新光暦新光暦238年3月1日 午前6時22分 アークス宿舎ねねの部屋
ねねは目を覚ました、彼女に目覚まし時計は必要ない、朝になると自然と目が覚める、
スゥリンはまだ眠っているのでねねは起こさないようにそっと部屋を出た
本来キャストにはほとんど睡眠は必要ないのだが人間臭さい所が彼女の特徴なのだろう、
キャストの中には以前にヒューマンやニューマンであった者も多く
その時の名残で生身の体の時のバイオリズムで生活をする者も少なくないのだ、
アークスに当てがわれた部屋はそう広くはない、独立したキッチンはなく
対面式のキッチンとリビングを兼用する造りになっていた、
「おはようございますお嬢様方、もう少しで朝食が出来ますので今しばらくお待ち下さいませ」
パイオニア一号は執事服の上からエプロンかけの姿で二人の朝食を用意していた、
人工的に作られた朝日を浴びてより緑鮮やかに映えるサラダとハムとチーズをはさんだ
ホットサンド、程よい暖かなにおいが部屋に漂っている
ねねは朝食を見ると満足げな顔を浮かべ、スゥリンを起こしに寝室へと戻っていった
揺り起こされスゥリンは眠い目をこすりよたよたとリビングにきた、
ふたりは食卓に着きパイオニア一号が洗練された優雅な手さばきで食器をテーブルに並べていく、
ねねは食欲が刺激されているらしく朝食に目が釘付けになり今にもよだれを垂らしそうな勢いだ、
スゥリンも久し振りなのだろう手作りの豪華な朝食に満足しているようだ
「いただきますなのじゃ!」
「なのじゃー!」
ねねとスゥリンは元気良く声を上げトーストに一気にかぶりついた、とても速い速度で
何度も咀嚼し早食い競争のように元気良く胃に流し込んでいく、
「うまいのじゃー!」
ねねとスゥリンは朝食に満足し良く食べる、山盛りになったホットサンドはみるみるうちに
その量を減らしていく、
「パイオニア一号、パスチャライズなのじゃ!」
ねねが言い終わるかどうかと言う時に牛乳の入ったピッチャーを持ち控えていた
パイオニア一号はねねのコップになみなみと牛乳を注ぎねねは一気に飲み干し
おかわりを求めた、
スゥリンも口に合ったらしく小さな体で元気良くサンドを平らげて
朝食はすぐになくなってしまった、二人はおかわりを求めたがパイオニア一号は
おかわりはもうない事を手で示して見せ、
「本日はダーカーの討伐に行かれるのですから腹八分がよろしいかと存じます」
と二人に今日の予定をさらりと告げると食器を片付けキッチンで洗い始めた、
ねねたちは任務を思い出し部屋の片隅に寄せられていたアイテムパックの中身を確認し
ねねはカタナをスウリンはアルバウォンドと呼ばれる量産品の短杖を
アイテムパックから取り出し腰に帯びてパイオニア一号に見送られ
アークスロビーへ向けて部屋を後にした、
待ち合わせに少し時間があったので二人はアークスロビーのソファーで時間を潰していると
アザナミとサガ、そして今日から一緒にパーティーを組むイフェメラが
駆け寄ってくる、
「おはよう・・・」
イフェメラ少し遅れて挨拶をする、まるで挨拶を最近まで知らなかったかのような
ぎこちなさがあり普通の人間ならば違和感を覚えるところだが
ねねとスゥリンは意に介さない、まだ無表情ではあるものの声の調子から安心感が
感じられ少しづつ打ち解けてはいるようだ、
「最近森林地帯にうじゃうじゃしてるダカンを倒してくるだけだから
あんまり硬くならずに行っておいで」
「相手が弱くても油断をすれば死ぬ、心して行け」
アザナミは3人の緊張をほぐすためポジティブに声をかけ、サガは強く警戒を促す為
ネガティブな励ましを3人に送った、そして二人はそれぞれの行くべき場所へと
戻りその姿は遠のき小さくなっていく、
3人はクエストカウンターへ足を運び受付に立っている水色の制服の係員に声をかける、
金髪碧眼に赤縁のめがねをかけやさしげな表情、以前にねねにザウーダン討伐の
手続きをしたアンネリーゼである、
「どのクエストにしますか?」
「アザナミちゃんがダカン討伐に行っといでといってたのじゃ!」
「はい、クエストの受注は可能なようですね手配いたします」
クエストの手配を慣れた手つきで手早く行うとアンネリーゼは
「出発の前にクエスト管理官のコフィーさんの話を聞いてから出発して下さいね」
