注意です。金曜日から日曜日にかけてネットに触れられないので、感想返しができなくなります。まあ感想なんてそんなにこないでしょうが、一応注意して下さい。
シェリダン。キムラスカ王国が誇る職人の街。赤土のラーデシア大陸、その東側にあり、対岸の音機関都市ベルケンドと双璧をなす。ケセドニアで僕達はそこに行く算段を考えた。移動ならやはり陸艦を使うのが最速だ。今ケセドニアにある陸艦はエンゲーブの住民を回収する役目がある。どうせならローテルロー橋に接岸したままのタルタロスを使うことになった。最低限の航行ならいつものメンバーでも大丈夫だし。
「けど……大丈夫なんですか? 戦端が開かれた状態でキムラスカの都市にマルクト船籍のタルタロスで行くなんて……しかもジェイドさんはマルクトの軍人ですし……」
「マルクトの軍服を脱げば大丈夫でしょう。顔を知られていない限りマルクト軍人とは思われないはずです。タルタロスで行くことについては……こればかりはどうしようもないですね。拙速に赴くには艦を使うしかない。しかしマルクトの艦では見つかれば検挙されてしまう……キムラスカの艦があればいいのですが、ないものねだりはできません」
セリスさんは軽く首を振ってそう言った。仕方ない。ケセドニアから馬車でローテルロー橋に移動して、タルタロスを使うことにしよう――。
§
「ガイさん。どうかしたんですか?」
と聞いている。
「い、いやーシェリダンは職人が集まる街だろ? 少しばかり街を見て回ったりは……」
「駄目に決まっているでしょう」
じろり、と目を覗き込む。
「い、いや。セシル将軍、別にそれが目的で見て回る訳じゃないですよ。だけど浮力機関をつけた乗り物を見つけようとする最中に、少しくら」
「ガイ」
「…………はい。すいません」
全く、殿方というのはこれだから! その会話を聞きながらルーク様も呆れている。
「ったく、ガイの音機関好きはしょーがねーなぁ」
「だ、だってだな、ルーク。旦那様の領地であるベルケンドへは視察って名目で時々行かせてもらったことがあったけど、シェリダンは使用人としての仕事があるから中々行けなかったんだよ」
本来ならルーク様やナタリア殿下は船室でお休み頂きたいところだが、マルクトの兵士を借りられない今回の目的地上、艦の航行を手伝ってもらわなければならなかったのだ。
そんな会話を交わしながら、しばらく直進する日が続く航路に入った時だ。ルーク様が意を決してナタリア殿下に告白なされた。
「え……れぷ……りか……?」
私は俯いて耐えることしかできない。まだ七年しか生きておられないこの方に、この先何度このようなお辛い気持ちを味わわせることになるのか。
「ほん、とうの……『ルーク』は……
「………………ああ…………ごめんな、ナタリア…………やくそく……果たせなかった……プロポーズの言葉、俺、知らなかったんだ。思い出せるはず、なかった…………」
「くっっ!!」
唇を噛み締める。王宮では有名な話。記憶喪失になったルーク様に、プロポーズの言葉を思い出して欲しいと懇願するナタリア殿下。だからと言って記憶喪失になったルーク様に、勉強などを押し付けるように強要なさるのはさすがにお止めしたが、女としてその気持ちは痛いほどわかる。それだけに辛い。誰も悪くないはずなのに、傷ついてしまうお二人が。
「ルー、ク……」
それからしばらくの間、ナタリア殿下はふさぎこんだ。私は見かねてナタリア殿下に話しかけた。声を潜め、他の者には聞かれないようにする。
「ナタリア殿下。……私の考えを聞いていただけますでしょうか」
「セリス」
「六神将鮮血のアッシュが、どのような気持ちでこの七年を過ごしたのかはわかりません。ですが、話を聞くに彼はダアトの兵士として活動していたようです。先日は、このタルタロスに乗船していたマルクトの兵士を、『ダアトの兵士として』殺したと」
彼は本来、キムラスカ軍元帥であるファブレ公爵の子息だ。何もなければ少し未来で彼もキムラスカ軍に入隊し、戦場で剣を振るうこともあっただろう。それは問題ない。だが、実際の彼はダアトに所属する者としてマルクトの人間を害した。それは、キムラスカの王族として許される振る舞いを超えている、と思う。
