PSO2水滸伝傍ら(かたわら)の群星   作:垣屋越前守

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自走要塞ビッグヴァーダー

 

新光暦238年4月8日午後4時10分 惑星リリーパ地下坑道エリア周辺

 

一隻のキャンプシップがゆるやかに飛行し一点に向かって進んでいく

先ほどリリーパ資源採掘基地へのダーカー襲撃の負傷者の搬送を支援し

探索中のアークスを回収するため持ち場に戻る、

 

船内は未だ負傷者の血液などが付着しリリーパの高温も手伝い

異臭を放っているが船内をクルーが清掃し脱臭され元の船内に戻るであろう

今回は致命的な重症者が出なかったため皆気持ちが幾分か滅入らずに

気楽に清掃を行っている、

 

「大した被害が無くてよかったよな」

 

「ほんといつもボロ負けじゃこっちも持たんよ」

 

そしてキャンプシップはノイズがひどいレーダーを頼りに所定の持ち場へ

到着したことを確認すると空中で静止した、

 

「おい?待機ポイントはここであってるよな・・・?」

 

「間違いない・・・ん?・・・入り口が崩落してるぞ!」

 

呼びかけたパイロットは急ぎ司令部に通信を入れる不測の事態は

良くある事である、

 

「こちらキャンプシップα司令部応答せよ司令部応答せよ!」

 

しかし通信は磁場の影響から不明瞭でキャンプシップはその影響が最小限に抑えられる

成層圏へ急ぎ上昇し再び司令部へ通信を試みた、

今度ばかりはさすがに通信できキャンプシップのパイロットは持ち場の

坑道の入り口が崩落して塞がっている旨を報告した、

 

応答したヒルダはすばやくこの坑道のマップを確認し他に出口があることを

確かめるとキャンプシップに3つある出口の中間地点に待機するよう指示を出した、

 

ヒルダは小さくため息をつくと現在坑道に入っているアークスの関係者及び

司令部の上層部に現状の報告を始めた、

 

 

その頃研究所ではドラゴンモドキの分析が大詰めを迎えていた、夕餉の支度のため

チヒロの姿はすでになく垣屋の指示をティアは頭がパンク寸前になりながら

必死で喰らい付いてデータの処理を続ける、

 

「うひぃぃぃぃぃぃ頭が頭がパンクするよぉぉぉぉ・・・でもがんばらなきゃ・・・・」

 

不慣れなティアであったが姉の知恵まで吸い取ったのかと勘繰りたくなるような

明晰な頭脳と高額な報酬をもらった義理から持てる力をフル稼働していることは

傍から見ても容易に想像ができた、

 

「おっしドラゴンもどきのハドレットちゃんの解析終了じゃな

これでこいつの全身スキャンはおしまいだとさ、なかなか興味深い内容じゃよ」

 

垣屋は解析が終了したハドレットのデータを記憶媒体に焼くとさらに予備の

メモリに内容をコピーして端末から目を離した、

その向かいでティアが目を回してふらふらしている、

 

無理もない熟練で有能な助手でありキャストのチヒロがようやく追いつける内容を

生身のティアが補佐しようと言うのだ上出来を超えた仕事ぶりであった、

 

垣屋はチヒロがいつの間にかおいていったポットからココアを注ぎ

氷を2.3摘んで入れるとティアにグラスを差し出した

朦朧としながらティアはなんとか笑顔を作りグラスを受け取ると一気に飲み干し

大きくため息をつくと椅子に全身を持たれかけた、

 

「ティアちゃん大丈夫か?よぅがんばったの」

 

「あの・・・博士っていつもこんな事やってるんですか?」

 

ティアは垣屋にたずねると「そうよ」とあっさり垣屋は答えて記録完了の媒体を取出すと

それをどこかへ転送し始める、

信じられないといった顔であった、垣屋は今年で70歳この異常な作業を

疲れた様子もなく事も無げに処理し、生身の体でありながら

その年で最前線に立てる上級アークスとして活動までこなす

それはもはや常識の範囲を超えていた為であった、

 

「さって今夜の晩飯は何かねぇ~そろそろクソガキどもが戻ってくるじゃろ」

 

そして軽く肩を回して部屋を出ようとドアに踏み出した瞬間アイディスプレイから

通信の着信音が鳴り響いた、

 

「言ってるそばから・・・ガキどもじゃの」

 

垣屋は通信スイッチを入れるとディスプレイにはお子様たちではなくヒルダの顔が

映し出されていた、

 