とやさしく対応しコフィーより伝言を受けている旨を伝えた、
3人はアンネリーゼに礼を言うと反対側にあるクエストカウンターへ足を運ぶ、
しかしアンネリーゼから外見的な特徴を聞かなかったためコフィーが誰か分からず
近くに立っていた水色の制服を着た名札にレベッカとある黒髪の係員に
話しかけてみるが隣に立っている黒い制服を着たアークス職員が
そうだと答えた、
アークス職員は部署ごとに制服の色が決まっているがその中で
白色と黒色の制服を着ている職員はエリート職員であり
階級が高い責任者か突出した技能を持っている、あるいは特別な勲章の授与を受けている
者たちにだけ許されているエリートの証でコフィーもその一人であろう、
3人が隣に視線を流すと短くやや青みがかかった銀髪に端正な顔立ちだが目つきは鋭く
全くと言って良いほど表情を変えない、アンネリーゼやレベッカと違い近寄り難い雰囲気が漂う、
女性がねねたちに気付いたようで横目でこちらを見ている、
「用件をどうぞ」
その声に感情の起伏は感じられない、まるでエリートクラスのキャストのような
冷たさを感じさせる、
「アンネリーゼさんから話を聞くようにいわれたのじゃー」
スゥリンはクエストカウンターに手をかけ顔だけを突き出しながらコフィーに話しかけた、
10歳程度の子供にしか見えない小さなスゥリンに情のある者なら目を細めるであろうが
コフィーはスゥリンの顔を無表情に見下ろしその場にいることを確認するに留めた、
コフィーは表情を変える事無く用件を淡々と述べる
それと同時に3人の目前のフォトン粒子がアイディスプレイを形作り
その説明にあわせマーキングや画像が表示される
「これが惑星ナベリウスに観測用に設置した観測素子と呼ばれる物です
原生種にたびたび持ち去られておりそれをクエストついでに回収してきて下さい、
2つで結構です、
回収したものを私に提出してくれればナベリウスの自由探索エリアでの活動を
許可します、そして自由探索を終えれば次の惑星での探索を許可します」
と説明した、
「ねえねえコフィーちゃん!コフィーちゃんって」
ねねはコフィーに取るに足らない雑談をしようと持ちかけたがコフィーは厳しい目つきでそれを制した
ねねは残念そうな顔をしてあきらめた、
「ねねちゃーん、むだなのじゃー、いくのじゃー」
スゥリンがねねのスカートを引っ張りゲートへと向かう
「ケーチケーチケチなのじゃぁぁぁ!」
「いこう・・・・・・」
イフェメラにも手を引かれ不満げなねねはしぶしぶゲートへと向かう
ゲートから待機しているナベリウスに向かうキャンプシップの中から指定されたシップを探す、
「6番のシップなのじゃー」
スゥリンは指でキャンプシップの番号を差しながら確認している
「あったのじゃーこれにのるのじゃー」
キャンプシップのクルーが3人を見止めるとアークスカードの提示を求め
確認すると
「OK自分たちだけで行くのか?気をつけて行くんだぜ、さぁ乗った乗った」
まるで子豚を荷台に乗せるように荒っぽく中へと放り込む
小汚い内装、粗末な座席に座るとスピーカーからアナウンスが流れる
「発信するぞガキども!」
ゲートからキャンプシップに乗り込むと今回は相乗りの相手がいないらしく
キャンプシップは小刻みに揺れながらカタパルトから離陸し目的地へと発進した、
ねねは先の訓練の時の事がありダーカーと聞くと少し気持ちが暗くなった
しかしやらないわけには行かない、そして仲間とパーティーを組んでいる以上
自分だけ逃げる訳にも行かない色々とネガティブな感情や記憶が
こみ上げてくるのを抑えようと努力していた、
一方イフェメラは静かに座っている装備の点検も終えていつでも出られるように
準備が済んだようだ、
スゥリンはお気楽だ空いたシートに寝転び足をパタパタさせて
モニターでテレビ番組を見ている、
ねねやイフェメラよりほんのわずかに実戦経験があるので目的地で予定されている
相手を恐れていないのだろう、それともただの楽観主義の馬鹿なのか・・・
1時間半くらいは航行しただろうか再びアナウンスが流れる
「ついたぞガキども幸運を!」
キャンプシップの機長より現地に到着したが着陸ポイントが狭いので
