PSO2水滸伝傍ら(かたわら)の群星   作:垣屋越前守

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不気味なナベリウス

新光暦238年4月4日 午前8時00分 惑星ナベリウス北部熱帯ジャングル

 

キャンプシップからテレプールで降り立つ4つの影が降り立ち周囲のフォトンが

その4つの影の周りで揺らめくがすぐに何事もなく収まって消えた、

 

「ここから歩いていくのね」

 

赤い髪をシャープに刈り込んだニューマンの女性がつぶやくように言う

その前方には凍土と熱帯ジャングルを隔てる高い山が聳え立ち

4人をそしてジャングルを見下ろしている、

 

先にナベリウスに於ける訓練生の襲撃事件で奮迅たる活躍で世に知られた

ナベリウスの4英雄の一人ことスゥである、

 

「進行ルートとかどうすんの?私ついてくだけでいいのかなぁ~」

 

ルピカはここにきた理由を良く飲み込んでいなかったようだ、

 

事の発端は2日前の新光歴238年4月2日に遡る、ナベリウスの襲撃事件で

司令部の隠蔽工作と報道のネタとして1アークスから一転「ナベリウスの英雄」

等と言う望みもしないのに大仰な称号まで付けられ、

模範的なアークスとしてアークスの放送チャンネルの広報番組の取材で

付きまとわれたり、市民に追い掛け回されたりと生活が一変し今までは

何の差しさわりもなく自由に動き回られたが今はそうも行かない、

 

彼らの落ち着ける場所は皮肉にもフィールドのエネミーが見受けられない場所か

アークスシップの中では人気の少ないショップエリアの展望台くらいだろう、

 

「有名人・・・英雄・・・めんどくさいものだな・・・もううんざりしてきた」

 

そうつぶやきながらアッシュは休息を求めて展望台エリアに足を運んだ、

この展望エリアは当初の目標どおりに集客が望めずあまり利用されていない

市街地エリアに新しい展望台ができデートやレジャー満喫する

市民とアークスはそこを利用するからである、

 

家にいてもファンの押しかけであったり取材であったりと安息の地に程遠く

この人気のない場所でゆっくりと昼寝を満喫しようと手にフライドチキンと

ショートケーキを携えてより目立たない外れへと歩いていく、

 

そのあまりにも合わない組み合わせの軽食を満喫し

 

「ここで2、3時間昼寝をしてそれから・・・」

 

と考えながら定位置のベンチに座ろうとした時、既に先客がいる事に気が付き

 

「すいません」

 

アッシュははっと気付くと席を替えようとして先客に軽く会釈すると

その場を立ち去ろうとした、

 

「待ってください、あなたはナベリウスの英雄アッシュさんですよね?」

 

ベンチに座っていた男性は立ち上がるとアッシュに用向きがあるらしく声をかけてきた、

 

「(・・・またサインかな・・・)」アッシュはそう思いサインペンを取り出し

描く物を受け取ろうと手を差し出す、

最初の頃こそ他のメンバーと一緒に得意げに書きもしたものだが

その数が100.1000という単位となるとさすがに飽きも来る上うんざり感も

半端なものではなかった、

 

「いえ、サインがほしいんじゃないんです」

 

しかし男性は何も出さずどうやらサインが欲しい訳ではないようだった、

 

その男性は上背は平均的で端正な顔立ちではあるが服装に無頓着らしく

灰色の髪はボサボサで着ているアークスの研究部門の職員の制服はよれ

袖口や膝などに自動洗浄システムがお手上げの作業汚れがこびりついている

そして知的ではあるものの厚いレンズの眼鏡がより鈍重なイメージを与え

丹念に身を整えおしゃれに気を使えば女性の意中を射止める事が

出来たであろう美男子であった、

 

「アッシュさん初めまして私はアークス研究部門に所属する地質学者のロジオと言います

専攻は地史学と鉱物学です、実は調査依頼を受けてくれる人を探していまして

よろしければ聞いてはいただけないでしょうか?」

 

アッシュは元々困っているあるいは助けを求めている人を放っておけない善良な青年である、

そして何日か前に白昼夢のような起きているのか寝ているのか分からない

まどろんだ感覚の中で白衣の女性が意味不明な事を語りかけ

新たな運命の出会いが訪れる事を白衣の女性から言われた事を思い出した、

 