「垣屋博士聞こえるか?お前の研究所のメンバーが入り口の崩落で内部に閉じ込め

られたようだ仔細は追って報告する、すまないがそちらからも救援のために出動して

くれないか?」

 

「あーらら・んでガキども無事なんかね?」

 

「未だすべてを掌握し切れていない、安否は不明だ採掘基地にダーカーの襲撃があり

キャンプシップが救援に向かっている間に起こった事だ、こちらからも救援隊を編成する

助けに向かってやってくれ」

 

「はいよ」

 

と垣屋は返事すると通信を切りティアに事の次第を告げた、そして司令部から送られた情報で

何組かのパーティーが内部にいる事そして内部にクロトがいる事を確認すると

少し安堵の表情を浮かべた、

そしてシンジュクを呼びエプロン姿のチヒロに事の次第を知らせると

食事は分子分解保存でキープしておくように言うとアイテムパックの中身を確認し

シンジュクとティアも同様に出撃の準備を整える、

 

急ぎゲートエリアに走ろうとすると外でキャンプシップが着陸ポートに降り立つ音が聞こえ

玄関から飛び出すと迎えのキャンプシップのハッチが開きクルーが手招きをしている

3人は急ぎキャンプシップに乗り込むとすぐさま離陸しその姿は地上から

小さくなり消えていった、

 

「無事に戻ってきてください」

 

とチヒロは無言で天を仰ぎそっと祈った、

その後鍋に火をかけていたのを忘れておおわらわするのだがそれは少し後の事である、

 

惑星リリーパへ急ぎ発信するキャンプシップのなかで夕食を食べそびれたシンジュクは

不機嫌そうだ、傍から見てもそれが強く伺える

おそらく今余計なことを言うと厳しい制裁が炸裂するのは必定であろう、

 

「まったくクソガキども自分たちで何もできないのかよ・・・」

 

「おいおい入り口の崩落はしゃあないじゃろが」

 

垣屋はシンジュクをたしなめてバックに入っていたフィッシュレーションとナッツを

投げるように渡すと不満そうな顔をしてシンジュクはそれを口にした、

研究所の居候であるシンジュクとはずいぶん昔に彼女を研究所に迎えるにあたり

命のやり取りをした事があり垣屋は自分よりも戦闘力が上の彼女を過度に刺激しないよう

それなりにコントロールは欠かせない、

 

そしてナッツとフィッシュレーションを食む彼女を好きにさせた後

次々と司令部から送られたデータを急ぎ目を通していく

今になって老眼鏡を忘れたことに気付き見えづらさにいらいらしながら

状況を頭の中で整理し構築していく、

 

すでにキャンプシップのクルーたちが崩落地点のスキャンを終わらせており

アークスたちが崩落で生き埋めになっていない事は確認済みとの事であった

そして他にあいている出口たりえる穴は3つでその1つには付近を探索していた

アークスが借り出され中への探索が開始されようとしているとの事であった、

 

「ケッ!楽なとこばかり選びやがって!三流が!」

 

いつの間にかすぐ横にシンジュクが近寄り垣屋の端末モニターを覗き込み

悪態をついていた、

そうでなければ自分が楽なところを選び三流になろうとしていた事実は

もちろん棚上げである、

 

「まぁ他に2パーティー、ガキどもにクロトがいるようじゃ崩落に巻き込まれていないし

もうひとつの出口でガキどもが出てくるまで待ってみようじゃないの

自力でヴァーダー倒して来いって言ったのワシだからの」

 

状況が飲み込め最悪な事態と程遠い事を知った垣屋は安堵しその旨をヒルダに伝え

ヒルダも課題とあらば少し様子を見ても良いと返事があった

そして緊急レベルをレッドからイエローに落とした旨をこの救出に関わるアークスの

隊員たちに通達する、

 

キャンプシップはリリーパへと進んでいく、予断は許さないが少しばかり

安堵の様相と不測の事態への不安をない交ぜにしつつひたすらに航行を続けた。

 

程なくして垣屋たちを乗せたキャンプシップは崩落した坑道の出口のひとつ

付近に着陸した、距離としては500メートル程離れているがそれには坑道ならではの

理由があった、

 

