PSO2水滸伝傍ら(かたわら)の群星   作:垣屋越前守

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野生のプライドヴォイドの襲撃

アッシュたちが帰還の徒についたちょうどその頃

 

少し距離の離れていた所でアッシュたちが仮面の人物と戦っていた事は

つゆとも知らず原生生物研究所の面々とジャン、パティエンティアは

ルドルフとピョートルの巣へと凱旋していた、

あと2kmほども進めば巣に戻れるだろう、ダーカーの大群を葬り去り

軽い雑談をしながらスリップしないように歩きながら戻っていく、

 

「あの、博士」

 

「はいティアちゃん」

 

「さっき戦っている時にルドルフとピョートルが体にフォトンをまとって

戦ってましたよね、そしてダーカーを完全に消滅していましたが

動物もフォトンアーツが使えるって話は聞いたことが無いんですが」

 

「ほぉ、見とったかね、ティアちゃん良く出来ましたとさ」

 

垣屋はよく見ていたとティアの少し荒っぽく頭をなでる、

 

「ずいぶん昔に原生生物に対ダーカー戦が可能なように使用という

計画があったのは知ってるかの?」

 

「いいえ」

 

「まぁそうじゃろうなティアちゃんの親が子供時分の頃の話じゃし

原生生物が身を守ろうとするのを利用して少しでもダーカーを

減らす助けにならないかとフォトンコンバートシステムと言うのが開発された

しかし途中で計画が頓挫しての、そのシステムが組み込まれた首輪を

ワシとテツちゃんとで開発してルドルフとピョートルに付けた訳よ

じゃからあいつらはダーカーを滅する事が出来るって事じゃよ」

 

ティアは乱れた髪を手で戻しながら垣屋の説明に聞き入った、

 

残念ながらこの計画は倫理上の問題として動物愛護団体の反発と思ったより

成果が上がらず作戦自体は頓挫して久しい物であったが

何も考えずに氷上でスキップを踏む馬鹿な姉と違い情報屋としての

大事な商品であると認識し、端末に今回の顛末や今聞いた仔細そして映像と戦果を

簡単にレポートにまとめ記録した、

地道にいつ使えるか分からない情報を在庫としてストックするのは

情報屋の基本中の基本である。

 

「それにしてもバカは気楽で元気だねぇ」

 

シンジュクは呆れ顔でねねとスゥリンとパティを見ながら

あまりの気楽さと疲れしらずの若さにあきれ関心する、

大人たちが顔を前に向けたと同時に地面に何か叩きつけられた大きな音がして

一同は音のするほうへ顔を向ける、

 

「ギニャッ!」

 

スゥリンがスリップして仰向けに倒れたのだった、

 

「大丈夫かスゥリンちゃんほらつかまりなさい」

 

ジャンは仰向けのままもがくスゥリンに手を伸ばしスゥリンはジャンの差し伸べた手につかまる

機械の体のスゥリンは重くジャンもふんばって助け起こした、

 

「なにかふんだのじゃー」

 

そう訴えるスゥリンの足元にに何か白く光る物が転がっているのにジャンが気付いた、

 

「ふむ・なんなんだろうなこれは、」

 

それは棒状の何かであったがなにやらゴミのようには見受けられない

 

「武器の一部・・・?ちょっとスキャンしてみるよ」

 

テツがスキャンを始めるが

 

「う~ん武器、それもロッドかウォンドの一部っぽいけど登録されている武器の中に

該当が無いね!害はなさそうだから持って帰ってみれば?」

 

「確かになしかし不思議な物だなどことなくこの部品には挽きつけられる物を感じる

一度ジグに見せてみようかな」

 

なにか特別にひきつけるものが感じられたが今の段階ではなんとも言えず

ひとまずジャンは回収しようとアイテムパックに入れようとすると

スゥリンはジャンの目の前に立ちはだかり

 

「わらわが見つけたからわらわのものなのじゃー」

 

と言うやいなやジャンの手からその棒状の破片をひったくると自分のアイテムパックへ

しまいこんだ、

 

「こらバカ猫ジャンに返してやれ!」

 

「よいよい、必要な時に貸してくれればいい」

 

シンジュクはスゥリンに返すよう叱りつけるがジャンは怒るどころかその子供

そのものの仕草に顔をほころばせた、

 

「(ジャンさんの私たちの時もスゥリンちゃんにも見せるあの寂しそうな笑顔は

なんだろう・・・何かとても気になる・・・)」

 

ティアはそのジャンの笑顔にまた少し寂しそうな何かを感じ取っていた。

 

もう少しでルドルフとピョートルの巣穴だ、そこで一息入れたら一度キャンプシップに戻ろう

 

「グルルルルルルル・・・」

 

「ルドルフなにか来るのか?」

 

そう思ったときルドルフとピョートルが何かに感づき再び臨戦態勢に入る、

垣屋はレーダーを確認すると巣穴の入り口で大きな生体反応が2つ浮かび上がっている

司令部からの通信を待つまでもなくその正体は分かっていた

 

