聖なる焔と赤毛の子供(TOA+ネギま!)   作:月影57令

24 / 26
23 決着

「さすがですね」

 

「ええ、バルフォア博士の面目躍如といったところでしょうか?」

 

「これなら障気問題も解決できますよ!」

 

 ベルケンドの第一音機関研究所で、集まった物理学者さん達がジェイドさんを褒めそやす。

 

「ということは障気を中和できるのでしょうか?」

 

 セリスさんの疑問。もっともなので、僕らも詳しい話を聞かせてくれるようせっつく。

 

「外殻大地と魔界(クリフォト)の間にはディバイディングラインという力場があります」

 

 確か、ケセドニア辺りでティアさんが言っていたっけ。

 

「セフィロトツリーによる浮力、押し上げる力。そして星の引力、魔界に降りようとする力。その二つが均衡を生んで、外殻大地は浮いています」

 

 と研究者さん。浮力と引力……そうか、つまり……。

 

「……わかりました! 外殻大地を降下させて、ディバイディングラインを膜のようにして、障気を覆うんですね!」

 

 閃いた僕の言葉にジェイドさんが頷く。

 

「理解が早いですねネギ。そう、一斉に大地を降ろすことにより、障気を大地の下にある地核へと押し戻します。障気が地核で発生しているのなら、セフィロトが『開いている』から魔界に溢れ出てきてしまうのです。ならば、外殻大地降下後、もはや不必要となったツリーを発生させるセフィロトを『閉じて』しまえば……」

 

「セフィロトを閉じる。つまり……パッセージリングを停止させるのですわね」

 

「僕達が行った地核の振動停止作戦によって、液状化していた泥の海は固まっていくはずです。なら、セフィロトツリーを消す、セフィロトを閉じても大地は飲み込まれない!」

 

 僕は興奮していた。凄い、凄いよ! この案なら障気を安全に隔離できる。障気問題は、解決する!

 

「すっげー!」

 

「さすがジェイドの旦那!」

 

 喜びが広がる。

 

「なら、後はロニール雪山のセフィロトを片付けるだけですね。安心しました」

 

 導師様が胸をなでおろす。

 

「じゃあ宿で休もうよ!」

 

 アニスさんの言葉通り、僕達はほころんだ顔と共に宿屋へ移動するのだった。

 

 

     §

 

 

「グランツ響長、どうかしましたか?」

 

 それは、宿屋でチェックインの手続きをしている時だった。ちなみに手続きはルークさんがしている。持ち回りなのだ。

 

「え……と」

 

「はぁ……また何か隠し事ですか? 察するに魔弾のリグレットが持っていた鉱石でしょうか。あれはエンシェント鏡石でしたね」

 

 セリスさんはどうやらティアさんの様子を敏感に感じ取ったらしい。まだ警戒しているのかな? それはそうと、リグレットは服のポケットに鉱石を持っていた。捕縛したときの身体検査(当然女性が行った)で見つかったのだ。

 

「あの鏡石はフォニミンという物質、フォミクリー実験に使うものが採取できるのです。ラーデシア大陸にある洞窟で採取できます」

 

 詳しいな、さすがフォミクリーの発案者だ。

 

「つまり……ヴァンのアジトがそこにあるという訳ですか?」

 

 僕は話に割り込む。

 

「ならば、ベルケンドの守備隊に命じて洞窟に行ってもらいましょう」

 

「ま、待って下さい。セリス将軍」

 

 ティアさんとセリスさんはことあるごとに対立するなぁ。

 

「何か? 敵の本拠地かも知れない場所が判明したのです。調査、殲滅に行くのは当然でしょう」

 

「…………」

 

「ティア、さすがにことここに至っては、貴方の兄妹の情などに配慮している余裕はありませんよ」

 

 厳しいけれど、ジェイドさんの言う通りだ。アクゼリュス崩落を招いたヴァン一味に手心なんて加えられない。シュレーの丘とザオ遺跡でもツリーを停止させて自然崩落を狙っていた。僕らが防いだから何とかなったものの、大勢の人間に対して殺人未遂をしているのだ。

 

「な、なあ……二人共、そんなに言わなくてもさ……」

 

 手続きを終えたルークさんが口を挟む。彼にじろり、とセリスさん達の視線が向けられる。

 

「観念しろ、ルーク。それにティアも、お二人には敵わないぜ」

 

「わたくしも賛成ですわ。アクゼリュス崩落を狙い、万の民を殺そうとしたヴァン……とても許せるものではありませんわ」

 