坑道の出口は通常の通路からそのまま出口に通じるものと広くなだらかな

スロープ状になった出口が存在する、そのスロープ状になった出口は坑道のボスがいる、

その巨体ゆえにいられる場所は限られているビッグヴァーダーの待機場所であるのだ、

今から向かうスロープ状の出口の近くに着陸する場合は相手に気付かれないように

するため距離を離して待機をする、

すでに楽な出口には「三流」のアークスたちが先行しており選択の余地はなかった、

 

キャンプシップが静止し垣屋とシンジュクは装備の再点検を済ませ席を立ち

開いたハッチからくるうだるような熱波を受け外へと向かう、

ふとシンジュクはティアの事を思い出し目を向けるとティアは席に体をうずめ

熟睡している様子だった、

なれない仕事を必死で成し遂げた後での事なので仕方ないのであるが

シンジュクはティアを起こそうと席を蹴り上げようと足を少し下げようとした所で

垣屋は制止した、

 

「寝させとけ、よぅがんばったでよ」

 

「チッ、小ざかしいだけで使えねえ!」

 

不機嫌なシンジュクはさらに悪態をつくが疲れきって眠るティアの耳には全くをもって

届いていないようであった、

 

二人でキャンプシップから坑道の出口へと向かう、照りつける太陽は徐々に傾きつつあるが

まだ気温は高く強い日差しと陽炎が踊る、

本来なら日中の高温は危険なため午前中か夜間にのみ作戦行動を行うのであるが

今回ばかりはそうも言ってられない、

程なくスロープ状の出口が見つかりレーダーが使えないのでフォトンビノキュラーで

様子を伺おうとするがシンジュクがキャストに標準装備されている遠視装置で

状況をいち早く探った、

 

「いるねヴァーダー・・・ちょっと痛んでポンコツ気味だからガキどもの相手に

ぴったりだろ」

 

「そうかね、じゃ適当な所で待機するかねぇ」

 

そう言うと出口から100mほどの場所に岩場を見つけ二人はそこへ向かい

いざと言う時にヴァーダーを狙撃できるようにそれぞれが配置につき

お子様たちが出てくるのを待つ事にした、

 

ポソリと音を立てシンジュクは持ってきたビーチパラソルが開きうつぶせに伏せて

メナアリスからバイポットを引き出すと狙撃体勢を取る、

 

垣屋はもう少し前の岩場に陣取ると緊急用に使用される救護シートを頭からかぶり

こちらも狙撃体勢に入る、

シート一枚かぶるだけでも強烈な日差しを避ける事はできる

そして湿度が低いため存外に快適ともいえるのである、

 

少し遠巻きにシンジュクがナッツをかじる音だけがあたりに聞こえていた。

 

一方その頃・・・

 

安全な待機ポイントに泣き声が響く

ブリュンヒルデは泣き続けていた、敵を討てた喜び、自分のふがいなさ、周りに慰めてくれる

仲間がいる安堵感いろいろなものが混ざり合いそれを飲み込む事ができず

所詮子供のためか泣く事でしか対処する術を持たなかったのである、

 

「うぇ・うぇぇ~ママァ~・・・」

 

「(おいおいママって・・・勘弁してくれよぉ~)」

 

幼児退行が混ざり始めたブリュンヒルデにクロトも半ば呆れ顔だ歯の裏まで出かかった言葉を

必死に押しとどめ武器と装備の点検を始める

 

「わらわがママなのじゃ!安心するのじゃ!」

 

「ママだよぉ私の胸で心行くまで泣くがいい!」

 

ねねとパティはその要領の少ない頭に慰める言葉のストックがなくなったためか

訳の分からない慰めかたを始める始末である、

 

「(おいおい・・・何歳で子供産んでるんだよ・・・私もいいかげん疲れてきたよ)」

 

クロトはあきれてものが言えなくなりつつあり、そばには相変わらず

不味いアークスビスケットを食む役立たずのリリーパ族のチビ助がいるのみである、

 

「これは私がリードしないと全滅するねぇ・・・」

 

クロトはIハットを深くかぶりなおすとそろそろ出発する旨をお子様たちに告げた

時間としては午後5時にさしかかろうとしているクロトは多少焦っていた

 

坑道はある程度の照明があるとはいえ夜間は必然的に暗くなる、今回はお子様たちの課題である

ビッグヴァーダーの討伐があり外と接する場所は夜間になると暗くなり

こちらの不利に働くためである、

不慣れな初顔合わせの敵に足場もおぼつかない夜間、不利であるし

ベテランのクロトであってもすべてのメンバーのカバーは難しい、

気温が下がり始めている夕方にヴァーダーを倒し

来ていると予想されるキャンプシップに帰還して戻る、これがバイタル面から考えて

ベストであると判断したためである、

 