テレパイプで降下するよう指示が出たので3人はテレプールに
飛び込み作戦エリアへ降下していった、
キャンプシップからナベリウスの地へ青い光の球が3つ勢い良く落下していく
ダカン討伐任務が始まった。
新光暦新光暦238年3月2日 午前9時40分 惑星ナベリウス西部ジャングルの一角
3人は任務を開始するエリアに降り立つとディスプレイで現位置を確認し
レーダーを起動して周辺のマップを映し出した、
間を置かず周辺の地形がディスプレイに表示される、
最初に細い道を抜けると広い草原に出てその先の洞窟を抜けると奥地に向かう事が出来るようだ、
特に作戦を立てる必要はなさそうに感じた3人はゆっくりと探索しながら
奥に進むことにした、
細い道を進んでいくと道の真ん中に1mくらいのペンギンを思わせる鳥がこちらをずっと眺めている、
特におびえる様子はなく黒くうるんだ目をそらす事無くこちらをずっと眺めている
全員のアイディスプレイに情報が表示される
ナブラッピー
ナベリウスに生息する鳥類の一種で、オラクルにも共生しているラッピーが
ナベリウスの環境を気に入り棲みついて地域変異した亜種である、
スゥリンはナヴラッピーのお腹の下に何か光る物を見つけ指差した
「あれが素粒子なのじゃー」
三人は顔を見合わせじりじりと距離を詰めていく、ナヴラッピーは近づいてくる3人に
すでに飛ぶことを忘れた羽をバタバタと羽ばたかせくちばしを開いて威嚇した
「きゅきゅっ!」
情けない声が笑いを誘うがナブラッピーはやる気のようだ、しかし3人には相手とは
裏腹にやる気などさらさらにない、
ナヴラッピーにあと5mほどに近づいた時、脇の茂みや地面の穴から
次々にナヴラッピーが現れて3人に威嚇を始めた
10羽はいるだろうか例え数が増えても恐怖感は感じないむしろ滑稽さが増すだけだ、
その時司令部のブリギッタから通信機に緊急指令が入る
「緊急指令!ナヴラッピーを捕獲して下さい!」
「捕獲・・・かや?」
ねねは怪訝な顔で二人を見たスゥリンもイフェメラも未経験らしく
どのように捕まえるか皆目見当が付かないようであった、
ねねは刀を鞘に収めるとじりじりと距離を詰めて・・・目の前のナヴラッピーに
飛びついたナヴラッピーは鈍重そうな見た目に反してひらりと身をかわし
ねねはうつぶせに倒れ身を起こす、ねねは身をかわしひょこひょこと馬鹿にしたように
左右に跳ねるナヴラッピーを忌々しげに睨み付けて再度捕まえようと飛び掛るが結果は同じ、
「ギィィィィィィィィィィィィィィィィ!」
ねねは苛立ちを隠さずその場でじだんだを踏む
ブリギッダは通信機から
「ねねさん、捕獲と言っても素手で捕まえなくていいです!武器のフォトン出力を最低にして
峰打ちにして下さい昏倒した個体はこちらで回収します」
「もっと早く言うのじゃーーーー!」
ねねは顔を赤くしてブリギッタに叫んだ
通信機の向こうでブリギッダがねねの後ろでではスゥリンが笑っている、
スゥリンはひとしきり大笑いした後ナヴラッピーの群れにアルバウォンを振り上げた
スゥリンの周りに小さいスパークが起こりまわりの木の葉や塵が
そしてナヴラッピーが作られた渦に巻き込まれて中心に集められていく
集まった塵にまみれておしくら饅頭になったナヴラッピーたちは
何が起こったかわからずパニックを起こし暴れている
「ゾンディールしたのじゃー今なのじゃー」
スゥリンはテクニック(魔法)を使った、ゾンディールと言う電撃のテクニックで
小型の敵を磁気の渦の中心に引き寄せる、一気に殲滅を狙うに当たり
良く使われる使用頻度が高いテクニックである、
スゥリンが合図するとねねとライはすこし遅れて渦の中心に突進しフォトン出力を
最低に抑えたカタナとジェットブーツで次々にナヴラッピーを峰打ちで
昏倒させ気絶したナヴラッピーは次々に回収ポイントへ転送され消えていく
「捕獲数はこれで充分です、目標達成お疲れ様でした」
ブリギッタ指令達成を報告し通信を切った、
回収を免れたナヴラッピーは短い足を必死に前後に動かしながら方々へ逃げていく、
仲間意識の強いナヴラッピーは落ち着けば仲間がいなくなった事を悲しむのだろう、
ねねとスゥリンは前に進みだした、イフェメラはナヴラッピーのいた場所を目で探り
地面にかすかに光る物を見つけ拾い上げた