「(もしかして白衣の人が言ってた運命の何とかってこれか・・・?)」

 

アッシュは心の中でつぶやき表では

 

「依頼とは何ですか?俺で出来そうならやりますよ、お話を聞かせて下さい」

 

話を聞く事にし持参した軽食をそばに置き話を伺うとロジオに伝えた。

 

ロジオは続ける

 

「実はナベリウスでの地質調査をして頂ける隊員さんを探していまして・・・

内容としては指定した場所に採掘器を転送しますのでそれを操作してサンプルを

採取して欲しいんです、なにぶん私は戦闘が苦手ですし申し訳ないんですが

人に任せられないシップ内での手配がありますから代わりに現地へ赴いて

いただきたいんです」

 

ロジオは主に地質学の内の、

地史学、ある地域、または惑星全体の、地層がたどってきた歴史を研究する分野、

鉱物学、鉱物を研究する分野。鉱物の成分や結晶構造、できかたを、

化学・物理学の手法で調べる学問分野を得意とするが必要に応じて全般的に

研究を行うその筋では新進気鋭の学者であった、

 

資材となる鉱物や建設に関わる物から作物の栽培に使われる

土壌の研究等を幅広く担当しており、オラクルでは水耕栽培でほとんどの

穀物や野菜、家畜の飼料用穀物が栽培されるが根菜のように土がなければ

うまく仕上がらない作物の栽培のために

外惑星から土壌を採取し食糧生産エリアで使用されるため重要な学問であり

また土壌の種類や成分を分析し適材適所に配分するなど多岐に渡る、

 

アッシュにはナベリウスへと行かねばならないと言う漠然とした記憶が

残っていた、

それは先に大前田米子、今では彼女の意向を汲んでマトイというあだ名で呼ぶ少女との

出会いの前にも感じていた感覚だった、

あの白衣の女性がまどろんだ中に出てくる時にも運命の出会いに導かれ

ナベリウスに赴かなければならないと行く事を示され気に留めてもいたのである、

まるで白昼夢のようなおぼろげな事柄であるが指し示された道の

事だけははっきりと覚えている不思議な感覚であった、

 

なぜか逆らう気にもなれずアッシュはそれを意識し動くようになりつつあった

のである、

 

「分かりました俺たちで出来るか保障は無いですが行きます」

 

「そうですか!ありがとうございます、断られ続けていたので無理かと思って

いましたが助かりました、手はずは追って伝えますのでよろしくお願いします」

 

アッシュは少し考えたが受ける事をロジオに伝えロジオはアッシュに礼を伝えた、

 

そしてアッシュはその前日にとある人物から依頼と言うか要請を受けていた事を

思い出したのだ、

ジャンと言う黒人の熟練レンジャーからで友人である刀匠ジグのやる気を取り戻す

ために業物を見せて刺激を与えようと言うのだ、

そしてそれがあるのは最近何かを探すようなそぶりのダーガーが頻繁に姿を現す

凍土ではないかと目星を付け、ついででよいので探してみて欲しいとの事であった、

 

「急ぎでなければ探してみますよ」

 

と快くそれに応じたのであった、後は凍土で心得がどうだのと名物長話が

始まったので夢中になって話すジャンをその場に残し去るのであった、

 

そして確認してみるとロジオの言うポイントとジャンが目星をつけたポイントは

少し離れているが近い事もあり効率が良いと判断しスゥ、ルピカ、ギリアムに

端末からメールを飛ばし付き合うようにと伝えた。

 

そして今日4月4日ナベリウスの降り立ち今指定した場所への第一歩を踏み出したのである、

今日もナベリウスは一見平穏である、しかし縄張りを守るために攻撃的になった

り侵食核を打ち込まれた原生生物はその限りではなくダーカーもいつどこから

襲ってくるか分からない余裕なように見せながらも内心常に警戒を怠らないのが

一流のアークスである、

 

現地到着の報告を今回はオペレーターではなくロジオに入電する

ルピカの言うとおり進行ルートはロジオのナビゲートとアイディスプレイの

マップにマーカーで表示される為さして考える事もなく注意を払い進めばよいようだ、

 