凍土最強の肉食獣スノウパンサーのつがいであった、

普段はルドルフとピョートルがいるため巣を襲うことはなかったようだが

ダーカーの襲撃で出払っている間に留守のガルフルたちやマルモスを狙って

巣穴の弱い個体を皆殺しにして空腹を満たそうと企んだのである、

 

「急ぐよ!」

 

シンジュクが叫び一同は氷を蹴って巣穴へと駆けて行った。

 

ルドルフはうなり声を上げる、彼らには端末もなければレーダーも備え持っていないが

凍土で生きてきた経験と直感がある、

ルドルフとピョートル、そして大人のデ・マルモスは棲家に向かって全速力で

戻っていく、巣ではルドルフの群れの大人のガルフルたちがリーダーの帰りを

待って必死の防戦を試みているはずだ、

しかしスノゥパンサーはガルフルのような小型種で太刀打ちできる相手ではなく

ルドルフとピョートルの力がなくては倒されるのも時間の問題であろう、

 

疾走する獣たちは研究所の面々をその場に残し雄たけびを上げながら巣穴に到達し

必死の防衛をするガルフルたちを蹂躙するスノゥパンサーの番に懇親の体当たりを喰らわす

敵の番はその衝撃で後ろにふっとび壁に叩きつけられた事で安易に獲物にありつけなくなった事を

悟るとすぐに飛び起きて長大な爪を地に当て掻き鳴らしながら狙いを定める、

 

「グォウ!」「ウォォゥ!」

 

一吼えで意思の疎通を図ったのだろうそれぞれが1対1で群れの手練である2匹を

屠ろうと決めたようであった、

オスのスノウパンサーはルドルフに、メスのファングバンシーはピョートルに狙いを定めたようだ

ルドルフとピョートルはそれを察し凍土のゾウ王オオカミ王としてのプライドをもって

受けて立った、

 

「だんなしゃま助けなくていいのかや?」

 

「今はのこれはワシらの戦争じゃないやつらの生きるためのプライドをかけた戦いじゃ」

 

「横槍は無粋だね勝てよルドルフ、ピョートル」

 

垣屋はねねを押し留めシンジュクは二匹の勝利を祈り巣へと走り続ける、

スノウパンサーはルドルフに爪を立てて飛び掛るがルドルフは軽く左にステップをして避け

着地と同時に相手の喉下に飛びつき首に噛み付く、パンサーの首の付け根から

鮮血が噴出しパンサーも負けじとルドルフの首に噛み付き両者は上下を頻繁に入れ替えながら

転がり互いに首を振り噛み傷を広げようと必死の形相で組み合い

周囲には飛んだ血しぶきが白い凍土に赤い花のように散っている、

 

一方ピョートルは冷静で相手の爪を利用した突進を繰り返し相手を翻弄する

戦法を見切り、バンシーが飛びかかり接触するタイミングを見計らい少し後ろに下がる

体勢から体のばねを活かしスノウバンシーの顔面めがけて懇親の頭突きを叩き込む

ゴキリという鈍い音が周囲に響いた、どちらかの骨が折れたのであろう

その場の時が一瞬止まったかのような感覚が周囲を包む・・・どちらが痛手を受けたのだろうか?

 

次の瞬間戦いの勝敗が決した、スノウバンシーの頭がまるで柔らかいぬいぐるみのように

ふにゃふにゃに潰れ中の砕けた骨が外へと突き破られ少し遅れて鮮血がとめどなく噴出し

衝撃で眼球と脳が一気に飛び出す、

氷上最強とうたわれるスノウバンシーではあるが頭を粉々に砕かれては

戦うことはおろか生きる事も叶わずその場に崩れ落ちた、

相手を見切り持てる渾身の力を一転に集中させ一撃で相手を葬り去る

圧倒的な実力の差を自覚する事無くスノウバンシーはこの世を去ることになった、

 

お互いに組み付いて喉を掻き切ろうとしていたルドルフとスノウパンサーであるが

ピョートルの一撃の音を聞き眼前で妻であるバンシーがたったの一撃で葬り去られるのを見て

一瞬隙が出来た、

凶悪な獣としてのイメージばかりが先行するがスノウパンサーは家族の絆が強く

つがいは生涯添い遂げる習性がある事が知られている

いとしい妻の最後が彼の脳裏に強いショックと動揺を与えた事は容易に想像できる、

 

しかしここは命を賭けた戦いの場でありルドルフは容赦せずパンサーの首に再度深く噛み付き

気管をあごの力で強く締め上げ骨のきしむ音が再び周囲に響くと

ごきりと折れ砕ける音がして夫であるスノウパンサーも妻の後を追う事となった、

 

オラクルとダーカーの戦いとは趣が異なるが彼らの戦いは互いに生き残るための

生存競争である、

戦いにくだらない格好付けもなければ栄誉だ何だという虚飾もない、ただ力と力が

ぶつかり合い一気に方をつけるただそれだけである、

実力の差を見抜いて撤退しなかったスノウパンサー夫婦の敗北であったが

彼らの亡骸も消して無駄にはならない、ルドルフの群れの明日を生きる糧となり

彼らの糧となる事でパンサー夫婦の魂もまた凍土を生きていくのである、

 

