PSO2水滸伝傍ら(かたわら)の群星   作:垣屋越前守

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地下坑道へ

 

新光暦238年4月8日午前9時14分 惑星リリーパに向うキャンプシップ

 

昨日の温かい宴、そしてその後に楽しいおしゃべりをしながらじゃれて遊んだ

スゥリン、ブリュンヒルデ、パティ、ねねの4人組は昔からの友達のように打ち解け

 

「それじゃ気を付けて行ってくるんだよ」「スゥリンちゃんママも応援してるわよ」

 

「ありがとなのじゃーいってくるのじゃー」

 

「おじちゃんおばちゃん私がしっかり守るぞー」

 

スゥリンの両親とクリスティ、パイオニア一号に見送られ惑星リリーパ行きの

キャンプシップに乗り込んだ、

これから探索をする惑星リリーパの地下坑道はリリーパ砂漠地帯の地下に広がる

機甲種を作り出した謎の文明が資源鉱石を採掘する為地下に張り巡らした

地下迷路のような物だと言う、

そしてそれを守るためなのか現れる機甲種は問答無用で侵入者を襲ってくるので

警戒が必要だと大人たちは言っていた、

 

「ええか何度挑戦してもええから自分たち「だけで」ビッグヴァーダーを

ブッ潰してこい、褒美は約束どおり遊園地!それもラッピーランドじゃぞ」

 

「4人でいくのは不安なのじゃー」

 

垣屋のごほうび宣言の後にスゥリンが真っ先に禁句をもらし周囲に動揺が走り

まるでかごを叩かれた小鳥のような有様であり陽気さを孕むも騒々しい、

 

「だいじょうぶだぞー私がついてるからぁー」

 

他の3人よりわずかに経験のあるブリュンヒルデは前向きな言葉で返す

 

「そうそうぱっぱと片付けよ!」

 

「なのじゃなのじゃパッパなのじゃっ!」

 

それにパティも同調しねねも同調したが内心では4人とも不安は隠せなかった、

いつもは研究所の大人たちなりフィールドに探索に来ているほかのアークスもいたので

どこか心の中で背中を預けそれが不安であったり逃げたしたい気持ちを抑える

よい支えとなるのであるが、

今から行くフィールドに大人たちがいると言う保証はない、

最悪4人で目標を達成させられる可能性もある、

 

目的地へはそろそろ到着するはずでその時それぞれの通信機にオペレーションを

担当するヒルダから連絡が入りアイディスプレイにいつもながらの

美しさより厳しさが前面に出た顔が映し出される、

 

「各員まもなく目的地へ到着する、坑道内では時として通信が通らないエリアがある

その地域の性質か何かが関与しているかは不明だ、

その時には各員の自己判断での坑道となるがくれぐれも軽々しい行動は・・・」

 

画像にノイズが入り声が聞き取りづらくなりヒルダの顔が歪んで映し出される

今しがたヒルダが言った通信障害が起こっているようだ、普段も通信や指令の

遅延で既に行動を終わらせた後に指示が来る場合があるが

それとは違い通信そのものが阻害される物のようであった、

 

「ヒルダちゃんが面白い顔をしているのじゃ!」

 

ねねは画像のゆがみで福笑いのようになったヒルダの顔を見てありもしない宙を

指差し大笑いしている、

 

「うむ・私の顔は上出来だな」

 

パティがヒルダのどことなく鼻がかかった声を自らの鼻をつまみ真似ることで

4人は大笑いし座っているベンチを転げまわった、

 

現に地下坑道エリアでは通信が届かない故に指令が履行できなくなったり

緊急の救援が間に合わなくて命を落としたアークスも少なくない、

大人たちはそれを知っていたがあえて試練と思い向わせたのだろう、

 

「まもなく目的地へ到着する着陸準備にかかれ!」

 

パイロットからの指示で4人は着陸態勢に入り装備を体に帯びる

キャンプシップは今回は安定した地面があり敵の存在が見受けられないため

地表に着陸しハッチを開くと4人はリリーパの強烈な熱風を顔に受け

遠くに砂嵐が吹き荒れるのを眺めながら前へと歩みだした、

 

