馬車に乗って早速シュレーの丘を発った。着いた時に昼間だった外は、すっかり暗くなっている。だが構わずに馬車を走らせる。目指すはセントビナーだ。
セントビナーでは住民の避難が行われていた。全員を避難させるにはやはり時間がかかるらしい。
「マクガヴァン将軍!」
避難の総指揮をしているグレン将軍を見つけた。僕らはジェイドさんを筆頭に急いで将軍の元へと歩み寄る。
「調査隊のみなか、それで、結果は?」
「それがですねえ……」
ジェイドさんが報告を開始する。
「なんと……エンゲーブまでもが……」
「ええ、ですからセントビナーの避難を急いでもらい、グランコクマで陛下へ報告を行って頂けますか? その後、反転してすぐにエンゲーブへ来てくれると助かります。私達はこのままエンゲーブへ赴き、住民を順次避難させるつもりです」
「…………わかった。貴公の言う通りにしよう。私達が戻るまで、エンゲーブの住民をよろしく頼む」
「了解しました」
説明が終わったので馬車へ乗り込み、急ぎエンゲーブへ。もう夜更けだ。エンゲーブの避難は明日になるかな。
§
翌日のエンゲーブ。僕らはとりあえず村の代表者であるローズ夫人にことの次第を告げ、村人全員にお触れを出した。
「子供や女性は体力がない者ばかりなんですよ。軍の方で乗り物を用意してくれるなら、下手に歩いて避難するより、ここで待っていた方がいいんじゃないですかい?」
それは……どうなんだろう。エンゲーブがいつ何時崩落するかわからないのだ。離れるだけ離れた方がいいような気もするけど……。
「…………ふむ、確かに。女性や子供を軍人と一緒に避難させるのは無理がありますね。それでは陸艦が来たらすぐに避難できるように、準備だけは抜かりなく行うように通達を」
ジェイドさんが決定を行う。僕達は全員で避難の手伝いをした。自分で歩けない赤ん坊やお年寄りを担いで一箇所に集める。
――そうして頑張っている時だった。
「くくくく、ハーッハッハッハッハッ!! ようやく、よ・う・や・く・見つけましたよ。ジェーィドォ!!」
それは上空からやってきた。空を、飛んでる?
「
セリスさんが叫ぶ。ああ、そういえば一度船の上で戦ったんだっけ。その時はキムラスカ兵がたくさんいたけど、今は……。
「ルーク様、ネギ。下がってください。奴は譜業のロボットを使います。村人を守っていて下さい」
と、セリスさんの言葉通り、巨大なロボットが地面を走ってきた。確かに僕達の武装じゃ大したダメージを与えられそうにない。
「出でよ。敵を蹴散らす激しき水塊――セイントバブル!!」
ジェイドさんの、水の上級譜術が炸裂した。そこにガイさんが切り込む。
「雪月花……ってな! ――氷月翔閃!!」
ルークさんの護衛剣士だが、今はそんなことを言っていられない。村人に被害が及ばないように素早く倒さなくては。
だが、そんな決意もさほど意味がなかった。機械(譜業)でできているロボットは、どうやら水が弱点だったらしく、ジェイドさんが放つ水の譜術をたっぷりと食らって壊れた。爆発し、その衝撃で村の門も壊れる。
「ああもう! 私の可愛い可愛いカイザーディスト号が! 覚えていなさい! 必ずぎったぎたにしてやりますからねぇ!」
捨て台詞を残して逃げようとするディスト。……甘い!
「はあああっ!!」
「ええ!? がっ!」
僕は地面を強く固めた気で蹴りつけると、逃げようとした上空のディストに近づき、後頭部を一撃した。
「あぁあらあアアアア!!」
奇妙な叫び声を上げて椅子から落下するディスト……え? 自力で空を飛んでいたんじゃなくて、空を飛ぶ椅子に座っていただけなの? 僕の勘違いにより、ディストは椅子から落ちて10mほど下の地面に転落した。あらら、ここまでやるつもりはなかったんだけどな。
「ナイスですネギ」
楽しげな声で言ったジェイドさんがディストを捕まえる。
「ぎゃーーーーー!!!!」
ディストは無理やり引っ立てられて村の宿屋に連れて行かれた。そこで拘束されるらしい。
……ま、まあいいか。
§
僕達はエンゲーブを出立した。村にあった馬車は子供や女性、お年寄りの為に全て使われたので徒歩移動だ。しかし馬車だけでは全ての子供らを避難させられなかったので、その人達は村に残って陸艦を待つことになった。彼らを守る最低限の人員(エンゲーブの駐留軍)も残ってもらって。そうしてルグニカ平野にある街道を西に向かって歩っていると。
「…………ん? 何か……誰か見えますね。街道ではない場所を歩いて移動など……」
この世界では魔物や盗賊が横行しているので、馬車移動が基本だ。徒歩移動などする奇特な人間は少ない。更に街道ではない場所を歩くなど、奇矯とさえ言える……と。
「あれは……キムラスカ兵!?」
その集団を見ていたセリスさんが驚く。えええ!? ここはマルクトの領土だよ!? カイツールを超えてキムラスカの兵士が来るなんて……!