一方研究所の面々はルドルフとピョートルの援護をするため棲家へと駆け戻ろうと

走り続けていた、しかし凍土では他の場所ほど思うように進む事はできない

先ほどのスゥリンのように無様に転ぶだけである、

 

走りながらテツは言う

 

「こりゃ群れに怪我したのが出たねぇ~早く治療してやらないとだね」

 

「わらわがなおしてあげるのじゃー」

 

スゥリンはウォンドを振りながら自分の使命に感じテツにかえす、ルドルフやピョートル

群れの仲間たちと触れ合うことで短い間に親近感が湧いてきたのである、

他の面子よりも強くフォトンブースターを吹かし込みすぐに向おうとする

彼らとの友情にを行動で示して見せているのである、

 

棲家へと駆け戻る一行の前にテレポーターの反応がアイディスプレイと目前に現れる

人が10人くらいだろうか、増援?いやそのような要請はしていない

目前20mほどであろうか、

そして戦況は既にルドルフとピョートルに軍配が上がっているではその反応はなんだろうか?

 

周囲に黒紫のどす黒いフォトンの渦が起こる、熟練の研究所大人チームとジャンは

すぐに察しが付いた、

 

ヴォイドの連中だ・・・彼らの使用するフォトンは彼らの感情に左右され

その影響からどす黒い色に変色して見えるのである、

 

テレポーターから姿を現すより早くこちらに何かが飛んでくるが熟練の大人たちが

ライフルとマシンガンで射出された何かを弾き返す、

以前にリリーパで見たエッジプレイサーの刃物付きの弾であいも変わらず

けち臭さを感じざるを得ない、

 

真ん中に偉そうな決めポーズをした男が叫ぶ

 

「おい!てめぇこないだはよくもやってくれたなぁ!今度こそ叩き殺してやるから

覚悟しろぉ!」

 

懐かしい顔があった、つまらない小心者である事を必死に隠そうと突っ張った

紫色のモヒカンヘアーに揃いの色にコーディネィトしたパールラメが

ひそやかに練りこまれたパープルリップ、

そして真新しい腕の付け根と随所についたフリルが愛らしいヴォイド特別行動隊の制服を

まとったその男こそリリーパで死刑を減刑された慈悲を忘れたスガッキーノ様その人であった!

 

一同足を止めてあまりのバカさかげんにあきれ返っている

 

「なんだまたお前かよ・・・死刑な!」

 

シンジュクは言い終わるより前にライフルを構えて前の失態をあざ笑いながら

連れてきた部下の一人めがけてワンポイントをお見舞いしていた、

状況が掴めていないジャンとティアは制止するがもちろん聞く耳はもたれなかった、

 

「おいちょっと待て!いきなり攻撃とは卑怯だろうが!」

 

スガッキーノ様は銃弾をかわす為に自分ひとりだけ地面に伏せるが

寄せあつめの若い兵士たちは他のメンバーも加える援護射撃に人形のように

なぎ倒されその取るに足りない生涯を終えた、

 

スガッキーノ様はまた独りになったこれほどまでに孤独に愛される男はそうはいないだろう

 

「くそぉ!今日は復讐のために取っておきのを用意したんだ!これでてめえら

お陀仏だぜぇ!」

 

「聞いたかい?お陀仏だってさ!ハハハハハハ」

 

「聞いた聞いた笑わせるねぇ!」

 

「腰に付けてるクマちゃんのポシェットがかわいいのじゃっ!」

 

「ほんとダッサぁ~」

 

子供の戯言を笑うかのように一行は大笑いする、ねねとスゥリンはおかしすぎたのか

地面に転がり腹を押さえて笑っている、

 

スガッキーノ様は懐から何やら取り出して天に掲げる

 

「おいおい自爆でもする気かぁ?」

 

垣屋はもう爆笑を止める事が出来なかった、そんな度胸はない事を既に見切っているからである

 

「小便漏らしながら逃げるに晩御飯賭けるよ」

 

テツは穏やかな声でさらにスガッキーノ様を愚弄する、

 

「おいおいそれじゃ賭けにならないよチヒロさんが作って待ってるだろ?」

 

シンジュクが痛い所を突っ込んで一同は大笑いしている、

 

彼らとの縁を知らないジャンとパティとティアは簡単な説明をテツから受けると

状況を把握しスガッキーノ様にオラクルのほうに反する違反行為が咎められる前に

撤退する事を勧告するが分不相応な勇敢さをもってするスガッキーノ様は聞く耳を持たない、

 

「へっ!ヴォイド特製のこいつがあればお前らなんか皆殺しよぉ!」

 

スガッキーへの様の背後で大型のテレポーターから何かが転送されてくるのが見える

その大きな影は徐々に人の形を取っていくがそれは余りにも巨大であった、

 