促されて立ち上がり部屋を出るお子様たち

 

「出口はすぐそこ、課題になってるビッグヴァーダーいるよ覚悟はいいかい?」

 

クロトによると出口はすぐそこでおそらく課題とされるビッグヴァーダーもいるであろうと

お子様たちに告げる、この敵は特定の場所に待機しアークスたちに破壊されても

どこからか新しい機体が現れてこのスロープを伴う出口に張り付くという習性があり

おそらくすでにそこにいるだろう、そして油断しているとすぐに死ぬと

飄々としかし有無を言わせない強さを秘めた言葉でお子様たちに言い聞かせる、

 

そしてヴァーダーと戦うに当たる注意点を事細かに話し始めた

 

お子様たちも緊張感が戻りクロトの話を良く聞いた、

生きて帰るこの事に皆が集中して最初につられていたご褒美の事など

まったく意識していなかった、

そして相手が機銃やミサイル、レーザーといった飛び道具を主体に戦うため

接近戦寄りのこのパーティーでは不利だという事、

 

「自分の事は自分で責任を取る事、油断していたら死ぬよ」!

 

と最後に強く言い放つ、

 

「分かったのじゃ!」「わかったぞー」「なのじゃー」「任せてよ」

 

お子様たちは強く返事を返すとビッグヴァーダーがいる出口への扉を開き

床に設置された転送装置に乗り転送を待った、

 

未知の敵であり何時の間にやら習慣から抜けていた予習を怠り

今になって敵が分からない事への不安感が頭をよぎる、しかしこの壁は突破しなくては

ならない、一人ではない事だけがせめてもの救いであった、

 

転送装置が作動して体がいつものようにすぅっと軽くなる

しばらく視界が途絶えた後徐々に新たな視界が開けていく、四方800mくらいはあるだろうか

その100mほど先に大きな船のようなものが見える、

これが坑道のボスと位置づけられるビッグヴァーダーであろうか大きすぎて全体が把握できない

船体のような姿が見えるが上に何かが載っているようでもその姿は見えない、

 

激しい警告音が徐々に耳に入ってくる転送が完了しつつあり音も拾えるようになっているからだ

 

船体の前方からなにやら巨大な筒のようなものが4本突き出しその真ん中の穴から

青い光が満ちそれは徐々に膨らみ始める、

 

「避けろ!」

 

クロトの声がお子様たちに響き我に帰ったお子様たちはそれぞれに左右に回避行動を取る

アサギリレンダンで前に飛びのくねね、ミラージュエスケープで逃げるスゥリン

ガードを固めるブリュンヒルデ、走って逃げて転びその上を光線が掠めるパティ

楽々にスタイリッシュロールでかわすクロト、

そして幾度もまろびつつ近くの資材コンテナに逃げ込むリリーパのチビ助

当たれば致命傷になるこのレーザーを皆がかわしきり

受け止めた壁が溶けて穴になるのを恐ろしく思いながら見つめるお子様たち、

そこにクロトがすかつず次の指示を飛ばす、

 

「突っ込むんだ!このままだと狙い撃ちにされて死ぬよ!」

 

素直なお子様たちはそれぞれに前にと突き進み先ほど聞いたアドバイスに従い

目前の機銃や砲に狙いを定めた

レーザー砲は破壊力こそあるが正面さえさければ届かないそこは無視して

一気に距離を縮める事こそこのパーティーの組み合わせの最良策であった、

 

 

そして距離を開けて出口付近で待機していた垣屋とシンジュクも遠巻きに警告音を聞き

 

「お・始まったの!」

 

目の悪い垣屋に言うまでもなく望遠モードで状況を目視したシンジュクが状況を伝える、

 

「クソガキども馬鹿正直にヴァーダーに挑んできたね、クロトも一緒にいるよ」

 

「じゃろうなぁ~後でちゃんと礼しとかなきゃのぉ~」

 

ビノキュラーで垣屋も状況を確認しお子様たちの戦いぶりを観察することにした

しかしいざと言う時の為にライフルを構え狙撃で支援する姿勢は崩していない、

 

「勝てよガキども・・・」

 

垣屋は心の中で祈った。

 

