屍番犬(ナベリウス)の鳴く夜 REBORN!×青の祓魔師 クロスオーバー 作:cibetkato
「・・・ところでさ、復讐者って何なんだ?・・・メフィストもそいつらが出てきたら関わるなって言ってたけど」
燐がふと思い出したように問う。
守護者達はハッとしてツナに視線を向ける。やたらと復讐者の名前を出していた張本人だからだ。
「復讐者・・・俺達も良くは知りませんけど、マフィア界の法の番人ですね。特に誓いや掟を破った者やマフィア界にとって害悪となりそうな者を捕らえる役割を持ってるんですよ」
ツナはあっさりと答えた。
「ツナ・・・それは・・・!」
リボーンが表情を硬くする。
「大丈夫・・・この程度では掟に触れないから」
第8の炎の存在を口にすればしゃしゃり出てくるだろうが、存在自体が外部に漏れたところで問題はないだろう。事実、燐達は復讐者の名を始めて聞いたわけではないようだったから。
それを確かめるために、復讐者の名を何度も連呼したのだ。
彼等の反応でわかったのは、復讐者の名を耳にしたことはあってもその存在がどういったものかは知らないということだ。
「へ、へー・・・じゃあ、マフィアの中の警察?みたいなもんか?」
「そうですねぇ・・・警察というより、刑務所ですかね・・・捜査なしに問答無用で牢獄にぶち込まれるので」
「ま、マジかよ・・・」
燐がごくりと喉を鳴らす。
掟やら誓いやらをうっかり忘れて破ってしまうと速攻で牢獄へ連れていかれるのだとしたら、自分は何回アウトになるのだろうと想像してみてゾッとした。
「マフィア、怖ぇ・・・」
「そうですか?どうせアイツら自身も掟に縛られてるんですし、お互い様だと思いますよ。それに、掟の抜け道もありますから」
ニコニコと答えるツナからリボーンは視線を逸らした。
「だからといって、ギリギリのラインを突き進むのはどうかと思うけどな・・・」
「ん?なんか言った?」
ぐりん、と笑顔のまま自分の方を向いたツナに、リボーンはぶんぶんと首を横に振った。
「な、何でもねぇぞ!!」
「・・・ふぅん」
目を細めるツナにダラダラと滝のように汗を流すリボーン。
「・・・あ!そ、そういえば、悪魔って俺らでも見れるんでしょうか!?」
またもヤバそうな空気になっているのを敏感に感じ取った獄寺が声をあげる。
ナイスだ獄寺!と心の中で称賛するリボーン。ちらりとツナの表情を確認すればそれほど怒った様子もなく、獄寺の質問に首を傾げていた。
「ん~・・・そういえば、父さんが魔障?を受けてないと見えないって言ってたね~」
「・・・門外顧問や9代目とその守護者は“ヴァチカン”と繋がりがあるから魔障を受けてるが、お前らはまだ受けてなかったな・・・すっかり忘れてたぞ」
かくいうリボーンもボンゴレに関わるようになってから魔障を受けた。小さな悪魔がうようよと浮遊しているのが見えるようになった時はさすがにゾッとした。
こんなにもたくさん浮遊しているものが見えていなかったのか、と。
「でも・・・無理矢理魔障を受けなくても・・・祓魔師になるわけじゃないし・・・」
しえみが獄寺の膝の上で寝ているランボを見つめながら困惑した様子で呟く。あんな恐ろしいものを、こんなにも小さな子にまで見せなくても良いと思ったのだ。
その視線に気付いたツナは目元を緩めた。
「ランボには魔障は受けさせません。守護者とはいえまだ5歳ですから。・・・でも俺達が全く見えないのでは対処できませんし、これから“ヴァチカン”とも関係を持って行くことになるでしょうから、ランボを除いた全員が魔障を受けるようにします。・・・どうすればいいですか?」
「・・・燐」
「おう」
シュラが燐に視線を向ければ、燐は何かを持つ仕草をした。
「こいつ・・・クロっていうんだけどさ、見えないだろ?」
こくりと頷くツナと守護者達。リボーンは燐に抱かれているソレを見て目を細める。
「なるほど、猫又か・・・オメェの使い魔か?」
「ああ、そうだけど・・・お前は魔障を受けてんだな」
「俺はボンゴレに関わって長いからな・・・」
驚いたように視線を向けてくる燐に、リボーンはムッとして答える。ランボと同等に扱われるのは心外だ、と言わんばかりに。
「そっか・・・じゃあ、クロにちょっと引っ掻いて貰うから。雪男、傷がついたら治してやってくれ」
「うん、わかったよ☆兄さん♪」
兄弟の共同作業という時点で少し浮かれている雪男である。メフィストばりに語尾にマークがついているのが何よりの証拠だ。
「・・・わかりやすッ・・・わかりやすすぎや、奥村先生!」
呻く廉造に、竜士は首を振った。