テレポーターから転送されてきた影が徐々に形を取り始める、その影には見覚えがある

ロックベアだ・・・・一同がそう頭の中で決め付けようとしていたが

その影はロックベアより一回り半は大きいだろうか、大きいと言うより膨張している

と言った方が正しくロックベアの特有の緑灰色をした肌ではなくまるで内出血のように

赤黒く血流が滞っているのか所々に血の溜まった瘤が所々に噴出し

体組織の一部に壊死が身請けられ

そして何よりも嫌悪を催すのが顔の右目の部分に眼球ではなく人の顔が飛び出すように

くっ付いている、明らかに不自然な生き物であった、

 

「へっへっへ・・・ヴォイド特製の夢の動物!こいつがいれば手前らなんざゴミなんだよ!」

 

スガッキーノ様はさらに続ける

 

「おいモモラーノ!こいつらまとめてぶっ殺してやれ!」

 

そしてアイテムパックから何かを取り出す、それは純白の片手に余るかどうかの大きさで

本体に特徴的な赤い渦巻きの模様が描かれている、

そのコントローラーのような物のスイッチを押すと同時にその生き物は激しい吼え声を上げ

体中をかきむしるような動作をして激しくもがく、

どうやらその生き物を強制的に制御するコントローラーのように見えた、

 

ふいに一行の通信機に司令部から入電が入る、定時連絡を怠った催促なのだろう、

しかしその通信はそれを咎める物でなく通信機を越えた先で酷い動揺をうかがい知る事が出来た、

 

「なっ・・・なんなんですがこれは!こんなエネミー!これはどう言う事なんですか!」

 

ブリギッタはあまりの状況に取り乱している、無理もないその生き物だけではなく

ヴォイド特別行動隊の兵士の死体が転がり周囲は混乱状態である、

 

「ダーカーの襲撃に続いてヴォイド特別行動隊の襲撃に応戦中、仔細は後だ!」

 

ジャンは叫びライフルを構えウィークバレットの装填を始める

 

「そちらに映像を送りますので事情はそこからも分析してください」

 

ティアは司令部にマグが撮影記録した映像の転送を初め司令部はその受け入れ準備を初め

ブリギッタは自分での判断が難しいと考えヒルダを呼ぶように司令部で声を上げているのが

通信を通して聞こえてくる、

 

程なくして通信回線にヒルダが割り込んできて映像と周囲の状況の整理にかかるが

この嫌悪すべき状態に絶句した、

 

「リリーパでの復讐か・・・しかもこの生物・・・まさか噂に聞いている

ヴォイドの非人道な実験の産物と言うのか・・・」

 

ヒルダは現段でオペレーター部門の最高責任者であり状況が状況でも

手を休める事はなくその生物のスキャンを忘れる事はしなかった、

スキャンの目を背けたくなる結果が次々に端末に映し出されていく

 

「ヒルダちゃんよぉもうその必要ねぇだろ、生物兵器の披検体じゃよ、全体のスキャンは

そっち送るから顔の部分にくっついてる人間の特定を頼むわい」

 

「了解した」

 

ヒルダは垣屋の指示に従い他のオペレーターにも指示を出してその人物の特定を

はじめた、

 

「さっきあのクソ野郎がモモラーノとか言ってたからその顔の名前なのかものぉ、

現行の市民リストだけじゃなくて不明者や市民登録抹消者リストも

あたるようにしてくれ」

 

「分かったすぐに照合してそちらに送る!」

 

「時間はかかってもいいが念入りに頼むの、これはやつらの悪行の証拠じゃからの」

 

垣屋は付け加えるとヒルダは進言に謝意を示しオペレションルームのほかの隊員にも手伝わせ

特定を急がせる、

20秒ほど経ったろうかヒルダから再び通信が入り身元の特定結果が読み上げられる

 

ハル・モモラーノ オラクルシップ第220番艦 プラハ 出身

家族が反ヴォイドと目され強制連行され市民登録を抹消されているとの事であった、

 

「こんな事が許されてなるものか・・・うわさは本当だったとはな・・・・」

 

ヒルダは怒りで顔を赤くしている白人系の彼女だからこそ、その怒りの紅潮は

より強く浮き出ている、

ヒルダは少し考え込むと様々な角度から判断して一同に伝えた

 

「頼む・・・この哀れな犠牲者がもう苦しまないように・・・

楽にしてやってくれ・・・・」

 

その一言を搾り出すのが精一杯であった、

 

1分ほどが経過しただろうかその生き物が呼ばれてから、その生き物はまだスガッキーノ様の

コントローラーから発せられる何かのためにもがき苦しんでいた、

 

「はやく行けバケモノ!もっときつい罰をあたえるぞコラァ!」

 

そしてその生き物は耐えがたい苦痛なのだろう突き出た人間の顔から悲鳴と叫び声が

一同にも聞こえてくる

 

「いやあ゛あ゛あ゛!だれも傷つけだくないぃぃぃぃたたかうなんていやぁ゛!」

 

一同はその声にハッとした突き出た顔にはまだ人の心が残っていて戦うことを拒み

人を傷つけることもまた拒んでいる、

 

テツは急ぎスキャンをしてその結果を皆に伝えた

 