「!! いけません!!」
ジェイドさんが前に出る。
「マルクト軍! 覚悟ォォー!!」
途中から駆け寄ってきたキムラスカの兵士達は、それぞれ武器を構えて突っ込んできた!!? いけない、僕らの後ろにはエンゲーブの住民が!!!
「ま、待って下さい! 僕達は民間人です!」
子供である僕が前へ出る。
「なにぃ? 何故民間人が……」
「おい、貴様! だまされるな!
後ろにいた白い軍服……神託の盾騎士団めっ!!
「う、うぉおおおおお!!」
一瞬立ち止まったキムラスカ兵が、怒号と共に襲い掛かってきた!
「セリス、悪ぃ! 俺も戦うぜ。皆、後に続いてくれ!!」
ルークさんが木刀を抜いて駆け出した。これはルークさんの決断だ。ルークさんが戦闘に加われば、彼と護衛の僕・ガイさん・セリスさん・白光騎士団の三人。七人が戦闘に参加する。前衛になれる。だけど彼が守られていればその人員は下がっているしかない。それがわかっているからルークさんは誰よりも早く前に出たのだ。
「ルーク様!!」
「ルーク!! 背中は任せろ!!」
セシルさんとガイさんがルークさんの背後についていく、なら僕は!
「てえええい!!」
瞬動術からの拳を見舞う。腕に持った武器をかいくぐり、的確に急所を突く。
「ジェイド、譜術を!!」
ルークさんの言葉が飛ぶ。確かにジェイドさんには譜術を使ってもらった方が効率的だ。
「大地の咆哮。其は怒れる地龍の爪牙――グランドダッシャー!!」
数秒の後、僕らが前衛として足止めした敵のいる一帯を、隆起した大地が襲う! ジェイドさんの上級譜術だ。事前に
……しばらくした後、敵は一掃された。やはり、何人かは殺してしまったが、僕達にはさしたる被害はなかった。後ろにいたエンゲーブ民はパニックになりかけている。それを導師様が治めようとしていた。
「助かりました。ルーク」
お礼を言うジェイドさん。
「くそっ。なんで、俺が同じ国の人間と殺しあわなけりゃならねぇんだ!」
「なんで、キムラスカの兵士がこんなところまで……それに神託の盾も」
「忘れたのですか。ガイ? ユリアシティのテオドーロ市長が言っていたでしょう」
「ルグニカの大地は戦乱に包まれ、マルクトは領土を失うだろう。という一節ですね」
僕の言葉に目を剥く二人。
「
「それって……預言の通りにする為に戦争を仕掛けてきたって訳か……」
「正確に言うなら、預言の通りにすれば勝利できるとわかっているから、戦争を仕掛けたのでしょうね。絶対に勝つとわかっているから」
「――――戦争が、始まった……!」
……その時、僕は別のことを考えていた。確かに戦争に負けて領土を奪われるのも「領土を失う」だけど、セフィロトツリーが限界を迎えて大地が崩落しても、「領土を失う」と表現できないだろうか。…………どちらの可能性もある、か。だけど預言で必ずその通りになると言われているからって、唯々諾々と従わなきゃならない訳じゃない。僕らは僕らにできることをしなきゃ!