「ダメや・・・それでも、奥村が気付いてへんねや・・・」
「どうしてやろ・・・」
子猫丸が首を傾げる。
「・・・育った環境じゃねェのか?」
そこに首を突っ込んだのはリボーンだった。
マフィアになりたくないから猫被りをしてダメツナを演じていたツナ。彼もまた自分はモテないと勘違いしている。
人は雰囲気だけでも印象が変わる。ダメツナを止めたツナはそれだけで見目が良くなったように思う。ぼへーとしていたダメツナとキリッとしているツナが、ハイパー化した時よりもギャップがあるのは何故だと問いたい。
しかし、一番身近な女性である京子やハルがそわそわしているのに全く気付いてないのだ。ダメツナの時の環境が影響していて自分への好意に疎くなっているのは間違いない。
「あぁ、それはあるかもにゃ~」
リボーンの言葉に頷いたのはシュラだった。
「燐は修道院の中でも、中学校でも孤立してたらしいし」
常人離れした力や、ついカッとなって手を出してしまうところがそうさせていたのだろうとシュラは言う。
「悪魔の血のせいか?」
「さぁね、アイツ自身の問題でもあるんだろうけど・・・影響が全くないとは言えないか」
「だろうな・・・悪魔の創造主、だったか?・・・厄介な血を継いだもんだ」
「・・・血と言えば、ボンゴレも厄介な継承の方法を取ってるんだろ?」
シュラが話題を変えると、リボーンはニヤリと笑った。
「まァな、そのせいで今現在ではツナしか後を継げる奴がいねェ・・・だから、万が一のことがないように俺が傍に付いてんだ・・・まぁ、あまり手は出せねェがな」
「・・・それも掟、か?」
「ああ、9代目との約束だ・・・ツナ自身の勝負には手は出せねェ。だが、それ以外での危険であれば手は出せる」
「それも抜け道ってヤツね?」
出雲の問いに、リボーンは頷く。
「ああ、そうだぞ」
「復讐者、か・・・今回の件、出張って来ると思うか?」
シュラが問えばリボーンは難しい表情をうかべた。
「さぁな・・・だが、復讐者と関わらずにいられるのであれば、それが一番良い」
「関わるな、いうけど・・・どんだけ危険なヤツ等なん?」
廉造が首を傾げる。
「奴等には情けがねェ。掟を破れば容赦なく連行される・・・それだけじゃねェが、それだけ知っときゃ良い」
「ん~、ナニナニ。何の話?」
リボーンが答えるのと同時に、ツナがやって来てひょいっとリボーンを抱える。
「復讐者の話だぞ。・・・もう、魔障は受け終わったのか?」
「うん、意外と簡単なんだね・・・っていうか、バイキンが見えるようになったみたいだね~。魍魎っていうんだっけ?コレ」
ちょいちょい、と浮遊している悪魔・魍魎をつついて言うツナに、リボーンは肩を落とした。
「・・・おまえなァ・・・悪魔とバイキンを一緒にすんな」
「いや、間違っちゃいないぞ~、魍魎ってのは菌類に憑依する悪魔だからな」
呆れるリボーンにシュラがクツクツと笑って告げる。
「そーなんですか?」
「そーだぞ~。っていうか、お前変わってるな~。祓魔師になろうと思って魔障を受けたならともかく、今まで普通に悪魔なんてもんと関わらずに暮らしてきたのに、アッサリ受け入れるなんて。・・・実際にお前の守護者、だったか?アイツらは気味悪そうにしてるぞ?」
シュラの言葉にツナは苦笑をうかべた。
「まぁ、普通ならそうなんでしょうけどねー・・・生憎、普通の神経してないんですよね~俺」
「なにせ、マフィアのボスになりたくねぇからって・・・物心ついてからずっと猫かぶりしてた人間だからな」
リボーンが遠くを見つめながら呟く。
「え?そーなのか?」
そこに燐が割り込んでくる。守護者達に魔障を受けさせて戻ってきたのだ。頭にはクロが乗っている。
「勘だけは良かったんで、父親の仕事が何なのかっていうのにはすぐに気付いたんですよね~。だから、そういうのめんどくさいな~と思って、ダメなヤツだからそういうのには向かないだろうっていう判断をしてもらうために、猫かぶってたんですよ~」
なのに・・・と言葉を切り、ツナはリボーンの赤ん坊特有のやわらかい頬をびろーんと伸ばす。
「コイツが来てからというもの、どんだけ嫌だって言っても巻き込まれて。さすがに死にたくないんで猫被りも止めて・・・結局、次期10代目認定ですよ~?まったく、冗談じゃないですよね~・・・」
「ふ、ふな(ツ、ツナ)・・・いひゃい(痛い)・・・」
「あっはっは・・・痛いか~、そうか~」
グニグニとリボーンの頬を伸ばしているツナは笑顔だが・・・黒い。なんとなく、黒い。
ツナをよく知らない祓魔師達だが、これだけはわかった。
沢田綱吉は怒らせてはいけない・・・と。