普段は飄々としていて穏やかなトーンで話すクロトであるが命がかかっている時は

有無を言わせぬ鋭さと威厳を兼ね備えた檄を飛ばし

ビックヴァーダーめがけて突進して行く、クロトの指示で左右に二人づつ分かれて

相手の注意が一点に集中しないようかく乱する作戦をとる事にしたのだ、

 

左側にねねとパティ 右側はスゥリンとブリュンヒルデ 

役立たずのリリーパのチビ助はコンテナの陰、そしてクロトは状況を見極めていた

どちらか手間取ってる側へ加勢をするためである、

今の所は4門の主砲は役に立たずヴァーダーもそれを理解しているようで

格納した主砲を再び出してはいないようだ、

サイドからのリフトで昇降する砲と機銃がそれぞれ3門、そしてバルカン砲が2門

一斉に放火を浴びせかけてくるがすばやさがとりえのお子様たちは

自発的に考え変形的なジグザグ走行で敵の弾を避け眼前の砲を壊そうと

それぞれに武器を振るい打ちかかっている、

相手は金属なのでそうたやすく破壊できるものではないがフォトンの力と

人類が長らく培ってきたテクノロジーが味方しているのである、

 

「むぎゃぁぁぁぁぁぁ!うにゃにゃにゃにゃぁぁぁぁぁ」

 

ねねは訳の分からない叫び声をあげてリフト式の砲にアサギリレンダンで斬り付けているが

深手は与えられておらず冷静なアークスなら何かしらの理由でパワー不足である事を

推して図る事ができたであろう、

パティは楽な据付型の機銃を確実に潰しているがねねの方法もパティの方法も

いずれも間違った判断ではなかった、

 

一方のスゥリンとブリュンヒルデであるがさすがに親族なだけはあり息はぴったりと

合っているようだ、

スゥリンのシフタとデバンドで攻撃防御と体力が増強されたブリュンヒルデが

スゥリンの盾となる形で敵の砲へと突進していく

畳まれた斧形態のタルナーダが盾となって二人に向かう弾丸を弾き返しているのだ

そして一気に間合いをつめるとブリュンヒルデはオーバーエンドを叩き込み

その範囲内の砲はことごとくなぎ倒され砲が歪み発射不能になり

相手へのダメージとなっている事が見て取れた、

そしてスゥリンも珍しく短杖を振るい補助的に残りの機銃を破壊して

段の荒い階段状のステップを飛び甲板へいち早く登って行く、甲板を見渡す

 

その甲板には巨大な機甲種がでんとすえつけられていた

角が取れた四角形のような胴に3本の無骨な指がついたアーム、そして肩には

ミサイルの発射装置が取り付けられ

無骨な視覚の顔に赤い目がひとつ付いておりそれが二人をにらみつけている

怒りも何も感じられない冷たい目で、

 

「ねねちゃーんパティーちゃーん早くくるのじゃー」

 

スゥリンは叫ぶと機銃の発射音にまぎれてねねとパティの耳に届いた

ねねとパティは未だ機銃と砲を半分ほどしか破壊していなかったが

目配せでそれらを無視することに決めて甲板への階段を飛び上がって行った、

 

「ひとまずここまでは合格だねぇ~、しかし次の手をどうする?」

 

クロトは自身に向かってくる弾丸を愛銃で撃ち落しながらその場に留まっていた

これで少しでも相手の気が散らせるかもしれないし

状況の把握もやりやすかったからである、

 

「ぷぁ~っ!じんどいぃぃぃ」

 

パティは息が切れたのか甲板に上がってすぐに周囲の状況を確認はしなかった、

その時本体の斜め後ろの雛壇上の箱が開く音がした

 

「くるぞー!」

 

ブリュンヒルデが警戒を促す開いた箱にはミサイルの赤い弾頭が顔をのぞかせ

開ききった瞬間に横のランプが光り一斉に白煙を上げた後発射され

4人に襲い掛かってくる、

 

「どぅああああちょっとまってよ!」

 

パティは空を埋め尽くさんとするミサイルに驚き背中を見せて走り出す

 

ブリュンヒルデはガードを固め、ねねはカウンターで迎撃しようと言う

腹づもりらしく刀を鞘に納め抜き放つ構えを取りミサイルを見つめている

 

そしてスゥリンはブリュンヒルでの後ろに隠れようとした瞬間にミサイルが4人に

直撃した、パティとスゥリンは避けきれず吹っ飛びその勢いで

せっかく上がってきたにも関わらず再び地面へ叩きつけられる

 