ナベリウス観測素粒子だコフィーからそれを拾ってくるように言われてた事を
思い出したのである、
「まずは一つ目・・・」
アイテムパックに素粒子を詰め込むと二人の後を追った、
目の前にある短い洞窟を3人は抜けて開けた場所に出た
目の前には細い川が流れ木々が生い茂り原生動物の声が遠巻きに聞こえてくる、
道はどん突きで左右に別れ左が上流で右が下流、さてどちらに向うか・・・
3人は少し話しながら左の道を進むことにした、
透明な水が細々と流れる川を上流へとさかのぼっていく
さかのぼっていくと不意に前方にどす黒く丸い霧のような物が渦巻く
ダーカーはどこからか現れる時そこから飛び出してくる、
「ダーカー来たのじゃ・・・・」
忘れもしないそうしてダーカーが大量に現れ襲撃されたのだ、ディスプレイで敵の確認をする、
ダカン
オラクルに敵対するダーカーの虫型タイプの先兵的な存在で
クモのようなその姿は岩石で構成されている
数で敵を圧倒する戦法をとるよく見かけられる種類、
確認できた15匹は大きく散開して一斉にこちらに向ってくる岩石で出来た体、
石が擦れ合う音を立てながら何の恐れもなくまっすぐに向かって来る、
3人に考える余裕はなかった、真っ先に突進してきたダカンは一対の前足を
振り上げねねの体に突き立てようと飛び掛った
ねねはカタナの鞘で前足をガードして弱点であるコアをさらけ出した腹部に
高速で×の字にダカンを斬り伏せた
イフェメラは向ってきた3匹ののダカンが攻撃を加える前にジェットブーツを装着し
すばやく宙に浮いて大きく左右にスライドさせブーツについた刃で
ダカンを切り裂き往復運動から高速回転をしてダカンを切り刻んで行く
スゥリンは再びゾンディールで残りのダカンを引き寄せて
ウォンドで殴りつけていくが全てを倒しきれずそれに気づいたライとねねは
左右からカタナとジェットブーツで斬り付け3方を囲まれ
ダカンの群れはひとたまりもなく崩れ去っていった、
倒されたダカンたちの残骸は赤黒い霧に包まれ消滅していき
周囲に敵がいない事をスキャンと目視で確認し3人は互いの無事を確認し
軽くガッツポーズをして勝利を喜んだ、
しかしそれも束の間遠くから大きな羽音が徐々に近づいてくる
「?」
3人は再び上流に目を向けるとまるで巨大なダニに大きな羽を付けたような
姿、ブリアーダと呼ばれる中型のダーカーである
予想外の敵の出現だがもはや回避するすべはない、3人は身構えブリアーダの突進に備えた、
ねねはカタナでは届かないのを察し近くを見回した、倒木や岩があちこちに転がっていた
ねねはそれらを見つけるとすばやく飛び乗りブリアーダの滞空する高さに
飛び上がり横腹にめがけて連続で切りつける
アサギリレンダンと呼ばれる剣技で片方の羽を損傷したブリアーダはバランスを崩し
余裕を持ってスゥリンは後ろ側に回り込みお尻側にある赤いコア眼がけて
火球を放つテクニック、フォイエを放ち半死半生の敵は激しく燃え上がり
黒焦げになり消滅して行った、
残りのブリアーダは腹部を天に向け体から無数の蛆虫を飛ばして
応戦するが取り囲まれて多勢に無勢
切り刻まれ燃え尽きて消滅していった、
ブリギッタより入電が入る
「討伐数はこれで充分ですお疲れ様でしたそのまま帰還して下さい」
目の前にテレパイプが下ろされる、ねねとスゥリンはテレパイプに乗って
帰っていったがイフェメラは付近を見回し空を見上げた
梢に弱く光る物を見つけるとジェットブーツで飛び上がり
高さが足りぬのを見越しもう一段飛び上がり
梢に引っかかっている光る物を手に取った、回収指令の出ていた2個目の
ナベリウス素粒子だった、
新光暦新光暦238年3月1日 午前12時40分 アークスシップ一番艦フェオ アークスロビー
3人はキャンプシップを降りアークスロビーへと帰還した、なれない事も手伝い少し疲れが見受けられるが
目立った怪我もなく問題なく終了したと言えるだろう、
「素粒子なかったのじゃっ!」
ねねは素粒子が見つからなかったと残念そうに言っていたが
「素粒子・・・揃ってるよ、拾っておいたから・・・」
イフェメラはアイテムパックから2つの素粒子を取り出し二人に見せ最初の素粒子は
ナヴ・ラッピーからもう一つはブリアーダのいた木の梢に引っかかっていたのを見つけたと淡々と言った、