「戦時下には、グランコクマは要塞となります。行き先をケセドニアに変更しましょう」
「あの街の代表であるアスターなら、きっと受け入れてくれると思います」
ジェイドさんが避難先を変更する。僕達はエンゲーブの住民を何とか落ち着かせて、ケセドニアへの道のりを歩いた。
キムラスカ兵士と戦闘になってから二日後、予想よりもだいぶ早く、陸艦が戻ってきてくれた。陸艦が停止し、グレン将軍を始め何人かのマルクト兵が降りてくる。
「マクガヴァン将軍。キムラスカ軍が……」
「カーティス大佐。カイツールから伝令が届いた。事情は把握している。今は何よりもまずエンゲーブの住民を保護しよう」
詳しい話は後にして、陸艦でエンゲーブに残してきた子供らの収容を行ってもらおう。
「私達はエンゲーブに向かい住民を収容しに行く。すまないが後ろの住民は……」
「大丈夫ですよ。住民は残してきたのが子供や女性達だと知っていますから」
「すまない。なるべく早く移動して、余裕があれば徒歩移動の住民も回収はしたい」
グレン将軍はそう言ってくれたけれど、陸艦の収容人数は多くない。まずは残してきた子供らだ。収容が終わったらすぐにケセドニアに向かってもらう。大人の住民は歩いて避難だ。幸いなことにローテルロー橋は直ったとのこと。またキムラスカ兵に襲われないよう、急いで避難をしなきゃ。
§
何とかローテルロー橋を渡り終えた。戦争が始まって間もないこともあり、キムラスカ兵と出会うことはなかった。あの時出会ったのは恐らく斥候部隊だろうとセリスさんが言った。
と、ケセドニア方面からグレン将軍の陸艦だ。陸艦は何度か僕らの横を往復していた。今回は……非常
「第三王位継承者ルーク・フォン・ファブレを亡き者にせんと、アクゼリュスごと消滅を謀ったマルクトに対し、遺憾の意を表し、強く抗議する。そしてローレライとユリアの名のもと、直ちに制裁を加えるであろう、と」
「……ふざけたことを。他国の王族を殺したいからといって、自国の領土であるアクゼリュスを、一万人の住民もろとも崩落させる馬鹿がどこにいるというのです」
セリスさんは頭が痛いとばかりに漏らす。確かにその通りだ。一人を殺す為に自国の領土を崩壊させて一万人の領民を死なせるなんて普通はやらない。
「お、俺が開戦の理由になってるのか!? ……キムラスカに帰らなかったから……」
「いえ、ルーク様、それは違います。我らがグランコクマに到着して即日、皇帝陛下より伝達が行われました。キムラスカにはルーク様のご生存は確かに伝えられているはずです」
「ですね。ルークのことはただの口実に過ぎないと思いますよ」
グレン将軍とジェイドさんがルークさんを諭す。
「しかし……まずいです。このままでは、両軍が全滅する可能性が……」
導師様が警告を発する。
「……あ、そうか。戦場になるのはルグニカ平野。セフィロトツリーに負荷がかかっているなら……!」
僕の言葉をティアさんが引き継ぐ。
「……! こ、れ。これが……兄さんの狙いだったんだわ!」
「どういうことだよティア?」
「兄は外殻の住人を消滅させようともくろんでいます。預言の内容にルグニカ平野での戦争が含まれていたことを知っていた兄なら……」
「シュレーの丘にあるパッセージリングを操作し、セフィロトツリーの弁を閉じた。戦場の両軍を崩落させる……という訳ですか」
ジェイドさんの言葉に僕らは騒然とする。
「じょ、冗談じゃねぇ!