「ギニャァァァァァァァァァァ!」

 

スゥリンの叫び声が上がる

 

ねねは初弾をカウンターでしのいだがスゥリンとパティの叫び声に気を取られ

 

「パティちゃんスゥリンちゃん!大丈夫かや・・・」

 

と正面から目を離した瞬間にミサイルの第二波がねねの体を直撃した

ねねはまったく防御を取らなかったためそのままミサイルと共に地面へと

叩きつけられる、

 

痛い・・・うめきながら立ち上がろうとするが落下と巨大な金属の塊の

重い直撃を受けたためがうずくまり立ち上がることができずにいる、

ねねの口からは一筋の血が滴り床に落ちる

 

いち早くスゥリンが立ち上がり駆け寄るとフォトンを練りレスタで

パティとねねを治療する、

二人は何とか立ち上がりよろけながらも一人取り残されたブリュンヒルデの

元へ駆けようとするがまだ傷がフォトン修復されきっておらず思うにまかせない、

 

ブリュンヒルデは叫ぶ

 

「だいじょうぶかー私が食い止めるから無理しなくていいぞー」

 

ディフェンススタンスで守りを固めさらにマッシブハンターと言う

一定時間体を硬化させフォトンバリアをまとうスキルで鉄壁と化し

ミサイルポッドを一つでも破壊しようと左のひな壇に飛び乗り

タルナーダを振り回している、

飛んでくるミサイルはタルナーダで切り刻まれるか鉄壁と化したその体に弾かれ

爆散するかのどちらかの運命をたどった、

彼女の勇姿は頼もしく先ほどまでママを呼んでいた片鱗すら伺わせない

先ほど仲間の敵が討てた事で幾分か吹っ切れている

それが豪快な太刀筋にも大いに現れているのであった、

 

ブリュンヒルデは左側のミサイルポッドを破壊しつくしたが右側のポッドは

まだまだ無傷である、そこからのミサイルと本体が振り回すアームの攻撃を

かいくぐり善戦していたがミサイルの直撃を受けて左側に吹っ飛び地面に叩きつけられた、

そうマッシブハンターの効果時間を越えてしまいガードスタンスだけでは

追いつかなくなっていたのであった、

 

結局再び地面からやり直しの4人をクロトは見つめている

4人は振り返らないそれは甘えを捨て切ったわけではなく

自分のなすべき事で精一杯でクロトやリリーパのチビ助にまで意識を持っていく余裕が

なかった為であった、

 

クロトは迷っていた加勢をするかしないか、そろそろ決断をしないと

最悪の事態が来てからでは遅いのである、

 

そしてもう一方でも加勢をするか悩む一団がある

垣屋とシンジュクである、片や望遠機能で片やビノキュラーでお子様たちの死闘を

勝てと祈りながら静観しているが

心の中では焦りを感じ始めていた、ヴァーダーとの戦いでは意図ところに留まる

動けなくなると言う事はすなわち負けといっても過言ではないのである、

 

自分たちが加勢をすればすぐに片付くであろうがお子様たちに

甘えを植え付ける事につながる、ましてや事情の知らないブリュンヒルデを除けば

甘やかされ愛情いっぱいに育ってきたお子様が遊びか本気かで武器を取って戦っているのである

次の瞬間が安全と言う保障はまったくと言ってなかった、

 

「どうする源さん、手ぇ出すかい?」

 

シンジュクが打診している、すでにシンジュクの心内ではお子様たちでは

この戦いは勝てないとふんでいる様だった、

 

「う~む・・・・」

 

垣屋はすこし唸る、シンジュクと意見と同じであったがお子様たちは

一心不乱にあきらめず戦おうとしている、そこに水をさすかどうか

放置してへたに死なせれば色々と大変なことも理解していた

 

お子様たちに再び破損していない右側のミサイルポッドが開き

新しい弾頭が再装てんされお子様たちに狙いをつける

 

それは発射され一塊になっているお子様めがけて飛んでくる

 

まずい!