「首の付け根に電気を流す装置がついてるね・・・電極が神経に直結してるよ・・・

これは苦しいだろうねぇ・・・」

 

「取れそうかい?」

 

「すぐには無理だねちゃんと手術で取らないとその為にもまずはモモラーノを

安静にしないとね」

 

シンジュクはテツに尋ねるがすぐには無理だと間を置かずに返した

 

「とっても悲しそうなのじゃ助けてあげたいのじゃ!」

 

救ってやる方法はないのかとねねとパティはたずねるがテツは絶望的とは答えなかった、

 

「かなり食い込んでるからねぇ装置を取ると多分大量出血で死亡だろうけど

手術さえ出来れば望みはあるね、

もっとも俺は医者じゃないからそれに詳しい医者が要るけどね!」

 

そう言うとまだ自分が優位に立っていると勘違いしているスガッキーノ様に目を向けた

 

「あのコントローラー何とかしたら沈静化はいけると思うんだよね、遠隔操作だったらお手上げ

だったろうけどあいつ本当に馬鹿だねぇ~」

 

テツはコントローラーの破壊かスガッキーノを殺せば片付くと暗に言って示した

 

スガッキーノ様はまだ生物兵器に戦いを強制するためにボタンを連打している

 

「命令を聞け!もっと罰を与えてやるぞ!セガッセガッセガァァァァ!」

 

さならる苦痛に耐えかねたのかもがき苦しみながらも生物兵器は涙を流しながら

一同に叫んだ

 

「グァァァァァ!殺してぇぇぇぇぇぇぇ!ころしてぇおねがいぃぃぃぃ」

 

その言葉に一同は電気が走るような衝撃を受け皆言葉を発するまでもなく

思いを1つに決めていた、

 

「許しがたいな絶対に許せん!」

 

「そうだよ!やっちゃえ!」

 

ジャンとパティの怒りの声に呼応し皆がうなづくとテツとシンジュクとジャンはライフルを構えた、

その心は怒りに燃えてもはや止まる事を知らない、

言うまでもなかった3つの銃口はスガッキノー様に向かってテツはワンポイントを

ジャンは貫通弾を発射するピアッシングシェルをシンジュクは万一に狙いが外れぬように

誘導弾を発射するホーミングエミッションをスガッキーノ様に向かって放った、

 

一方スガッキーノ様は心の中で焦っていた、

 

「(なんで俺様の言う事をきかねぇんだよっクズ!おめーが戦わなければ俺が殺される

だろうが!あいつらはマジで人殺しを楽しんでやがる!キチガイどもだ

リリーパの時よりぜってぇ残酷な方法で俺を殺すだろう、だから動けモモラーノ!

俺様の輝かしい未来のためにっ!立て!立つんだモモラーノお願いだからっ!

必滅必滅必滅っ!)」

 

自分の命令をあっさり聞くと思われていたモモラーノが戦いを拒み反抗している事を、

部下は瞬時に殺されモモラーノが戦わなければ

取るに足らない自分だけでは勝ち目がない、なんとしてでも動かさなければならなかったのである、

しかし時は既に遅かった、弾丸が空を切る音がしたかと思った瞬間

スガッキーノ様は何かが地面に落ちる音を聞いた、その音のする地面を見ると

あの白く赤い渦巻き模様の付いたコントローラーが落ちていてその両端に

それを握る自分の両手首が落ちている、その手首から見る見る血が広がり雪を赤黒く差染め

地面に自分の血がボトボトと落ちる音が聞こえ呆然としていると

一気に痛みが全身を駆け巡る、

 

「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

スガッキーノ様は一瞬に両手首を失いあまりの激痛にのた打ち回った

そして手首だけでなくシンジュクのホーミングエミッションで両耳も失って

手と耳のどちらかを押さえようと惨めにもがき苦しんでいた、

 

「はい・ビンゴォ~♪ヒャハハハハハハハハ!」

 

シンジュクは満足げにそう言うと大声で笑い始めた

 

「コントローラー打てば済んでたじゃ~ん、シンジュクちゃんわざとやったろぉ~」

 

テツは愉快にシンジュクを責める

 

「そう言うテツちゃんとジャンもわざとやってるだろ」

 

「自業自得だな今度生まれ変わる時は人の役に立つ牛か馬にでも生まれ変わるんだな」

 

と突っ込まれテツとジャンは自業自得と返しのたうつスガッキーノ様を笑いながら見ていた、

 

「うっうぇぁぁぁぁ痛い痛いぃぃぃママ・・・ママ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

スガッキーノ様はなくなった両手首を振り回しながらアイテムパックの中身を

地面にぶちまけてテレパイプを見つけ出すとそれを発動させそちらに逃げ込もうと立ち上がり

 

「死ねぇぇぇぇ役立たず!」

 

と叫ぶとコントローラーを足で強く踏みつけた、

その次の瞬間に苦しみから解放され回復覚めやらずうずくまっていたモモラーノの体が今以上に

膨らんだかと思うと手足と胸から下が爆発しその苦痛で激しい叫び声をあげた

スガッキーノ様は最悪の事態に備えて体内に仕込んだ自爆装置を足で押して

始末しようと試み、ボタンを押すとテレパイプにまろびながら駆け込み「逃亡」した、

 

体を内部から爆破されたモモラーノはショック症状を起こしている

 

垣屋はこれは不味いと判断して周囲に檄を飛ばす

 

「スゥリンちゃんはルドルフたちの治療を!おわったらこっちへ連れてきてくれ!

