お子様たちは予想しなかったお迎えに歓喜し戦いの疲れも忘れ駆けてくる、
パティは一心同体の妹のティアへ、ねねは愛しい垣屋の下へ、
「ティァァァァァァァァァァァァァ!」
パティは砂まみれのティアに飛びつきそれに応えたティアと抱擁し互いの無事を
小さく飛び跳ねながら喜んでいた、
普段は冷静で姉を馬鹿呼ばわりするティアであるが年頃の娘であり
双子の姉を愛する素直な心の持ち主である、
それを横目で見ていたねねは自分もと思い垣屋に向かってより早く駆ける
「だぁんなしゃまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!うにゃゃゃゃゃゃゃゃゃ~!」
垣屋にめがけてねねは飛び込んでくる、瞳を閉じ唇を尖らせ地を離れ無防備に飛び込んでくる
垣屋は飛び込んでくるねねを受け止めるだろうとスゥリンとブリュンヒルデは
思っていた
「ぶっ!」
垣屋は飛び込んでくるねねをひらりとかわし受け止めらなかったねねは砂の上に顔から着地し
惨めな声を上げ砂にめり込んだ顔を引き抜くときょとんとしていた
「博士!何度言えば分かるんじゃこのバカタレは!」
垣屋はもうウンザリ気味にねねに向かって言った
「むにゃぁぁぁぁ!やんやんやんっ!ひどいのじゃっ!」
「まったくもぅ・・・ほれ・つかまれ」
ねねはその場で駄々っ子のように手足をばたつかせ垣屋はあきれながらも手を取って
立たせるとクロトの元へと歩みを進める、
クロトは垣屋たちに軽い挙手で迎え全員無事である事を報告した、
「クロトちゃんすまんかったのぉ、また何か埋め合わせするわい」
垣屋とクロトは面識があるらしくその会話によどみがなかった
そしてクロトのアイディスプレイに垣屋からのチャットが入った、
「どうかねガキどもはちゃんと戦えてたかの?」
クロトはチャットが飛んでくる事を予想しておらず少し驚いたが返事を返す
「そうだねぇ~まあまあってところかな・・・」
「ワシとクロトちゃんしかこのチャット見てねぇから忌憚なく言っとくれよ」
クロトは少し遠慮がちなそぶりを見せたが
「・・・全然ダメ、仔細は後で話すけど戦う覚悟が定まってないからねぇ
それが全部をダメにしてる、
程々の所でアークスごっこを終わらせて実家に帰したほうがいいと思うよ」
辛辣だったが垣屋の予想し平素思っていたのと同じ答えが返ってくる、
他人にもそう思われるほど露骨であり目に見える欠点として浮き彫りになった
瞬間である、
「やっぱしぃ~」
垣屋は心の中でがっくしとうなだれた、そしてクロトに無用の負担をかけたことを
詫びた、
そこに全員の端末に通信が入る、磁気嵐が過ぎ去り通信が入りやすくなっているようだった
「現地に留まるアークス各員へ、坑道内に閉じ込められたアークス全員の
救出に成功、キャンプシップが定員オーバーのため一度帰還する、
残りの隊員は折り返すまで現地にて待機されたし」
「了解」
全員が応答すると少し離れた所に待機していたキャンプシップが離陸する姿が見える
ビッグヴァーダーにかまっている間にウンコ野郎たち、他のパーティーと
救出に向かったアークス全員が坑道から脱出しキャンプシップに
たどり着いたようであった、
「やれやれ仕方ないね折り返すまで時間をつぶそうか」
シンジュクは適度な多肉植物の木を見つけそこにシートを引くと腰を下ろし
皆にも休憩するように促す、
日は大きく傾き気温も下がり始めているので野外ではあるが幾分か過ごしやすくなっている、
そこで垣屋たちはお子様たちから坑道の中での経緯を聞きどのように行動したかを
把握した、垣屋はそこでクロトとのチャットの内容が正確である裏付けを
得るに至る、
そして仲間を殺したトランマイザーに見事敵討ちを果たしたブリュンヒルデを
褒め称えた、
「私だけじゃ勝てなかったぞー、みんなのおかげで勝てたんだ・・・
ありがとう・・・・みんな・・・」
目尻に少し涙を浮かべながらもブリュンヒルデは皆に例を言いその謙虚さと素直さも
あわせて褒め称えられブリュンヒルデは恥ずかしそうにし
いとこのスゥリンも自分の事のようにいとこが褒められる事を喜んでいる、
「でその時にこれ拾ったのかい?」
シンジュクはスゥリンとブリュンヒルデの横で鎮座するリリーパ族のチビ介に目を向けた
すでに満腹以上にアークスビスケットを食べたチビ介に警戒心はすでになく
満腹も手伝い眠りそうになっている、
「源さんこれどうするんだい?」
「このままほっとくとダーカーの餌食になるか野垂れ死にだろうのぉ
今から探すってのもしんどい、一度研究所に連れて帰ってそれから親元へ
返してやるかの」
シンジュクは納得しお子様たちはチビ介と離れるのが少し伸び大喜びした
短い期間だが共に目的を果たすため行動した仲間である、
傾いていた日は沈み夜の帳が下りてくる、砂地が多いリリーパでは日没と同時に