「ぶへー砂が口に入ったよぉ」

 

不満を述べつつパティは進む、その眼前には緩やかなスロープが地下へと延びており

半ば風化した何かの車輌の通った軌跡が刻まれている、

いつの頃かは不明であるがここからリリーパの豊富な鉱石が採掘されては

搬出されていたのであろう、惑星リリーパがオラクルに発見され

おおよそ90年以上経っているのだがいまだその謎は解明されていない、

 

「採掘基地にダーカーの大群?了解!すぐに向かう!」

 

「嬢ちゃんたちあとで迎えに行くから探索が終わったら近くで待っていてくれ

待ちきれなければほかのキャンプシップを余分だぞ」

 

「了解ー分かったぞー気をつけて行って行くんだぞー」

 

4人の無線にヒルダとは違うオペレーターの通信が割り込んできた

リリーパの資源採掘基地にダーカーの襲撃があり至急負傷者の搬送を

支援するようにと通信が入り、ブリュンヒルデが応答する

間髪いれずにキャンプシップのハッチが閉じられ離陸し採掘基地とやらに向かって

離陸して行った、

 

4人は進むここから先は未知の領域であるが各々が一人じゃない大丈夫と

自分に言い聞かせて前を向いてスロープを降り薄暗いその先に、

 

スロープを降り立つとここは広い通路で天井までの高さはゆうに

20m近くはあるだろう、コンクリートのような石材が壁と天井を構成し

お子様たちには理解できない様々な機械や運搬用の装置が取り付けられている

どこかから光の取入れ口があるのか照明らしい物がないにも関わらず

文字が読めるほどの明るさが保たれていた、

 

そして静寂わずかに何かか動く音が聞こえるが無音に近いほどの静寂

この中に本当に機甲種がいるのだろうかと4人に思わせるに充分であった、

 

「やっぱりだめかー」

 

「何が?」

 

「レーダーにジャミングが入って内部の地形が読み取れないぞー」

 

ブリュンヒルデはレーダーをチェックするが予想通りレーダーが

うまく作動せず周囲の状況は目で見て判断するしかなさそうであった、

 

「だいじょうぶ!だいじょうぶ!さぁ行こ!」

 

パティの声が坑道内に反響する、熟練のアークスがいれば敵にこちらを察せられると

説教の一つでも飛びそうな振る舞いだが、4人ともそれを咎めるほどの錬度は

持ち合わせていなかった、乾いた足音を4人は響かせて内部へと進んで行った、

 

坑道内は外の厳しい日光が届かないため乾燥している事も手伝い

ひんやりとして心地よい、暑さが苦手なねねにとっては予想された苦痛が

和らいだ事はかすかではあるが福音と言えた、

 

800mほどだろうかまっすぐの通路を子供なりに目視で注意しながら進む

通信障害でレーダーにノイズが入り役に立たないためである、

 

4人の足音だけがひたひたと坑道に響く思うような敵が現れないためか

ほんのわずかに歩いただけで気が緩む4人であったが

ブリュンヒルデがかすかな機械の起動音を耳に拾う

 

「なにかいるぞー、みんな注意するんだー」

 

斧のような形にたたまれたタルナーダをソード形態に戻して警戒を促す

ガチンと重厚なタルナーダの展開する音が4人に緊張感を産みそれぞれが武器を構え

武器がかち合わぬよう左右に展開する、

 

フゥゥゥゥゥゥ・・・かすかに聞こえる空を切るような音、ブリュンヒルデは

その音の源を探る、右・・・・左・・・姿は見えない、

地面は硬い石のような物で何かが通ってくるのは不可能であり

考えられる空に視線を向ける、

 

「いたぞー!」

 

ブリュンヒルデが声を上げる、そこにはいくつ物赤い複眼のような目のような物を

付けたガーディンと呼称される機甲種が漂っている、

しかしブリュンヒルデと坑道に「ほんの少しだけ」足を踏み入れた事がある

パティはいつもと違う事に気がついた、

ガーディンは坑道内を巡回するおまけ程度の武装をした防犯カメラのような

機甲種なのだが基本的にガーディナンと呼ばれる指揮官のような機体につれられ

集団で出来るのだがなぜか1機のみでふらふらと漂っている

よく見ると左側に銃撃を受けた後がありどうやら他のアークスとの戦闘で

損傷しこの機体だけが生き残ったようであった、

 

