屍番犬(ナベリウス)の鳴く夜 REBORN!×青の祓魔師 クロスオーバー 作:cibetkato
その場に緊張が走ったその時。
「・・・2人とも、ちょっと黙ってて」
ピキピキッ
雲雀と了平の足もとが凍りついて、2人は身動きが取れなくなる。
「こ、これは・・・」
一部始終を見ていた雪男は呆然とツナを見つめた。
ツナの指に嵌っていたリングがオレンジ色の炎を噴き出したかと思ったら、その手が手甲に包まれ、そこから地面を舐めるようにして炎が走り、雲雀と了平の足を“凍りつかせた”のだ。
「み、見たか、雪男・・・」
「ああ・・・あれは一体」
サタンの青い焔とは違うようだが、何らかの力を秘めているのは確かだった。
燐と雪男がじっと己を見つめてくるのに気付いたツナは、キョトリとしてからああ、と破顔した。
「これは死ぬ気の炎っていうんですよ」
歩み寄って来たツナは、もう普通のアクセサリーのように見えるリングを見せて、そこに炎を灯して見せた。
「し、死ぬ気の炎?」
「ええ、覚悟を炎にするんです。もちろん、何の道具も無しにここまで大きな炎を灯すことは難しいですけど」
「出来なくはないのか?」
「まぁ、稀に道具無しでも炎を出せる人間はいますよ?・・・特にボンゴレボスの血筋は死炎を操って、生身で炎を発することができます」
「・・・そ、そうなのか・・・えっと、悪魔の血筋、とかいうわけはないよな?」
「悪魔の血筋、ですか?違うと思いますけど・・・」
首を捻るツナに、燐は苦笑をうかべた。
「そっか、なら良いんだ!」
「・・・燐さんが抱えてる何かって“それ”ですか?」
目を瞬かせ、ツナがサラリとその問いを口にする。
ギョッとする燐を庇うようにして雪男が前に出た。
「あの!それは・・・!」
「あー、別に気にしないんで。すみません、なんか聞いちゃいけないことだったみたいですね。もう忘れます」
雪男が説明を口にしようとした瞬間、ツナがそれを遮って首を振った。
「あ・・・」
過剰な反応をしてしまった雪男は拍子抜けしたように肩から力を抜いた。
「えーと、今のうちに説明しておきますね?・・・ボスである俺とその守護者にはボンゴレリングというのが受け継がれています。今はバージョンアップしてボンゴレギアというものに姿を変えていますが、本来これはリングの形をしていたんです」
ツナが促せば、守護者達はそれぞれのボンゴレギアを祓魔師達に見せた。
「俺が大空で隼人が嵐、武が雨で恭弥が雲、ランボが雷、了平さんが晴・・・で、骸とクロームが霧という天候になぞらえて役割が振られているんです」
「ナルホド・・・ボスが大空で、その大空を彩る天候が守護者ってワケか」
シュラが納得がいった様子で頷けば、ツナはニッコリと笑う。
「ええ。そうなんです。・・・で、それぞれのボンゴレギアから出る炎も全く違うんです。波動が違うって俺達は言うんですけど・・・大空はオレンジ色の炎で・・・」
ツナが炎を灯すのと同時に、守護者達も炎を灯して見せる。
橙、赤、青、紫、緑、黄、藍。輝く炎に思わず感嘆が漏れる。
「青い炎か・・・サタンの青い焔とは全然違うな」
ボソリ、と燐が呟く。
青い焔は祓魔師にとって悪魔の象徴。だが、山本の灯す青い炎はどこか静かで落ち着かせる色をしていた。
「燐・・・」
しえみが心配そうに燐を見上げ、その表情がどこか和らいでいるように見えて目を丸くした。
「兄さん・・・?」
雪男もそれに気付いたのか、首を傾げる。
「なんか、隠し事してんのバカバカしくなってきた。コイツ等、たぶん本当のコトを話してもちゃんと受け入れてくれると思う」
以前の塾生達のように。
「うん!」
「・・・そうだね、兄さん」
燐の言葉にしえみは嬉しそうに頷き、雪男は泣き笑いをうかべた。
そして語られた燐と雪男の出生の秘密。養父の死、燐の待遇。
それは大きなショックをツナ達に与えた。
「・・・そんなことがあったんですか」
ツナはゆるりと目を細めた。
「悪魔だろうがなんだろうが燐さんが燐さんである以上、誰だろうとその生を否定することは許されないハズなのに」