放射冷却現象が始まり気温が徐々に下がっていく
そして遮る物がない空にはくっきりと満天の星が散りばめられる、
アークスや一部の天体マニアの間でナベリウスとリリーパの星空は
とかく人気がありそれを見たいがために夜間に無用に留まる者が
いるのもうなづける美しさである、
そうこうしている内にお子様たちはリリーパのチビ介と共に川の字になって
シートの上で居眠りをはじめ大人たちはダーカーと機甲種の襲撃に備え周囲の警戒を
怠らない、
数時間後に折り返してきたキャンプシップから通信が入り
今から収容する旨連絡が入る、
キャンプシップは収容が遅れたお詫びの気持ちからか周囲に敵がいない事を
確認し一行の近くに着陸しハッチを開いた、
大人たちはお子様たちを起こし荷物をまとめるとキャンプシップに乗り込む
すっかり慣れている好奇心旺盛なリリーパのチビ介も抵抗する事無く
キャンプシップに乗り込みその場を離れオラクルへと帰還していった、
数時間後キャンプシップはオラクルに到着、一行は研究所へと家路を急ぐ
「じゃ私はこれで」
クロトはその場を辞そうとした
「クロトちゃんガキどもが世話になったでお礼にご馳走すっから研究所に来いよ」
「そうかい?じゅあお邪魔しようかな」
クロトはその申し出を断る理由もなく好意に甘える事にし全員で
研究所への家路を急いだ、
本来なら検疫のために何日か留め置かれるはずのリリーパ族のチビ介も
キャンプシップ内で検疫を終わらせ、生物学者である垣屋の特権も手伝い
オラクルへの進入は滞る事無く許されている、
見たことがない風景や人々をみて刺激を受けたのかチビ介は興奮気味だ
しかしお子様たち一行との交流で人間たちへの恐怖心はなく
道行く人々のかわいいという声や優しく頭をなでられても恐れる様子はなかった、
研究所の玄関でチヒロとパイオニア一号、そしてラピ子とベッコが
皆の帰りを今か今かと待ち構えていた、
「お帰りなさいませお嬢様!ああ・パイオニア一号は心配で心配で・・・」
小心なパイオニア一号はねねを抱きしめんばかりになりオーバーなリアクションで
主の帰りを喜んだ、
「パイオニア一号ありがとなのじゃ!」
ねねは小心な従僕に感謝を述べ
「おかえりなさい皆さん」
チヒロはいつもの優しい笑顔と声で皆を迎え足元ではラピ子とベッコがにぎやかに
はしゃいでお出迎えをしている、
「帰ったのぉ留守ご苦労さん」
「あら・・・かわいらしぃぃぃぃぃ」
チヒロは垣屋に親愛のこもった笑顔で応え肩に乗っているリリーパのチビ介に気付き
その愛らしさに強すぎる母性本能がくすぐられている様子であった、
「ああ・これかね迷子のチビだわ親元に帰すまでここで預かるから世話してやっての」
「はい」
「キョキョ?」「キュゥゥゥゥゥゥゥ」
「りっりっ!りりー」
チヒロは元気よく返事を返しリリーパのチビは歓迎モードのラピ子とベッコに
興味津々な様子であった、お互いに警戒心や攻撃心は芽生えていない
じきに打ち解けるであろう、
そして一行は今までの疲れと汗を流すために風呂へとなだれ込み
体を清潔にした後にチヒロとパイオニア一号が腕によりをかけて作った
滋養あふれる食事を団欒を持って食べその日は早めに床についた、
その間に種族の枠を超えて打ち解けたリリーパのチビ介とラピ子とベッコは
リビングのソファに身を寄せ合い安らかな寝息を立て眠っていた、
新たな戦いと冒険の束の間の休息が始まったのである。
翌朝、地下坑道から生還したお子様たちは酷暑に晒されはしなかったものの
様々な事があり疲れたようであった、
いつもは自発的に起きてくるのだが今日はチヒロとパイオニア一号が起しに来るまで
起きてくる事はなかった、
寝ぼけ眼で朝食を食べる、
ジェロームに向かったテツのかわりにクロトがその席に座り
別のテーブルではラピ子とベッコ、リリーパのチビ介がそれぞれの食性に合わせた食事を
元気よくむさぼっていた、
テーブルに食べこぼしが散らばる汚らしい風情もまたいつもの風景である、
懸念されていたリリーパのチビ介は坑道で共に行動する間にすっかすり一行を
信頼したようで怯えたそぶりは見られず今の状況を楽しんでいるようであった
ラピ子とベッコと昔ながらの兄弟のように仲良く種族を超えた姿は誰の目にも
微笑ましく映る、
よく見るとリリーパのチビ介のかぶっている頭巾に布がピンで止められていて
墨書きで「命名 リリンパ 原生生物研究所備品、持ち出し禁止」
と書き加えられていた、
名前がないのを不便に思い垣屋が勝手に命名したのであろう、
朝食が済みチヒロとパイオニア一号はそそくさと全員の食器を下げ
皆がぼんやりとテレビのニュースを眺めている、
垣屋はふいにお子様たちに言う
「昨日はお疲れさんじゃったのぉ、次はアムドゥスキアの浮遊大陸で修行なんじゃが