「イフェメラちゃんすごいのじゃーありがとなのじゃー」
二度手間にならずに済んだ事をスゥリンも喜びイフェメラに感謝を述べた、
これで出された指令の条件が揃ったため3人はコフィーの下へ向い素粒子を手渡した
「素粒子あったのじゃー」
スゥリンは精一杯背伸びしてイフェメラから素粒子を受けたりカウンターに一つづつ置いた、
コフィーは相変わらず無表情でカウンターに置かれた素粒子をスキャンして
「確かに受領しました、ナベリウス自由探索を許可します」
そしてナベリウスの自由探索エリアへの侵入許可を発行し端末にデータの転送をした
「自由探索では自由な探索が可能ですがそれだけ自らの責任が大きくなり
命の危険にも晒されます、慎重に動き今までの努力を命を無駄にしないように」
と機械的な説明をし
「自由探索エリアに出没するロックベアと呼ばれる大型の原生種を
討伐する事により、竜族が支配する惑星アムドゥスキア火山洞窟地帯での
活動許可します」
と告げた、そして
「用がないならすぐにここから離れなさい」
冷たい言葉と視線を投げかけそれを察した3人はクエストカウンターを離れアークスカフェへと
足を向けた、
いつもの席に行けばアザナミやが待っているはずで任務の成功の報告と次に何をすべきか
アドバイスを受けるためだ、
相変わらずの雑踏をかきわけてブレイバーたちの定席に戻ったがいるはずのアザナミはそこにはおらず
テーブルに誰もいなかった
「でかけてはられます すぐ戻ります アザナミ」
と書かれたスタンドポップがひとつ置いてあるだけだ
3人はメニューを開き今時分が食べたいと思う料理を決めウェイトレスを呼び料理を注文した、
「代金はアザナミさんが後払いなのじゃー」
スゥリンはそう言うとウェイトレスは後払い請求をアザナミの端末に送付した
大の男でも食傷するようなの量の食事を平らげたにもかかわらずデザートを楽しむ3人
そこにアザナミが用事を済ませて戻って来た、
戻ってくるなり端末の請求書を見せ
「もぉ誰だい!?あたしに食事代肩代わりさせようって言う悪いヤツは!」
アザナミは多額の請求書をみて怒っている様だったがため息をつくと笑い
「次からは自分のお金で食べるんだよ」
と言ってスゥリンの頭にやさしく手を置いた、
「コフィーさんから聞いたよ、自由探索できるようになったんだってね、
でもそこにいるロックベアは今までの原生生物より危険だから気をつけて戦うんだよ」
アザナミは笑顔で3人の無事と任務達成を喜び自分の飲み物を注文し
3人が少したくましくなった事を喜び4人で乾杯をした、
しばし歓談した後イフェメラは家に帰ると言い消えるようにいずこかへと戻って行った、
無表情でどことなく陰鬱な顔、家に戻るのが嫌なのだろうか・・・
アザナミは言わずともイフェメラがどこに帰るのか分かっていたそれがゆえに
心に引っかかる所があった、
自分にもう少し余裕や力があるなら手元に引き取ってあげたい
しかし今は自分と仲間たちの世話で手一杯だ、
そしてこの日はここまでとして、ねねとスゥリンにも宿舎に戻って休むように促した、
部屋に戻るとすでにアザナミから事の次第を聞いていたパイオニア一号は
笑顔で迎えテーブルには滋養に富んだ肉料理と食欲そそるサラダにスープ、
腕によりのかけられた料理がふたりを迎える、
「お嬢様方おめでとうございます、このパイオニア一号必ず成し遂げられると信じていました、
おつかれでしょう、汗を流されてからどうぞお召し上がり下さい」
ふたりはすでに沸かされた風呂で汗を流しテーブルに着くと空腹も手伝い
食事を競うかのように口に運び満足すると疲れも手伝い同じベッドに川の字になって眠りに付いた、
新光暦238年3月2日 午前7時40分 アークスシップ第一番艦フェオ アークカフェ
3人はアザナミに呼ばれてブレイバーの定席へ集まった
アザナミはナベリウス自由探索に向かうに当たり3人に注意を促すため
そしてサガは見せたい物があるらしい、すでに席にアザナミとサガが準備を済ませ待っていた、
「来たね、これからナベリウス熱帯エリアのボスロックベアがどんな動きをするのか
予習をするよ、ちゃんと見ててね」
