屍番犬(ナベリウス)の鳴く夜 REBORN!×青の祓魔師 クロスオーバー 作:cibetkato
「・・・どうしよう、ものすごく――特に兄さんにとって――環境が悪い気がする・・・!」
「雪男~、いい加減2人を放してやれよ・・・だいたい、燐(バカ)と杜山(天然)が黒属性に目覚めると思うのか~?」
「シュラさん、兄さんは確かにバカですが、バカな子ほど可愛いんですよ!!・・・っていうか、それもそうですね・・・この2人にその素養は全くないと言っていいかもしれません・・・」
シュラの言葉にハッとする雪男。さり気なく燐をバカ発言しているが、愛ゆえの発言なのでそこはスル―である。
「ま、特に杜山さんはないわねー・・・いじわる言われてるのに気付かないほどのド天然だし」
自嘲気味にフッと息をついて出雲が言えば、塾生達は確かに、と頷く。
「それをゆわはったら、奥村君かてそうやない?・・・天然やないけど、自我が確立しまくってるゆうか、その~、ゴーイングマイウェイゆうか・・・」
廉造が言えば、またも塾生達は確かに、と頷く。
なにせ、しえみはどれだけ出雲に罵倒されても前向きに捉えるし、燐は雪男の猛アタックにも気付かないほど鈍感で、サタンの炎に支配されることはあっても悪魔の囁きに耳を貸すことは一切無い。
つまり、この異様な空間に於いて最も他の影響を受けにくい2人を庇ったところで、意味がないということだ。
「そ、そうか・・・!僕としたことが兄さんのことを全然わかっていなかったということか!!!」
ショックを受けた雪男がガックリとシートに手をついて項垂れる。
「んあ?・・・雪男?どした?」
「きっと、疲れてるんだよ、燐。休ませてあげよう?」
「そっか、そうだな・・・雪男、無理しちゃダメだっつったろ?」
状況が全くわかっていない2人の言葉に、雪男は感涙して頷いた。
「うん、そうだね!・・・全く問題ないよね!!」
「えーと・・・雪男?泣くか喜ぶかどっちかにしねーと、兄ちゃんお前が今どういう状況なのかわかんねーよ・・・」
燐のやんわりとしたツッコミが感激した雪男に届く訳もなく、車内はますます混沌の坩堝(るつぼ)と化していくのだった。
***
日が暮れて辺りは真っ暗。街灯もない道を車は山の奥へと向かっていく。
「あの・・・屍番犬ですが・・・生成には死体を使うのが常ですよね?」
騒ぎ疲れたのか、ようやく静かになった車中にターメリックの声が響いた。
「・・・あ、ええ、そうですね」
訊ねられたのは祓魔師の方だと気付いた雪男が頷く。
「では・・・やはり、もう死んでいる可能性が高いんですね」
少し落胆したようなターメリックの声。
「え?」
雪男が聞き返せば、目の前に書類が突きだされた。
「これです、3ページ目読んでみてください」
突きだしたのはツナだった。わずかに不機嫌なのはその内容のせいか。
雪男は深呼吸をしてそのページに目を通す。そして、あらん限りに目を見開いた。
「こんなコト・・・ッ!」
「貸しな、雪男!・・・へェ、随分とえげつない真似してくれるじゃないの」
雪男から書類を取りあげて目を通したシュラも、不機嫌を隠そうともせず眉間にしわを寄せた。
「雪男?シュラ?」
不安そうな視線を向けてくる燐に、雪男はグッと詰まる。
塾生達が知ったら、屍番犬に対して遠慮が出てしまうのではないかと思ったのだ。
「・・・おいビビリ、説明してやんな」
「ですが!」
「・・・上司命令、説明しろ」
「くっ、ここで肩書きを使うなんて卑怯です・・・」
恨めしげにシュラを睨みながら、雪男は塾生達に向き直った。
「・・・今回の屍番犬は実際に“その場で生成”されています。それは既にわかっていますね?」
こっくりと頷く塾生達。メフィストの説明の中でもそれが討伐の理由にもなっているとあったので、わかっていた。
わかってはいたが、その言葉が意味するところまでは気付いていない。
雪男は竜士に視線を向けた。彼ならば知識として頭に入っていることをスラスラと答えた上でその意味に気付くだろうと判断して。
「屍番犬を作るための材料が何か・・・わかりますね、勝呂君」
「そら、死体や、ろ・・・っ!」
竜士は答えながら、雪男が強調した“その場で生成”の意味に気付いた。
「・・・マジ、か?・・・嘘やろ?」
サッと青褪めた竜士に廉造と子猫丸が首を傾げる。
「坊?どないしはりましたん?」
「顔、真っ青ですやん」
「・・・お前ら、気ィつかへんのか!?その場で屍番犬は作られてんねんぞ!!」
「奥村先生が今言ったばっかりじゃない。わかってるわよ!」
出雲がいつものようにくってかかる。
「ちゃう!そぅやない!!・・・屍番犬の材料は死体なんや!!」
無意識に理解したくないという思いがあるせいか、塾生達の反応は薄い。
だが、竜士の形相に子猫丸がハッとした。
「材料・・・まさか・・・死体も“その場”で・・・?」
子猫丸の言葉で塾生達もようやく事の重大さに気付いた。
「・・・え?その場でって」
「ちょ、ちょっと待って・・・」
女子2人がガタガタと震え始める。
「ま、マジですか・・・先生」
廉造が視線を向ければ、重々しく頷く雪男。
「ええ・・・ここ一ヶ月の間にヴルカーノファミリーに“保護”された子ども全員がヴルカーノファミリーの敷地内に入ったことを確認されて以降、姿を目撃されていません。・・・そして、目撃者からの情報で屍番犬のパーツのサイズを概算すると子どもの死体を使っている可能性が高い・・・ということです」
書類を見た時にけわしい表情をしたツナ、そして、怒りをあらわにした雪男やシュラ。
その理由が明らかになり、車中の空気は更に重いものになった。
「連れてきた子どもを殺して材料にしてんのか・・・?」
燐がポツリと呟く。
誰もがハッキリと言えなかったその言葉に、全員がビクリと肩を震わせた。
「・・・本当に、人間の仕業なのかよ!」
「人間というのは時に悪魔よりも残酷なことができる。そういうことだろ・・・」
シュラがなげやりに答える。
「・・・っくしょう・・・ちくしょう!!」
呻くように呟く燐に、塾生達は心配そうに視線を向ける。
「・・・ここで動揺している場合じゃないですよ。リボーン、いちいち見張らなくても証拠さえあれば潰していいんだろ?・・・屍番犬の姿を確認出来たら行動開始でイイよな?」
ツナが声をあげると、守護者も祓魔師達もハッとする。
「ああ、構わね―ぞ。証拠さえあれば断罪しても周りからの文句は出ねーだろ」
「うん、だよね・・・なら、俺達がすることはただ一つ。復讐者がしゃしゃり出てくる前にヴルカーノファミリーを完膚なきまでにブッ潰す!」
「「「「「おう!/はい!」」」」」
全員の気持ちが1つになった瞬間だった。