約束どおりがんばったごほうび用意しといたから皆で楽しんできてのぉ」
「ほんとにご苦労様気をつけて行って来てね」
ティアも一行の苦労話を聞き心からねぎらいの言葉を送る、
「ティアちゃんもあいつらと行くのよ、分析がんばってくれたからの
そのごほうびよ」
垣屋はそう言うとスゥリン、ブリュンヒルデ、ねね、パティ、ティアの端末に
それぞれに1000メセタづづお金を振り込んだ、
そして同時にオラクルの人気遊戯施設ラッピーランドの入場券と
併設されたホテルの宿泊券が転送されてくる、
「うぉぉぉっこんなにたくさんっ!ティア!こんなにたくさんのお金ひさしぶりだよぉ!」
貧乏丸出しのパティは歓喜する
「ちょっとパティちゃんみっともないからだまってて、博士本当にありがとうございます」
同じ兄弟でも人の理性のある人たる妹と動物と大差のない姉の差が垣間見える瞬間である、
ねねとスゥリンも大喜びだがひとりブリュンヒルデの顔に明るさはなかった、
「博士・・・・ありがと、でも私はいいぞー、私は行くところがあるから・・・」
垣屋とシンジュクはその表情から察した
「そっか・・・仲間の墓前に報告に行くんじゃな、ならそれしてから行けはええじゃないか」
「そうしなよせっかくの好意を無駄にするんじゃないよ」
シンジュクの言葉に背中を押され皆も付き合う事に同意したのでブリュンヒルデは
幾分か表情を明るくし褒美のお礼を垣屋にした、
そしてお子様たちは支度に取り掛かる、装備をアイテムパックにしまい外へと踏み出す、
支度が終わりリビングから出ようとすると部屋を出ていたチヒロとパイオニア一号が
戻ってきた、その手には花束が携えられている
チヒロが丹精を込めて育て上げた花々でその中から極上の花を選びアレンジが施され
包装には達筆なパイオニア一号が「ブリュンヒルデの友、勇敢なるアークスへ」
と書かれたカードが挟んである、
「それチヒロさんが丹精込めて育ててた一番いいやつじゃないか」
シンジュクはチヒロの花束を見て言う
「いいんですよ、お花はいっぱいありますから」
遠慮と謙遜を交えてチヒロはやさしく返した、これ以上話を続けるのは
避けたいとチヒロは青い目で訴えていたのでシンジュクは何も言わなかった、
「あの・・・あのこれ良かったら持って行ってください、」
チヒロはブリュンヒルデに花束を渡しブリュンヒルではやさしい手つきで受け取る
「チヒロさんパイオニア一号さん・・・ありがとうだぞー・・・うれしいぞー」
ブリュンヒルデの目から涙が伝うがお子様たちはそれぞれにハンカチを取り出し
その涙をぬぐうすでに友情と思いやりが当たり前になった瞬間であった、
そしてお子様たちはセメタリーシップへと向かう、そこはオラクルで死亡した
人々を弔うための場所、延々と続く緑の芝生に大きさが定められた白い墓標が
限りなく続き今まで多くの人々がオラクルで一生を終えて行ったのだと
想起させずにはいられなかった、
あまりにも広大なため入り口に目的の墓に案内する墓守が待機している
その墓守にブリュンヒルデの仲間の墓を尋ねると
アークス戦没者の墓にまとめて葬られていると聞き案内をうけて向かった、
そこには定格の墓標ではなくそのエリアでひときわ目立つアークスをイメージした
男女の像が墓標代わりとなり多くの花束と何人かが墓に祈りをささげていた
お子様たち一行はそのなかに加わり祈りをささげる、
ブリュンヒルデは暖かい好意の詰まった花束を積み上げられた花束の上に置く、
「みんな・・・みんなを殺したあのにくい奴はここのみんなでやっつけたぞー・・・
私だけ生き残ってごめんだぞー・・・」
言葉がつまりブリュンヒルデは涙を浮かべその場にうずくまり泣き崩れ
再びお子様たちはブリュンヒルデをなぐさめる、
本当に大切な仲間だったのだろう、
自分の身に置き換えたらどうであろうお子様たちの心にもそんな気持ちがよぎった、
生きて帰らねば残された人間はこんなにも悲しむのだ
だから生きて帰らねばならないそれぞれが心に刻んだ、
少ししてブリュンヒルデは落ち着きを取り戻し元気よく立ち上がると残った涙を
袖で拭いて皆に振り返る、そして珍しく笑顔を見せると
「みんな付き合ってくれてありがとうだぞー、いくぞー!」
と元気よく言い放った、お子様たちも負けじと元気よくおー!と返しセメタリーシップの
転送装置へと走り出した、
「セメタリーシップではお静かに」
墓守が注意するのもお構いなし、お参りセットも放り出し元気良く駆けていく
所詮はお子様たちであり、たかがお子様ゆえにお子様である、
ラッピーランドへ向かうため一度住んでいるアークスシップ一番艦フェオに戻る
墓参りキッズたち、ラッピーランドへの送迎シップへと向かう
本来なら市民層ではなかなか行くのが難しいこの施設だけあり
お子様たちの高揚感はいやおうなしに高まる、
キキーッ!