アザナミは動画の再生アイコンをクリックし映像が始まるのを確認したユイ・ハセガワという
教育用動画ご用達のナレーションが気だるく始まる、
まずは生態から食性などの解説から
「もっとも養成所の授業で居眠りでもしていなければ分かっているはずだがな・・・」
サガは過去に学んでいるであろうと3人に記憶をたどるよう促すがイフェメラはともかく
ねねとスゥリンは記憶のかなたにある事が表情からも充分に伺えた、
3人は身をを寄せ合いながらモニターを覗き込んでいる
身長は優に10mはあるだろう熊とゴリラがかけ合わさったような巨躯
体の所々を深い毛に覆われ緑灰色の肌、筋肉隆々な上半身に瞬発力が
見込まれそうな下半身、外見はまさに逆三角形を地で行くものだ、
そして拳や体の色々な所から硬そうな岩石がメリケンサックのように突き出して
その拳は岩や木々を軽々と粉砕している、
動画にはうなり声を上げながら撮影されていたアークスに飛び掛り
アークスの一人が押し潰されそのまま動かなくなり
着地と同時にアークスの一人を掴みあげて地面に叩きつけられた
画面には「放送禁止」と書かれた×印のロゴが叩きつけられたアークスの上に
覆いかぶさり、
撮影者に気付き飛び掛ったところで動画はブツリと途切れた、
「やられちゃったね・・・・・」
「ぺったんこなのじゃ!・・・・」
「みなければよかったのじゃー・・・・」
ねねとスゥリンは狼狽しイフェメラは固まって微動たりしない、
「こんなの無理なのじゃー死んでしまうのじゃー」
スゥリンは手足をばたつかせて怖気づいたが
「ならば荷物をまとめて家に帰るのだな、無理にとは言わん、アークスは
人手不足だがこの程度の敵にひるんでいるようでは活動は無理だ」
あいも変わらず冷たくネガティブにサガは答えまぁまぁとアザナミが二人をなだめる、
「でもねさっき見たものをよぉく思い出してごらんよ、ロックベアは
確かに力が強いし素早いけど隙があるし動きが直線的だからそこを突いて戦ってみ?」
「その通りだ何度でもわかるまでこの動画をチェックして3人で対策を
考えてみろ、人から言われる事をしているだけではダメだ」
アザナミとサガは3人を諭した、アザナミのやさしさとサガの厳しさが
以外にも硬軟織り交ぜで不思議と一体となっている、
3人は動画を何度も再生し対策を話し合うことにした、その度にすでにこの世ではない
先輩隊員の死が幾度も繰り返され3人の自信がすり減らされていくが夢を叶えるため
稚拙ながらも生きるためにいかに戦うかの議論は続く、
そうして幾多のアークスたちが自分を磨き戦って来たのである、
その姿をアザナミとサガは見守り続けていた、
新光暦238年3月3日 午前9時00分 ナベリウス西部ジャングル地帯
翌日引き返すことは出来ない憂鬱な気持ちも乗せてキャンプシップはナベリウス成層圏に
到着した、
3人は降りる気になれずその場ですくんでいたが操縦席から
「どうした?さっさと降りろ!」と
パイロットが操縦席から船内放送を入る嫌々渋々テレプールに飛び込み3人は任務ポイントへ
降下していった。
3人は着地すると任務開始の通信を送り北に向ってとぼとぼと歩き出した
その道中にウーダンやガルフたちと遭遇するがいつものコンビネーションで蹴散らしていく、
この程度の敵ならば3人のコンビネーションと油断を廃せば
すでに敵と言えない位には成長しているようだ、
初対面の相手なら先のナヴラッピーに使った手で充分なようだ奥に奥にと3人は進んでいく、
洞窟を抜けて北上を続ける重い足取りでロックベアの縄張りへと近づいていく、
なぜか今回は原生生物に出会う数も少なく、データによると極彩色の大型鳥類である
アギニスや巨大なダンゴ蟲のようなガロンゴと呼ばれる原生生物に
遭遇するとの事であったが今のところ姿を見かけない、
ロックベアは大柄な体の維持のため大量の食料を必要とする
しかし雑で乱暴な食糧確保を行うためその食べ残しやおこぼれを
得る事で楽に食料を確保するためロックベアの後ろに群れ単位でくっついて
一方的な共生関係が築かれているのだ、
「なーんにもいないのじゃ、いないから帰るのじゃ!」
ねねが逃げ帰る言い訳をみつけて引き返そうとした時
ふいに樹木が大きく揺れ目の前に一つの影が飛び出してくる、ロックベアが来たのか?