「僕もそう思います。ほんの少し気を緩めるのも危ない。ヴァンはセフィロトツリーの停止も行った人物です。外殻大地を安全に降下させる為にも、速やかに捕縛するべきです」

 

 殺す、とは言えないけれど、やはり野放しにしていい存在じゃない。彼は裁きを受けるべきだ。

 

「……わかりました。もう……どうしようもないこと、なのね……」

 

 その後、ぽつりと漏らしたティアさんの予想を聞いた。自分の体にユリア式封咒を解くことで障気が蓄積しているのなら、兄も同様なのではないか、ということだった。

 

 そっか、ヴァンも障気に汚染されて、先の長くない体なのか。僕は少しだけ心を乱した。けれど、ヴァンも自分の状態はわかっているだろう。ならば、外殻を崩落させようと暗躍したことの対価だ。大勢の人を殺そうとしたのだ。彼がダメージを受けたとしても自業自得だ。

 

 できるなら……ちゃんとした裁判とかで裁かれて、罪を償って欲しいとも思う。だけど彼が犯した罪から導き出される償いは、壮絶なものになるだろう。それを考えると、障気にやられてしまうのと大差ない気がした。

 

(薄情かな)

 

 とも思うけれど、僕にどうこうできる問題じゃない。僕にできるのは、大地を降下させるルークさんを守るだけだ。

 

 その夜は、あまり寝付けなかった。

 

 

     §

 

 

 ケテルブルクにやってきた。雪が積もった場所にアルビオールが着陸できないという問題もあったが、セフィロトがあるロニール雪山の状況を知事に聞いておきたいというジェイドさんからの提案があったのだ。

 

「戻りました。地震が頻発している影響で雪崩が発生しているようですね。それから、奥地に強力な魔物が住み着いてしまい、結果雪山付近の魔物は全体的に凶暴化しているようです」

 

 知事邸から戻ったジェイドさんの言葉。

 

「雪崩に気をつけないとな。あと、魔物との戦闘はできるだけ避ける、ま、いつも通りだよな」

 

 ルークさんが皆を安心させるように呟く。さて、それじゃあ街の北側にある出口から出て雪山に向かおう。僕達は寒冷地仕様になった衣服で雪山を目指すのだった。

 

 

 

「これから雪山に入ります。極力音などを立てないように、いいですね」

 

 セリスさんの注意。静かに頷く皆。よし行こう。僕も故郷は山深い所だけれど、雪山を本格的に訪れるのは初めてだ。雪崩は怖いってよく聞くけれど。

 

 黙って行軍する。必要な言葉はあらかじめ決めておいたハンドサインで代用する。空飛ぶ魔物や地を駆ける魔物もいるが、素早く移動してかわしていく。山に入って十数分といったところだろうか? 洞窟があったので入ると、明らかに人の手が加わった建造物の中だった。遺跡のようなそこに入ったので一息つく。

 

「なあイオン、ここってセフィロトを守る遺跡だろ。それならさ、お前が辛い思いをしてダアト式封咒を開けなくてもいいんじゃないか?」

 

 ルークさんが相変わらず導師様を心配している。いけないな、僕は最後の場所(ダアト式封咒は)だからって、導師様の負担を軽く見ていたらしい。

 

「……心配してくれてありがとう。ルーク。ですが、パッセージリングのある部屋はとても堅牢に作られていて、扉からしか入ることはできないのです」

 

「そっか……」

 

 まあ、そうだよね。じゃなきゃ扉の横に穴を開けて入ったりできちゃうもんね。

 

「さて、休憩も終わりましたし、外に出ましょう」

 

 セリスさんが広げた荷物などをまとめる。

 

 再び雪山を歩く。目指すはダアト式封咒のみ。そうしてしばらく歩いていると、いつもの奇抜な色をした扉が遠くに見えた。でもそこに行くには山道を上り下りしなければならないみたいだ。僕達はまず右手方向に上って、そこから左の方向に下りていく。

 

「ここで最後ですね。任せて下さい」

 

 アニスさんがよりそって導師様のお体を支える。ガシャンガシャンと音を立て、最後のダアト式封咒は崩れていった。セフィロトの内部に入る。数十歩足を進めた先に昇降機があった。メジオラ高原と違いちゃんと動作したそれに乗って下へ。するとパッセージリングはすぐそこにあった。

 

「今回はすぐそばにありましたね……」

 

 僕はそこで言葉を切ってティアさんを見やる。

 

「ティア……」

 