船着場まであと少しであるがお子様たちの前に黒塗りの車が急停車して
行く手を遮った、お子様たちに不快感が沸き起こりそうになる
勢い良く止まったせいかタイヤのゴムが焦げるにおいが立ち上る、
後部ドアが開きたくましい体つきの影がゆっくりと出てくる
人さらいかと思ったがスゥリンとブリュンヒルデはすぐに気がついた、
「よし!間に合った!」
あいかわらずはちきれんばかりの筋肉を上等な背広を包み悪魔のような髪型と
カイゼルヒゲ、スゥリンのパパであった、
「パパー」「おぢさーん」
「垣屋博士から聞いたよ、みんなよくがんばったね!パパからも
みんなにごほうびだよ」
そう言うとそれぞれに端末にまた1000メセタが振り込まれ貧乏人のパティは
さらに歓喜、それぞれがスゥリンのパパに感謝の気持ちを述べた、
「ありがとなのじゃっ!」
「おじさんサンキュー!」
「パパありがとうなのじゃー」
「おじさんありがとうだぞー」
「うんうん、喜んでくれてパパもうれしいよ、パパも一緒に行こうかな」
運転席のドアが開き秘書のクリスティが無愛想な顔で言う
「だめです、午後11時からメルゲン社との打ち合わせ12時から
政府高官との会食2時からは・・・」
「分かった分かった・・・じゃみんな楽しんできてね」
ふたりは再び車に乗り込むと急発進しタイヤを泣かせ仕事へと向かって
走っていった、運転が乱暴である、
お子様たちはスゥリンのパパとクリスティに手を振るとラッピーランドの
送迎船を目指して歩き出す、程なくしてラッピーの形をした
黄色い送迎船が見え係員に入場券を提示すると係員はお子様たちを船内に
案内し程なくして船は動き出し出航して行った、
お子様たちの夢の国での素敵な思い出作りの始まりであった、
船は皆の喜びを乗せて夢の世界へ向かっていく、お子様たちのうきうきする気持ちを乗せて
やがて船は小さな島にたどり着いた、巨大なラッピーのモニュメントに
ゴシック調の城がそびえ立ち、心躍る音楽と人々の歓声、上空からふりそそぐ花びらの
イリュージョン全てが輝いて見えた、
「夢の世界ラッピーランドへようこそ!こころゆくまでお楽しみ下さいませ!」
衛兵の格好をしたスタッフの歓迎を受けお子様たちは歓声を上げて
園内へと駆けて行く、
「ねぇ何から乗る?」
パティはもう押さえが利かないようであった
「わらわはメリーゴーランドなのじゃー」
「わらわはジェットコースター」
「私は全部だぞー」
「おっブリュンちゃんの意見に私は賛成っ!」
4人は今日一日を精一杯楽しんだ、ジェットコースターもメリーゴーランドも
様々なアトラクションも、そしてひとしきり遊んで汗をかくとプールへとなだれ込む、
「わらわはこの水着にするのじゃっ!」
「ねねちゃんすごく大胆だぞー」
「わらわはこのかわいいのなのじゃー」
「私は・・・これかな・・・」
それぞれが自分の趣向にあわせた水着を買うとプールサイドへ走って行き
勢い良くプールに飛び込む、
「プールサイドは走らないでください!」「プールに飛び込まないでください!」
監視員の警告などお構いなしだ、プールに入って楽しい水のかけっこ
浮き輪に乗って明るい日差しを浴びながらゆったり漂う、
騒がしさもそうであるがとかくプールで注目を集めたのはパティとねねであった
二人とも共通しておつむの出来がよろしくない事と年に不相応なほどに
胸の発育がよろしくたわわに実っていたからである、
ティアとスゥリンとブリュンヒルデはどうなのか?希望というものは
ないのであろうか?
否、彼女らにはみずみずしい桃小尻がある、諦めてしまえばそこで全てが終わるのだ
今を精一杯楽しむそこに意識を集中しなくてはならないのである、
プールで泳ぐとビーチチェアで軽く昼寝をしてまた遊具やアトラクションを楽しみ
夜はラッピーナイトパレードに皆で参加しくたくたになりながら
指定のホテルのベッドに飛び込む、
「たのしいのじゃー」
「ほんとだぞー」
「わらわブリュンちゃんとずっと一緒がいいのじゃ!」
「ほんとあたしもティアちゃんとずっと博士のところにいよっかなぁ」
「だめよパティちゃんいつまでも博士に迷惑かけられないでしょ」
しかしブリュンヒルデは少し沈みがちな顔をした
「どうしたの?ブリュンヒルデちゃん」
ティアが心配してたずねる
「私は一度一人で修行をしようと思ってるんだぞ、確かにトランマイザーは倒したけど
それはみんなの力でだから、それに私の敵のあいつは顔に大きな切り傷があるんだ
私が付けたからなー、私は本当の敵をとるためあいつを一人で倒したいんだぞー
かならず帰ってくるからここから帰ったら一人で戦わせてほしいぞー」
心置きなく自分の決意を語る彼女に皆が心配そうな顔をした
「せっかく友達になれたのにお別れなんていやなのじゃっ!」
「そうだよこれからもずーーーーっと一緒にいよ?」
「大丈夫心配しなくていいぞ時々顔は見に来るしメールとか通信入れてくれてもいいから
これは私がやらなきゃならない事なんだぞ」