「!」
ロックベアかと身構える3人、しかし良く見ると茂みの動きが小さい
そして茂みをかき分けでてきたのは人影であった
ひっついた木の葉を払うとその人影は雄叫びのような声で叫ぶ
【挿絵表示】
「困ったフォトンを感じ取り!俺ことヒューイ参上!」
「そこの君!いいや君たち!困っているだろうそうだろう!正直に話してみるといい!」
ヒューイと名乗った男は3人を指差し立ちふさがるように立っている
身長はそう高くないが猛々しく逆立った青い髪、目の下に
反射した日光が目に入らないようスポーツ選手が施すのと同じ隈取を付け
機能性が高そうなヒーローズクォーターと呼ばれる戦闘服をまとっている
全身から余りあるほどの覇気・・・・いや暑苦しさを漂わせヒーローのような
ポーズを決めて3人から相談事を聞こうと、いや引き出そうとしている、
「さぁ!遠慮なく言ってみたまえ!さぁ!」
ヒューイは自信満々だ
ねねはヒューイに向って口を開いた
「じゃあヒューイちゃん」
「おう!」
「妾たちの代わりににロックベアを倒してくるのじゃ!これで任務は終わりなのじゃ」
ねねはヒューイに自分の面倒事を押し付けようとした
司令部から通信が入る
今回の任務のオペレートをするヒルダからだ
オペレーター部門の責任者で厳格な事でも知られる、
「ねね・ゾフィー・アルニム、自分の任務を人に押し付けるな」
そしてヒューイにも
「ヒューイ善意の押し売りは控えろ、方々から苦情が来ているぞ!」
ヒルダは厳しく威圧的な声で二人を叱り付け任務に戻るよう
指令を出した、通信機のモニターにウェーブのかかった金髪碧眼の女性が
有無を言わせぬ迫力を湛えた厳しい目を向けている、
ヒューイはしばし口をつぐんでいたが
「残念だがそういう事だ!また困った事があれば遠慮なく言うといい!さらばだ!」
そう言うとヒューイは高く跳躍して姿を消した
「やくたたずなのじゃー」
スゥリンは不満顔で当てが外れた事に不満を漏らした、
ヒューイと別れた3人は小川を飛び越え苔むした岩場を乗り越え一番奥の行き止まりで
足を止めた、その上は切り立った崖になっており、その上から獣のうなり声と
木々がなぎ倒される大きな音が聞こえてくる
目の前には転送機とメディカルポットが設置されている、転送先はどうやら崖の上のようだ
転送機のある先に良くない物が潜んでいる、これは不文律であり
その存在が自信のない隊員たちを酔う欝な気分にさせ恐怖を呼び起こす
転送機とはかくある物なのである、
「仕方ないのじゃーいくのじゃー」
スゥリンは転送機の上に乗りライとねねも上に乗っかると転送機は起動して
3人を崖の上に送り出した、
転送されて開いた土地に3人は着地する
地面に足をつけた途端に激しいうなり声が先ほどより間近で響き何かを強く叩く音が
耳に叩き付けられるように聞こえてくる、
距離にして10mくらい前から黒い影が3人に差し掛かっている、うなり声の主だ
見上げると巨大なロックベアが敵意をむき出しにして唸っている、
モニターで見た物と違い自分の身の危険がそこに迫った緊張感も
相まって思うより大きく感じられる、それは3人がすでに気押しされている証拠でもあった、
良く見ると視点が定まっておらず口からよだれをたらし周囲の血管が浮き上がり
異様なたたずまいを見せていたスゥリンはスキャンを試みる、
「侵食されてるのじゃー」
結果は予想通りでそれを裏付けるように
そして普段ならおこぼれ目当てについて回る原生生物の姿も見受けられない、
危険を察して逃げたかあるいは・・・
3人はその大きさにすくんだ次の瞬間ロックベアは近くの倒木を持ち上げ投げつた