「アクゼリュスでも、直前になって止めに来たということは、アクゼリュスを崩落させることには反対だったのでしょう。それはいいのです。その精神性は立派なものです。ですが、例え一時だろうと彼は黒幕であるヴァンの意見に反対するような行動をとれたのです…………それはつまり、この七年間の中で、自由に行動する時間があったということです」
そう、私が彼を認められない理由。それはそこにこそあった。
「自由に行動できるのなら、何故彼はキムラスカに帰ってこなかったのでしょう? それを考えれば、出奔したのは自分の意思だとみなされても仕方がないのでは? 例えば、本当に彼がキムラスカを思っているのだとしたら、マルクトを航行中のタルタロスにいたルーク様に手紙などを渡して、両親であるファブレ公爵やシュザンヌ様に連絡することだってできたはずです。ですが彼がやったことは……ルーク様に攻撃を放ち、カイツール軍港の破壊活動を指示するというものでした」
それも、大きな問題だ。カイツール軍港で亡くなった兵士達、それはキムラスカの民だった。それを指示したのが鮮血のアッシュであったことは、現在もバチカルの牢獄に捕らえられている妖獣のアリエッタから聞き出している。
「だから……私は六神将鮮血のアッシュを認められません。私にとって尊ぶべきお方はそちらにおられるルーク様です」
アクゼリュスの崩落に責任を感じ、ユリアシティで嘆き、うなだれたあの方を知っている。それならば、預言に従って人を見捨てる人間が嫌ならば、国を変えて欲しいと言った。キムラスカ戻るならば命をかけてお守りする。その上で、決して人を見捨てない王族になってくださらないか、と訴えた。そうして彼は、人を、誰かを助けたいと望むようになった。仕えるならばこのお方にこそ仕えたい。
それに、話はしないが、引っかかっていることがある。アッシュは――あの
私の話を聞いた殿下はまた考え込んでしまった。こればかりは仕方ない。本人のお気持ち次第だ。
§
シェリダン港に到着した。街であるシェリダンはここから北東に少し進んだ先になる。馬車を出すまでもない距離だというので、歩いていく。魔物が出たら僕やガイさんが前衛に出て、ジェイドさんやティアさんが術を使う。今更だけど、この後衛で術を使うの、元の世界の魔法使いタイプそのものだよね。前衛の僕はさしずめ魔法使いの従者だ。
「ここが、シェリダン……職人の街……」
確かに見た限り、各所に何やら仕掛けが施されているようだった。
「浮遊機関は一体どこかな」
街の中にいる人に聞き込みをして道を奥に進む。そこに飛晃艇のドックはあった。
「あのーすいません」
ドックの中に入り、話を聞く。すると、なんと飛晃艇、アルビオールという名前の浮遊機関を積んだ乗り物は、これから初フライトだという。外にある展望台に出てフライトを見守ろう。
「ちょうど良かったですね。試験飛行を見させてもらいましょう」
軍服からケセドニアで購入した服に着替えたジェイドさんが落ち着いて言う。……普段青いあの軍服を着た姿を見慣れたせいか、この茶色を基調とした服のジェイドさんには慣れないなぁ。
「あ、あれ……?」
な、何だろう……あの飛んでいる飛晃艇、あまりの突風(メジオラ高原に吹くのでメジオラ突風と言うらしい)に煽られている……。
「ああーー!!」
ドガシャーンという音が聞こえた気がした。突風でわずかに進路が変わった直後、崖にぶつかってしまった。
「………………………………どうすんだ、おい」
呆然としたルークさんの言葉が、展望台に響いた。
「いかんわい! メジオラ突風に吹かれて今にも落ちそうじゃあ!!」
「ギンジはイエモン! お前の孫だろう! 急いで助けなきゃあ」
展望台に立つ僕らの横から会話が聞こえてくる。どうやらパイロットは設計者さんの孫らしい。
「あ、あのー。ガイさん? どうします?」
「…………浮遊機関は二つ発掘されたと聞いたが……」
「んぅ!? おぬし、良く知っとるな。じゃが第二浮遊機関はまだ起動すらしとらんぞい」
僕らの話を聞いた設計者さんと思しき人が教えてくれた。じゃあ一つ目の浮遊機関、墜落してしまったあれをなんとかするしかないじゃないか。
「そんなことよりイエモン、すぐに救助隊を編成して、ギンジと浮遊機関を回収するぞ!」
「あの。それでしたら俺達が力になれると思いますが……」
「ん?」