ブリュンヒルデの覚悟は揺るがなかった、単に敵討ちだけではなく自分の未熟と
自分に情をかけてくれるやさしい人々の心意気、様々な経験が
彼女をまたひとつ大人に成長させた結果であった、
「じゃぁ今夜はおもいっきり遊んじゃおうよ!」
パティの一声に皆が応じ枕投げが始まりいつしか4人は同じベッドに川の字になって
寝息を立てて眠っていた。
お子様たちは予想しないお迎えに歓喜し戦いの疲れも忘れ駆けてくる、
パティは一心同体の妹のティアへ、ねねは愛しい垣屋の下へ、
「ティァァァァァァァァァァァァァ!」
パティは砂まみれのティアに飛びつきそれに応えたティアと抱擁し互いの無事を
小さく飛び跳ねながら喜んでいた、
普段は冷静で姉を馬鹿呼ばわりするティアであるが年頃の娘であり
双子の姉を愛する素直な心の持ち主である、
それを横目で見ていたねねは自分もと思い垣屋に向かってより早く駆ける
「だぁんなしゃまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!うにゃゃゃゃゃゃゃゃゃ~!」
垣屋にめがけてねねは飛び込んでくる、瞳を閉じ唇を尖らせ地を離れ無防備に飛び込んでくる
垣屋は飛び込んでくるねねを受け止めるだろうとスゥリンとブリュンヒルデは
思っていた
「ぶっ!」
垣屋は飛び込んでくるねねをひらりとかわし受け止めらなかったねねは砂の上に顔から着地し
惨めな声を上げ砂にめり込んだ顔を引き抜くときょとんとしていた
「博士!何度言えば分かるんじゃこのバカタレは!」
垣屋はもうウンザリ気味にねねに向かって言った
「むにゃぁぁぁぁ!やんやんやんっ!ひどいのじゃっ!」
「まったくもぅ・・・ほれ・つかまれ」
ねねはその場で駄々っ子のように手足をばたつかせ垣屋はあきれながらも手を取って
立たせるとクロトの元へと歩みを進める、
クロトは垣屋たちに軽い挙手で迎え全員無事である事を報告した、
「クロトちゃんすまんかったのぉ、また何か埋め合わせするわい」
垣屋とクロトは面識があるらしくその会話によどみがなかった
そしてクロトのアイディスプレイに垣屋からのチャットが入った、
「どうかねガキどもはちゃんと戦えてたかの?」
クロトはチャットが飛んでくる事を予想しておらず少し驚いたが返事を返す
「そうだねぇ~まあまあってところかな・・・」
「ワシとクロトちゃんしかこのチャット見てねぇから忌憚なく言っとくれよ」
クロトは少し遠慮がちなそぶりを見せたが
「・・・全然ダメ、仔細は後で話すけど戦う覚悟が定まってないからねぇ
それが全部をダメにしてる、
程々の所でアークスごっこを終わらせて実家に帰したほうがいいと思うよ」
辛辣だったが垣屋の予想し平素思っていたのと同じ答えが返ってくる、
他人にもそう思われるほど露骨であり目に見える欠点として浮き彫りになった
瞬間である、
「やっぱしぃ~」
垣屋は心の中でがっくしとうなだれた、そしてクロトに無用の負担をかけたことを
詫びた、
そこに全員の端末に通信が入る、磁気嵐が過ぎ去り通信が入りやすくなっているようだった
「現地に留まるアークス各員へ、坑道内に閉じ込められたアークス全員の
救出に成功、キャンプシップが定員オーバーのため一度帰還する、
残りの隊員は折り返すまで現地にて待機されたし」
「了解」
全員が応答すると少し離れた所に待機していたキャンプシップが離陸する姿が見える
ビッグヴァーダーにかまっている間にウンコ野郎たち、他のパーティーと
救出に向かったアークス全員が坑道から脱出しキャンプシップに
たどり着いたようであった、
「やれやれ仕方ないね折り返すまで時間をつぶそうか」
シンジュクは適度な多肉植物の木を見つけそこにシートを引くと腰を下ろし
皆にも休憩するように促す、
日は大きく傾き気温も下がり始めているので野外ではあるが幾分か過ごしやすくなっている、
そこで垣屋たちはお子様たちから坑道の中での経緯を聞きどのように行動したかを
把握した、垣屋はそこでクロトとのチャットの内容が正確である裏付けを
得るに至る、
そして仲間を殺したトランマイザーに見事敵討ちを果たしたブリュンヒルデを
褒め称えた、
「私だけじゃ勝てなかったぞー、みんなのおかげで勝てたんだ・・・
ありがとう・・・・みんな・・・」
目尻に少し涙を浮かべながらもブリュンヒルデは皆に例を言いその謙虚さと素直さも
あわせて褒め称えられブリュンヒルデは恥ずかしそうにし
いとこのスゥリンも自分の事のようにいとこが褒められる事を喜んでいる、
「でその時にこれ拾ったのかい?」
シンジュクはスゥリンとブリュンヒルデの横で鎮座するリリーパ族のチビ介に目を向けた
すでに満腹以上にアークスビスケットを食べたチビ介に警戒心はすでになく
満腹も手伝い眠りそうになっている、
「源さんこれどうするんだい?」
「このままほっとくとダーカーの餌食になるか野垂れ死にだろうのぉ
今から探すってのもしんどい、一度研究所に連れて帰ってそれから親元へ