 

垣屋とシンジュクそしてクロトが離れた場所で同じ考えを共有した

そして垣屋とシンジュクはライフルを構え最も効果的と判断した場所に

狙いを定め、クロトは地面を蹴って4人に駆け寄ろうと走り出そうとしたその瞬間

 

不意にクロトの後ろでテレポーターの起動音がしてクロトは振り返ると

おぼろげな人影が浮かんでくる

坑道内にいたほかのアークスが他の出口を使わずこちらを通って

脱出を図ろうとしたのであった、

 

大人3人は加勢が来たことへ安堵した。

 

お子様たちは飛んできたミサイルをそれぞれに回避して転送されて来る

人影に期待をこめた視線を送る、

 

転送されてきた人影は4人、見た所頼りなさげで装備も未熟であった

しかし今の状況では少しでも人数が増えることによりそれぞれが攻撃の的として

集中するのが避けられる可能性がある事だけでも幸いと思うしかなかった、

 

そして転送されてきた4人はその場に実体化するとビッグヴァーダーの

左側に走り出す、これで戦局も安定するだろう大人たちはそう思い

お子様たちもくじけそうな気持ちが少し持ち直してくる、

 

「お・弱そうだが増援が来た見たいねまぁ共同で潰してもクリアした事に

しといてやるかの」

 

垣屋は支援射撃を行おうと手をかけたライフルの引き金を緩めた

 

「相変わらず源さんは甘いねぇあれじゃ何時までたっても自立できないよ」

 

シンジュクは垣屋とは少々見解に違いがあるようだったが自分にとって

半ばどうでも良い事なので垣屋の判断に合わせる事にした、

 

4人の未熟なアークスたちはビッグヴァーダーの階段部分にまで到達するが

どう言う訳かそのステップを通り過ぎスロープに向かって一直線に

走って行く、

 

「ちょっとぉ!手伝ってくれるんじゃないの!?」

 

パティは予想と期待が見事に裏切られ怒りの混じった声で叫ぶ

その頼りないアークスたちは答える、

 

「俺たちが逃げ切るまで的になってろカス!」

 

そう言うと逃げ足を加速させビッグヴァーダーをすり抜け一目散にスロープを

駆け上がっていく、

 

お子様たちも大人たちも呆然としていた、おそらくは何らかの理由で

脱出のためこのルートを取らざるおえなかったのだろう

そして自分たちの実力ではヴァーダーにかなわないことを自覚し

どこか人目の付かないところで自分たちが逃げ切るための

おとりになる人間が来るまで隠れて待機しこの機会をうかがっていたのであろう、

 

垣屋とシンジュクは唖然としていたがすぐに建て直し顔を見合わせ

呆れ顔で声を揃えてて言った、

 

「あいつら・・・三流じゃない、ウンコだ!」

 

そしてシンジュクの顔が見る見る不機嫌さを増していく、彼女は人の誇りを持たない

低俗な輩を事の他嫌う、そして逃げてくるウンコアークスに向かって容赦なくライフルを発射する

 

「逃げんなウンコ野郎!」

 

シンジュクの射撃の腕前を知っている垣屋は急ぎ止めに入りそのために弾道が狂い

未熟ウンコは弾を避け垣屋とシンジュクを通り過ぎてキャンプシップに向かって走って行った

極限になれば人間と言うものは地が出るものでいずれその振る舞いは

報いとなって惨めな死につながるのであろう

垣屋はシンジュクをなだめお子様たちから目を離さないように注意を促し

シンジュクは舌打ちし額に青筋を立てながらお子様たちに視線を移した、

 

一方お子様たちは期待が外れて顔にみるみると怒りの表情が浮かんでくる

そしてそれぞれがお子様らしい叫び声を上げて地団駄を踏んだ、

 

「ギィィィィィィィィィィィ!もういいのじゃいいのじゃっ!」

 

ねねは叫び

 

「ギニャャャャャャャャャャャ自分たちだけ逃げるなんてずるいのじゃー!」

 

スウリンもヒステリーが伝播し叫ぶ

 

「ずっこ!超ずっこぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!」

 

「スゥもう私たちだけでやるしかないぞー、一気に駆け上がって本体を叩くんだー」

 

ブリュンヒルでだけは冷静にタルナーダをソード形態に展開し3人より一足先に

ヴァーダーに突進して行く、

それを見たねねとパティとスゥリンも続き左側から一気に甲板に駆け上がると

ヴァーダー本体に仕込まれたキャノン砲が開いたのを確認し

展開した羽に乗っかるとパティとねねはコアをブリュンヒルデとスゥリンは

キャノンの目前で注意を引きながらそれぞれが目標の破壊のため武器を振るう

キャノンからはビームが出ることが予想されるがそれまでに一気に勝負を決めるしかなかった

しかしキャノンの発射口の奥が光りひとまずその場をしのごうとブリュンヒルデは

ガードを固めスゥリンは飛び上がって回避を試みたが

中から球形の塊が飛びたしそれは着地しようとしたスウリンが踏みつけ

スゥリンは玉乗りのような格好で再び玉と一緒に地面へと転がり落ちて行く、

 

