PSO2水滸伝傍ら(かたわら)の群星   作:垣屋越前守

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軍議は続く

 

参加者のモニターに映像が流れそれに合わせて垣屋が解説を入れる

 

「ナベリウスを発ってからしばらく航行をしているとツシマの甲板に2つの転送反応が

出てのぉそれがこいつらよ、一人は人間型、もう一つは今までに見た事のないタイプの

ドラゴン形のエネミーじゃ」

 

周囲からも始めてみる竜に小さくどよめきが起こる

 

「ただこいつは後で説明するがアムドゥスキアの竜族とは全く異なる竜で

おそらくヴォイドのクソ野郎が非人道な実験で作ったんじゃろう、

一緒に来た小娘との意思疎通は出来ているようじゃった」

 

垣屋は竜族の説明を程々に切り上げ暗殺者気取りの少女へ焦点を移す

竜よりもこちらを問題視している様相であった、

 

「そしてラヴェールちゃんとうちの面々によってバカ二匹は無様で惨めに

敗北たんじゃがその時に残してったのがこれじゃ」

 

垣屋はアイテムパックからゼルシウスで出来た刃とハドレットの尻尾の一部を

取り出して皆が良く見える場所へと無造作に置いた、

 

「映像を見てもらうと分かると思うが刃は小娘の腕の橈骨に直結しておる

このような武器のインプラントはオラクルの法律では禁止されとるからいかに

出所が怪しいかはよく分かるはずじゃ」

 

画像を暗殺者気取りの小娘の腕が大きく写っているところで制止し透過処理を

施した画像が映る、先に立てられた仮説の通りでその刃腕の骨と同化しており

仮説が裏付けられる結果が伝えられた、

 

「んでこれ見て欲しいんだわ」

 

さらに映像を送ると何本ものゲノム情報が並列された画像が皆に送りつけられた

 

皆が疑問に思う顔をするのを垣屋は待ちその機が訪れると垣屋は説明を始める

 

「まずは左からじゃ、ヒューマン女性、次にデューマン女性、そして次に小娘の

ゲノム情報じゃよ、この小娘は見た目こそヒューマンじゃが

ゲノムにデューマンより濃い竜族のゲノムが入り込んでるんよな

それだけじゃない、色々な生物のやつらの思う良いとこ取りで細切れにつなげられた

ゲノムも存在しておった、普通ではありえん内容じゃ

後で説明するドラゴンモドキのと同じアムドゥスキアの竜族のそれと比べでも

あまりにいびつで不自然な情報じゃよ、」

 

んでヒューマンの部分を該当する人物を検索にかけてみた結果がこれじゃ

 

画像には4人の少女が映し出されていた、しかしよく見ると服装や髪型などこそ

違うもののその顔立ちは全く同じで体格もほぼ違いは見られない、

 

そしてその中でオラクル市民として生活している3人のデータが

全員に配信されるが多少いびつな箇所があるがこの3人の危険性は低いと説明した、

 

「んで・もんだいは・こいつだ」

 

垣屋は残る一人のゲノム情報とそれと比較するためだろう先ほどサンプリングした

暗殺者気取りの少女のゲノムを隣に並べた画像を皆に送信した、

残り一人の少女はここにいるほとんどの者が知っていた

オラクルで3ヶ月もしないうちにデビューから人気ランキング1位に躍り出た

クーナと言う娘だ、

 

「いいなぁ~私もアイドルになってみたい!」

 

パティは年頃の娘らしい発言を無邪気にのたまうが周囲の空気を珍しく察し

席で大人しく話を聞く事にした、

 

資料として何かの歌番組で持ち歌う映像が追加で送信される、

 

「ほんの一部違うようですけどほとんどゲノム情報は同じでございますわね」

 

ユキノは瞬時にデータに目を通し垣屋に見た感想を述べると

 

「さすがじゃなよく気付いた解析結果は明日まで待って欲しいんじゃが

多分何らかの刺激を与える事で急激に体のゲノム情報、もとより体の構成を

変える能力があるとワシは見ておる、

例えば平素は何らかの消耗を抑えるためにヒューマンモード、戦う時には

人工竜族の力が前面に出る戦闘モードみたいな感じのな」

 

「そう言えば昔にアークスで研究されていたと言うゲノムの体内変換研究が

されていたと聞いたことがありますがそれらが流用されている

可能性は考えられませんか?」

 

フロリヌスは垣屋に自らの予測をぶつけると垣屋はさらに満足げな顔をして見せた

 