返してやるかの」
シンジュクは納得しお子様たちはチビ介と離れるのが少し伸び大喜びした
短い期間だが共に目的を果たすため行動した仲間である、
傾いていた日は沈み夜の帳が下りてくる、砂地が多いリリーパでは日没と同時に
放射冷却現象が始まり気温が徐々に下がっていく
そして遮る物がない空にはくっきりと満天の星が散りばめられる、
アークスや一部の天体マニアの間でナベリウスとリリーパの星空は
とかく人気がありそれを見たいがために夜間に無用に留まる者が
いるのもうなづける美しさである、
そうこうしている内にお子様たちはリリーパのチビ介と共に川の字になって
シートの上で居眠りをはじめ大人たちはダーカーと機甲種の襲撃に備え周囲の警戒を
怠らない、
数時間後に折り返してきたキャンプシップから通信が入り
今から収容する旨連絡が入る、
キャンプシップは収容が遅れたお詫びの気持ちからか周囲に敵がいない事を
確認し一行の近くに着陸しハッチを開いた、
大人たちはお子様たちを起こし荷物をまとめるとキャンプシップに乗り込む
すっかり慣れている好奇心旺盛なリリーパのチビ介も抵抗する事無く
キャンプシップに乗り込みその場を離れオラクルへと帰還していった、
数時間後キャンプシップはオラクルに到着、一行は研究所へと家路を急ぐ
「じゃ私はこれで」
クロトはその場を辞そうとした
「クロトちゃんガキどもが世話になったでお礼にご馳走すっから研究所に来いよ」
「そうかい?じゅあお邪魔しようかな」
クロトはその申し出を断る理由もなく好意に甘える事にし全員で
研究所への家路を急いだ、
本来なら検疫のために何日か留め置かれるはずのリリーパ族のチビ介も
キャンプシップ内で検疫を終わらせ、生物学者である垣屋の特権も手伝い
オラクルへの進入は滞る事無く許されている、
見たことがない風景や人々をみて刺激を受けたのかチビ介は興奮気味だ
しかしお子様たち一行との交流で人間たちへの恐怖心はなく
道行く人々のかわいいという声や優しく頭をなでられても恐れる様子はなかった、
研究所の玄関でチヒロとパイオニア一号、そしてラピ子とベッコが
皆の帰りを今か今かと待ち構えていた、
「お帰りなさいませお嬢様!ああ・パイオニア一号は心配で心配で・・・」
小心なパイオニア一号はねねを抱きしめんばかりになりオーバーなリアクションで
主の帰りを喜んだ、
「パイオニア一号ありがとなのじゃ!」
ねねは小心な従僕に感謝を述べ
「おかえりなさい皆さん」
チヒロはいつもの優しい笑顔と声で皆を迎え足元ではラピ子とベッコがにぎやかに
はしゃいでお出迎えをしている、
「帰ったのぉ留守ご苦労さん」
「あら・・・かわいらしぃぃぃぃぃ」
チヒロは垣屋に親愛のこもった笑顔で応え肩に乗っているリリーパのチビ介に気付き
その愛らしさに強すぎる母性本能がくすぐられている様子であった、
「ああ・これかね迷子のチビだわ親元に帰すまでここで預かるから世話してやっての」
「はい」
「キョキョ?」「キュゥゥゥゥゥゥゥ」
「りっりっ!りりー」
チヒロは元気よく返事を返しリリーパのチビは歓迎モードのラピ子とベッコに
興味津々な様子であった、お互いに警戒心や攻撃心は芽生えていない
じきに打ち解けるであろう、
そして一行は今までの疲れと汗を流すために風呂へとなだれ込み
体を清潔にした後にチヒロとパイオニア一号が腕によりをかけて作った
滋養あふれる食事を団欒を持って食べその日は早めに床についた、
その間に種族の枠を超えて打ち解けたリリーパのチビ介とラピ子とベッコは
リビングのソファに身を寄せ合い安らかな寝息を立て眠っていた、
新たな戦いと冒険の束の間の休息が始まったのである。
翌朝、地下坑道から生還したお子様たちは酷暑に晒されはしなかったものの
様々な事があり疲れたようであった、
いつもは自発的に起きてくるのだが今日はチヒロとパイオニア一号が起しに来るまで
起きてくる事はなかった、
寝ぼけ眼で朝食を食べる、
ジェロームに向かったテツのかわりにクロトがその席に座り
別のテーブルではラピ子とベッコ、リリーパのチビ介がそれぞれの食性に合わせた食事を
元気よくむさぼっていた、
テーブルに食べこぼしが散らばる汚らしい風情もまたいつもの風景である、
懸念されていたリリーパのチビ介は坑道で共に行動する間にすっかすり一行を
信頼したようで怯えたそぶりは見られず今の状況を楽しんでいるようであった
ラピ子とベッコと昔ながらの兄弟のように仲良く種族を超えた姿は誰の目にも
微笑ましく映る、
よく見るとリリーパのチビ介のかぶっている頭巾に布がピンで止められていて
墨書きで「命名 リリンパ 原生生物研究所備品、持ち出し禁止」
と書き加えられていた、
名前がないのを不便に思い垣屋が勝手に命名したのであろう、
朝食が済みチヒロとパイオニア一号はそそくさと全員の食器を下げ
皆がぼんやりとテレビのニュースを眺めている、