ティアちゃんはワシの補助をしてくれ、テツっちゃんは・・・あそこに連絡を取ってくれ!

あとは次の襲撃がないか警戒じゃ!駆け足!」

 

垣屋はアイテムパックから緊急用の手術キットを取り出し血溜まりでショック痙攣を起こしている

モモラーノに向って駆け寄っていった

 

次は命を救うための戦いが始まる。

 

垣屋は四肢が欠損し水月より下が吹き飛んだたモモラーノに駆け寄って状況を調べた、

爆薬が四肢と体内の中に縫いこまれていたらしく都合が悪くなれば爆破して

処理するように仕込まれていたようだがベースとなるロックベアの強靭な

筋組織が体が四散するほどには火力が足りなかったようだ、

 

垣屋はアイテムパックから緊急用の手術道具を取り出すがこれでは到底足りない

すぐに研究所に連絡を入れる

 

「博士探索はいかがですか?今夜のメニューは・・・如何しましたか博士!」

 

と事の次第を知らないチヒロは笑顔で応答するが

垣屋の表情を見て何事かが起こったことを悟り指示を待つ顔がこわばる、

 

「チヒロやすまんが研究所の手術器具をありったけこっちに転送してくれぃ

あと道具だけじゃなくて麻酔や消毒液もありったけ頼むの!」

 

「はい!すぐに!」

 

チヒロはそれを聞くとすぐにその場を立ちそれらが保管されている部屋から

ありったけの機材を次々にテレポーターに投げ込み垣屋の元へ転送した、

 

垣屋のそばに次々と手術道具と薬品が宙に現れ地面に落ちていく

 

「止血!手が空いてるのは手伝え!」

 

「ガキどもは周囲を警戒!」

 

そして通信でスゥリンに連絡を取る

 

「スゥリンちゃんそっちはどうじゃ?」

 

「みんなのけがをなおしたのじゃー」

 

「ならルドルフとピョートルのどっちかをよこしてくれ」

 

「わかったのじゃー」

 

まずは血を止めなければならず主な出血の酷い場所は両腕と胴であるが

まずは胴の出血を止めなければならない、

 

そんな切迫した折に司令部のヒルダから連絡が入る

 

「垣屋!何をしているもう楽にしてやれ!」

 

ヒルダはこの生物兵器をあきらめるよう指示を出した、その頭の中ではこの件を

如何に処理するかという方向で考えているのだろう、

 

「うるさい!こんな不孝な終わり方許される訳がねぇだろうが!」

 

ほんの一瞬間を置いて気持ちを落ち着けると

 

「すまんのヒルダちゃん、アークスの立場ならヴォイドに逆らえんよな、ここから先は

ワシらで始末つけるからこの件は何とかもみ消しといてくれや」

 

垣屋は静かに言ったがそれは有無を言わせない何かがありそれを感じたヒルダは

 

「了解した天候不順で通信困難・・・幸運を」

 

といい通信を切った、

その後ろから地響きのような足音が聞こえる、レスタによる治療を終えたルドルフと

ピョートルの群れがスゥリンに連れられてやってきたのであった、

 

垣屋はピョートルのほうへ振り向くとモモラーノのちぎれた両腕に急いで局所麻酔をかけると

ピョートルと群れの仲間それぞれにそのちぎれた箇所を踏むように指示を出した、

いささか乱暴ではあるがこれで圧迫して出血を抑えると同時に時間を稼ぎ

胴の出血を止めようというのである、

 

垣屋は手術道具から鉗子を取り出し胴の部分の動脈と静脈にすばやく挟んで縫合していく

隣ではティアが大気からフォトンを取り込みレスタを唱えるが

体の欠損を回復する事はできずわずかな止血と痛みを和らげるに留まった、

そして垣屋は意識を失うと不味いのでモモラーノに声をかけ続けるよう指示を出す、

そこはパティが買って出た、

 

本来なら全身麻酔を施したいがなにせこの巨体であるそれだけの分量は持ち合わせていない

苦痛は伴うがそこは耐えてもらうしかない、

 

そして垣屋はジャンとシンジュクにモモラーノの腕を圧迫止血するために

ロープで輪を作るように頼み作った輪に腕と太い木の枝を通し枝をねじって圧迫止血するように

指示を出す、ジャンが左シンジュクが右腕を担当し徐々に腕を締め上げていき

充分にしめるとピョートルたちデ・マルモスに足を離すよう指示を出す、

 

「ここが熱帯エリアだったら速攻でアウトじゃったな、凍土は雑菌が少ないからのぉ」

 

垣屋はひとまず激しい動脈出血を止められて少し安堵し言ったが予断は許されず

テツに頼んだ手筈がどうなっているか気にしていた。

 

一方テツは・・・・

 

テツは少し離れたところに立ちいずこかへと通信をしていた、この緊急に手助けになる

相手をあらかじめ決めていたらしく予定通りにそこへ通信していたのだった、

程なくその相手先から通信の応答があり、

 

「テツさんじゃないですか!久し振りです!最近来られないんでどうかしたのかと~」

 

ご無沙汰であったのか通信先の人物は親しげに話しているがテツは間をおかずに

今ある事情を説明し通信相手に告げマグを通して映像を相手に送った、

 

「今ナベリウス北部エリア23近くにそっちのシップ、できればでかいヤツはないかい?