やむを得ず命を奪わなければならない状態に陥ったのならばともかく、燐が燐として存在しているうちから危険分子として処分するという暴挙に出ようとするなど、許せるわけがない。
ツナが憤る姿に、燐は無性に泣きたくなった。
存在を否定されてしまうのではないかという不安が棘となって心に突き刺さっていたのに、ホロホロとそれが崩れ去っていく。
塾生達もホッとした様子で燐を見つめる。
「兄さん・・・」
「雪男、やっぱ、話して良かったよな」
「うん、そうだね」
トン、と雪男の肩口に額を乗せる燐。
その頭を優しく撫で、雪男は慈愛に満ちた微笑みをうかべた。
「・・・今度、そんなことがあったらすぐボンゴレに連絡してください」
ツナの言葉に、燐は顔をあげて首を傾げた。雪男もその言葉の真意がわからず、兄と同じように首を傾げる。
「・・・あ、なんか嫌な予感するのな」
ボソリ、と山本が呟く。
感動的な場面だったはずなのに、それがブチ壊されるような予感。
ツナのような超直感はないが、経験則というやつだろうか。
「“ヴァチカン”がいかに鉄壁の防御を誇ろうが、それは対悪魔であって人間じゃないでしょう?」
「え・・・あ、まぁ・・・そう、だけど」
シュラが戸惑いながら頷く。
というか、嫌な予感がその場の面々に伝播していく。
「安心してください“ヴァチカン”ごと氷漬けにして機能停止にした後粉々に砕いて塵も残さずに燃やしつくしてあげますから」
ニッコリ。
ツナが一息で言ってくれた言葉に、祓魔師達は一斉に固まった。
(ああ、その笑顔ちょー可愛い)
(誰だ今現実逃避したヤツ)
(誰か止めろって)
守護者達が視線で会話する。だが誰も止めない所をみると、気持ち的には賛成なのだろう。
が、本気でそれをやったら、ほぼ間違いなく、祓魔師vsボンゴレの図式が出来上がる。
負ける気はしないが、無傷ではないだろう。被害は白蘭とのそれを越える可能性だってある。
「あ・・・えーと、気持ちはありがたいけど・・・俺、ちゃんと周りを認めさせてみせるから・・・うん」
(((((よく言った!!!)))))
無言の喝采が燐に送られる。
「そうですか・・・でも、そうですよね。ちゃんと自分で周りを認めさせるって、大事ですよね!」
少し残念そうなツナだったが、燐の言うことも尤もだと思ったらしく、素直に引いた。
燐の一言で世界の平和は守られたのだった。
そして、そこにバルトロ達が戻って来た。
「10代目、ご気分はいかがですか?離れに皆さんのお部屋を用意しましたので・・・」
瞬時に警戒を強めたツナがバルトロに応じる。
「・・・ではありがたく休ませてもらいます。・・・あぁ、ドン・グロッタ」
「はい?」
「すぐに出発しますから、そんなに気を使わないでください」
「え・・・で、ですが・・・」
「既に証拠は揃っています。後は屍番犬の排除と元祓魔師という男の捕縛だけですから」
やんわりとだが接待を断るツナの言葉に、バルトロは引き留めようと口を開こうとするが言葉が出て来ない。
「事は急を要するんだ。当然だろ」
リボーンがツナを援護するようにそう言えば、バルトロはガックリと肩を落として頷いた。
「そうですか、残念です」
口では殊勝な言葉を告げるが、腸が煮え繰り返っている様子が手に取るようにわかる。
ジャポネーゼのガキが生意気に!
そんな風に心の中で罵っているのを読心術で読み取ったリボーンは不機嫌さを露わにして眉間にしわを寄せた。
「ツナ、少し休んだらすぐに行くぞ。タラタラしてると、被害者は増える一方だからな」
「うん、わかってるよ、リボーン」
一分一秒たりともこいつらと顔を合わせていたくないというのが本音だが、そう言ってしまえば同盟ファミリーへの態度が悪いと悪評を流される可能性だってある。
だから立て前でもそう言うことで、彼らが文句を言えないようにしたのだ。
だが、実際に今この瞬間にも屍番犬が生み出されているかもしれない。のんびりと出来ないのは確かだった。