「1機だけしかもボロボロ!これなら怖くない!やっつけちゃうぞぉ」

 

相手が弱気なのを見越したパティは強気である得物のダブルセイバーレガシーを

意気揚々と構える、

 

「まつのじゃー!」

 

しかしスゥリンが大声で3人を制した、スゥリンの目に輝きが宿る

 

「スーこいつはエネミーだぞーさっさとやっつけないと仲間を呼ぶかもしれないぞー」

 

ブリュンヒルデはスゥリンに注意を促す

 

「かわいいのじゃー今度こそわらわのペットにするのじゃー」

 

「え・・・・」

 

3人は唖然とした顔でスゥリンを見た、そしていとこであるブリュンヒルデは

また変なのが好きなスゥリンの癖が出たのだと納得するに至った、

以前にもスゥリンがグワナーダに対する愛を7時間に渡って興味のなさも手伝い

うんざり気分で聞かされ、アークスの養成所に入るのも親を避けるためであると同時に

生のグワナーダを見てみたい、鋏で挟まれて振り回されてみたい

(どのくらい遠心力が利くのかを体感したい)できる事ならペットにしたいと眼を輝かせて

熱弁されお次はこんな不細工ロボにお熱なのだ、

 

「こうげきしてこないのじゃーこの子はいい子なのじゃー」

 

「そりゃ壊れてるんだからしてくるわけないぞー」

 

スゥリンは手をばたつかせて力説して冷静にブリュンヒルデが答える

同じ親族でありながら落差の激しい二人であった、

いるが普段当ててくるはずのレーザーポインターも

お情け程度についている小型の銃も先の戦闘で破損しているらしく

攻撃が出来ないだけで飛んでいるのがやっとと言った所であった、

 

「わかったのじゃ!妾が取ってあげるのじゃ!」

 

まるで昆虫採集か何かのような気分でねねはスゥリンを喜ばせようと

ガーディンを捕まえようと言い出した、

 

ブリュンヒルデは呆れ顔でパティとねねはガーディンの捕獲をしようと試みるが

自分達の跳躍力と武器の射程では叩き落す事が叶わず

スゥリンのゾンディールも上下の範囲は狭く届きそうもない、

 

「うー!おりてくるのじゃー」

 

未熟であった、スゥリンは駄々っ子のような仕草をしすでに周囲への警戒や

アークスとしての心得などどこかへ吹っ飛んでいるかのようだった、

 

ねねはふと周囲を見回すと何かの鉱石だろうか拳大の石が転がってるのを見つけ

それを拾うとガーディンめがけて投げつけた

ガチンと安っぽい金属音を立てるとガーディンは最後の力が尽きたのか

地面に落下してカタカタと震えている、

 

「ああ~かわいいのじゃわかいいのじゃー」

 

スゥリンはすばやく駆け寄るとガーディンを拾い上げシャカシャカと振って

生きているかを確認するといとおしげに頬ずりをしてアイテムパックに

しまおうとする、

帰還したら修理してもらって自分のペットにするつもりなのだろう

 

「ん?なんだこれ」

 

その時ガーディンから小さなリモコンが地面に落ちパティは好奇心からリモコンを

拾い上げた、

 

とても古いものでなにやら解読不明な文字が書かれている、端末で調べるが

いまだ解明されていないリリーパの先住者の文字のようであった、

 

「おいちょっとまてー不用意にいじっちゃだめだぞ・・・・」

 

ブリュンヒルデが言い終わる前に体に感じられるかすかな揺れと地鳴りが聞こえ

次の瞬間轟音と共に入り口から連鎖的に天井と通路が爆破され

ドミノ倒しのように崩れて行く

 

「みんな逃げるのじゃ!」

 