垣屋はふいにお子様たちに言う
「昨日はお疲れさんじゃったのぉ、次はアムドゥスキアの浮遊大陸で修行なんじゃが
約束どおりがんばったごほうび用意しといたから皆で楽しんできてのぉ」
「ほんとにご苦労様気をつけて行って来てね」
ティアも一行の苦労話を聞き心からねぎらいの言葉を送る、
「ティアちゃんもあいつらと行くのよ、分析がんばってくれたからの
そのごほうびよ」
垣屋はそう言うとスゥリン、ブリュンヒルデ、ねね、パティ、ティアの端末に
それぞれに1000メセタづづお金を振り込んだ、
そして同時にオラクルの人気遊戯施設ラッピーランドの入場券と
併設されたホテルの宿泊券が転送されてくる、
「うぉぉぉっこんなにたくさんっ!ティア!こんなにたくさんのお金ひさしぶりだよぉ!」
貧乏丸出しのパティは歓喜する
「ちょっとパティちゃんみっともないからだまってて、博士本当にありがとうございます」
同じ兄弟でも人の理性のある人たる妹と動物と大差のない姉の差が垣間見える瞬間である、
ねねとスゥリンも大喜びだがひとりブリュンヒルデの顔に明るさはなかった、
「博士・・・・ありがと、でも私はいいぞー、私は行くところがあるから・・・」
垣屋とシンジュクはその表情から察した
「そっか・・・仲間の墓前に報告に行くんじゃな、ならそれしてから行けはええじゃないか」
「そうしなよせっかくの好意を無駄にするんじゃないよ」
シンジュクの言葉に背中を押され皆も付き合う事に同意したのでブリュンヒルデは
幾分か表情を明るくし褒美のお礼を垣屋にした、
そしてお子様たちは支度に取り掛かる、装備をアイテムパックにしまい外へと踏み出す、
支度が終わりリビングから出ようとすると部屋を出ていたチヒロとパイオニア一号が
戻ってきた、その手には花束が携えられている
チヒロが丹精を込めて育て上げた花々でその中から極上の花を選びアレンジが施され
包装には達筆なパイオニア一号が「ブリュンヒルデの友、勇敢なるアークスへ」
と書かれたカードが挟んである、
「それチヒロさんが丹精込めて育ててた一番いいやつじゃないか」
シンジュクはチヒロの花束を見て言う
「いいんですよ、お花はいっぱいありますから」
遠慮と謙遜を交えてチヒロはやさしく返した、これ以上話を続けるのは
避けたいとチヒロは青い目で訴えていたのでシンジュクは何も言わなかった、
「あの・・・あのこれ良かったら持って行ってください、」
チヒロはブリュンヒルデに花束を渡しブリュンヒルではやさしい手つきで受け取る
「チヒロさんパイオニア一号さん・・・ありがとうだぞー・・・うれしいぞー」
ブリュンヒルデの目から涙が伝うがお子様たちはそれぞれにハンカチを取り出し
その涙をぬぐうすでに友情と思いやりが当たり前になった瞬間であった、
そしてお子様たちはセメタリーシップへと向かう、そこはオラクルで死亡した
人々を弔うための場所、延々と続く緑の芝生に大きさが定められた白い墓標が
限りなく続き今まで多くの人々がオラクルで一生を終えて行ったのだと
想起させずにはいられなかった、
あまりにも広大なため入り口に目的の墓に案内する墓守が待機している
その墓守にブリュンヒルデの仲間の墓を尋ねると
アークス戦没者の墓にまとめて葬られていると聞き案内をうけて向かった、
そこには定格の墓標ではなくそのエリアでひときわ目立つアークスをイメージした
男女の像が墓標代わりとなり多くの花束と何人かが墓に祈りをささげていた
お子様たち一行はそのなかに加わり祈りをささげる、
ブリュンヒルデは暖かい好意の詰まった花束を積み上げられた花束の上に置く、
「みんな・・・みんなを殺したあのにくい奴はここのみんなでやっつけたぞー・・・
私だけ生き残ってごめんだぞー・・・」
言葉がつまりブリュンヒルデは涙を浮かべその場にうずくまり泣き崩れ
再びお子様たちはブリュンヒルデをなぐさめる、
本当に大切な仲間だったのだろう、
自分の身に置き換えたらどうであろうお子様たちの心にもそんな気持ちがよぎった、
生きて帰らねば残された人間はこんなにも悲しむのだ
だから生きて帰らねばならないそれぞれが心に刻んだ、
少ししてブリュンヒルデは落ち着きを取り戻し元気よく立ち上がると残った涙を
袖で拭いて皆に振り返る、そして珍しく笑顔を見せると
「みんな付き合ってくれてありがとうだぞー、いくぞー!」
と元気よく言い放った、お子様たちも負けじと元気よくおー!と返しセメタリーシップの
転送装置へと走り出した、
「セメタリーシップではお静かに」
墓守が注意するのもお構いなし、お参りセットも放り出し元気良く駆けていく
所詮はお子様たちであり、たかがお子様ゆえにお子様である、
ラッピーランドへ向かうため一度住んでいるアークスシップ一番艦フェオに戻る
墓参りキッズたち、ラッピーランドへの送迎シップへと向かう
本来なら市民層ではなかなか行くのが難しいこの施設だけあり
お子様たちの高揚感はいやおうなしに高まる、
キキーッ!