「いいとこ突くな!昔は今みたいに体のフォトンの流れを自由に調整できなかったからの

じゃから体の内部構成を人工的に変える事でフォトンをコントロールして

適正クラスを変えられるようにしようとしたり素質のないヤツを

前線に出せるようにと考えられた、

ただし第三世代と呼ばれる連中が出てきて研究は中断、もう200年以上前の研究だわのぉ」

 

「ヴォイド自体が生きた化石みたいな組織だからねぇ~ノウハウの蓄積なら

たっぷりあるだろうし古い研究のアレンジならすぐに実用できて良いかもね」

 

「ちょっといいかしら?」

 

テツも意見を挟み垣屋の説明が続くかと思われたがそこで意外な人物が手を挙げた

ユキノのお付メイド、ステファニーである、発言の許可が下りると

ステファニーは少し目を細めいつのも不真面目な態度とはうってかわり

まじめな顔で話し始めた、

 

「そういえばこのクーナって子色々と黒いうわさがあるのよね・・・、

なんで持ち歌がたった二曲しかなくてアイドルとしてはダンスも発声も並以下なのに

急にトップ躍り出て人気を維持できるのか・・・

そして何の実績もないのに急にアークスと政府のイメージアーティストに抜擢って

おかしくないかって」

 

「ステファニーさん僻みはみっとものぅございますの!」

 

ユキノはずり落ちたメガネを指で上げながらステファニーを諌めるが

彼女はすぐに反論する、

 

「私は別にアイドルなんかなりたくないわよ、でねクーナの歌が流れている時って

うまく言えないんだけどなんかいやなものを感じるのよね、何かを押し付けられたような」

 

「やっぱり僻んでるのじゃ!」

 

ねねは笑顔でステファニーをからかうと

 

「叩くわよバカねね!」

 

と叩くそぶりをして怒り出す、

 

「わらわもステファニーさんとおなじなのじゃー」

 

そしてこれはステファニーだけの思い込みかと思われたが

彼女とほとんど接点がなく口裏の合わせようのないスゥリンも

押し付けられているようなクーナの歌が嫌いだと言い始めた、

 

「案外的は得ているかもよ」

 

ラヴェールが口を開く

 

「みんなクーナの後ろ盾がどこか思い出してみなよ、政府とアークス上層部とヴォイドだ、

みな互いに癒着し合ってるじゃないかあいつらは何をしたっておかしくはないよ、

私もアークスシップで情報収集していてあの女の周りは異常だと思ったことがあったんだよね

なにか洗脳・・・シビリアンコントロールの小道具としてクーナが使われてる

可能性だって否定できないよ」

 

「つまりは洗脳や戦闘もこなすヴォイドの人間型生物兵器だと・・・」

 

「可能性は否定できないと思う」

 

フロリヌスはラヴェールに問うと彼女はおそらくと答える、

 

「その娘の歌や映像を解析すれば何か分かるかもしれませんね・・・・

私も今聞いていてこの娘にはなにかこう・・・不快・・・・いえ、違和感を

禁じえません・・・」

 

今まで全く口を開かなかったユノーも言葉を選びつつ彼女らの意見に同意をした

 

「承知しました、クーナに関してはこちらの解析班に仔細を調べてもらい

諜報部とも連絡を取り合い、新しい情報が分かり次第皆様と情報の共有をしたいと考えています」

 

フロリヌスがユノーに答えると隣に座るミツヨシはフロリヌスとアイコンタクトを取ると

解析班と情報部に通信をまわしクーナの歌や活動その他の情報を

解析取得するよう指示を出した、

 

クーナの件は解析待ちと言う事で議題が結審し垣屋は傍に置いていたドラゴンモドキに

話を戻す、

 

「このドラゴンモドキじゃがこれはアムドゥスキアの二足歩行竜族とヴォルドラゴンの

ゲノムと比較して欲しい、一部はアムドゥスキアの竜族と共通の部分があるが

極端に筋組織の増強がなされておるし生理構造としても不自然な点が多い

分かりやすいのは内蔵がほとんどなくて腹の部分が極端にへこんでいる所とかの、

あれじゃ物理的に栄養補給が出来んからそんなにしないうちに死ぬ、

あきらにかにヴォイドが戦闘を目的として短期使い捨てを念頭に作ったと

みていいと思うのよな」

 

「じゃあ最悪裏で量産されてる可能性もあるって事かい?」

 

シンジュクは垣屋に質問する、熟練のアークスなら先のように事も無げに

対処も出来るであろうがアークス全体を平均化して考えればこれは場合によっては

とんでもない脅威でシンジュクはそこが不安であった、

 

「当たりじゃな、すでにオラクルの中にも何体も入りこんどるよ、もっとも

デューマンの姿なり他の種族の肉はかぶってるけどの」

 

「へぇ~どの辺りにいるんだろうねぇ~?」

 

「そのへんは精査もあるからおいおいの」

 

垣屋は言葉を濁した、そして程なくして

シンジュクのアイディスプレイに垣屋からのメッセージが流れる

その流れる文字にシンジュクは目を疑った

 

「すぐ近くに一匹いるぞ、よく知ってる名前じゃイフェメラあれがそうだ

今までに一緒に動いてきた事を思い出せば思い当たる節は出るんじゃないかの?