ねねはガーディンに夢中のスゥリンを抱えパティとブリュンヒルデと共に

崩れる反対方向の奥へと走って避難する、

崩れた衝撃から来る突風が砂塵を巻き込み4人に吹き付け天井と壁の崩壊は

4人の100mほど手前で止まった、

もしあのまま留まっていたら崩落の巻き添えとなっていただろう

しかし入り口は完全にふさがれお子様たちはただただ呆然とするしか術を持たなかった。

 

しばし呆然とするお子様4人、崩落による砂や瓦礫の塵混じりの風を体に受けて

全身が埃まみれのまま呆然と立ち尽くすが同時に我に返りねねが声を上げる、

 

「どうするのじゃどうするのじゃっ!」

 

子供のように手足をばたつかせ慌てるねねを横目にみつつ

 

「テレパイプで一度帰るしかないなーだれかもってるだろー」

 

ブリュンヒルデはアイテムパックを漁って見るが先日テレパイプを使い切って

補充し忘れていることに気が付き3人に無心をするが返ってきた返事は同じであった、

 

「ないのじゃ!」「ないよぉ」「ないのじゃー」

 

 

その答えを聞いてブリュンヒルデはがっくしと頭を垂れる、

傍目から見るとなにかのギャグのようにほほえましく見えるが

本人たちは全員の過失から招いた緊急事態であり真剣である、

 

「通信は相変わらず通じないしキャンプシップだけじゃどうしようもないしなー

あんだけ崩れたらここで待って助けてもらうまで何日もかかるぞー」

 

思案に暮れブリュンヒルデは言う

 

「地下坑道は入り組んだ迷路のようになってるけど出口もいくつかあるから

そこを目指すしかないなー

でもレーダーがノイズだらけだから自分の足で探るしかないぞー」

 

「そうそう!こんなとこにいてもしょうがない!前に進めー!」

 

自らの過失が起こした事を棚上げにし責任回避を企むパティはいつもの

前向きの姿勢で皆に前進を促した、

他の3人は根は善良で相手を責めるという意識に乏しいためパティが責められる事はなかった、

お子様たちはここで待つより動いた方が良いと若さゆえの発想で

出口を目指しあわよくば通信可能な場所で司令部かキャンプシップと連絡を取り

救助してもらおうと知恵を絞って考えるに至ったのである、

 

話がまとまり、いざ前進しようと向きを変えようとした瞬間何かの起動音が聞こえ

次の瞬間殴りつける鈍い音が聞こえブリュンヒルデが前に吹っ飛び

地面にうずくまり取り落としたタルナーダの重量のある鈍い音が響く、

 

スゥリンは急いで駆け寄りブリュンヒルデを助け起こす、

 

ブリュンヒルデのいた方向に3人が目を向けるとそこには1体、すすけた白いボディーの

機甲種が壁のように立ち4人に敵対的な警告音を立てて次の一撃を見舞おうとしている、

 

ギルナスと呼称されるその機甲種は大きな見た目によらず俊敏で体を分離して

攻撃を繰り出してくる面倒な事に定評のある敵であるが

ある種の慢心と予習をサボった3人が今それを知る由もない、

ブリュンヒルデの様子を見ているスゥリンをのぞきパティとねねは武器を構え

ギルナスに応戦しようとするが急襲を受けて動揺したのか連携はおろか

まともに次の攻撃すらままならない様子であった、

 

チチチチチチ・・・

 

奇妙な機械音を立てながらギルナスは再び水平に腕を振り回す

パティはよけようとするが動揺が収まりきらないためか避けきれず

ギルナスの鋼鉄の腕の一撃を受けてブリュンヒルデに続いて吹っ飛びうずくまった、

 

ねねはなんとかしのぎ切ったものの次の一手が頭に思い浮かばない

今まで仲間との連携に甘えきり一人の時の対応が思いつかない、

焦って刀を振り回すがギルナスの硬い装甲に弾かれ打撃に繋がっていなかった

そしてギルナスの振り回す腕をしのぎ続ける、

 

スゥリンはブリュンヒルデの様子を見て気絶しているだけだと気付くと

すくと立ち上がりフォトンを杖の先で練ると一気に解き放ち状態異常を回復する

アンテイを発動しブリュンヒルデとパティの気絶を治癒すると

ひきつづきレスタで傷を癒した、ギルナスより距離を取っていたため

幾分かは冷静さを保つ事ができたのである、

 