「心配しないで、ルーク。ネギも、そんな顔をしないで。やれることをやる。それだけよ」

 

 できるならば代わってあげたい。でもダアト式封咒を解けるのはヴァンとティアさんだけなのだ。ヴァンが見つかったとしても、彼に封咒を解かせるというのは現実的じゃない。であるならば他に選択肢などないのだった。

 

「さあ、ルーク。いつも通りにお願いします。そしてアブソーブとラジエイト、二つのゲートへ全てのセフィロトを連結させて下さい」

 

「……わかったよ」

 

 各図形、セフィロトを表すそれが一本の線で繋がっていく……。いよいよ大詰めだ。

 

「終わったな。お疲れ、ルーク。イオンの疲労もある。こんなとこは早いとこ退散しようぜ」

 

 ガイさんの言葉に頷き、雪山を後にする。できればもうこんな所には来たくないな。

 

 

     §

 

 

 ケテルブルクに戻ってきた。僕らは必死で暖をとり、体を温める。

 

「……ルーク、調子はどうですか? 次はアブソーブゲートですが、一番休憩が必要なイオン様は残った二つのセフィロトに連れて行く必要がありません。貴方が大丈夫ならすぐにでも出発したいのですが」

 

 ホテルの部屋を訪れたジェイドさんがそう言う。

 

「俺なら問題ないぜ」

 

「そんなに急いで大丈夫なんですか?」

 

「大地の一斉降下は、事前に全ての国と自治区に通達してから行う必要がありますが、アブソーブゲートで作業する分には構いませんよ」

 

 なるほど、最後はラジエイトゲートだもんね。

 

「それでは、導師イオンとタトリン奏長はここで待機してもらうのが良いでしょうね」

 

「ええ」

 

「それがいーよ。イオンが辛いのに無理して連れて行くことないもんな」

 

「それでは一時間後に出発しましょう」

 

 最低限の旅装だけを整え、ケテルブルクから北東にある、ツフト諸島へと向かう。その際、アルビオールの浮力機関が凍りつきそうになり、それを待機する際に警護するキムラスカ兵さん達が必死に修理した。という雪山へ行っていた僕達を待つ間のエピソードを聞かされたりしながら、僕達はアブソーブゲートへ飛んで行った。ちなみにキムラスカが和平を結んでくれてから、白光騎士団の三人は常にルークさんの身を守り、待機中のアルビオールとノエルさんの警護用にキムラスカ兵が五人ほど同行することになっていた。兵士の皆さんは常にアルビオールに乗って待機するのだ。大変だよ。

 

 そしてアブソーブゲートに到着。

 

「とても大きな音素(フォニム)を感じるですの」

 

「ミュウは凄いなあ。僕にはほとんど感じられないよ」

 

「ここは最大セフィロトの一つだから」

 

 ティアさんが微笑みながら言う。体に負担がかかっているのに。だけど彼女は薬が効いているから平気よ、と言う。…………。

 

「ノエル、そんじゃ行ってくるよ。気をつけてな」

 

「はい、ルークさんもいってらっしゃい」

 

 ゲート内に入ると、どう見てもシュレーの丘と同じ仕掛けが。……………………音素集めかぁ。

 

「またかよ」

 

 うんざりしたようにガイさん。

 

「はいはい。意気を失っても仕方がありません。迅速に行いましょう」

 

 セリスさんがパンパン、と手をはたきながら言う。……しょうがない、やるか。

 

 音素集め自体はさほど手間取らなかった。音素の玉を設置する場所から、下の方に伸びている四つの通路を歩いていくと、その先に必要な三つの玉があったからだ。本当に面倒だったのはその後だった。倒すとブロックのようになる魔物を使ってシーソーのように傾く場所や、強く叩いて音叉の音を鳴らす場所など、これまで巡ってきたセフィロトの集大成のような場所だった。しかも道は複雑になっていて、ワープする譜陣で移動するところもあり、行っては戻り、戻っては行き、歩きまくって仕掛けを解いて、ようやく先に進めたのだ。

 

「ふぅ……ふぅ……ここにも譜陣が、下に向かうもののようですわね」

 

 ナタリア姫も疲労を隠せず息を乱す。

 

「ちょっと休憩しますか?」

 

「パッセージリングまで我慢しましょう」

 

 僕の言葉に冷静に返すセリスさん。うぅ。僕もいい加減疲れてきたよ。

 

 譜陣に乗る。するとワープして、今までとは様相の違う場所に出た。

 

「あれ? ここから先へはどうやって行くんだ?」

 