その間にもねねとパティそして体勢を立て直したブリュンヒルデはヴァーダーを

切り刻んでいく、パワー不足のねねとパティであるが装甲が施されていない

コア部分には十分な打撃を与えることができ

ヴァーダーは自らのアームで振り払おうと試みるものの大雑把な作りのアームでは

コア部分にいる彼女らをつまみ出すことはできずもがくのみであり

そちらに気を取られているのかミサイルの発射が滞っているようであった、

 

3人の連続攻撃にヴァーダーは徐々に弱っていき自らの力で浮遊していた

その力も出なくなったのか斜めに傾いで所々内部で小爆発が起こり始め

さらに続く攻撃でついには甲板に落ちて動きが止まる

そしてところどころから内部爆発を起こし甲板に叩きつけられ目から出ている

赤い光源がかすんで消えていく、

 

「お~やったねぇ~」

 

クロトは大声で甲板のお子様たちに声をかける

お子様たちは目標達成をその声で認識し喚起を顔に表しお互いの手を取り

跳ねながら勝利を喜び合った、

しかしその後ろではただの鉄の塊と化したビックヴァーダーが小さな爆発を

続けている、クロトは再び声をかけた

 

「早く降りておいでよ、そろそろヴァーダーが爆発するから・・・」

 

ねと続けようとした途端にこらえきれなくなったヴァーダーは大爆発を起こし

その強烈な爆風をお子様たちは予測も対処もできず

爆風と共に上空に跳ね上げられる、

 

「うにゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ!」

 

「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

「ギニャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

 

お子様たちは悲鳴を上げながら惨めに地面に叩きつけられる

ヴァーダーから吐き出された金属の球体型機甲種であるカストキンディッとを始末した

スゥリンが急いで駆け寄る

 

「あらら、もっと早く教えてあげたほうが良かったかな?」

 

クロトもお子様たちが無事である事を確認すると小さく笑い温かく見守っていた、

 

一方遠巻きに援護態勢に入っていた垣屋

 

「お・なんとかしたようじゃの」

 

「だねぇ、しかしあのポンコツで討伐認定とは源さん甘くないか?」

 

少し釈然としないシンジュク

 

「まぁええじゃろ、ほれガキども迎えに行こうかね」

 

そう言うとライフルのバイポットを畳みかぶっていたシートをしまうとスロープに向けて

二人で歩き始めた、そしてその後ろから声が聞こえる、

 

「まってぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

と叫ぶとさらりと砂の動く音、キャンプシップで寝入ってしまったティアが

急ぎ追いかけてきたのである、そして砂の中に埋もれた石につまずき

顔から見事に砂地へダイブ惨めな砂まみれの姿で追いかけてくるさまは

普段の冷静さとかけ離れていた、

 

「遅い!!リリーパまで居眠りしに着たのかこのバカ!」

 

不機嫌なシンジュクはティアにも容赦がない

 

「ごめんなさいついうっかりして・・・」

 

「おいおいシンジュクちゃんよぉ、まぁええじゃないの、ほれティアちゃん姉ちゃんたち

自分らでヴァーダー潰したの、迎えに行こうじゃないのぉ」

 

ティアはそれを聞くと安どの表情を浮かべたなんだかんだと馬鹿で愚かな姉のことを

心から案じる優しい心の持ち主であるそして3人でスロープへ向かって歩き出した、

 

地面から落ちた衝撃と痛みを乗り越えたお子様たちは立ち上がり体に付いた

砂ほこりを払い周囲に目を配ると敵の影はなく

コンテナの陰からリリーパ族のチビ助も出てきてここが安全になった事を認識した、

そして日が暮れかかった出口に向かってクロトとともに歩みだす

 

その先に揺らめく3人の影をお子様たちは見出す、ねねがそしてパティが

スゥリンとブリュンヒルデがそのおぼろげな影から会いたい顔が浮かんでくる、

 

「だんなしゃまやったのじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ティアちゃぁぁぁぁぁぁぁぁんお姉ちゃんやったよぉぉぉぉぉ」

 

垣屋、シンジュク、ティアその3人の下へお子様たちはその名を呼びながら

駆け出していった。

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