ヴォイドの生物兵器にされた人がいてなんとか助けてやりたいんだ!

船と治療のためにそっちへ受け入れてほしいんだよ!」

 

相手の通信士は映像を見て事態が飲み込めたのか了解と応答して近くを航行している

シップを端末で当たる作業をする様子が映し出されていると同時に

誰かを呼んでくるよう周囲に指示を出しているようであった、

程なくして通信士はテツに、

 

「近くでこちらに帰還中の資材輸送船がありますからそちらに向わせます

20分!いや15分下さい!頭領にはこちらから話をしておきます、絶対に・・・

絶対に助けましょう!」

 

通信士の独断による快諾にテツは感謝の意を示し、大声で垣屋に事の次第を

伝えた、

 

垣屋はモモラーノの脈を取っていたがショック症状もあり思わしいとはいえなかったが

ベースであるロックベアの強靭な体ゆえに持ちこたえている事に感謝していた、

テツの声に振り返り助けが手配できた事に謝意を述べる、

 

ティアとスゥリンは垣屋の指示に従い体にフォトンを取り入れ間髪入れずにレスタを

発動しなんとか毛細血管などの止血には成功していた、

 

パティは意識を失いかけているモモラーノにつとめて笑顔で声をかけ続ける

全てに絶望していたモモラーノは苦痛の中ひたすら

 

「もういい・・・ころ・・・して・・・ころして・・・」

 

と繰り替えすが常に前向きなパティは励まし続ける

 

「あきらめちゃダメだよ!私たちがゼーーーーッタイ助けてあげるから!がんばろうよぉ!」

 

周囲の警戒を誰に頼まれずに行っていたルドルフと群れの仲間はモモラーノの顔を

なめてパティと共に励ましている、

モモラーノはいつ失うか分からない意識の中で種族を越えた優しさを死ぬ間際に

受けられた事を喜んでいた、

 

テツは巣から少し離れた場所が着地に耐えられるか確認するとその場所に救援に来てくれる

輸送船が分かりやすいようにマーカーを設置して船の到着を待つことにした、

 

そしてねねは焦っていた、こんな時に自分が何も出来ない無力感にさいなまれていた

右往左往するが自分にできる事が見当たらない、その惨めさに自然と涙があふれ始める、

 

しかし垣屋はそれを横目に見てねねに言った

 

「ねね良くやっとるよ、何も恥じることはないからのぉ」

 

そういうと笑って見せたが止血した患部に消毒液を噴霧しながらつぶやく

 

「来るのが輸送船っていったのぉ・・・機材や薬が足りんのは同じ事か・・・

こんな事ならもっと備蓄しとけばよかったわい・・・」

 

ねねは涙をぬぐいながら垣屋のぼやきを聞いていたが何かハッとした顔で垣屋に言った

 

「旦那しゃまっ!お薬とかいっぱいほしいのかや!?」

 

垣屋はそうだと応えるとねねは大きな声で返す

 

「母様に頼んでみるのじゃっ!」

 

そう言うと慌てながら幾度も取り落としつつ通信機で実家に通信を取り始めた

ねねが通信をはじめると程なくメイド長のナターシャが応答しのんびりとした雰囲気で

ねねに話しかける、

 

「おやおやお嬢様から連絡を入れてくるなんて珍しいひやっひやっひゃっ」

 

「ナターシャ!すぐに母様につないでほしいのじゃ!早く!早くなのじゃ!」

 

ねねは何とか名誉挽回をしようと少々ボケ気味のナターシャを急かした

 

「はいはいはいはい・・・・」

 

のんびりゆっくりとナターシャはユキノに向って歩いていく

茶運び人形のように粛々と歩むナターシャにねねは苛立ちを感じざるおえなかった、

 

「早くするのじゃ!早くするのじゃっ!」

 

「はいはいはいはい・・・」

 

すると遠くから何やらぶつぶつと文句を言う聞きなれた声が聞こえてくる

つかつかと硬いヒールの聞こえてくる、すると声が大きくなり

 

「んまぁーーっ!なんですのっ!ねねさんっ!あれほど母様の成金にふさわしい

ゴーヂャスティータイムを邪魔してはいけませんと何度もっ!」

 

ねねの母ユキノはあからさまに不機嫌で鋭いキツネ目がより釣りあがり

不機嫌さをより一層際立たせている、

短気な彼女はティータイムを邪魔される事を事の外に嫌うのであった、

しかしねねは普段とは違い萎縮する事無く母に言った、

 

「母様!助けて欲しいのじゃ!かわいそうな人を助けてほしいのじゃ!