観察力が足りんぞ!」

 

「なんだって?じゃ源さんそれ黙っててそのまま迎えてたのか」

 

「まぁのあいつら棚ボタ的にワシらの探りも入れられると思ったみたいじゃな

しかしリリーパで潮時だと思ったんじゃろう、だから姿を消した

そう言う事じゃよ」

 

シンジュクは珍しく驚き飛び退きそうになるが周囲の状況を考え

何事もなかったように平静を装った、もし彼女が生身の体であれば

全身に冷や汗と脂汗が出て隠し事がばれていたかも知れにない

今はキャストである自分の体に感謝するしかなかった、

 

「あのチビどもが動揺するといかんからだまっとけよ分かったの?」

 

垣屋はシンジュクに釘をさし、シンジュクはコクコクと首を縦に振るしかなかった、

 

「全くヴォイドと言うのはろくな事をしないのだな、私が若い頃はやんちゃが過ぎて

ろくでもない事を多々したものだが・・・」

 

ジャンが滔々といつもの長話を初めだし参加者の顔にも開始時と比べ集中力が

落ちてきたことが伺えた、フロリヌスはそろそろ初日はこの当たりでと思い

その旨を告げようとするとふいに垣屋の通信機が着信音をあげる、

 

垣屋は何事かと通信機を取るとディスプレイにチヒロの顔が映し出されている

笑顔であるため深刻な話題ではなさそうだ

 

「あの・あの、皆さんいまどちらですか?」

 

あまりにも目の前の事を処理するのに夢中になりチヒロの事を

すっかり忘れていた、垣屋はそれを詫び事情を説明し数日は戻れない旨を

チヒロに伝えた、そしてディスプレイを反転させ周囲の映像を見せる

 

「ほれチヒロや懐かしくないかの、ワシらジェロームにおるんよ」

 

チヒロの顔を見止めるとフロリヌスが口を開いた

 

「チヒロ久し振りだな、博士が困らないようお世話はしっかり出来ているか?」

 

やさしい労わりに満ちた声でフロリヌスは語りかけている

チヒロはフロリヌスの姿を見るとより安堵した笑顔を浮かべ

 

「兄さん久し振りです、私にできる事は全力でがんばります、元気そうで良かったです」

 

2.3言葉を交わすとチヒロは軍議の最中である事を察して通信を切った

 

「おじちゃんがチヒロさんのお兄ちゃんとはしらなかったのじゃー」

 

スゥリンは以外そうに言うとフロリヌスは

 

「チヒロとは血こそ繋がっていませんがチヒロはこのシップで生まれ育ったんですよ

このシップに居る者全てが兄弟ですし家族なんですよ」

 

と嬉しそうにそして誇らしげにスゥリンに言った、

 

「今日の所はここまでにしましょう、皆様もお疲れと思いますので

お食事をご用意いたしましたどうぞお召し上がり下さい」

 

そしてフロリヌスは今日の軍議はこのあたりで切り上げ明日同じ時間に開く事を

皆に周知し閉会を宣言した、

 

そして合図をすると軍議の間に次々と良いにおいのする料理が運ばれて

一同のテーブルに並べられていく、皆疲労の為空腹であったため

何よりの褒美であった、会食は先ほどの重々しい雰囲気とは打って変わり

和やかにしてにぎやかに進みそれぞれが親交を暖め遅くまで宴が続いた、

 

新光暦238年4月5日午前6時17分 オラクルシップ第447番艦ジャン・レオン・ジェローム

食堂

 

垣屋とテツとシンジュクは早い朝食を3人で食べていた、他のメンバーは昨日の疲れもあってか

いまだ夢の中である、

 

「いやぁ~昨日の会食もうまかったし今朝の朝ごはんもたまらないねぇ~

コックさんの腕もだけど食材が良くなきゃここまでにはならないよ」

 

テツはいつものように食事を頬張りながら言った

 

「源さんの指導が実を結んだ結果じゃない?アークスシップの中でも

ここまでの料理はそう食べられないよ」

 