状態を立て直したパティ、ブリュンヒルデ、ねねの3人は互いに目配せをして

うなづくとギルナスに向ってアサギリレンダンとトルネードダンスで

突進しギルナスの装甲を斬り付ける、

パワー不足の二人の攻撃であるが二人同時に叩き込まれたフォトンアーツで

ギルナスの装甲に効果的なダメージを与え

意識を取り戻したブリュンヒルデが取り落としたタルナーダを拾い上げ

重量のある剣をもろともせず軽やかに飛び上がると

体を前に急速回転させギルナスの装甲の隙間に向かって何度も回転斬りを

叩き込んでいく、ツイスターフォールと呼ばれるフォトンアーツが

叩き込まれ火花を散らしギルナスの装甲は破戒されはじき飛び

上下二つに分解してギルナスのコアから青白い光りが消え動きを止めた、

 

敵の急襲を征したねねとパティはハイタッチで喜び合うがブリュンヒルデの

顔は無表情のままだ

 

「まだだぞーまだ死んでな・・・」

 

言い終わる前にギルナスのコア部分が再び青く光り上半身はねねを腕で掴み

起き上がった下半身はパティに強烈な蹴りを脇腹に食らわせ

ねねは何が起こったか理解できずアルバヴァストールを取り落とし

もがいているがギルナスのコアから青白い光りが発射され

背中に直撃を受けて前へ飛ばされ倒れこんだ

ギルナスの上半身はさらにねねをつかんで攻撃を加えようと腕を足代わりに

にじり寄ってくるがダメージが大きく逃げる事も武器を拾う事もままならない、

 

一方パティも脇腹の一撃が堪えたらしく前につんのめり屈んだままだ

 

「だいじょうぶかーこいつは真ん中のコア壊さないと死なないんだぞー」

 

ブリュンヒルデは空中をジグザグに飛ぶギルナスのコアを壊そうと

タルナーダを振り回すが空中戦で不利なソードが空を切るばかりであった

相手が一瞬動きを止めるその隙を狙うしか術がないのを知っていたのである、

 

スゥリンは目視でパティとねね、ダメージが大きいのはどちらか判断をし

治療をせんとするが二人の距離が離れていて同時に治療で着ない事を悟ると

アダマンの杖の舳先にフォトンを練りゾンディールを発動して

パティとねねを引き寄せレスタを発動したが体内の蓄積フォトンが切れて

回復を待たねばならなかった、

 

それぞれがまとまった考えを出す余裕などなかった

ねねとパティはブリュンヒルデの言葉が耳に入らず頭で理解できずにいた

向ってくる上半身と下半身の攻撃をしのぎながら無意味な攻撃を

繰り返している、

 

「そっちじゃないーコアつぶすんだー」

 

「コアなのじゃーこっちじゃないのじゃー」

 

スゥリンとブリュンヒルデの声がむなしく響く、そしてスゥリンはギルナスの先に

新たな影を見出していた、大きさは同じく5mくらいの高さであろうか、

ギルナスに似ているが色がすすけた黄色で頭上に赤いパトライトが点滅している、

全部で4体こちらに向かって不器用に走り寄ってくる

 

「あたらしいのがきたのじゃー」

 

スゥリンが叫ぶ、この4体が新手に加わり攻撃をはじめると慌てて混乱しているこちらが

不利なのは分りきった事である、

後ろは瓦礫でふさがり逃げ場はなく少しで敵を減らすのが急務であったが

未熟さゆえにそれもままならない、

 

やられる・・・突進してくる黄色い機甲種をみてそんな思いがよぎるが

その機甲種はギルナスに走り寄ると攻撃をせず中腰にかがんで青白い光を発する、

するとギルナスのダメージを受けた装甲が見る見るうちにふさがっていき

ギルナスは動きのキレを取り戻した、

 

コアを必死で追いかけるブリュンヒルデをのぞき3人に絶望感が漂い棒立ちになる、

 

3人はあきらめかけていた、このまま敵に殺されるのかと思うと様々な無念と

後悔が頭をよぎり涙が目じりにこみ上げてくる、もっと生きたかった・・・・

こんなところで死ぬのかと・・・・

 