「付近に敵はいないようだ地形のデータは皆のレーダーに映ってるな?」

 

ギリアムは誰に言われるまでもなく黙々と周辺の地形をレーダーを頼りに

判断し、凍土までは一本道であると3人に告げる、

ギリアムはこの4人のなかでとかく冷静であり彼がいるからこそ

幾多の危機が回避され円滑な活動が可能となっている、しかし若くまだまだ

未熟さの残る3人は確たる自覚を持つに至ってはいない、

 

しかしギリアムはこの愛すべき仲間に見返りを要求もしないしでしゃばる事もない

真の支えたる誠実な若者である、

 

まるで串ダンゴのように細い道から開けた場所へと同じ地形が繰り返されていく

ロジオは周辺のデータをモニターを通して採取して

時折土壌のサンプルの採取を要請してくる、アッシュはその求めのたびに足を止め

指定された容器に土壌の採取を行い小型の計測器を地面に突き刺す作業を

文句一つ言わずにこなしていく、

 

「なんだか地味な仕事ね・・・私向きじゃないわ」

 

「ルピカ文句言わないのさっさと終わらせちゃいなさいそこの黄色い土の採取」

 

スゥとルピカは退屈そうにし不満を述べるが始めるがギリアムがたしなめる、

 

採取しては進み散発的に現れ襲ってくるウーダンやガルフを撃退し

行き止まりの洞窟の前で立ち止まるとロジオからの通信が入る、

 

「熱帯ジャングルの調査はこれで終了です、ここから凍土へ移動となります

既に経験があると思いますが正直ありえない気候変動です、

急ぎではありませんから凍土への装備に切り替えてから移動して下さい」

 

学者にありがちな身勝手で相手の気持ちを思い計れない傾向は

時として依頼の受諾にすら影響を及ぼす事がある

ぶっちゃけた所学者の依頼は受けたくないと言う事である、

しかしロジオにはそれが全く見られず彼が若くして気鋭の学者になれたのは

一重に人を思いやる心が周囲の人の支援となり大きく占めているのであろう、

 

いつものようにギリアムが周囲の警戒をする間に3人は凍土へ赴く際に

義務付けられた装備があり使えるかを点検する、

全て問題ないと判断し既に出発前に点検を終えたギリアムはそれを知らされると

後方に陣取り凍土へ続く洞窟へ足を踏み入れて行った。

 

ジャングルの洞窟を照明で照らしながら反対の入り口へと足を進める

最初の頃にはナベリウスフルーツバットや様々な蟲などが見受けられた、

しかし洞窟の中は進むにつれ徐々に肌寒く気温が低下してきている、

それに比例して生き物たちは見られなくなり、次第に地面や壁面が白く

凍り付き始める、凍土へ足を踏み入れたのだ、

遠くに出口が見える、照明をつけたとはいえ暗い洞窟から出口が

まばゆく見え出口から地表に出ると冷たい空気と共に一面まばゆい

銀世界が広がっていた、

 

ロジオから通信が届く、

 

「ここから凍土です、足場に気をつけて調査をお願いします、400mほど先で

採掘器を転送しますので5箇所ほど土壌の採取を行ってください」

 

4人は了解した旨をロジオに伝え目的地に向かって歩き出した

凍土は雪の下に何があるか分からない特別な場合を除き歩いて進むことが肝要である、

 

少し進むとスゥとギリアムが上空にきらりと光る物を見つけアッシュとルピカに

注意を促す、10km以上は離れているだろうか上空に青白い光線のような何かが

撃ち出されたかと思うと弧を描いて飛んできた光線は炸裂しいくつもの筋になって

地表に降り注いでいる、

 

「ん?・・・支援射撃?ロジオさん支援射撃・・・頼みましたか?」

 

「いいえフォトン榴弾砲ですね・・・補給基地からの援護射撃みたいです、

そしてダーカーの反応が遠いですがかなり出ています100いやそれ以上

アッシュさんたちの方へ向かってくる可能性は薄いでしょうまったく別方向へ

進んでいます」

 

ロジオはレーダー索敵の結果を4人に伝えた、

 

「救援に行こうか」

 