シンジュクも食後のコーヒーを飲みながら顔に満足感を浮かべている、

キャストであるテツとシンジュクは基本的に疲労を感じる事はなく睡眠を

生身の体を持つ者たちとは違いほとんど必要がない、

垣屋は生身の人間であるが今日は軍議が始まる前にすべき予定が詰まっている、

 

「ここの住人の努力の結晶よどんなに指導しようが銭と資材突っ込もうが

やる気のないヤツじゃどうにもならん、ワシの指導なんか関係ないのんよ」

 

「こういう所だけは謙虚なんだねぇ~」

 

テツが茶化すと垣屋はじろりとテツを見るが何かを言い出そうとする前にテツが

口を開いた、

 

「源さん今日は生産地の視察と指導に行くんだろ?俺も連れてってくれよぉ~」

 

「なんじゃ現地の飯と試食が目当てか?短小ロボのくせに食う事ばっかじゃな」

 

しかし垣屋はそれで良いと思っていた、テツは平素だらけていて無能そうに見えるが

戦闘能力はお墨付きであり軍部にいた頃の経験から機械関連や工作に長け

そして何故か舌が肥えているため食材の評価にうってつけな人材であった、

 

「あたしはパーツの換装をしたいからふたりで行っといでよ」

 

シンジュクは個人行動する旨を二人に告げた、

 

朝食をおえると食べた食器を返却口に返すと3人は席を立ち目的地へ向う

何も予定がなく気楽にできるお子様たちや成金と違って垣屋は今日も慌しい、

ハドレットから取った細胞をいくつかに分けて数種類の特定の刺激をそれぞれに与え

細胞の変化を実験機器で確認するための支度とセット、

そしてフロリヌスから会食の折にジェローム勢力化で生産されている

農作物や畜産物の生産指導と監査をして欲しいという要請があったため

全てをこなすために早起きをせざるおえなかったのである、

 

農業生産エリアに向う小型のシップがすでに波止場で待機しており

フロリヌスとラヴェールがシップの入り口で二人を待っていた

 

「おはようございます、博士、テツさん農業エリアの視察をして頂き

ありがとうございます、皆お待ちしているようです」

 

「昨日はすまんね飯の食材といい調理といい文句の付け所が無い

みなの努力たしかに味あわせてもらったよ」

 

垣屋とテツは昨日の歓待の礼を言うとフロリヌスは謙遜し

シップに乗り込むように促し程なく視察地へと発進していった、

 

船内ではラヴェールからの通信でモモラーノの経過が聞かされ移植は無事に成功し

今は眠っているので視察が終わったら共に見舞いに向かう事を提案され

垣屋とテツは承知し重要な話や時として取るに足らぬ雑談をしながら現地へと向った、

 

その現地では垣屋は顔なじみであったらしく住人に大いに歓迎され

農場を視察して回ったが住人の熱意と誠意に溢れた農場の農作物や家畜は

文句のつけようがなく栽培肥育され垣屋が口を出す所は見出す事ができず

無能な役人のように周囲を見て回り生産物の試食をするに終始した、

 

スパルタクス党勢力化で生産された農産物や食肉はその品質から

他のシップへの輸出も増え今では一種のブランド化が進んでおり

それはシップの活力ともなり人々の命を支える源ともなっているのだ、

 

他のメンバーは垣屋たちが視察に向うシップが離陸して3時間ほど経ったころから

目を覚まし眠い目をこすりながら食堂へと向った、

昨日の疲れから熟睡していたためで生身の体なら無理からぬ事であった、

 

「だんなしゃまがわらわを置いて行ったのじゃっ!」

 

「ねねちゃんわらわとこのシップを探検するのじゃー」

 

「行くのじゃ行くのじゃっ!」

 

ねねは垣屋に置いて行かれた為少々ふくれ気味であったがスゥリンとパティが

ジェローム内を遊び歩く事を提案すると喜んでそれに同意し

急いで朝食を口に運んだ、

 

一方ユキノは向かいの席での言い争いが気になり耳を傾けていた

その声の主は昨日の軍議にも出席していた宇宙海賊いやスパルタクス党市民軍

連合艦隊を運用する兄妹であった、

 

「どうすんのよお兄ちゃん!あんなに高いパーツガンガン頼んで!