しかしスゥリンはまた新たな影を通路の奥に見出していた

その影は黄色い機甲種とギルナスにすばやく前転で飛び込むと

軽く腰を落とし周囲に無数の弾丸を発射するがその弾丸は何故か宙で止まり

最後に強めの一発を放つとその衝撃で周囲に飛び散り

全ての敵に的確に弾丸が叩き込まれ5体の敵は崩れ落ち機能を停止した、

 

助かった・・・そう思ういへたり込む4人

 

「大丈夫かい?」

 

全身をエンジ色の装備で固め垣屋と同じくまだ銃口から煙が漂うツインマシンガンを

斜め上に構えた男性であった、

顔はIハットとアイゴーグルでよくわからないが穏やかな表情をしている

無論敵ではなさそうで、我に返った3人とブリュンヒルデは頭を下げて

お礼をしようとするがその男性はそれを制した、

 

「いいよいいよお礼なんてさ」

 

パティはその戦いぶりに少し惚れ惚れしていた、そして誰かと訪ねると男性は答えた、

 

「私?私はクロト、よろしくねぇ」

 

そのアークスの青年はクロトと名乗った、お子様4人はそれぞれに、

 

「ねねなのじゃっ!よろしくなのじゃっ!」

 

「スゥリンなのじゃー、こっちはいとこのブリュンヒルデなのじゃー」

 

「アークス一の情報パティエンティアのパティだよ」

 

ブリュンヒルデ、スゥリン、パティ、ねねと名乗り自己紹介を終えるとクロトは

全員のステータスを端末から確認すると何かに思い当たったように声を上げた、

 

「・・・そこの、もしゃもしゃ頭の子・・・垣屋博士の研究所に所属してるのかい?」

 

「そうなのじゃ!スゥリンちゃんとパティちゃんも一緒に住んでるのじゃ!」

 

ねねは先の戦闘の絶望感から回復しいつもどおりの元気な返事で答える

その応えにクロトは納得し

 

「なるほどねぇ、君たち新しい居候かぁ、博士は相変わらず面倒見がいいんだねぇ」

 

そう言うと銃口から立ち上る煙に息を吹きかけ飛ばし改めて4人の顔を

アイゴーグル越しに眺めていた、

 

「クロトちゃんは旦那しゃまの事知ってるのかや?」

 

ねねはいつものように無邪気にクロトに尋ねる

 

「旦那様?・・・それに私の事をちゃんづけで呼ぶのか・・・まぁいいや・・・

ああ・よく知ってるよ、子供のときからね」

 

「妾もっともぉっっっっと旦那しゃまの事が知りたいのじゃ!教えて欲しいのじゃ!」

 

「何も知らないのに旦那様なのかい?まぁ隠す事もないからいいよ

とりあえずここにいても仕方ないから別の出口を目指そうねぇ」

 

退路を断たれて大慌てしたお子様たちと違いクロトは少々面倒臭くなったなと

言うニュアンスを漂わせ軽く手招きしてお子様たちについてくるよう促した、

 

入り口が崩壊した坑道はいつもどおりの風景に戻っていた、

舞い上がっていた砂塵は収まり外の光源に頼らぬため

内部の明るさはそのままだ、その広々とした通路を5人は粛々と進んでいく、

 

クロトが言うには坑道の内部はダーカーに押され気味の機甲種が

常に警戒状態にあり見境なしの攻撃を仕掛けてくるとの事で

そう説明しながら散発的に現れるリリーパ砂漠地帯でも見たスパルダンAやスパルガン

黄色い機甲種ギルナッチが散発的に襲ってくるがクロトは事も無げに

金色に輝く愛銃で急所に的確に弾を叩き込み何事もなく坑道の説明を続け

その足元にはスクラップになった機甲種が煙を上げて転がっている、

 

「しっかしよく来るね、しつこいったらありゃしない、まるで私たちがいるのを

知ってるみたいだね」

 

パティはまるで自分が露払いをしているかのように言うがクロトはそれにも

事も無げに答える、

 

