元をニヤリと曲げてすでにグワナーダが近くにいる事を知らしめた

それから少しタイムラグを置いて司令部からグワナーダがこの少し前に

いる旨の通信が入った、

 

垣屋たち3人は足を止めねねとスゥリンに言った

 

「ここからは二人でグワナーダを仕留めてみぃ」

 

二人は次のエリア、ナベリウス凍土エリアへの侵入許可書をかけて

グワナーダと対峙する覚悟を決め武器を構えて前へと歩き出した。

 

ねねとスゥリンはいつもと違う戦いに緊張を隠せなかった、いつもはイフェメラが

そばにいる、

戦いにおいては3人の中で一番冷静に戦局を捉え悪い言い方ではあるが

ケツ持ちに近い役割を果たす、

一件地味な役回りだが安定した戦いには欠かせない重要な人材である、

 

今まで3人は互いに頼りあうことで戦いを切り抜けてきたその定番とは違う戦いでは

自分たちにないものを自前で補わなければならない、

ちらりと後ろを振り返るが垣屋とシンジュクとテツは先の発言どおり手を貸すつもりはなく

遠巻きに眺め周囲を警戒するシンジュクとテツ、なにやら砂の中から拾い上げ

アイテムパックに詰める垣屋の姿が見えるだけである、

 

10mほど前方の砂地から最初はさらさらと砂の動く音が聞こえたがその音は

次第に大きくなり何かが隆起する爆発音のような音とともに砂の塊が吹き上げてきた

 

「ギシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

 

砂の石英質が陽光に反射してきらきらと光りそれらが地に降り注ぐと同時に

黒く巨大な塊が突き出たかと思うとそこからさらに二股の鋭い影が左右に開き

雄たけびを上げる、

 

グワナーダの本体が飛び出してきた、その左側から飛び出した触手はへさきが

ちぎれて左右に激しくうねっている、シンジュクとテツが打ち抜いた触手だ、

こっそりとビットで捕らえて自らのはさみで両断するつもりだったのだろうが

それも叶わず本体で始末をつけようというのだろうか?

しかし惑星に住む原生生物とは違い生きるために殺して相手を食むのとは違う

ダーカーはただ殺すだけだ、すぐに殺さなくても侵蝕核を打ち込むために

殺さない事もあるが結局いつかは同じ結果を辿るのだ、

 

その威圧的な本体の雄たけびに二人は圧倒されるがスゥリンは何故か少し嬉しそうだ

 

「グワちゃんなのじゃーほんものなのじゃー」

 

しかしグワナーダはただわめいているだけではなく同時に残った触手を

砂の中で這わせその触手はねねとスゥリンを捉えるべく砂の下を疾走する、

砂が地面に吹き上げられその筋が一直線に伸びる

 

「スゥリンちゃん!危ないのじゃ!」

 

あと2mほどの所でねねは感づきスゥリンに注意を促すとスゥリンは我に返ったかのような

反応を見せるがミラージュエスケープで避けるよりビットの方が早く

スゥリンは足を絡め取られ仰向けに倒されたかと思うとビットはすばやく本体の

方へと引き寄せられていく、

 

「ギニャニャニャニャすごいのじゃー」

 

スゥリンが引きずられ体の幅に比例した砂の筋を残しながらグワナーダが打ち鳴らす

大あごへと引っ張っていかれその速度は鈍重そうな見た目に合わずとても速い

アサギリレンダンのラッシュを用いて助けに行こうと思い立つが

目の前に4本のビットがねねを捉えようと突きかかって来る、

その1本がねねの胴を捉えようとした瞬間にねねはすばやく居合い斬りで触手の1本を

カウンターで切り裂いたが残り4本の触手が行く手を遮り

一度後ろに飛び退いた、

 

ねねが触手に手間取っている間スゥリンはグワナーダの大あごに捉えられ

ガチンと激しい音が立ったかと思うと左右に激しく振り回され

突然の出来事になすがままの有様で今度は幾度も地面に叩きつけられている

ねねはすぐにでも引き剥がしに行きたかったが迫る触手を1本また1本と

切り裂くことで手一杯だ、

 

グワナーダはこれで死んだと判断したのか動かないスゥリンを頭を下から上に

勢いづけて振り上げると同時に大あごを開いてスゥリンを前方へ放り出した、

 

「ギニィャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」

 

スウリンの凄まじい悲鳴にさすがにベテラン3人も視線を向ける

しかし助けに行っては鍛錬にならない上に頼って当然の習慣を作る事は

後見の失敗を意味する物である、じっと様子を見守るしかなかった、

 

スゥリンは勢い良く放り出されねねの少し前に投げ出された

いくら小柄とはいえスゥリンはキャストでそれなりの重量があるにもかかわらず

それをここまで放り投げるグワナーダの力はたいした物である、

ねねはスゥリンが死んだのかと思い不安げな顔を浮かべ冷静さを失いかけるが

心配を他所にスゥリンはすばやく起き上がるとビットにてこずっていたねねに加勢しようと

短杖のへさきでフォトンを練り上げ体の中心から炎の渦を巻き起こし

地表に勝ち誇ったようにうねるビットは炎の渦に巻き込まれて今度は苦しみにうねり狂った、

 