船着場まであと少しであるがお子様たちの前に黒塗りの車が急停車して
行く手を遮った、お子様たちに不快感が沸き起こりそうになる
勢い良く止まったせいかタイヤのゴムが焦げるにおいが立ち上る、
後部ドアが開きたくましい体つきの影がゆっくりと出てくる
人さらいかと思ったがスゥリンとブリュンヒルデはすぐに気がついた、
「よし!間に合った!」
あいかわらずはちきれんばかりの筋肉を上等な背広を包み悪魔のような髪型と
カイゼルヒゲ、スゥリンのパパであった、
「パパー」「おぢさーん」
「垣屋博士から聞いたよ、みんなよくがんばったね!パパからも
みんなにごほうびだよ」
そう言うとそれぞれに端末にまた1000メセタが振り込まれ貧乏人のパティは
さらに歓喜、それぞれがスゥリンのパパに感謝の気持ちを述べた、
「ありがとなのじゃっ!」
「おじさんサンキュー!」
「パパありがとうなのじゃー」
「おじさんありがとうだぞー」
「うんうん、喜んでくれてパパもうれしいよ、パパも一緒に行こうかな」
運転席のドアが開き秘書のクリスティが無愛想な顔で言う
「だめです、午後11時からメルゲン社との打ち合わせ12時から
政府高官との会食2時からは・・・」
「分かった分かった・・・じゃみんな楽しんできてね」
ふたりは再び車に乗り込むと急発進しタイヤを泣かせ仕事へと向かって
走っていった、運転が乱暴である、
お子様たちはスゥリンのパパとクリスティに手を振るとラッピーランドの
送迎船を目指して歩き出す、程なくしてラッピーの形をした
黄色い送迎船が見え係員に入場券を提示すると係員はお子様たちを船内に
案内し程なくして船は動き出し出航して行った、
お子様たちの夢の国での素敵な思い出作りの始まりであった、
船は皆の喜びを乗せて夢の世界へ向かっていく、お子様たちのうきうきする気持ちを乗せて
やがて船は小さな島にたどり着いた、巨大なラッピーのモニュメントに
ゴシック調の城がそびえ立ち、心躍る音楽と人々の歓声、上空からふりそそぐ花びらの
イリュージョン全てが輝いて見えた、
「夢の世界ラッピーランドへようこそ!こころゆくまでお楽しみ下さいませ!」
衛兵の格好をしたスタッフの歓迎を受けお子様たちは歓声を上げて
園内へと駆けて行く、
「ねぇ何から乗る?」
パティはもう押さえが利かないようであった
「わらわはメリーゴーランドなのじゃー」
「わらわはジェットコースター」
「私は全部だぞー」
「おっブリュンちゃんの意見に私は賛成っ!」
4人は今日一日を精一杯楽しんだ、ジェットコースターもメリーゴーランドも
様々なアトラクションも、そしてひとしきり遊んで汗をかくとプールへとなだれ込む、
「わらわはこの水着にするのじゃっ!」
「ねねちゃんすごく大胆だぞー」
「わらわはこのかわいいのなのじゃー」
「私は・・・これかな・・・」
それぞれが自分の趣向にあわせた水着を買うとプールサイドへ走って行き
勢い良くプールに飛び込む、
「プールサイドは走らないでください!」「プールに飛び込まないでください!」
監視員の警告などお構いなしだ、プールに入って楽しい水のかけっこ
浮き輪に乗って明るい日差しを浴びながらゆったり漂う、
騒がしさもそうであるがとかくプールで注目を集めたのはパティとねねであった
二人とも共通しておつむの出来がよろしくない事と年に不相応なほどに
胸の発育がよろしくたわわに実っていたからである、
ティアとスゥリンとブリュンヒルデはどうなのか?希望というものは
ないのであろうか?
否、彼女らにはみずみずしい桃小尻がある、諦めてしまえばそこで全てが終わるのだ
今を精一杯楽しむそこに意識を集中しなくてはならないのである、
プールで泳ぐとビーチチェアで軽く昼寝をしてまた遊具やアトラクションを楽しみ
夜はラッピーナイトパレードに皆で参加しくたくたになりながら
指定のホテルのベッドに飛び込む、
「たのしいのじゃー」
「ほんとだぞー」
「わらわブリュンちゃんとずっと一緒がいいのじゃ!」
「ほんとあたしもティアちゃんとずっと博士のところにいよっかなぁ」
「だめよパティちゃんいつまでも博士に迷惑かけられないでしょ」
しかしブリュンヒルデは少し沈みがちな顔をした
「どうしたの?ブリュンヒルデちゃん」
ティアが心配してたずねる
「私は一度一人で修行をしようと思ってるんだぞ、確かにトランマイザーは倒したけど
それはみんなの力でだから、それに私の敵のあいつは顔に大きな切り傷があるんだ
私が付けたからなー、私は本当の敵をとるためあいつを一人で倒したいんだぞー
かならず帰ってくるからここから帰ったら一人で戦わせてほしいぞー」
心置きなく自分の決意を語る彼女に皆が心配そうな顔をした
「せっかく友達になれたのにお別れなんていやなのじゃっ!」
「そうだよこれからもずーーーーっと一緒にいよ?」
「大丈夫心配しなくていいぞ時々顔は見に来るしメールとか通信入れてくれてもいいから
これは私がやらなきゃならない事なんだぞ」
ブリュンヒルデの覚悟は揺るがなかった、単に敵討ちだけではなく自分の未熟と
自分に情をかけてくれるやさしい人々の心意気、様々な経験が
彼女をまたひとつ大人に成長させた結果であった、
「じゃぁ今夜はおもいっきり遊んじゃおうよ!」
パティの一声に皆が応じ枕投げが始まりいつしか4人は同じベッドに川の字になって
寝息を立てて眠っていた。
ラッピーランドで余暇を楽しみ研究所に帰った後の事ブリュンヒルデは住民たちに
深々と頭を下げ昨日ねねとスゥリンとパティとティアに語った事をもう一度話し
すでにジェロームに向かったテツにもよろしくと伝えると、
「そうかい、無理はするんじゃないよ」
「困った事があったりお腹がすいたらいつでも来いよ、ワシら待ってるからの」
「私もブリュンヒルデさんが来るの楽しみにしていますからね」
「このパイオニア一号もですよあなたはお嬢様の大切なお友達ですから」
「・・・みんなありがとうだぞ・・・今度こそ敵討ちを自分の力だけで
やってみせるぞー」
ブリュンヒルデはこぼれる涙を拭くともう一度頭を下げて研究所を後にした
小柄な体に巨大なタルナーダを背負い前に進む姿はさながらカメのようであったが
彼女の無事を研究所の面々は祈り見えなくなるまで佇み見送った。