しばらくその場が紛糾する。
「とにかく、戦争が始まってしまった以上、マルクトの領土内は危険です。セントビナーの住民は開戦前だった為にグランコクマへ避難させましたが、エンゲーブの住民はケセドニアへ避難させるようピオニー皇帝から勅命を受けております」
そのグレン将軍の言葉通り、艦はケセドニアに進路を向けていた。
§
無事ケセドニアに到着。マルクトの将官であるグレン将軍達はケセドニアの有力者であるアスターさんという方に、エンゲーブ住民の受け入れについて説明に行くらしい。一応ピオニー陛下から連絡がいっているはずだが、改めて挨拶を、とのこと。僕らは休んでていいと言われたが、導師様がせっかくなら会っておきたいとおっしゃられたので、いつものメンバーでアスターさんの屋敷に向かっていた。すると二つの思わぬ再会が待っていた。
「ルーク!! ルーク!!!」
「なっナタリア!!」
なんとナタリア姫が国境の向こうであるキムラスカ側からこちらに駆けてきたのだ。婚約者であるルークさんを見つけたからだろう。
「ルーク、ああ、ルーク。良かった。わたくし、きっと生きていると信じていましたわ」
「あ、いや、その……」
ルークさんの胸にすがり付いて、さめざめと泣くナタリア姫。
「あーその、だな。ナタリア……マルクトのピオニー皇帝から、俺が生きてるって一報が届いてなかったか?」
「知らせなら届きましたわ。だけどお父様は、実際にその身を確認できていない以上、マルクトの謀略だろう、と。そして戦争を始めてしまったのです。わたくしは戦争を止める為にも、何とか貴方にお会いしたくてこうしてケセドニアに赴いたのですわ」
ケセドニアに来てもマルクトには入国できなかっただろうに。アグレッシブな人だなぁ。
「あ、ルーク様、あちらを……」
セリスさんが示した先には、カイツール軍港で会ったアルマンダイン伯爵がいらっしゃった。
「アルマンダイン伯爵! ルークです」
「…………い、生きて……おられたか……!」
この反応……秘預言を知っていたな。この人もルークさんやアクゼリュスの住民を見捨てた一人か。僕らの視線は自然、険しくなる。
「アクゼリュスが消滅してしまったのは、おれ――私が招いたことです。責められるのはマルクトではありません! 俺一人です!」
…………少し前から思っていたけれど、ルークさんは少し加害妄想にとりつかれているように感じる。自分の責任の分は確かにそうだけど、自分の責任でない部分まで引き受ける必要はないと思うんだけどなぁ。それでも、そうは思えないのか。一万人の死亡。とても「自分に関係ない」なんて思える人じゃないのだろう。
「さぁ、伯爵! 戦争の理由がなくなったのです! 今すぐ停戦なさい!」
後で聞いたが、戦争ではアルマンダイン伯爵が総大将となっていたらしい。
「待たれよ! 伯爵。偽の姫にかしずくことはありませんぞ」
あれは……?
「大詠師、モース!」
ルークさんの叫びでわかった。あれがモースさんか。戦争を起こそうとしていた。秘預言も知っていた人物。
「私は以前、敬虔なローレライの信徒から懺悔を受けていたのだ。その男曰く、王妃様にお仕えしていた侍女と自分の間に生まれた女児がいた。その実の子供をなんと生まれたばかりの王女殿下とすり替えたと言う話だ!」
「!!?」
「な!?」
ルークさんとナタリアさんが驚く。
「あの者の髪の色を見よ! 古くよりランバルディア王家に連なる者は赤い髪と緑の瞳と決まっておる」
それは……確かにルークさんと、彼のオリジナルであるアッシュはそうだ。いや、ファブレ公爵もそうだったっけ。ならそれは事実なのだろうか。
「しかし! あの者の髪の色は金色。今は亡き王妃様は流麗な黒髪でしたな。この話はインゴベルト陛下にも申し伝えた。確かな証拠と一緒にな。バチカルに戻れば、陛下はそなたを国に対する大罪人として処断するだろう!」
「そ……んな……そんな、はず……ありませんわ……」
「ナ、ナタリア……」
これも後で聞いた話だが、元々ナタリア姫には、赤い髪でないことで不義の子ではないか? という疑いがあったらしい。だからモースからこの話を聞かされた時も、しっかりとした態度で反論できなかったとか。
モースとアルマンダイン伯爵はその場を離れようとする。
「待って、待って下さい! 戦場は崩落するんです!! 大勢の人が死んじゃうんですよ!!」
僕は必死に叫ぶ。戦争を止めようと。
「それがどうかしたか? 戦争さえ開始されれば、預言は果たされるのだ」
「大詠師モース……なんて、ことを。……貴方は! それでもローレライの教徒なのですか!」
ティアさんが自分の上司であるモースを、信じられないものを見るような目で見た。
「ふん。なぁにを言っとる。ローレライの教徒だからこそ預言の教えに従うのであろう。……それよりも導師イオン、貴方はそのような奴らと共に停戦でもさせようという気ですかな?」
「…………いえ、私は一度ダアトへ帰還します」
「導師様!? 危険ですよ! ダアトに行ったらダアト式封咒を解いて欲しいヴァン達が……」
「ヴァンに好き勝手はさせぬよ。さすがにこれ以上の崩落を行われては面倒だ」
ほ、崩落を「面倒」の一言で片付けないで欲しい!