お願いお願いなのじゃ!」

 

ねねは無神経な母に涙を流しながら助けを求め、

 

「・・・!ねねさんっ!どうしたのです?母様に話してごらんなさい?」

 

ユキノはその顔を見てこれがただならぬ事である事を察し右手に持っていたクッキーを

急ぎ下品に口へ運ぶとそれを噛み潰しねねに事情の説明をするように促すが

 

「凍土にみんなと行ったのじゃ敵が来てかわいそうな人がきて・・・」

 

ねねは焦り冷静さを失っていたので要領を得ない、

それを横で聞いていた垣屋はねねから通信機を受け取ると自らが応答に出た

 

「急な事ですまんの、実はヴォイドの犠牲者を救うためにどうしても薬剤や

移動可能な手術設備が必要なんじゃ、ユキノちゃん確かヘスティアにコネがあったろ?」

 

「!」

 

ユキノは手術のために体中血だらけになった垣屋を見て一瞬驚いたが

それが怪我でない事を確認して胸をなでおろした、

 

「そりゃもちろんでございますの!我がアルニム家はヘスティア慈善事業団に

ゴージャスな出資をしており・・・」

 

「じゃからなんとかヘスティアのほうに頼んでみてくれんかのぉ、こいつを

助けてやりたいんじゃ」

 

そういうと垣屋のマグであるオパオパは周囲を飛び回り撮影した映像を

ユキノに転送しヴォイドの非人道的な実験で作られた生物兵器で

スガッキーノによって用済みの自爆をさせられた事を説明した、

 

「・・・・なんですのこれは・・・どう言う事ですの?」

 

その映像を見てユキノは絶句し顔が見る見る赤く紅潮している、ユキノもまた

この非道なヴォイドの振る舞いに怒りを覚えたのであった、

 

「なんて事を・・・・絶対許せませんの!分かりました!すぐに掛け合います

座標の割り出しも必要ですから通信はそのままにいいですね!」

 

そう言うとユキノはのんびりとお茶を注いでいるナターシャと壁にもたれて

だるそうにしているステファニーを急かしてヘスティア慈善事業団へ通信を始めた、

 

何事も人頼りは良くない事であるが垣屋はユキノに頼らざるを終えなかった

そしてそれを思いついたねねの手柄をほめるため頭をなでようとしたが

自分の手が血だらけなのに気付きやめる事にした、

 

その時上空から轟音が響き一同は空を見上げる、先ほどテツが通信で手配した

輸送船が到着したのだ、テツは急ぎ着地誘導を行っていてる、

着地の邪魔にならぬようかさばるピョートルたちはそそくさと場所を開け

輸送機は無事に着地して資材搬入のハッチを開き乗組員が周囲を確認すると

中に搭載されていた空の大型コンテナを外へ放り出し場所が開いたと合図を送る、

 

「早く来てくれたねさすがだよ」

 

テツは早い到着に感心しつつ感謝した、

要請から15分と言ってはいたが実質8分ほどで駆けつけモモラーノを救う為に全速力で

来たのであろう皆その心意気に感謝の気持ちで一杯になった、

 

そして中から一人の女性が駆け出してくる

褐色の肌に肩までのボブカットに刈り込んだ銀髪が揺れて目が血の様に赤く

背は高くはないが有無を言わせぬ威圧感をかもし出している、

アークスであるならその名を知らぬ者はいないとも言われる

トップクラスのダーカー殺しとしてその名を轟かせるラヴェールその人であった、

 

ラヴェールは一同に駆け寄ると鋭い目を向け

 

「大変な事になったね・・・あのクズ野郎どもっ!」

 

彼女は嫌悪の表情を浮かべるとすぐにモモラーノを船内に収容するように促す

皆は挨拶をそこそこに収容しようとするが四肢が吹き飛んだとはいえロックベアの体は重く

びくともしなかったがピョートルは大きく吼えると他のデ・マルモスと共に

モモラーノのちぎれた手と胴に優しく鼻を巻きつけると垣屋の指示に従い

船内へと運び入れた、

船内に下ろすとピョートルたちは船外へと戻り時間が押しているため

ヘスティアの救援を待たずに離陸する事に決まった、

 

「ルドルフ、ピョートルありがとよ今度みんなでゆっくり遊びに来るからの」

 

ハッチを閉める前に垣屋たちはルドルフとピョートル、その群れの仲間たちに感謝の

言葉をかけ優しくなでるとまた来るからと手を振った、ハッチが閉まり輸送シップは

徐々に離陸し上空へと浮かび上がって行く、

 

「ウォォォォォォォォォォォン」「パォォォォォォォォォォォォォォォォ」

 

その輸送シップの下では一行を見送るようにピョートルとルドルフたちの雄たけびと

遠吠えが聞こえその姿は徐々に小さくなっていく

彼ら凍土の優しく勇敢な戦士たちの思いを無駄にしないため戦いは続く。

 

 

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