スゥリンはテクニック職の回避スキルミラージュエスケープで
イフェメラはジェットブーツで2段に飛び上がり倒木をかわした
ねねはよけきれず左腕に倒木の根が頭に折れた枝が当たり転倒する
「うぐぐ・・・痛いのじゃ・・・」
ねねは苦痛に顔をゆがめふらつきながらも体勢を立て直す
「・・・散ろう」
イフェメラは二人に呼びかける
今までの小型の敵と同じ戦法は通じない、ゾンディールで引き寄せる事は出来ないのだ
イフェメラは状況を瞬時に把握していたようだ、予習を怠らなかった結果である、
3人は即座に三方に散ってロックベアの攻撃をまとまって喰らわないように
それぞれがロックベアを挑発し相手の集中力をそぐ事にした
ロックベアは狙いが定まらない苛立たしさに怒り狂い腕を振り回し空中に滞空している
イフェメラに狙いを定めた右腕からの一発目をかわしたが左腕の一撃をかわし切れず
強くきりもみしながら吹き飛ばされて木に叩きつけられる、
二人はイフェメラが無事か気になるがロックベアの攻撃をかわすのが精一杯だ
このままだと負ける・・・・
ねねは一か八かに賭ける事にした、身をかがめたロックベアの顔面に飛び込み
すばやく顔面に斬りつける、ロックベアは弱点の顔を切られその傷を手で押さえ
吼え声を上げる、
・・・隙が出来た
スゥリンはいつもよりフォトンをウォンドの先で強く練り
ロックベアの顔に向って火球を近距離から放った
反動で少し後ろに下がったが体内のフォトンが尽きるまで何発も火球を飛ばし続けた
炎上した顔面をかきむしりながらもがくクロックベアに
ねねと起き上がったイフェメラはさらに顔面にカタナとジェットブーツで滅多斬りにした
動かなくなるまで斬り続けるしかない、猛り狂った相手が反撃に出れば
生きていられる保障はない、持てる限りのフォトンアーツを叩き込んでいく
首元からの一撃が致命傷になり噴水のように動脈から血を噴出し
ロックベアは最後に中に腕を振り上げ仰向けに倒れ息絶えた、
ディスプレイで確認する、生命反応とロックベアの体に潜伏していたダーカー因子は
消滅したようで辛うじて倒すことが出来たようだ、
平素から他の原生種よりは凶暴とはいえここまで凶悪化したのは
やはりダーカーに侵食されていたからである、
いずれ死を持って開放された哀れなロックベアも他の生物の糧となりやがては土に返り
いつか新たな命として生まれ変わるのだろう、
「うむ、上出来だな、・・・帰還許可が下りた戻って来い」
ヒルダは3人に任務終了を告げたその顔は先ほどより幾分か安堵のためか
柔らかくなっているように感じられる、
3人はその言葉にその場でへたりこむ、これ以上緊張感を持続することが出来ないようだ
ねねとライは負傷し、スゥリンは体内のフォトンを使い果たし再びフォトンが
満たされるのを待っている、キャストはフォトンが大きな動力源のため
体内フォトンが減少すると動きが鈍る、
「キャンプシップ、負傷者が出ている、着地して回収してやってくれ
エネミースキャンオールグリーン」
ヒルダはキャンプシップに通信し周囲に敵がいない事を告げた
キャンプシップは少し時間が経ってからロックべアの死体の横に着地し
中から衛生兵が飛び出し駆け寄ってくる
イフェメラは打撲のため片足を引きずり、ねねは頭と腕から出血している
3人に駆け寄った衛生兵たちがねねに止血処置をし肩を貸しキャンプシップに
担ぎ込んでいった、
任務は達成したが3人にはまだナベリウスに留まり自らの腕を上げなくてはならない
その負傷した体が無言の証明していた。