「ガイさん、あそこに下への道があります…………あ、あそこに通れるような穴が空いていますね」

 

「この調子ならリングはすぐそこね。行きましょう」

 

 すたすたと歩き出すティアさん。皆それに続く。

 

「どうやらようやっと最深部のようですよ。さあルーク、作業の時間ですよ」

 

 ルークさんも疲労しているのは同じなのに、サディストのような笑みを浮かべてジェイドさん。……いじめっ子だぁ。

 

「わぁーったよ」

 

 ティアさんがユリア式封咒を解き、ルークさんが超振動を使う。

 

「ふーっ。終わり、だな」

 

「お疲れ様ですルークさん」

 

「先ほど話していた通り、ここで休憩しましょう。魔物もでませんし、ここで休んで後は戻るだけです」

 

 ルークさんがへたっと座り込んだ傍につく、僕とガイさんとセリスさん。

 

そうして休んでいた時だった。

 

「あれは……」

 

 ナタリア姫が一番早くそれを見た。皆の視線が泳いだ先には……。

 

「ヴァン!」

 

「ラルゴと……シンクも一緒ですか。やれやれ」

 

 ジェイドさんの言葉通り、六神将の二人と一緒にヴァンが下りてきた。どうやらリングを操作するつもりだったらしい。ロニール雪山から素早く移動して良かった。彼らに先んじることができていたようだ。

 

 これは後になってから知ったことだけど、やはりラーデシア大陸の洞窟にアジトがあって、ベルケンドの守備隊がちょうどアジトを引き払おうとしていたヴァンと六神将、配下の神託の盾(オラクル)騎士団の兵士達と行き会ったらしい。そしてそのまま戦闘となって、守備隊はほぼ壊滅したが、騎士団の一般兵も壊滅。ヴァン達三人も軽くない程度の怪我を負ったと、守備隊の生き残った人が話してくれた。そして驚いたことに、その場にはアッシュもいたらしい。キムラスカ兵はカイツール軍港の件で指名手配されていることと、六神将であることからヴァンの仲間と思ったようだが、彼は率先してヴァンに向かっていった。ヴァンはそれでもアッシュを殺さないように手加減したのだ。最終的にはヴァン達がその場を去ったことで、アッシュも手傷を負いながら、その場を後にしたということだった。

 

「……出来損ないか」

 

「第一声がそれですか……いい度胸だ。ヴァン・グランツ」

 

 セリスさんがメラメラと燃えるような瞳で睨みつける。

 

「何故お前などがここにいる? 私と共に秩序を生み出すべきアッシュを差し置き……私の邪魔をするなレプリカ風情が!」

 

「そのレプリカ風情に計画を邪魔された気分はどうですか? グランツ謡将(ようしょう)

 

 ジェイドさんが軽く挑発。

 

「ふん……」

 

「ヴァン……残念だがルークは世界を救う存在だ。超振動も教えられて操れるようになった。お前はもう終わりだよ」

 

 ガイさんが剣の柄に手をかけながら静かに通達する。終わりを。

 

 シンクは見たところ無手のようだ。なら彼の相手は僕が務めよう。

 

「兄さん……私達は負けないわ」

 

「お前達のよこしまな野望もこれまでですわ!」

 

師匠(せんせい)……貴方は、俺が止めるッ!」

 

 戦闘が、始まった。僕はいつもの瞬動術。しかしシンクは反応してみせた。

 

「僕はそう簡単にはやられないよ!」

 

 シンクとラルゴが吼えた。

 

「タルタロスでの借り、返させてもらうぞ!」

 

 ジェイドさんとティアさんは譜術で、ナタリア姫は弓矢で援護を行う。シンクは僕、ラルゴは白光騎士団の三人がけで抑え、ヴァンにはルークさん・ガイさん・セリスさんのこれまた三人が対峙する形となった。ヴァンとシンクは譜術やユリアの譜歌を使うという話だが、そんな隙は与えない。

 

「双撞掌底破ッ!」

 

 シンクの掌底が向けられる。左手で受け止め、指を絡ませて引き込むと同時に右の縦拳を放つ。だがシンクの左手がそれをガードした。

 

 拳の応酬が繰り広げられる。スピードはほぼ互角、だが――。

 

 ヒュガッ! ナタリア姫の矢が飛んできた。バックステップしてかわすシンク。……甘いっ!