「そりゃそうさおかっぱのお嬢ちゃんがだっこしてるガーディンがピーピー

言ってるからね、ああやって仲間を呼んでいるのさ」

 

そう言うとクロトはスゥリンのガーディンを始末しようと手を伸ばすと

スゥリンはがっちりと抱きしめ

 

「わらわのペットなのじゃーころさせたりしないのじゃー!」

 

と抵抗する、そのペット選びのセンスの悪さにクロトは閉口するが

揉め事を起こすほどでないと判断し

 

「はいはいわかったよじゃアイテムパックにしまっときなよ、このままだといくらでも

仲間の機甲種が攻めてくるからねぇ」

 

「わかったのじゃー、ガーちゃんママのアイテムパックでおとなしくしてるのじゃー」

 

そうたしなめるとスゥリンは素直にうなづき壊れたガーディンをいとおしげになでると

アイテムパックに押し込み耳障りな警告音は消え再び静寂が戻ってきた、

 

クロトは説明を続ける、地下坑道は機甲種とダーカーそれに正体不明の敵がうごめく

危険な場所ではあるがこれらの敵が入り込めない安全地帯もあるので

適度に休憩しながら内部の探索が可能な事、これは機甲種が以前の主を

守るために下された特定の部屋を守れと言う命令に従っての事らしく

それを逆手に取る事でアークスたちの安全地帯が作り出されていると言う事であった、

そしてその安全地帯はすぐそこにあるとの事でお子様たちはクロトの導かれ

向かう事となった、

 

そこから2kmほどは歩いただろうか、クロトは壁に埋め込まれたボタンを押すと

その先にある扉が開き中から20m四方程の小部屋が見受けられる、

中には過去の主の置いていった機器類、そしてアークスたちが残していった

資材が置かれていて、野趣溢れるホテルの一室のように整えられていた、

 

「さぁて休憩しようか、お嬢ちゃんたちはさっきの戦闘で疲れただろ

寝たければ寝てもいいよ、私が外は見張っておくからね」

 

クロトはそう言うと空になったエネルギータンクに飛び乗るとそれに腰を下ろした、

 

緊張感が解けお子様たちは自分の落ち着くであろう場所に腰を下ろしたり寝そべり

しばしの休息を楽しむ、

ねねはクロトから垣屋の事が聞きだせると思い、なぜ垣屋の事を知ってるか

再びたずねる事にした、

 

「そりゃ垣屋博士と助手の二人は危険人ぶ・・・・いやいや有名人だからね

アークスにとってもオラクルにとってもね」

 

「もっと!もっと聞かせるのじゃっ!」

 

ねねはクロトに顔を近づけ続きを催促する、

クロトが言うには垣屋はエルダー戦争を戦い抜いたアークスの中で未だに現役でいる

数少ない隊員である事、

またエルダー戦争で壊滅的な状態におちいった食糧供給の問題を解決した

食糧問題解決進化委員会と呼ばれる臨時創設された機関に属し

政府から選ばれた7人の最高責任者の一人として奮戦し

オラクルを食と言う形で救った功労者であった事をねねに言葉を選んで聞かせた、

 

垣屋が裏取引で金を稼いだり、ヴォイドといさかいを起こし助手と説明した

テツとシンジュク共々殺人や破戒工作、そして様々な騒動を起こし

要注意人物として警戒されている事はあえて口にはしなかった、

 

ねねはあたかも自分の事のように誇らしく思った、好きでたまらない垣屋が

オラクルを救った陰の英雄だと知り嬉しく思った、

 

「しかし君のような子供が博士のお嫁さんって不思議だねぇ、博士からすれば

君は孫くらいの歳だと思うけど・・・」

 

クロトが口を滑らすとねねは待ってましたとばかりにいつものあの話を

始めた、他の3人はすでに聞き飽きたあの話を、そして端末にディスクを

セットし、けものでポンのあのシーンをクロトに見るように促す

クロトは半ばしらけたようにVTRを見終わるとねねは約束したから

結婚するのだと声を強めると

クロトは堪え切れなくなり噴出し体をのけぞらして大声で笑い出した

 

「愉~快~だねぇ!こりゃけっさくだねぇ、いやいやお兄さんこんなに笑ったの

久し振りだよぉ」

 