「すみません、皆。僕には僕にしかできないことがあると思うのです。どうしても僕が必要になったらダアトへ来て下さい。それでは」
そう言って、導師様はモースの元へと歩いていってしまった。
伯爵もいなくなっており、その場に荒涼とした風が吹いた……。
§
僕達はケセドニアの代表者であるアスターさんの屋敷、彼の居室を訪れた。エンゲーブの住民を受け入れることについて話をする。ピオニー皇帝からの伝達もあり、受け入れは問題ないとのこと。良かった。
「それとは別の話なのですが、ザオ遺跡とイスパニア半島に亀裂が入り、周辺が地盤沈下していると報告があったのです」
「え!」
すると、グレン将軍が地図を取り出した。
「既に崩落したホド、アクゼリュス。この二箇所ではセフィロトツリーが消滅している。アクゼリュスが消滅したことによりシュレーの丘にあるパッセージリングに負荷がかかっているというネギの推測が合っているとしたら……」
その世界地図にはセフィロトの位置に丸がつけられていた。
「…………おい…………ケセドニアは、ホドとアクゼリュスに挟まれるような位置にあるぞ……」
ルークさんがうめく。その言葉の通り、ホドとアクゼリュスの間にケセドニアは位置していた。シュレーの丘に負荷がかかるなら、ここから南東にあるというザオ遺跡のリングにも……!
「いえ、バチカルで六神将にさらわれたイオン様は、アクゼリュスに来る前にザオ遺跡で作業をしたと言っていました。それがダアト式封咒を解いたということなら、シュレーの丘同様、グランツ
ジェイドさんが推察する。そうか、ダアト式封咒を解いたのはここもだったんだ。
「話が見えないのですが」
アスターさんと、呆然としたままついてきたナタリア姫が置いてけぼりになってしまった。ガイさんが一通りの事情を説明する。
「
「崩落……にわかには信じがたい話ですが、アクゼリュスが消滅したことは聞き及んでおります」
二人は何とか僕らのことを信じてくれた。
「ザオ遺跡に行きましょう!」
僕の言葉を、しかしセリスさんが止める。
「待ちなさいネギ。ヴァンがリングを停止させたのなら、シュレーの丘同様ルーク様の超振動で何とかなるやも知れません。しかし崩落した二箇所によってツリーに負荷がかかっているとしたら、根本的な解決はできませんよ」
「そりゃあそうかも知れませんが、けどそれは行ってみなければわからないんじゃ?」
ガイさんは行くことに乗り気のようだ。
「…………セフィロトは世界に十箇所。しかしホドとアクゼリュスが崩落して二箇所に穴が空いています。ツリーに負荷が、という問題だとしたら、こちらには対応策がありません。まだ兄がツリーを停止してくれているほうが、面倒がないのですが……」
「いえ……待って下さい。シュレーの丘でネギが考案したこと、それを実現できれば……」
「どういうことですの?」
ジェイドさんの言葉にナタリア姫が疑問を呈す。
「大佐……しかしあれには問題が……」
「あの案で最大の問題は、魔界に降りた後の帰還方法です。それさえ解決できるなら逆転の一手になりますよ」
ティアさんの疑念に答えるジェイドさん。
「帰還方法……」
そうだ、僕の考えでは魔界に降りてそのままになってしまう。アクゼリュスが崩落した後タルタロスが傍にないようなものだ。
「タルタロスと同型艦のあれを……」
「いやいや、待てよネギ、それをやるとしたらセフィロトの数だけ艦が必要になっちまうぞ」
ガイさんに諌められた。しかしジェイドさんはニヤリと笑みを浮かべ、
「いえ? あるじゃないですか。シュレーの丘へ向かう時に話していたものが」
あ!
「シェリダンの!」
「飛行実験!!」
僕とルークさんの言葉が重なる。
「先日の馬車で話していたアレですか。しかし今から間に合うでしょうか? アクゼリュスとは違いますが……」
セリスさんが時間について指摘するも、
「兄から聞いた話では、ホドの崩落にはかなりの日数がかかったそうです。
ティアさんが希望の事実を告げる。
「つまり、その力場を越えないまではゆっくり降下するってことか。なら、動かない理由はないな」
ガイさんの言葉にみなで頷く。急いでシェリダンへ!
後書き
や、やっとナタリアが合流しました。偽姫事件も起きたので、逆説的にこれから起こるあれとかそれとかの解決も保証されました……。後はアニスとアッシュですね。