うちにそんなお金あるわけないでしょ!」

 

妹の羊子は請求書の束をテーブルに叩き付け兄に向かって怒鳴り散らしている

遠めに見るとどうやら昨日鹵獲したヴォイドの高速艦の修理費用の事で

もめている様であった、

 

「んもぉ~羊子ちゃん怒るとしわがふえるわよん♪こういう時はね景気良くババーンと

良いもの頼んじゃえばいいのよ、いざとなったらフロリヌスちゃんに請求回せば

いいじゃない♪」

 

羊子の顔が見る見る赤くなっていく

 

「いい加減にしなさいよ!前もそれでフロリヌスさんに迷惑かけたでしょ!」

 

羊子は再び黒いリモコンを取り出すとスイッチを入れようとしていたが

既に席を立ったユキノは羊子の手を掴んでそれを止めた、

羊子は後ろに注意を払っていなかったので驚き振り返るとユキノは眼を伏せ顔を振り

スイッチを入れるのを制止した、

 

「昨日はお世話様でございましたの、いけません事よ、お兄様にそのような仕打ちをしては」

 

「そうでもしないと分からないんですよまったく・・・」

 

羊子はユキノの鋭い視線を避けて請求書の山に眼をうつしため息をつく、

ユキノも羊子の視線の先にある請求書の束に目を移しそれを手に取ると

パラパラとめくって全てを瞬時に頭に入れ羊子の顔を覗きこみ言った、

 

「この請求書、私が肩代わりしてもよろしぅございますの!」

 

ヒツジ兄妹は驚いた顔でユキノの顔を見つめている、その金額は普通にポンと出る

金額ではなかったためである、

 

「フゥ~ウなんてナイスなお嬢さんなのかしらん♪じゃあお言葉に甘えて

お・ね・が・い ね♪」

 

ヒツジはユキノの手をなれなれしく取ると問題が解決したとふんどし一丁で

大はしゃぎしている、一方羊子はユキノの顔を唖然とした顔で見ている、

 

「しかしこんな大金肩代わりって・・・」

 

「心配しなくてもよろしぅございますのよ!我がアルニム家は代々続く成金の

家でございますの!このくらいどうと言う事はございません事よ!

オォォォォォォォォォッホッホッホッ!オォォォォォォッホッホッホォッ!」

 

食堂全体にユキノの高笑いが響き食事をしている人の視線が集中するが

ユキノは体をのけぞらせ口に手を当て周囲にかまう事無く高笑いを続けている

 

何事かとスゥリンとパティ、ティアはねねとナターシャ、ステファニーを見て

目で答えを求めるとナターシャはニコニコと微笑みながら

 

「奥様は浪費をする時にはいつもああやって高笑いをあげられるんですよ」

 

と何事にも動じる気配なく笑顔で答えた、

 

「バカユキノああなったら止まらないのよねぇ~」

 

ステファニーは平然と主人をバカ呼ばわりしながらトーストに乗った目玉焼きを

吸い寄せて口に運んでいる、

 

ユキノは続ける

 

「ただし!」

 

ヒツジ兄妹はその鋭い声に体を緊張させる、ただしに続く言葉を恐れていたためである

どんな要求がなされるのか一気に不安がよぎる、

 

「私に艦船の扱い方と戦い方を教えて欲しいのでございますの!修理費用と

必要ならもっと投資します、これが授業料と言う事でよろしぅございますね?」

 

兄妹の顔が明るくなる、想像していたようなリスクを負わずに済み、艦船の扱いは

兄妹の厳密に言えば妹の得意分野であるため造作もない事であったからだ

 

羊子は承知する旨を伝えるとユキノは早速彼女の端末に必要な修理費用と

それに上乗せし当面食い扶持に困らぬに充分な金額を振り込んだ

それはとんでもない額であり羊子は萎縮し兄は問題解決を喜び

ふんどし一丁で意味不明な小躍りをしている、

羊子はいつから講習をすればよいか訪ねるとユキノは差しさわりがなければ

今すぐ!と強い調子で返した、

モモラーノ移送作戦の時に見せて自分の未熟をすぐに克服したいという

熱意が、そしていつもの有閑な生活に刺激と潤いを求める彼女の情熱が

そうさせるのであった、

 

羊子は承知し食事のトレーを返却口に返すと早速自分達の艦隊のドッグへと

ユキノをいざないお付のナターシャとステファニーもそれに従い食堂を後にした、

残された面々は事の成り行きに呆然としていたが

ねね、スゥリン、パティはジェローム内を遊びまわる事に決め

ティアは昨日垣屋に頼まれたハドレットと暗殺者もどきの細胞の実験の留守番

 

ジャンは手持ち無沙汰になったのでモモラーノの見舞いと

軍議までの間時間つぶしをする事とし食事を終えた面々はそれぞれに散って行った。

 

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