腹を押さえ身をよじって笑うクロトにねねは真剣なのだと声を荒げるが

クロトは笑いながらねねに謝ると

 

「いやいや・・・ぶっははははは、私も応援するからがんばろうよ

ぶふっぶふふふふ・・・」

 

ねねは笑われた事を怒るより自分の思いを叶える事を応援してくれると言う言葉に喜び

端末をしまい床に敷かれた誇りっぽいクッションに腰を下ろした

その顔には満面の笑みがこぼれていた、

 

ねねが腰を下ろすと同時にパティがばね仕掛けのおもちゃのように立ち上がり

クロトを指差してあ゛あ゛ーーーーーっと声を上げる

 

「思い出したっ!クロトさんってあのオラクル一のお金持ちサンタンジェロ財団の

跡取り息子なんでしょ!すっごいなぁお金持ちいいなぁ!」

 

パティはクロトの先ほどの戦いぶりも含めて少しほれ気味に叫ぶが

クロトはそれを聞くとハットとアイゴーグルで隠れた顔から

少し不機嫌なニュアンスを漂わせて言った、

 

「まぁ確かにそうだよ、なりたくて跡取り息子になったわけじゃないけどね

君もまたお金が欲しい口かい?」

 

無神経なパティもこの時だけは察したらしくしゅんとして小さくつぶやく

 

「ごめんなさい・・・悪気があって言ったんじゃないよぉ」

 

クロトは言い過ぎたとその場で感じ

 

「いいよいいよ気にしなくて、私の実家の金欲しさに擦り寄ってくる奴らと

関係がなさそうだし、金がほしいのはみんな一緒だしね」

 

クロトはパティにフォローを入れると何か抑えが利かなくなった様に話し始めた、

 

オラクル一の財団であるクロトの実家、その一人息子として生まれたクロトは

何不自由なく生を受け育った、

優しい両親、温かい心が備わった優秀な使用人や家庭教師に囲まれ

一見平和に見える生活の中にも闇はある、

クロトの実家にすりよって金をたかろうという浅ましく卑しい人間たちが

表面に心無い笑顔を作りおべっかを使いおこぼれに預かろうとするその

不快な浅ましさ、感受性の強いクロトは物心ついた頃からそれを感じ

それが気に入らなかった、

 

そして両親の反対を押し切りアークスになった時もそうだった

おこぼれに預かろうと「おともだち」になりたがる魂の汚い連中と関わるのが

嫌で堪らず、いつしか一人で動くようになり人との関わりを可能な限り

避けるようにもなった、

 

そした金金金と擦り寄る輩を小馬鹿にするために彼らではとうていクリアできない

クライアントオーダーを出しそれをこなした優秀なアークスに

とんでもない金額をぽんと払って見せたり、これでもかとばかりに豪遊をして見せたりもした、

浅ましい連中の口惜しがる姿を見るのが面白く亡者のように金に飢えた連中の目の前で

金を馬鹿にするような振る舞いをする、それが彼なりの報復のやり方でもあったのだ、

 

そして地下坑道は通信障害が多く発生するためそのような恥知らずにゴマすり人間の

通信をシャットダウンして静かに過ごせる数少ない場所で

くつろいだので帰ろうと出口に向ったところお子様たちに出口をふさがれ今に至る事を話した、

 

「そりゃお金も要るだろうさ生きてく為だからね、しかしそれよりもっと大切な物

失っちゃいけない物があると私はおもうんだよね、」

 

ねねは今まで母かパイオニア一号が欲しい物、欲しくない物まで全て与えてくれたため

ついこの間までお金と言う概念を知らず金に対する執着も要求も感じた事がなかったので

ピンと来なかったがクロトが一種の寂しさや虚しさを抱えて苦しんでいる事だけは

感じ取る事が出来た、

 

「さてもう少し休憩しようかそれが終わったら次の部屋まで進んで行くよ」

 

クロトはいつの間にか用意していた携帯コンロに沸かしてお湯をカップに注ぎ

4人にコーヒーを作り振舞った、

坑道脱出へ向けて5人の戦いが今始まろうとしている。

 

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