とアッシュはあちらを気にするが

 

「その必要はないでしょう、救援信号は出ていないようですし上級アークスの

マーカーが4つ後の4人は中級以下と言ったところですが問題はないでしょう」

 

ロジオがそう言い終わる前に上空から空を切る音が聞こえ周囲の空気が

強い風になり4人に吹き付ける、戦闘爆撃機が4人の上を通りすぎていく、

その機体の鼻面には裸の女性が表現がはばかられるような仕草をした

絵が描かれておりそれはなかなかの出来栄えであった。

 

「さっきの戦闘機に書いてた絵・・・あれコフィーさんじゃないの?」

 

めざといルピカはあきれながら皆に言った

すると4人の端末に爆撃機のパイロットの通信が入る

 

「イエァー!爆撃成功!こっぱ微塵だぜぇぇぇ!ざまみろクソダーカー!

おめえら無事に帰って来いよぉぉぉぉぉ!」

 

通信が切られ爆撃機は基地へと飛び去っていく、それを4人は見送ると採掘ポイントへ

周囲を警戒しつつ歩みを進めた、

 

周囲1kmほどの開けた場所、雪に埋まっている何の変哲も無い場所で

 

「ここが採集ポイントです、今から採掘用のボーリングマシンを転送するので

少し待って下さい」

 

と伝えてくる、程なくして周囲に4箇所中央に1箇所ボーリングマシンが

転送されてサンプルの採取はこちらで自動採取するのでそれ以外の操作と

原生生物の縄張りのため採掘機が攻撃されないよう守って欲しいと伝えてきた、

 

この採掘器は三角やぐら型の台にドリルが取り付けられある程度までドリルで

掘り出した後ドリルの中央部からサンプル採取のケーシング管が射出されサンプルを

取り終えるとドリルが食い込んだケーシング管をがっちりと挟み込み

回収する仕組みで一見大掛かりではあるが仕組みは至ってシンプルである、

採取する深さは地下30mほどで高速で回転するドリルは周囲に摩擦熱を巻き起こし

その周囲だけが春の雪解けのように氷が解けている、

 

ロジオは機械の遠隔操作で手一杯なのかずっとしゃべらず黙々と作業をしている

そして作業を終えるとその報告をして機材を元のオラクルへと回収し

周囲は採掘した穴だけが残された、地下から水が湧き上がっているが

間もなく凍って穴をふさぐのであろう、それが凍土のいう場所なのである。

 

残る4本を順に回ってサンプルの採取をこなしていく、4人は周囲を警戒しているが

遠巻きのレーダーになにやら映っているがその場でうごめいている様子だけは見て取れる、

 

「この場所での最終は以上です、あとはこの奥にもう1ポイントあります

寒い中申し訳ありませんがよろしくお願いします」

 

何事もなく終わってくれればと願うがその願いは叶えられロジオはこの地点での

採取は終わったと報告した、残るは奥の行き止まりにある土壌の採取であるが

そこを通るためには先ほどのダーカーの大群とは別の生物反応のあった場所を

通らねばならない、

 

「戦闘にならなきゃいいんだけどどうかな?」

 

ルピカはそろそろ寒さも手伝い疲労の色が顔に出始めていた

 

「そうだなそろそろ活動時間にも限界があるし手早く終わらせよう」

 

スゥもルピカほどではないが同様である、この二人はアッシュとギリアムとは

違い戦闘経験がまだ豊富とは言えず極限環境でも持久力も

二人にはとてもかなわない、アッシュとギリアムもそれを承知していて

手早く済ませる事に意識を向ける、

 

「しかしさっきからマーカーがぜんぜん動いてないな」

 

アッシュはつぶやきながらもいよいよ戦闘かと武器を構えながら4人は進むが

その反応がなぜ動かないかその理由を眼で見ることで理解することが出来た、

 

レーダーに映っていたマーカーの主であるナベリウス凍土エリアの原生生物

キングイエーデとその未成熟個体のイェーデのおびただしい死体が転がっている

 

「ひどい!まだ生きてるのはいるかな」

 

中に虫の息のイエーデがいたためルピカは端末でスキャンして侵食核が

埋まっていない事に気付き何とか助けたいとレスタを発動させ一縷の望みに

かけてみた

 