 

 僕は一瞬の停滞、地に足がついていない瞬間を狙って体当たりを仕掛けた。

 

「ぐぅっ」

 

 跳ね飛ばされて転がるシンク。そこに向かって駆け出す。起き上がる寸前のシンクに拳を振り下ろす。かわせないと判断した奴は素早く手刀を突き込んできた。相打ち狙いか!  だが、上から振り下ろす僕の拳と、下から突き上げられる手刀、重力を味方につけた僕の拳が先にシンクの左肩を破壊する。だが奴の攻撃も僕の顎をとらえていた。顎を引いていなければ喉をやられているところだった。

 

「くっ」

 

「ちぃっ!」

 

 素早く後転するシンク。そこに、

 

「譜の欠片よ、私の意思に従い、力となりなさい。これで決めますわ!

――ノーブル・ロアー!!」

 

 言葉通り譜の欠片が矢のように打ち込まれた。シンクは素早くボクシングのファイティング・ポーズのように両腕を前に回してガードしようとしたが、防ぎきれるものではない。隙ができた! 僕は全力で地を蹴り、拳を、叩き込んだ!

 

 カランッ。確かに奴の急所、人中に叩きつけられた拳によって、彼がつけていた仮面が落ちる。と同時に、頭にダメージを負った為、大の字となり横たわるシンク。

 

「えっ!?」

 

 驚きの声は自分の口から発せられていた。そこにあったのは導師様と同じ顔――まさか。

 

「くくくっ。どうしたのさ、そんな化け物でも見たような顔をして」

 

 皮肉げに歪められた口元。だが確かに見覚えのある容貌に、僕はすぐに思考を取り戻した。レプリカ。

 

「君は……、君も、導師のレプリカだったのか」

 

「ああ……そう、さ……最もお前らのよく知るあいつと違って、僕は出来損ないだけどね。使い道のないゴミ、さ…………」

 

 その言葉を最後に彼の意識は途絶えた。そうだ、他の二人!

 

 振り返った僕の眼が巨体であるラルゴをとらえる。その身には既にナタリア姫の放った矢が数本突き刺さっており、今まさに獲物である鎌も剣で跳ね上げられて、白光騎士団の一人が放った突きによってわき腹に剣を生やしていた。

 

「ぐふぅ」

 

 口から血を垂らすラルゴ。だが――

 

「ぐぅぉぉっ! 紅蓮旋衝嵐!」

 

 剣をその身に受けながら、とどめを刺そうとした残り二人が近づいたところを狙ってラルゴは大技を繰り出した。まずい! 騎士団のみなが吹き飛ばされた!

 

 だが大技を放った直後で隙ができた。僕は吹き飛ばされた白光騎士団の三人をブラインドにし、瞬動術からの崩拳を放った。いつか見た光景。僕の拳がラルゴに刺さる。

 

「こ、ぞう……」

 

「――あああっ!!」

 

 右腕を引くと同時に左腕を突き出していた。それが先ほどまで拳がめりこんでいたみぞおちに的確にぶち当たる。それでラルゴの巨体は、決して手放すまいとする鎌と共にがくりと膝をついたのだった。

 

 

     §

 

 

 戦いは、終わった。ジェイドさんとティアさんの二人は主にラルゴよりヴァンに向かって術を放っていたらしく、都合五人の猛攻を受けたヴァンはその身に幾多の譜術と斬撃を食らい、倒れていた。

 

「ロープを……捕縛、します……」

 

 セリスさんもどこか怪我をしている風で、苦しげにうめきながら倒れた敵三人を捕縛しようとしていた。

 

「私が行いましょう。貴方――いえ、前衛は全員ティアの治癒術を受けなさい」

 

 後方から術を放っていて元気なジェイドさんが申し出る。

 

「動きがどこかおかしかった。……師匠、きっと怪我をしてたんだ……」

 

「ああ、だが戦いは非情だ。これで奴の馬鹿げた野望も終わりさ」

 

 へたりこむルークさんとガイさんの会話。僕は顔を晒したシンクの捕縛を行った。

 

 色々と話すことや問題が出た戦闘だったが、僕らは傷を癒してアルビオールまで体を運ぶのだった。

 







後書き
 鼻くそ戦闘描写再び。ネギ視点なのでヴァンはカットで。ラスボスなのに木刀で立ち向かうルークと木刀にやられるヴァン。合掌。

 ロニール雪山で戦闘になる原作ですが、ネギ達はかなり早く行動したことと、ベルケンドの守備隊が引き上げる直前のヴァン一味と戦闘になったことで、彼らの行動が遅れました。何気にアッシュもアシストしてくれていました。ありがとうアッシュ、君のことは決して忘れないよ――。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。