ガイさんが代表して話しかける。とりあえず、詳しい話は街の集会所で行うことになった。集会所に移動する。
「話はあいわかった。しかしナタリア様がケセドニアの住民を助ける為に動いておられるとは……」
マルクトの避難が終わっていて良かった。今回危険にさらされているのは中立であるケセドニアの民。であれば協力も得やすいというものだ。
「私らも困ってるんですよ。アルビオール初号機が墜落してしまって」
設計者の方々、三人共老人だ――は、期待の飛晃艇が墜落してしょげてしまっているみたいだ。
「ううむ、今聞いてきたが、救助隊を派遣しようにも、マルクトとの戦争で兵隊さん達は出払っているらしいの」
「じゃあ、俺が行くっ!」
ルークさんもだいぶ行動的になったなぁ。以前だったら面倒だーとか言いそうなものなのに。
「私達の大半は、軍事訓練を受けた者です。任せて、いただけませんか?」
「その代わりじゃあないですが、俺達が浮遊機関を持ち帰ったら、二号機を貸して下さい」
救助に乗り気なルークさん。そしてここぞとばかりに貸し出しを口にするガイさん。
「二号機はぁ、未完成なんじゃあ。駆動系に一部足りない部品があっての。戦争に合わせて、大半の部品を陸艦製造にまわしてしもうたのじゃ」
職人の代表者、イエモンさんがそう言う。戦争の影響がこんなところまで。
「タルタロスは陸艦です。使える部品があるなら使って下さい」
ジェイドさんが申し出る。
「いいのかよ!? ジェイド」
「その代わり、救助に向かう私達の他に、タルタロスの案内をする者が必要ですが……」
「それなら、わたくしが行いますわ。守られるばかり、説明されるばかりで申し訳ないですもの」
ナタリア姫が案内役を買って出てくれた。
「部品さえあれば、わしらはこの腕にかけて機体を完成させるぞい!」
「今度はメジオラ突風にも耐えられるように設計図を見直す必要があるわね」
三人の中で唯一の女性であるタマラさんが眼鏡をキラリと輝かせる。
「それじゃあこの発射装置を持っていってくれ。これでアルビオールを固定してから、崖の下へおろしてくれ」
老人の一人、アストンさんから発射装置を受け取る。
「ガイさん、使い方わかりますか?」
「任せろ! しかしもう片方が……」
発射装置、ランチャーのようなそれは二つあった。両側から機体を固定する物らしい。
「私と……カーティス大佐ならわかりますよね? 上手く人員を分けて救助作業を行いましょう」
ということで、メジオラ高原へ向かうこととなった。急がないと、機体が崖から落ちて壊れてしまうし、パイロットの人も死んでしまう! 早く行こう!
§
「飛晃艇はまだ落ちずに持ちこたえてんな。早く操縦士の人を救助しねーと」
さて、高原の入り口にやってきた。
「それじゃあ左は俺とガイと……」
「私とカーティス大佐は右側に行きましょう。ルーク様を頼みますよ、ガイ、ネギ」
「任せて下さい!」
左側はルークさんとガイさん、僕にティアさんだ。白光騎士団の皆さんはルークさんの言により、今回はナタリア姫についている。セリスさんは右側だ。言葉には信頼が含まれている。頑張ろう。そうして進む。時間がないので魔物は無視だ。しかし、
「魔物のなき声だわ……かなり近い!!」
「やべぇ、後ろだ!」
もう少しで発射装置を発動できるという距離に来て、背後から恐竜のような魔物が。
「くそっ! 時間がないってのに!!」
「ルークさん! 僕が囮になります!!」
「ネギ!?」
「瞬動術を使えば簡単には捕まりません。上手く攻撃を回避してやりますよ!」
僕は一人で恐竜型の魔物に立ち向かう。
「危険よ!」
「話している暇はありません。パイロットの人を助けて下さい!」
「ちくしょうっ! ネギ! 戻るまで死ぬんじゃねーぞ!」
行ってくれた。僕はそいつを目の前にして、ぎゅっと地面を踏みしめる。
「来い!」
拳を、握り締めた。
後書き
原作ではマルクトの軍服を着たままでキムラスカ兵に見咎められたジェイドですが、常識的に考えて服を脱げばいいだけの話です。ゲームではそうもいかないかもしれませんが、SSなら自由にできます。
で、こんな引きにして、戦闘が始まるとか思った人もいるでしょうが、カットです。カットカーット! そもそも戦闘じゃないし? ただ逃げるだけだし? 描写なんてしませんよ? ……すいませんこれが俺のSSです。