「死んじゃだめよ!今助けてあげるから!」

 

が残念ながら1匹も救うことができなかった、

 

「だめ・・・・みんなダメだった・・・」

 

がっくりと肩を落とすルピカを3人は優しく慰める、

このイエーデたちはついさっきまで凍土で平和に暮らしていたはずだったのだ

一見凶暴そうに見えるイェーデではあるが性質は温厚でそこそこに知能があり

凍土で遭難した先見調査隊や軍部の隊員を寒さから救ったり、食べ物を与えられ

その恩に報いるため時として共にわが身を省みずダーカーと戦ってくれる事が

あったりとアークスの隊員たちに愛される存在である、

 

自分たちが採掘を後回しにしていれば助けられたかもしれない

心優しい彼らは後悔の念を抱かずにいられなかった、

モニター越しのロジオも同じ気持ちを味わい唇を噛んでいた

 

「調査に夢中で彼らの危機に気付いてやれなかった・・・自分勝手な

事をしてしまいました・・・」

 

「ロジオさんあまり自分を責めないで下さい死んだものは仕方ありません」

 

ギリアムはロジオを慰め、気持ちをいち早く切り替えイエーデたちの死因を

分かりきっていたが再度念押しで死因を確認する、

 

「やはりダーカーとの戦闘でやられたか・・・傷の具相手からして

ダカン、ブリアーダ、カルターゴはいただろうな・・・」

 

貫通したような傷、熱戦で焼き切られたようになった傷、その傷が背中に

集中したキングイエーデもいる、その下に子供のイエーデが下敷きになっており

恐らく子供をかばって身を盾にして守ろうとしたのだろう

ダーカーのために今まで何度このような悲劇があったのか

許しがたい相手と皆は思いを新たにした、ダーカーがいる限り

こんな悲劇は幾度でも繰り返されるのだ、

 

アッシュとギリアムはイエーデたちの亡骸を巣穴のあった場所に亡骸を集め

端末から花を取り寄せ亡骸の上に置きやさしき凍土の友人たちに敬礼すると

その場を後に奥地へと進んで行った、

そんなことをしても何にもならない事は分かっているし独善的と言われても

仕方ないだろうしかしそうさせずにいられなかったのだ。

 

1kmほど起伏の激しい進みにくい道を進み道は突き当たり左右に分かれている

不愉快な羽音がかすかに聞こえ近づくにつれ大きくなっていく、

そして目線を上に向けるとブリアーダが2匹滞空しながら何かを探すそぶりを見せている

いまだイエーデたちの虐殺に怒りの収まらないアッシュ、スゥ、ルピカは

各々武器を構え雄たけびを上げて突進しようとするがギリアムとロジオがほぼ同時に

それを制止した、

 

「待ってください、もしかしたら追跡すれば何か分かるかもしれません」

 

ロジオの言葉にギリアムも同意を示し3人はしぶしぶ武器を下ろし追跡に同意した、

 

ブリアーダは4人に目もくれず突き当りを向って左に飛んでいく

それはロジオの指定した採集地点の通り道であり走って追跡した

そして追跡すること30分・・・最後の採集ポイントへブリアーダたちはゆらゆらと

飛んでいくアッシュたちにはまったく目もくれていないようだ、

 

最後の開けた採集ポイントが視界に入ってくるとその中央に何かの塊

いや結晶のような物が宙に浮いておりダーカーは探し物がそれらしく

結晶を破壊して中身を取り出そうと必死である、

ダカン10体ほどにカルターゴ体には凍りついた血がこびりついている、

イエーデの家族の血であろう、アッシュ、スゥ、ルピカの怒りは頂点に達し

もはやギリアムとロジオも止める気はない、

 

「敵は取ってあげるからね」

 

「もう許さないわよ・・・絶対に!」

 

「支援射撃をする、徹底的に叩き潰して来い!」

 

「了解、行くぜルピカ!スゥ!」

 

「了解!うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

3人は凄まじい雄たけびをあげてダーカーに突進していく、

 