ねねはアサギリレンダンでもがくビットを逃がすまじと滅多切りにし

スゥリンも再び炎の渦であるギ・フォイエを発動させる

熱に弱い蟲型ダーカーにはたまらない攻撃である、

ビットは一つまた一つと力尽き地にへたり込んで行き全てのビットは

破壊された、刹那の安堵を享受するふたりであったがふたりの足元が盛り上がり

なにかに突き上げられし尻餅をついた、

グワナーダがいつの間にか真下に回りこんで二人を大あごで真っ二つにしようと

砂の下から襲い掛かろうとしていたのだがビットをすべて潰され

その苦しさにこらえ切れず地面に飛び度してきたのだ、

仰向けにのけぞり貧弱な手足と大あごともう一対の小さいあごが規則的で踊るように

動かしてもがくグワナーダ、そして腹の部位がさらけ出しになっており

ダーカーの弱点である赤いコアが大きく覗いているグワナーダの弱点は腹部だったのだ、

 

隙が出来た

 

「いくのじゃ!」

 

「おとなしくさせてつれてかえるのじゃー」

 

ねねとスゥリンはもはや頷きあうまでもなくお互いの持てる限りの体内フォトンを

用いてねねはサクラエンドの連続斬り、スゥリンはフォトンを収縮させ

グワナーダの腹部めがけて炎の爆発を引き起こすラ・フォイエを発動させた

弱点を最も突かれたくない攻撃を連続で受けたグワナーダはさらにもがき

なりふり構わず大あごを左右に振るがさすがにお子様にもあてずっぽうな攻撃を

当てることは叶わず、ねねとスゥリンはグワナーダの隙を見て

さらにアサギリレンダンと光り属性のテクニックギ・グランツ、さらにギ・フォイエを

叩き込みグワナーダは激しく炎上して力尽きて砂地に崩れ落ちた、

 

ビットに不意を突かれた物の弱点の攻撃を的確に与え一気に逆転に持ち込んだ

ねねとスゥリンの勝利であった、

 

崩れ落ちたグワナーダは徐々に赤黒い瘴気となって気化するように消えていく

スゥリンは我に返って

 

「わらわの・・・わらわのペットが消えてなくなるのじゃぁぁぁー!」

 

とわめいてグワナーダの砕けた体の一部を必死に拾おうとするがかろうじて大あごの

1本を拾い残りは全て気化して消えていってしまった

 

「ううう・・・うぇぇ~んわらわのペットがぁグワちゃんって名前に

しようと思ったのにぃぃぃぃー」

両手を砂地につけて四つんばいでうなだれるスゥリンは心底グワナーダを愛して

いたのだろう、

かろうじで残った自分の身長より長い大あごを抱き枕のように抱きしめている、

 

「かわいそうなスゥリンちゃんなのじゃ・・・あたらしいグワちゃんを探すのじゃ!

元気出すのじゃ!」

 

「おいおい・・・新しいグワちゃんとかいらねーから・・・」

 

シンジュクは呆れ顔だ

 

「どっちにしてもペットには出来ないけどねー」

 

テツも表情こそ変わらないが心底あきれ果てているようであった、

 

「上出来じゃの、おつかれさんだとさ」

 

垣屋たちもねねとスゥリンのそばへ歩み寄って上出来だとふたりに声をかけ

頭をポンポンとなでるが嬉しそうなねねを他所にスゥリンはうなだれたままだ、

垣屋は日が上がってきたから帰る旨を二人に伝えるがスゥリンは動かない

 

「どうするこれ?完全に心が死んでるよ」

 

うなだれたスゥリンをシンジュクは指差し帰ると告げても大あごをだきしめて動こうとしない

 

「しゃあないねみんなで分担して運ぼう・・・めんどくさいけどね!」

 

テツの号令で仕方なく垣屋とシンジュクが両腕をねねとテツがそれぞれの足をもって

スゥリンを宙ぶらりんにしてキャンプシップまで運び帰還の徒についた、

 

アークスシップ1番艦フェオに戻る途中スゥリンを慰めるねねとテツ

 

「うぇ~ん、グワちゃんがグワちゃんがぁ~」

 

「でもグワちゃんの大あごはスゥリンちゃんとずっと一緒だよ」

 

「そうなのじゃスゥリンちゃん別れは人を強くするのじゃっ!」

 

「うるせーぞ馬鹿猫、エネミーの一匹に引き死んだくらいでギャーギャー泣くなよ

まったく・・・」

 

シンジュクは呆れ顔でスゥリンを叱咤してベンチに寝そべっている、

 

「やれやれしゃーないのぉ・・・」

 

垣屋はなにやら端末をいじくり回して途中で拾った依頼の受けたサンプルを

アイテムパックから転送しているらしく依頼の報酬が入金された音が

外から続けてみみに聞こえてくる、

しかし垣屋は端末いじりをやめずいくつかの画面に目を留めると

少し時間をずらして目の前にいくつかの箱が足元にぼそりと落ち

垣屋はそれを拾い上げるとむすっとしているスゥリンの頬にかるく当てて注意を促す、

 

「なんなのじゃーわらわはいま心がきずついてるのじゃー」

 

機嫌の悪そうなスゥリンはにらむように垣屋を見ていたが

 

「ほれ・あけてみぃ、リリーパ砂漠エリアクリアのご褒美じゃよ」

 

意を解さず開けるように促す、二つのプレゼント包装された箱を不機嫌に破り捨てるスゥリン

しかしその顔はぱっと明るい笑顔に変わった、

 

箱の中身はグワナーダの特大ぬいぐるみとグワナーダを模ったラヂコン

そして装備品にはりつけるグワナーダステッカーが入っていたのだ

 

「うれしいのじゃーーーーーーーはかせありがとなのじゃーーーーっ!」

 

スゥリンは特大グワナーダぬいぐるみに頬ずりをして強く抱きしめている

砂時計のようにぬいぐるみはくびれたが布製のそれはまったく動じない

そして装着している衣装にステッカーを転写するとスゥリンは今までと打って変わって

ご機嫌になり一同は行った善行に報いて余る笑顔に心和ませるのであった。

 

 

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