背中を向け余裕たっぷりのダーカーにアッシュのギルティブレイクが炸裂し

スゥは自在槍を相手に突き刺しハンマー投げのようにダカンを振り回し

周囲のダーカーを巻き込んで振り回す、

ルピカはロッドを振り上げて何かを放つ声を上げると上空から

巨大な火の玉が降り注ぎ、アッシュとスゥは後ろに飛びのき

残ったダーカーを高温の火の玉が襲い掛かる、

 

怒りに燃えた4人にとってダーカーの群れなどたかだか知れたものであり

完膚なきまでにダーカーは破壊されたが勢い余って浮遊する結晶も

砕け散ってしまった、

 

「仇とったよ・・・・」

 

ルピカはつぶやきアッシュはルピカの肩に手をおいて健闘を称えた、

ダーカーは消え去り砕けた結晶の中に入っていた棒状の物を認める、

どうも爆発で破損してしまったようだが結晶に入っていたと言うからには

何か特別な物かもしれないと思いアッシュはそれを拾い上げると

アイテムパックにしまおうとすると耳の奥に音が聞こえてきた、

 

「キィィィィィィン」

 

というその耳鳴りのような音は気のせいかと思われたがアッシュは皆に

 

「なにか変な音が聞こえないか?」

 

「うん、キィィィィンって変な音」

 

「私も」

 

「俺もだ幻聴ではないようだな」

 

4人が同じ音が聞こえた事を訴えアッシュの気のせいではないと確信した

 

「どうかしましたか皆さん?」

 

ロジオが4人の異変に気付きたずねて来る

 

「ロジオさんも聞こえてるだろ?キィィィンって音」

 

「いえ、聞こえませんね計器にもそのような反応は出ていないようです」

 

ロジオにその旨をたずねてみたがロジオはそれを感知していないと返した、

 

その棒状の何かをアイテムパックにしまってアッシュはスゥとルピカとギリアムの

方を向きなおす、いつもの3人いやその後ろに黒紫の影が写る

ようやく気配に気付きスゥとルピカとギリアムはアッシュのいる場所に

飛びのいて武器を構える、

 

金属製の重厚な仮面をかぶり黒いコートに紫の刃を持つコートエッヂという

ソードを構えて仮面のせいかくぐもった声で4人に向かって言った

 

「そいつを・・・渡せ・・・」

 

謎の棒状の物をよこせと相手が4人でも臆する事無く武器を構え威圧する。

 

仮面をかぶった人物・・・種族はおろか性別すらはっきりとしない、黒と紫の髪が

わずかに仮面の後ろから覗いている、

 

見慣れないコートをまとい荒々しい出で立ちかと思えば下に着込んだシャツには

丁寧にネクタイが締められていて無法者の出で立ちとは異なり

物取りの雰囲気ではなさそうだ、

 

「そいつを・・・渡せ・・・」

 

再び仮面の人物は手を差し出し先ほどの棒状の物を渡すようアッシュに求めた

4人は顔を見合わせるが思いは同じであった、

 

「渡してはならない」

 

仮面の人物は差し出した手を静かに引っ込めるとすばやく両手でコートエッジを

握るとその瞬間にアッシュの顔をめがけてその刃を突き出してきた、

余りにもその突きは早くアッシュは避けるのに、いや正確には刃先はアッシュの

頬をかすめ薄い一直線の傷が刃を通り過ぎた後に浮かび上がってくる、

 

すばやい突きを避けて一安心したが次の瞬間にはアッシュの胴に突きが繰り出され

からくもソードでガードしたがソードはその衝撃に耐え切れず胴に深い亀裂が走る、

使い手の技量もそうだがこの武器は見た目こそコートエッジであるが全く異なるソードだと

アッシュは悟った、

 

本来のコートエッジは中級者向けの代物で限界にまで鍛え上げてもここまでの力は

発揮できない、

その隙にルピカは端末のアイディスプレーでこの仮面の人物の正体を追っていたが

該当データが出てくる事はなかった、

 

「ロジオさん敵襲よ!私たちが拾った物を狙ってるみたい!」

 

取り急ぎこの事実をロジオに知らせ司令部にも報告を入れるため後ろに下がり

通信を続ける、

遠距離からの攻撃が可能なルピカは距離が離れていても必要に応じて

戦線復帰が早いため常日頃からそのように役割が分担されていたのであった、

 

仮面の人物はルピカが通信を続けるのを遠めに見て増援が来るやもと思ったのか

早くケリをつけんと決め込んだようですばやい斬撃と突きを繰り出し

アッシュを圧倒する、アッシュは愛用のソードが破損していたため防ぐのに精一杯だ

ギリアムはそれを見て取りスゥと入れ替わるようにと声を上げ

ウイークパレットを仮面の敵の胴めがけて放った、

レンジャーの最重要な技能の一つで種類別に特殊弾を打ち込む事で相手の筋組織や装甲を

極短時間弛緩させる事でより強い打撃が加えられるようにした特殊弾である、

 

ウイークバレットを撃ち込まれ一瞬ひるんだ敵にアッシュはソードが折れない程度に

力加減をしてスタンコンサイドというフォトンアーツを胴にめがけて叩き込み

相手がくの字にかがんだ所で後ろに下がりスゥが仮面に向かって愛用の自在槍の

穂先をウイークバレットのあたった場所に叩き込む、

2本の穂先のうち1本を敵はコートエッジらしき武器ではじいたがもう一本の穂先は

わき腹に突き刺さりスゥは手ごたえを感じる、

 

しかし仮面は痛がる様子もなく苦痛の悲鳴をあげる事無くゆらりと立ち上がると

次はスゥにめがけてラッシュをかけギルティブレイクを容赦なく叩き込む、

アッシュに比べて実力に劣り仕留めたと確信して油断していたスゥは攻撃を防ぎきれず転倒し

仮面はとどめを刺そうと飛び上がりソードを逆手に持つとスゥの胴めがけて突き下ろした、

 

「早すぎる・・・私ここまでなの・・・?」

 

スゥはこれで終わりと目をつぶったがその上で強いフォトンの衝撃が何かに当たるのを

感じで目を開けた、

ギリアムがスゥの少し後ろからワンポイントをウイークバレットがかすかに効いている

仮面の胴に叩き込み、故意に作られた弱点に銃弾を叩き込まれ

その衝撃で後ろに吹っ飛び仰向けの体勢で地面に叩きつけられた、

 

すばやく体勢を立て直した仮面は少し動きを止めこのままだと形勢が不利と考えたのか

テレポートを用いて姿を消した、

その周囲には静寂がそして仮面から発せられた得体の知れないどす黒い何かが

かすんではいたものの残っているようにも感じた。

 

ルピカの通信を聞きつけて後ろから戦闘機の飛ぶ音が聞こえてくる

 

「全員無事か?迎えに来たぜ、今着陸するから待ってろよ」

 

全員に通信が入り音のする上空を見上げてみると先ほど通過して行った、

言うもはばかられる淫靡なコフィーが描かれた戦闘機とアッシュたちを運んできた

キャンプシップが戦闘機に守られ随行し着陸態勢に入っていた、

 

アッシュのソードが破損して、スゥも軽症と精神的に困憊しロジオの依頼も

達成した今この場に留まる理由など何もなかった、

4人は急ぎキャンプシップに乗り込み周囲を警戒しつつ離陸し

アークスシップへ帰還する事になった、

 

「ごくろうさん今暖房強めるから暖まってくれよ」

 

キャンプシップのクルーが気を利かせて温かいコーヒーを皆に配り

衰弱しつつあったスゥとルピカのバイタルチェックを始める、

彼女らはようやく緊張と極度の寒さから解放されて

ぐったりした様子であった、少し経ってからスゥが口を開く、

 

「さっきの仮面のヤツさ・・・前にほらナベリウスで訓練生の救出作戦の時」

 

「あーーーっいたっ!女の子が倒れてたときだよね、ゲッテムハルトってワルと戦ってた」

 

「間違いないな確かにそうだ」

 

そしてその帰途で4人は落ち着きを取り戻して今更ながらに思い出した

マトイこと大前田米子を救出する際に悪党ゲッテムハルトと互角の戦いを

演じていたあいつだと・・・

しかしなぜ凍土にいてその結晶の中に入っていた棒のようなものを欲しがったのか

そして正体は何なのだろうか、不気味な影に4人は一抹の不安を感じ始めていた。

 

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